2017年3月1日 2月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)


・災害関連死の認定について

【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
 議案第39号から第49号は、災害弔慰金等支給審査会の委員の任命及び平成23年東北地方太平洋沖地震及び津波にかかる災害弔慰金等支給審査会の運営に関する事務の受託廃止の協議に関し議決を求めるものであります。11市町村から事務の受託の廃止について協議があったものです。
 これまでの取り組み状況について質問します。災害関連死の申し出件数は、1月末現在で808件、認定者数は461件で57.3%、不認定件数は343件となっています。@災害関連死と認定された方々の要因分析はどうなっているでしょうか。A不認定とされた主な要因はどう分析されているでしょうか。B市町村によって認定率に大きな差が出ています。釜石市67.3%、大船渡市68.3%、山田町69.1%に対し宮古市44.7%、陸前高田市49.4%、大槌町47.2%と低い理由は何でしょうか。

【復興局長】
 県が受託している災害弔慰金等支給審査会において、これまで災害関連死と認定された方について、要因別に、「避難所等の生活の一体的精神的疲労」が一番多く36%、「病院の機能停止による病状の悪化」が約19%、「社会福祉施設等の介護機能の低下」が約14%等となっている。
 災害関連死と認定されなかった要因については、審査の対象となる事例はさまざまであり、個々に状況が異なることから、不認定要因を累計化することは困難だが、県で定めている審査基準に照らせば、その多くが、震災後発病したもののその後改善した場合、震災により明らかに死期を早めたと医学的に判断できない場合、震災とは別の原因で発病して死亡した場合などの事由に該当し、相当因果関係が認められないことから、不認定となっているものと考えている。
 市町村における認定率の差だが、県が委託を受けて同一の基準のもとで審査した結果であるので、市町村により認定率に差があることについて、特別の理由があるとは考えていない。

・特定被災地域復興支援緊急交付金について

【斉藤議員】
 議案第51号は、2016年度岩手県一般会計補正予算(第4号)であります。総額448億円余の減額補正で、財政規模は1兆1355億円余となるものであります。具体的な課題について質問します。
 第一に、台風10号関連で、142億円余の事業費が計上されています。新規事業として、「特定被災地域復興支援緊急交付金」が8億3100万円計上されています。積極的なものと評価しますが、軽米町の場合の5億円余の総額と比較すると少ないのではないか。3市町への配分とその根拠は何か示していただきたい。

【政策地域部長】
 平成11年度に軽米町に対しても同様の交付金を交付したところだが、当時の軽米町においては、被災前の財政調整基金残高が約3億円だったことに加え、被災により特定目的基金まで一時的に取り崩さなければならないほど逼迫した財政状況に陥ったことから、主に各種災害復旧事業の超過負担分を積算の基礎として措置した。
 今回の台風被害を受けた宮古市・久慈市・岩泉町においては、現在までのところ、当時の軽米町ほど逼迫した財政状況には至っていないものの、甚大な被害を受けたことを勘案し、局地激甚災害指定を受けた3市町における早期復旧・復興を支援するため、県単による自由度の高い交付金として補正予算に計上した。
 3市町への配分については、宮古市に1億3400万円、久慈市に3億8300万円、岩泉町に3億1400万円を配分することとし、その積算の基礎としては、地域経済の早期回復支援のために要する経費、情報通信基盤復旧整備に要する経費のほか、財政調整基金の現在の状況も加味するなど、各市町の財政状況を総合的に勘案した。
 すでに9月補正において、商工業振興の分野について、県単で活用使途の自由度の高い地域なりわい再生緊急交付金10億9500万円を措置しており、宮古市に4億1200万円余、久慈市に4億4400万円余、岩泉町に2億3800万円を交付することとした。
 今回の台風災害において、初めて2つの交付金で対応することとしたものであり、今後とも早期の復旧復興に向け必要な支援を行っていく。

・いわて学び希望基金積立金について

【斉藤議員】
 第二に、いわて学び希望基金積立金が1億7218万円余増額され、総額7億995万円余となります。これまでの寄付総額と活用額、現在残高はどうなっているでしょうか。被災した孤児・遺児、被災児童生徒と学生のために積極的に活用すべきですが、どこでどう検討され活用されているでしょうか。

【復興局長】
 平成29年1月末現在で、国内外から19643件・約87億300万円の寄付をいただいている。28年度末で、約19億4400万円余の活用見込みとなっており、28年度末の残高見込みは約74億6900万円余となっている。
 これまで、被災地の子どもを取り巻く環境の変化や、被災地のニーズに対応して基金を活用してきており、具体的には毎年度の予算編成過程の中で各部局から事業提言を受け、復興局から意見を付して総務部に情報提供を行い、予算化している。
 今後においても、子どもたちの学びを支え、学びの充実を図るという基金の趣旨に沿い、子どもたちの健やかな成長のために、必要な事業に活用していきたい。
 なお、基金の拡充については、他県においてさまざま議論があることは承知しているが、昨日知事からも答弁したが、今後幅広いご意見を聞きながら検討を進める必要があるものと考えている。

・直轄道路事業費負担金、地元負担について

【斉藤議員】
 第三に、直轄道路事業費負担金が130億5784万円余増額となり、総額では437億円余となっています。計画以上に直轄道路事業が進んだためでしょうか。今年度の進捗状況の見込みを含めて示してください。東日本大震災関係では、復興特別交付税で補てんされると思いますが、最終的な負担額はどうなるでしょうか。
 併せて、今年度から地元負担が導入されましたが、予算の段階では約25億円の負担でしたが、県負担額の総額はどうなる見込みでしょうか。

【県土整備部長】
 今回の補正予算は、国の二次補正等に対応したものであり、国においては二次補正を踏まえて県内の復興道路等5区間、延長46.8キロについての開通見通しを新たに公表しており、早期開通に向けて着実に進捗しているものと考えている。
 直轄道路事業費負担金の補正後の総額437億191万円のうち、震災分の総額は420億3734万円となっているが、震災復興特別交付税により措置されたものの、県の負担額については約7億4000万円となる見込みである。
【復興局長】
 地方負担額の総額の見込みだが、28年度2月補正後の県分の地方負担額は、当初予算に比べ事業により増減があるが、全体としては当初予算時と同じ約25億円と見込んでいる。

・災害関連緊急砂防事業費について

【斉藤議員】
 第四に、災害関連緊急砂防事業費が、49億1518万円余の減額補正となっています。国庫補助事業の採択箇所の確定によるとなっていますが、予算額の半分以上が減額となります。採択されなかった箇所が多いということでしょうか。今後の見通しを含めて示してください。

【県土整備部長】
 9月補正の時点では、31ヶ所を計画していたが、国との協議を進める中で、事業採択要件である単年度執行が困難である箇所が見込まれたことから、最終的には岩泉町内11ヶ所、宮古市内5ヶ所の計16ヶ所について事業申請し採択されたものであり、これにともない、今回減額補正するものである。
 なお、要件に合致しなかった箇所のうち、4ヶ所については、他の国庫補助事業を導入する計画としており、国庫補助事業の導入が困難な箇所については、県単事業により被害拡大防止対策を実施することとしている。

・災害公営住宅整備事業費について

【斉藤議員】
 第五に、災害公営住宅整備事業費が39億2501万円余の減額補正となっています。これは災害公営住宅の整備の遅れでしょうか。遅れがあるならその主な理由は何でしょうか。当初の整備予定戸数と年度末の整備戸数の見込みを示してください。

【県土整備部長】
 減額補正の主な理由は、工法の見直し等工事内容の精査などにより、建設工事費が減額となったものである。
 また今年度末時点の県整備分の災害公営住宅の累計整備戸数は、当初の2442戸を予定していたが、造成工事の工期延伸や、整備戸数の見直しにともなう減少等により、2157戸となる見込みである。

・河川等災害復旧事業費について

【斉藤議員】
 第六に、河川等災害復旧事業費が295億5232万円余の減額補正です。査定決定額及び本年度の執行見込みを踏まえてとされていますが、今後の見通しを含めて減額の理由を示してください。

【県土整備部長】
 9月補正の時点においては、台風10号災害の発災直後において、現地調査や航空写真などにより、被害額を最大限積み上げた概算経費であったが、今回の補正予算は、詳細な現地測量、詳細設計を踏まえ、災害査定決定額をもとに算出したものとなっている。
 今年度の執行見込みについては、災害査定終了が1月末となったことから、これからの工事発注については、現場および気象等の諸条件を考慮し、本年度予算として執行できる範囲に減額しようとするものである。
 台風10号災害にかかる河川等災害復旧事業については、総額約230億円を見込み、おおむね平成30年度までの完了を目指している。

・根浜海岸の砂浜再生事業調査費について

【斉藤議員】
 第七に、根浜海岸の砂浜再生事業の調査費2000万円が計上されています。根浜海岸の砂浜再生事業は釜石市と地域の方々が強く求めてきたものですが、ワールドカップにとっても今後の観光にとっても重要な課題と考えますが、調査事業に至った国の対応と今後の見通しを示していただきたい。

【県土整備部長】
 調査事業は、復興交付金の導入を予定しており、事業導入にあたっては、復興庁から、当該海岸のうち砂浜部分の海岸保全区域指定が必要とされていたところである。このため、海岸法を所管する国交省と協議を重ねてきた結果、指定が可能となり、現在は復興交付金を所管している復興庁と事業を進めるにあたっての協議を行っているところである。
 まずは、根浜海岸の砂浜再生の可能性調査を平成28年度末から29年度にかけて行い、砂浜再生工事の実施の判断を行う予定である。

・繰り越し明許費の震災復興分について

【斉藤議員】
 第八に、2月補正後の繰り越し明許費は2413億円余となっています。震災復興分はどうなっているでしょうか。繰越額と次年度当初予算額の合計のこの間の推移を含めて示していただきたい。

【総務部長】
 震災分の繰越は1568億円で昨年度と同規模である。
 内容については、漁港・河川等の災害復旧事業で、市町村のまちづくり事業等との調整に日数を要していること等が理由である。

・摂待地区海岸災害復旧工事の変更請負契約について

【斉藤議員】
 議案第85号は、摂待地区海岸災害復旧工事の変更請負契約案件です。これまでの4回の変更で当初の契約額22億3992万円が、58億2829万円余に、約160%、2.6倍に増額されています。これでは、当初の入札の意味がなくなってしまいます。なぜ、これだけの変更増額となったのか。復興事業だから仕方がないのか。通常工事では考えられないことだと思うがどうか。
 今回提案されているその他の変更契約案件も当初契約額に対してほぼ2倍に近い増額となっている。改善策は検討されているのか。

【県土整備部長】
 この工事は、早期の復旧・復興を図るため、標準断面図等による発注方式により契約した。その後、詳細な地質調査の結果、液状化対策の必要性が確認されたことから、これらの結果に基づく詳細設計を実施したところ、想定していた水門支持層が深い位置に確認されたことから、基礎構造を変更するとともに、鋼矢板等の打ち込みについて、巨石からなる層の出現にともない、先行掘削による補助工法を追加せざるを得なくなったことから、設計金額が増額となった。
 今般の変更契約案件については、当初想定し得なかった内容であり、事業遂行上必要な対応であることから、ご理解いただきたい。

・鵜住居川筋鵜住居地区水門災害復旧工事の変更請負契約について

【斉藤議員】
 議案第87号は、鵜住居川筋鵜住居地区水門災害復旧工事の変更請負契約案件です。当初の61億9763万円から127億5781万円余に2倍以上に増額となります。どういう理由か。ラグビーワールドカップの競技場に係る水門工事ですが、工期が1年延長され、平成32年3月13日となっています。ワールドカップに間に合うのでしょうか。

【県土整備部長】
 この工事は、早期の復旧・復興を図るため、標準断面図等による発注方式により契約した。その後、詳細な地質調査の結果、地中に巨石が確認されたことから、基礎杭の打ち込み方法を変更せざるを得なくなり、設計金額が増額となった。早期完成を図るため、現在施行している右岸と同時並行で左岸にも着手することとし、これに必要な仮締切について設計金額が増額となった。
 なお、工期は平成32年3月13日までとなっているが、ラグビーワールドカップが開催される平成31年9月までに水門本体を完成し、津波防御を確保できる見通しである。
 こちらについても、当初想定し得なかった内容であり、事業遂行上必要な対応であることから、ご理解いただきたい。

・新規請負契約案件の入札状況について


【斉藤議員】
 議案第72号、第74号、79号、83号は、新規の請負契約案件であります。落札率は89.97%(2社くじ)、86.42%(低入札)、86.14%(低入札)、87.18%(低入札)となっています。入札による適正な競争が確保されていると見受けられますが、低入札が多いのはなぜか、資材や人件費などが設計金額に適正に反映されてきているのか。発注件数が落ち着いてきているのか。最近の入札の状況と特徴について示していただきたい。

【総務部長】
 低入札については、条件付き一般競争入札における低入札の状況は、26年度は22.3%、27年度が33.8%、28年度が12月末時点で38.7%となっており、低入札の割合は高くなってきている。その理由は、一概に特定することはできないが、発注件数、業種、発注時期などさまざまな要因が関係し発生しているものと考える。
 資材や人件費などの設計金額への反映状況については、建設資材の価格については毎月実際価格を把握し、随時設計単価に反映しており、また設計労務単価については国の改定を受け、県でも速やかに改定を行うなど適正な価格の設定に取り組んでいる。
 発注件数については、一般競争入札にかかる発注件数は、26年度が1027件、27年度が1097件で推移し、28年度では12月末時点で昨年同期比11%減の745億円となっている。
 こうした中、入札状況としては、落札率については、26年度が92.6%、27年度が90.5%、28年度が12月末時点で90.7%となっている。
 入札不調については、25年度・26年度の21%をピークに、27年度は9%、28年度も12月末時点で9%と改善の傾向が見られている。

≪再質問≫

・変更契約案件について

【斉藤議員】
 詳細設計を4回も5回も行い、当初の契約額の2倍を超えると。これだったら当初の入札の意味がなくなってしまう。本当に改善策を考えないといけないのではないか。
 詳細設計の中で、地盤の隆起というのは調査されているのか。宮城県は、地盤の隆起で89ヶ所の高さを見直すということをやっている。釜石市大町地点で17センチの隆起、詳細設計というんだったらそこも調べて、17センチ高かったらそれを減らして経費を節減するということをすべきではないか。地盤の隆起は調べているのか。それへの対応を県はやろうとしているのかどうか。

【県土整備部長】
 国土地理院の方で調べて、隆起している量を公表している。これについて県としては、海岸防潮堤、水門等進んでおり、基本的な考え方をもって高さを見直すべきかどうか、という判断をしているところである。
 基本的に、湾、一つの地域海岸、一連の高さのところで防潮堤の高さを設定しているようなところについては、一箇所でも、一区間でも、設計高さまで施工できれば、他のところは下げるということはしないということで考えている。

・波板海岸の砂浜再生について

【斉藤議員】
 調査費が計上されたことは大変良かったと思う。当初は、これは復興交付金の対象にしないと、ガードがきつかったが、その点で国の対応が改善されたと思う。
 だとすれば、陸前高田市の砂浜再生、波板海岸の砂浜再生もできるのではないかと思うが、その点どう考えているか。

【農林水産部長】
 波板海岸については農林水産部の所管であるので私から答弁する。根浜と同様、当初対象にすることは厳しかったが、復興交付金の導入が可能だということになり、海岸保全区域の指定が可能になったということであり、波板海岸についても、先ほど県土整備部長が申したような手続きの考え方でもって、今般の2月補正予算に調査費を計上させていただいた。

≪再々質問≫

・地盤の隆起の調査について

【斉藤議員】
 詳細設計でどんどん事業費をあげるが、地盤の隆起については調査しているのか、把握しているのか。宮城県は89ヶ所も見直すと。例えば17センチの高さとなればものすごいコンクリートの量である。そういうことを吟味して、しっかり対応すべきではないか。

【県土整備部長】
 地盤の隆起については、各海岸ごとに基準点等を設けて調査している。そういうことで、隆起の量については、国土地理院の公表値ともあわせて確認している。