2016年12月16日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・台風10号豪雨災害―商工業者への支援について
【斉藤委員】
地域なりわい再生緊急対策交付金、どれだけの事業者が対象になるかと一般質問で聞いたら、約1000事業者の見込みということだった。この根拠をお聞きしたいが、台風10号豪雨災害の被災事業者は、商工業者だけで1885、宿泊施設19、さらに観光関係もあるわけで、1000事業者という根拠はどこにあるのか。
【経営支援課総括課長】
1000という数字は、事業を実施している3市町で地元説明会等を実施しているが、各市町が見込んでいるということでまとめている。
被災した1885者との差だが、交付金事業は被災した施設の復旧や販売活動に対する支援ということだが、被害状況そのものは、建物は大丈夫だったが商品が被災した例、浸水したが設備に大きな被害がなかった例などがあり、必ずしも一致するものではない。また商店街として取り組むといったこともあり、そういう部分の差はあるかと思う。
【斉藤委員】
市町の見込みを根拠にしていると。
昨日の一般質問で、この交付金のメニューも聞いたが、かなり柔軟なメニューになっているが、久慈市では、商工業・サービス業は上限200万円ということで、画一的に行われているのではないかという声を聞く。商工業・サービス業といっても、たとえばクリーニング店で施設・設備だけで数千万円の被害を受けている、ガソリンスタンドでも数百万円の被害を受けている。交付金なので、原則200万円だとしても、市町が被害実態に合わせた補助が可能な制度だと受け止めていたが、3市町で具体的な取り組みに違いがあるのではないか。
【経営支援課総括課長】
上限額についてはお話あった通り、制度を考える段階で、東日本大震災津波の時の制度を踏まえてということで、事業費を積算するということもあり、同程度の規模と考えたが、実際には現地の話をいろいろ聞いた中で、委員ご紹介の状況もあるということで、修繕で済むのであれば200万円が基本だが、どうしても入れ替えで設備を使う場合には業種問わず2000万円ということで、そういう形にしている。ただ、我々でも当初制度を考えているときにアナウンスした部分と実際に動いている部分で、もし十分に伝わっていない部分があるとすれば、現地で説明会もやっているので、そういうことで対応している。
【斉藤委員】
被害状況に合わせ業種問わず2000万円というのは大変大事な答弁で、しかし久慈市では画一的な形で説明されているようなので、宮古・岩泉と久慈が実施段階で差が出ると問題なので、よく状況も聞いて対応していただきたい。
県は思い切った施策をとったと思うが、国も小規模事業者持続化補助金―100万円で3分の2補助、地域街中商業活性化支援事業、革新的ものづくり商業サービス開発支援補助金―上限3000万円で3分の2補助と、グループ補助はできなかったが、しかし今回の災害関連で国もこういうメニューを活用できるということで、県の支援策と国の補助金を最大限組み合わせて、被災した中小業者が再建できるようにすべきだと思うが、国の場合は窓口は商工会議所・商工会になると思うが、その点で連携して、国・県の制度の併用が可能だと思うので、そういう取り組みを進めていただきたいし、商工会議所・商工会への人的派遣なども含めて、一体となった取り組みについてどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
交付金事業については、市町が柔軟な対応ができるようにということがあるので、引き続き連絡調整しながら進めたい。
商工団体については、やはり相談対応が増えるということで、3市町の商工会議所・商工会、岩手県商工会連合会の人員配置の部分についても補助するということで事業を設定し、今その4団体で人選をしているが、すでに3団体で決まっており、今月から勤務していただいている。もう1団体も人選中で、そのように相談対応も強化していきたい。
【斉藤委員】
被害が大きいだけに、せっかく県や市町が取り組もうとしている施策、国の補助制度を最大限活用し再建に取り組んでいただきたい。
・県内就職率の向上に向けた取り組みについて
【斉藤委員】
今年3月の新規高卒者の県内就職率は64.1%、全国39位、一方で、あまり産業構造が変わらない石川県が93.9%、富山県が92.3%、東北では宮城県が80.9%、山形県は78.9%である。岩手県は低すぎる。そして平成30年度までの目標が66.5%と、そもそも目標が低い。発想を転換して、せめて宮城県や山形県並の県内就職率80%をめざすべきではないか。それに必要な抜本的な対策に取り組むことが必要だと一般質問でも提起したが、部長にお聞きするが、今の県内就職率が低すぎる、目標も低すぎるという認識はあるか。
【商工労働観光部長】
岩手のこれまでの人材、特に高卒者の就職先として、やはり長い歴史の中で中央を向いていると。岩手の産業集積がまだまだ途上であり、しっかりと地元就職先として有力な選択肢となって、本人もそうだが、家族や周りの方々もしっかりと認識されるには時間がかかってきているのだろうとは思っているが、やがてそういった認識が当たり前のことになってくる世の中を目指して、産業集積や高度化を進めている。
目標設定については、過去のかなり頑張っていた頃の時期に向けて、着実に伸ばしていこうということから始めており、県民みんながやはり地元だと思ってくれるような状況ができてこないと、上滑りの話になるので、県民みんなが岩手で働こうという形になってきて初めて意義のある数字になってくると思っているので、段階的な成長、伸びていくようにという思いを込めての設定である。
【斉藤委員】
低すぎるという認識がまだないと。担当部長としては重大である。真剣に検討していただきたい。
調べたら、岩手県と富山県・石川県・山形県と何が違うのか、中小企業の常用雇用者数はほとんど変わらない。産業構造が違うわけではない。ところが県内就職率は10ポイント以上違ってくる。
やはり東日本大震災津波を通じて、地元志向が高まっているのも事実である。ところが現場では、早く就職を決めたいということで、関東や首都圏からの求人が早いので、今までの実績もあるので、そこから決めていくと。しかし実際に、地元にどういう企業があるのか、求人があるのか知らされない。そういうところが今の取り組みとしては欠落しているのではないか。
産業人材の奨学金免除の話もあったが、地元に求人もある、人を求めている。高校生も地元に就職したいと思っているのは少なくない。文化とか抽象的なものではなく、東北の平均は74.1%なので、66.5%の目標を達成しても東北の平均にも及ばない。全国からも立ち遅れる。
こういう状況が実際にあるので、なぜこういうところにとどまっているのか。せめて宮城県や山形県並に引き上げることは十分可能だと思うので、真剣に検討すべきではないか。
【商工労働観光部長】
これまでも、地元企業をしっかりと、県民が就職を考えている方に知っていただくよう、さまざまな取り組み、情報発信や見学会、説明会などさまざまな場面でやってきているつもりである。また就業支援等の活動もある。学校現場においても、これまでの長い首都圏企業との付き合いというのもあるが、地元就職にも一生懸命頑張っていただいている。
急激に上げていくことについても、数値的な示し方も一つの政策のメッセージとして方法論はあると思うが、今まで地道に一生懸命やってきているつもりだが、県内でよく企業を知っていただき、振り返っていただき、やはり地元で働く、そういう機運と実際的な行動をさらに盛り上げていこうと思っている。今もジョブカフェやいろんな形でさまざまな情報発信をやっているが、そういったことにこれからも力を入れていきたいし、また皆さんの周りにいらっしゃる方々、若者にも声をかけていただき、岩手に就職しようという機運を一緒に高めていっていただければと思う。
【斉藤委員】
8月に特別委員会で、雇用対策労働室を呼んだ経緯があるが、そのときに「県外流出が多い」「県内企業の情報が十分知らされていない」ということだった。そのように自覚しているのだったら、本当にそれを打開する手立てをとらなければいけない。
県内就職率が低いというのがどういう問題かというと、生徒減少の中で、就職者数の実数が大幅に減っている。平成19年3月には64.8%で2500人が就職、今年3月は64.1%で1938人と500人以上減っている。だから同じレベルではどんどん県内就職者が減っていく。率を上げなければ、県内の求人に応えられない。東北でみても低い、生徒減少の中で高い目標をかかげて、県内企業の要請に応える戦略・方針がなければ、中小企業の振興にもならないし、人材不足が今4割と岩手県経済研究所の報告もあるので、この状況をもっと積極的な目標を持って打開に取り組む必要があるのではないか。
【商工労働観光部長】
現状認識・問題意識はまったく共有されていると思っている。今年もさらに情報発信等に努め、学校現場とも連携し、企業見学会にも父兄も参加していただくような形に誘導しており、インターンシップの紹介や誘導もこれまでにない展開をしてきているつもりである。これは引き続き展開していくこととしており、ご案内の通りのいわてで働こう推進協議会、これはまさに産業界から教育界まで含めて取り組んでいこうということで、企業をよく知ってもらうこともそうであり、企業側も人を集めるためにはどうすべきかという問題意識を共有されてきている。生産性の向上やその一連のつながりとしての処遇改善等いろんな形で魅力をアピールしていくことも必要であり、そうした一体となって取り組む体制が今年から始まったので、引き続きこの取り組みを、勢いを維持、拡充して取り組んでいきたい。
目標については、着実にステップアップの目標ととらえているので、これはとらえ方の違いとは思うがご了解いただきたい。
【斉藤委員】
積極的な目標がなければ積極的な施策にならない。66.5%の目標というのは、39位のままである。38位は沖縄で66.6%。全国の低水準にとどまることが目標ということで、それでなぜ雇用の確保とか中小企業の振興になるのか。目標の設定から考え直すべきである。そして真剣に、富山や石川、山形と何が違うのか真剣にやっていただきたい。
・中小企業振興条例について
【斉藤委員】
中小企業振興条例に基づき基本計画が策定された。この基本計画に基づき、今年度どういう取り組みが行われたか。特に、条例や基本計画に基づく取り組みの特徴について示していただきたい。
中小企業の方からお話を聞いてきたが、経営革新の認定事業者がどのようになっているか。この1つのメリットとして、岩手希望ファンドが活用されていたが、今年度で終了だという話を聞いた。せっかく活用されている岩手希望ファンドが今年で終わることは大変残念なことなので、今後の見通しはどうなのか。継続・拡充という方向が必要だと思うが、この点はいかがか。
【経営支援課総括課長】
中小企業振興条例に基づき基本計画を策定し、具体的にはこの条例では、毎年度の中小企業振興に関わる取り組みを評価し、実施状況を公表するとなっている。条例に基づいて計画ができたのは今年なので、この評価ということが本来的には流れとしてなるので、また28年度の取り組みを29年度に公表するということになるが、それはそれとして、27年度はどんなものだったかということを試行的に、どういう形で公表するかも含めて検討し、いずれ公表する方向で対応しており、今年9月に外部委員会を開催し、どんな形で公表するか、あるいは取り組みを進めるうえで、さらにどんなところを取り組んでいったらいいかという意見をいただくということで、外部検討委員会を一度実施している。そこで公表の方法と評価の方法等ご意見いただき、いま我々の方で内容を精査しており、年度内にもう一度委員会を開催し、来年度からの取り組みも含めてご意見をうかがい、そういうことで考えている。
経営革新については、経営革新の制度自体は平成11年からあるが、途中改正はされているが、今年度途中までの経営革新の認定件数は489件となっている。そのうち希望ファンドを利用するといった事業者は、平成20年度からになるが68件となっている。平成20年度からの希望ファンドの認定そのものは336件なので、そのうち2割の部分で経営革新を利用している。
【産業経済交流課総括課長】
岩手希望ファンドについては、この制度は国・県・地方金融機関からの無利子貸付金を原資として、その運用益で事業を行っており、平成20年1月に組成したものが運用期間10年間ということで平成30年1月に償還金を迎えるということになる。いずれ希望ファンドについてはいろいろ活用されているので、商工会団体をはじめ、事業者からも継続要望されていることから、全国的にも国に対する要望も強く、当県においても県単独あるいは知事会を通じての要望を行っていく。
いずれ国においては、関係省庁と継続に向けて協議しているということで聞いている。
【斉藤委員】
希望ファンドについては、継続の方向で協議を行っていると受け止めていいか。
【産業経済交流課総括課長】
国の方で継続に向けて協議している。
【斉藤委員】
中小企業振興条例、それに基づく基本計画が出されて、今年1年目ということなので、外部委員会でも検証されていると。事業所数で99.7%、従業員数で87%、この中小企業が元気なければ岩手の経済は元気にならない。こういう認識でぜひ取り組みを強めていただきたい。
・岩手県の契約に関する条例(公契約条例)に基づく取り組みについて
【斉藤委員】
公契約条例の目的は、適正な賃金の確保である。この点で、公契約条例に基づきどういう取り組みがなされようとしているのか。
【労働課長】
県が締結する契約に関する条例における賃金に関する取り組みだが、この条例の基本理念の1つとして、県が締結する契約にかかる業務に従事する者の適正な労働条件がかかげられている。それに基づき県としては、基本理念の実現をはかるための取り組みをとりまとめて公表し、それに取り組んでいくとなっており、昨年度来、県の契約審議会を設置して、その具体的な取り組みについて検討し、今年4月1日に107項目からなる県の取り組みを公表して取り組んでいる。その中では、特に賃金に関するものとしては、ダンピングの恐れがあるような契約により、賃金にも悪影響があるといけないということで、ダンピングを防止するためということで、最低制限価格制度の対象を拡大するなどの取り組みを決め、取り組んでいる。それについては、県としては毎年見直しながら条例の基本理念に向けて取り組んでいくこととしている。
もう1つ賃金に関する大きな項目として、29年4月1日から施行予定の、受注者から最低賃金の順守を含む法令順守状況の報告を求める、特定県契約の制度を施行する。これについても、昨年度来、県の契約審議会において、制度の詳細について審議いただいたところであり、さらに県が行った事業所等へのヒアリング調査結果なども踏まえ、県の契約審議会で審議いただき、その結果、先月、制度の施行のための施行規則を公布し、29年4月1日から最低賃金の順守状況を含む報告を求める制度を施行するということとした。今後制度が円滑に図られるように周知活動をしていくこととしている。
【斉藤委員】
ダンピング防止、受注者からの法令順守、最低賃金の順守、これは当たり前のことである。適正な賃金の確保にはならない。先日、全建総連の定期大会に参加してきたが、いま大工さんの公共工事設計労務単価は22000円である。実際に現場で大工さんがもらっている賃金は12000円だと。こういう実態調査をして、なぜ乖離が生まれるのか検証し、だから建設労働者の確保ができないという悲痛な訴えがあったので、最低賃金は法令違反で順守は当然なので、ぜひ適正な賃金というのは、本当に働ける、後継者が育つ、そういう賃金を少なくとも確保すると。進んでいる自治体では、設計労務単価の8割9割に設定し、公共工事を発注している。そういう水準が求められるのではないか。
【労働課長】
さらに賃金の向上、処遇がもっと良くなるということについても、取り組みたいということで、そちらは直接条例でとなるかどうかはあるが、働き方改革の一環として、処遇・賃金の向上も含めて取り組んでいこうということで、いわて働き方改革推進運動を今年度展開し、その関連もあり、県内の労働実態についての調査もぜひ実施したいと考えている。