2017年3月7日 予算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)


・来年度予算における復興事業費について

【斉藤委員】
 来年度予算9797億円のうち、震災復興分は3043億円余で、構成比31%だが、今年度の繰越額1538億円余と合わせると4600万円となる。
 災害廃棄物の事業費を除いて、この間の推移を示していただきたい。

【財政課総括課長】
 一般会計当初予算の震災対応分に、繰り越し分を含めた数字、前年度からの明許繰越の実繰越額の合算で、24年度は5937億円余、25年度4687億円余、26年度5311億円余、27年度5726億円余、28年度5531億円余、29年度は当初予算案と2月補正後の繰越明許費の予算額のベースで4610億円余となっている。

【斉藤委員】
 復興事業費のこの間の推移を見ると、5500億円前後でこの間推移し、下がったとはいえ4610億円だと。まだまだ復興はピークの状態が続いていると思う。
 今後の見通しはどうなるか。

【財政課総括課長】
 なかなか細かくお知らせすることはできないが、事業を執行していけば徐々に減っていくものと考えている。

【斉藤委員】
 徐々に減っていくのは自然の成り行きで、岩手県の計画は32年度までということなので、これからかなり事業費は減っていくと思う。ただ、被害の大きい市町村を見ると、来年度予算では、陸前高田市・大槌町・山田町などは今年度より増えている。全県的な進捗状況をよく見ていくことが必要ではないか。

・台風10号豪雨災害と検証と対策について

【斉藤委員】
 この間岩手県が3つの分科会を設置して、提言もまとめたが、これは大変良かったと思う。各分科会の資料も見たが、遅きに失した感はあるが、この間のそれぞれの分野での災害対策はどうだったのかという、かなり重要な検証になったのではないか。
 特に、総合防災室に関わって、新規で取り組むべき課題について示していただきたい。

【総合防災室長】
 1つには、今回内陸地域に加え、沿岸地域、県北地域においても、国・県・市町村による防災・減災協議会を立ち上げ、水位計の設置、水位周知河川、洪水浸水想定区域の指定の推進、市町村と要配慮者利用施設間の情報伝達体制を整備すること、施設における非常災害対策計画の策定、地域と連携した避難訓練を実施すること、事前に台風など災害の発生が予想される場合には早期に市町村の組織全体を掲げた体制に移行すること、県としては気象台・河川管理者等とともに風水害対策支援チーム(仮称)を設けて市町村長が避難勧告等の発令を判断するうえで参考となる助言をしていくことを進めていきたい。

【斉藤委員】
 特に市町村レベルでは、全庁をあげた防災体制の構築、台風等に備えた早めの体制の切り替えということが提起され、岩泉町の取り組みを見ると、人数の少ないところでは、そもそも防災担当者が数人しかいないと。詳しく聞いてきたが、町内各地で被害が発生してその報告だけでパンクしてしまうという状況だったと。災害が予想される時には、全庁をあげた早い体制をつくっていく、そのための訓練も必要だと思っている。これを進めるうえで、県はどういう支援を行うのか。
 風水害対策支援チームというのが提起された。このチームを国・県・専門家で設置すると。ただ、災害が予想される時に、例えば、気象台にしても国道管理者にしても、それぞれの分野での対応がまず問われるときに、県庁にそういう方々が集まるのか、テレビ電話になるのか、そういうことが本当に機能的になるのか。その辺の検討はどのようになされたのか。

【総合防災室長】
 市町村での全庁的な体制が必要だということで、これは事前に市町村にもご意見を聞いたが、ぜひそういう体制が必要だとご回答いただいているが、実際には年度明けの段階で、各市町村もまわりながら、どういう形がいいのか、それぞれの市町村で状況が違うと思うので、相談していきたい。
 風水害対策支援チームについて、気象台や河川管理者や県の関係課等が集まり、どういう体制がいいのかということを今協議している。メンバー的には、トップの方はそれぞれの組織にいて指揮しなければいけないが、その次に当たる方、我々災害対策本部が設置されるとそうした次のポストのメンバーの方々が集合するわけだが、そういったレベルの高い知見をもった方々にお集まりいただいてやるというところまではある程度合意ができている。

【斉藤委員】
 風水害対策支援チームというのは画期的だと思うが、方針を見ると、「災害時だけではなく平常時もこのチームで研修も進める」と。かなり一定恒常的な体制になると思うがいかがか。
 自主防災組織等による地域の災害リスクの把握、いわば地域で災害対策といったときに、地域の災害リスクが自覚されることが大前提である。北上川流域でいけば洪水、私が紹介した先駆的なところは、自分たちで北上川の水位を把握し、一定の水位で住民に指示を出すということをやっていた。そういう点で、それぞれの地域の災害リスク、もちろん市町村も直接関わるが、どう地域や自主防災組織に伝えて、それに対応する避難計画なり災害対応を進めることが必要ではないか。

【総合防災室長】
 風水害対策支援チームについては、委員ご発言の通りであり、気象台・河川管理者・県の担当課・専門家によるものだが、災害時だけではなく普段から会う機会を設け意見交換することが大事だろうと。このチームで市町村を回ったり、いろんな形で防災対策を進めていくことが必要だろうということでしっかり進めていきたい。
 地域リスクの把握だが、これも防災会議の幹事会議で取りまとめた報告書にも記載しているが、地域の災害リスクは地域でさまざまなので、やはり自分たちで見て回ることが大事だと。特に中心になってくるのが自治会だとか自主防災組織という方々が、地域を自ら回って災害リスクを把握し、例えばそれを地図に落としていくといったような作業が必要になってくると。先進事例としてはそういうマップを作成している例なども示しながら、自主防災組織や自治会等でそうした取り組みがなされるよう、市町村と一緒に取り組んでいきたい。
 具体的には、リーダー研修会等を通して、自主防災組織や市町村職員の方々のレベルアップを図っていきたい。

【斉藤委員】
 災害対策で一番決定的なのは避難対策である。要支援者名簿というのが自治体でも作られているが、要支援者名簿が自治体で作られても、自主防災組織にそれが伝わってなければ具体的な対策が取れない。県内の自治体でも、自主防災組織に、個人情報の問題があるが基本的には伝えるという自治体がある。まだ決めていないところもあり、そうすると地域の現場で対応できないと。その状況をどう把握しているか。この個人情報の壁を災害時にどう突破していくのか。

【総合防災室長】
 避難をする際に支援を要する方々の避難については、まず避難行動要支援者名簿の作成が必要になってくる。避難行動要支援者名簿については、昨年4月現在で27市町村で作成済み、残り6市町村についても、今年度中に作成予定となっている。作成済み27市町村のうち19市町村が自主防災組織や民生委員などに名簿情報を提供、残り8市町村は提供していない。提供していない市町村に確認したところ、2市町村は今年度中、3市町村は来年度に提供する予定と聞いている。残る3市町村については、「本人同意を得られていない」「関係規定を整備中」といったような理由で提供時期は検討中と聞いている。
 要支援者の避難については、市町村や消防機関に加え、地域住民の協力も必要であることから、県としてはこれらの市町村に対して名簿を提供するよう働きかけるとともに、県・市町村が行う防災訓練などにおいて、要支援者の避難訓練にも取り組むよう働きかけていきたい。

・入札状況と課題について

【斉藤委員】
 この間の平均落札率はどう推移しているか。入札不調、1社入札の状況はどうなっているか。

【入札課長】
 復興事業に関わるもので、平均落札率は、26年度93%、27年度90.1%、28年度は12月末時点で90%である。
 入札不調については、通常事業と復興事業の全体を含む数値で、26年度21%、27年度9%、28年度は12月末時点で9%となっている。
 1社入札については、全体のもので26年度293件、27年度211件、28年度は12月末時点で155件となっている。

【斉藤委員】
 先日の議案に対する質疑では80%台になっていたので、かなり基本的には競争が確保できるようになったのかなと。
 ただ入札不調がまだまだ10%近くあり、1社入札が155件もある。ここに復興事業の厳しさと、入札後に倍々ゲームになるという危険性もあるのではないか。
 今後、入札の改善についてどのように検討されているか。

【入札課長】
 入札状況については、毎月統計をとりながら追跡している。今後考えられるところでは、台風10号豪雨災害復旧工事が本格化し、同時期に県事業・市町村事業が重なって発注されるので、引き続き入札状況を注視して、入札不調とならないよう注視していきたい。

【斉藤委員】
 岩泉町の台風被害では、業者不足で、土木技師等の不足もあるが、災害復旧は3年以内なので、本当に専門家の配置や近隣からの業者といったことに、入札には直接は関わらないかもしれないが考慮していただきたい。

・県職員の長時間労働の是正について

【斉藤委員】
 27年度は月80時間以上が431人という異常な事態だった。28年度について、これまで80時間、100時間を超える超過勤務の実態はどうなっているか。

【人事課総括課長】
 4月〜今年1月までの間、知事部局において月80時間を超える超過勤務を行った職員は延べ648人、100時間を超える超過勤務を行った職員は延べ309人となっている。
 27年度と比較し、80時間を超える超過勤務を行った職員は217人、100時間を超える超過勤務を行った職員は156人それぞれ増加している。

【斉藤委員】
 異常な事態である。答弁を聞いて大変驚いた。月80時間というのは過労死ライン、100時間というのは本当に何が起きてもおかしくない。決算委員会でもこのことを指摘して改善を求めたが、改善どころか悪化している。この打開はきわめて重大である。
 厚労省が1月20日に、長時間労働是正、サービス残業根絶の新しい通知を出した。これをどう受け止め、県庁としてどう取り組もうとしているか。

【人事課総括課長】
 新たなガイドラインの中では、労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずるべき措置について、使用者自らが現認するか、タイムカード等の客観的な記録を基礎として確認することを原則としつつ、自己申告制で労働時間を把握する場合には、自己申告を行う労働者、労働時間を管理する者に対して十分な説明を行うこと。自己申告により把握した労働時間について、必要に応じて実態調査を行うこと。使用者は労働者の労働時間の適正な申告を阻害する措置は講じないこと―ということが定められている。
 県においては、従前から、自己申告をもとに労働時間の把握を行っているが、引き続きその適正な運用を図るため、各所属長については、超過勤務の必要性を管理監督者が判断すること、事前命令・事後確認を徹底するなどの超過勤務の原則について、改めて趣旨の徹底を図りながら、適正な勤務時間の把握に努めていきたい。

【斉藤委員】
 月80時間・100時間の職員が激増したといってもいい。なぜこれだけ増えたのか。これをどう是正しようとしているか。
 今度の新通達では、労働時間の考え方というのがあり、仕事をする準備も労働時間だと。仕事が終わって後始末の時間も労働時間だと、かなり厳しい中身も示している。そして基本的には客観的に労働時間を把握する。やむを得ない場合は自己申告と。
 全国で、すでに埼玉・東京・大阪・奈良・鳥取はICカードでやっている。沖縄はICカードとパソコンでチェックしている。客観的にこういう形で管理すべきではないか。できない理由はないのではないか。

【人事課総括課長】
 今年度超過勤務が増えた事情だが、復興業務の本格化に加え、台風10号豪雨災害の対応が非常に大きかったと思っている。その他、希望郷いわて国体の準備業務等があり、例年より職員の業務量が増加しているものである。
 タイムカード等の関係だが、本県においては、出退勤時間、タイムレコーダー等に記録された時間というものが、例えば食事のための外出や超過勤務終了後の交通機関の待ち時間、あるいは自己啓発のために残っているということもあり、職員の退勤時間が必ずしも一致しないということもあり、最終的には本人の自己申告をもとに確認せざるを得ないということで自己申告制としている。
 自己申告制については、労働者や労働時間を管理する者に対する十分な説明、労働時間の実態把握、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で上限を設定するなどの措置を講じないということが求められることから、適正な運用を図りつつ、各所属長にその旨徹底し、適正な勤務時間の管理に努めている。
 タイムカードによる出退勤時間の管理だが、47都道府県中6都道府県にとどまっていることもあり、東北各県まだ導入しているところがないということもあるが、他県の動向や取り組みをよく見て判断していきたい。