2017年3月8日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)


・仮設住宅、災害公営住宅入居者の実態について

【斉藤委員】
 仮設住宅等と災害公営住宅の被災者の状況、その中での高齢者、一人暮らしの実態をどう把握されているか。
 仮設住宅や災害公営住宅での孤独死と震災関連の自殺の状況はどうなっているか。

【生活再建課総括課長】
 1月31日現在、応急仮設住宅入居者5045世帯のうち、65歳以上の高齢者のみの世帯が1210世帯・24%であり、うち一人暮らし世帯は743世帯で全体の14.7%となっている。
 災害公営住宅に入居されている3911世帯のうち、65歳以上の高齢者のみの世帯が1701世帯・43.5%、うち一人暮らし世帯は1114世帯で全体の28.5%となっている。
 一人暮らしで亡くなられた後発見された方は、昨年末現在で、応急仮設住宅で38名、災害公営住宅で10名となっている。
 東日本大震災津波に関連して自殺された方は、昨年末現在で41人となっている。

【斉藤委員】
 応急仮設住宅の入居者の場合は65歳以上が24%、一人暮らしは14.7%と、かなり比率は下がっている。一方で、災害公営住宅は65歳以上が43.5%、一人暮らしが28.5%と大変高い割合になっている。
 今、応急仮設住宅から災害公営住宅・自立再建に大規模に移動する時期である。この1年間でだいたい災害公営住宅入居者は倍に増えているので、おそらく向こう1年間また同じような大規模に移動すると思われる。そうすると、取り残される方の喪失感・孤独感は大変切実な問題がある。
 もう一方で、災害公営住宅に入居し、高齢化がかなり進んでいる。これで閉じこもる、孤立化・孤独化が進むと。
 今まで以上に、仮設住宅で取り残される方々への寄り添った見守りや支援、そして災害公営住宅で今までにない見守りやコミュニティ確立の支援が必要だと思うがいかがか。

【生活再建課総括課長】
 応急仮設住宅に取り残される方々への支援については、社協の生活支援相談員や市町村の支援員等が、個別の状況の頻度に応じて訪問活動を行っている。来年度も引き続きこれらは継続するわけだが、県の取り組みとしては、残された方々はそれぞれ問題を抱えている方々が多くなっているので、それらの問題を解決するため、個別支援ということで、沿岸4地区に被災者相談支援センターを設置している。そこは基本的に中継型で今までやってきたが、来年度以降、専門家の訪問や相談員も市町村と一緒に訪問し、自立に向けた相談活動や支援活動を行おうということ、また、内陸に避難されている方々については、来年度は内陸避難者支援センターの相談員を増員する計画なので、単に恒久住宅に移行というだけでなく、その先の見据えた伴走型支援ということで行っているので、その辺は充実させていきたい。
 災害公営住宅においても、社協の生活支援相談員や市町村の支援員等が巡回し見守り活動を行っているところである。これについても、来年度継続するとともに、陸前高田市においては、災害公営住宅2箇所に「市民交流プラザ」を設置しており、釜石市においても、「生活応援センター」ということで、保健師などがいる市の組織を、3箇所の災害公営住宅に設置するなど、各市町村においてもさまざま工夫されているところなので、これらの動きと連携しながら、引き続き見守り体制の構築に努めていく。
 災害公営住宅については、新たな環境ということで、コミュニティ確立が必要になってくる。これまで、社協と連携して生活支援相談員による交流会の開催・支援等を行ってきたが、29年度はさらに、市町村におけるコミュニティ形成活動を支援するため、市町村と支援団体を調整するコーディネーターを配置する計画にしており、被災者の心の復興を支援する民間団体の取り組みに対して補助を行い、コミュニティ形成に向けて取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 大槌の仮設の自治会長さんで、遠野まごころネットの理事長さんもしている臼沢さんという方が「住宅再建などでどんどん人がいなくなっていく状況で、自分だけ取り残されるのではないかという不安があり、たしかに気持ちを伝えて理解してほしいという感情が高まっている」、「5年も6年も仮設住宅で暮らしていたら、健康な人も病気になってしまう。圧迫感があり、プライバシーがない。四六時中仮設住宅にいたら本当にしんどい」と。頑張っている取り組みもしており、「集会室に毎朝集まってお茶会をしている。人がいてもいなくてもお湯を沸かし暖房をつけておく。そうすると、誰かが来て次第に人が集まってくる。どんな立派な施設でも誰もいなければ人は集まってこない」と。このように頑張っている仮設住宅、自治会がある。
 一方で、何度も指摘しているが、災害公営住宅は集会所と支援員の事務室を整備している。ところが一人も配置されていない。やはり100戸以上の大規模な災害公営住宅には、2年なり3年なり支援員を配置し、せっかくつくった集会所にいつでも気軽に来れる、そこにはカラオケセットもあると。仮設団地の集会所並みの機能が災害公営住宅のコミュニティを回復するには必要だと思うがいかがか。

【生活再建課総括課長】
 見守りという観点から申し上げると、先ほど申し上げたような陸前高田市や釜石市の取り組みがあるわけだが、集会所の利用ということになると、集会所は一般に、公営住宅の管理人だとか自治会が管理している。そうすると、やはり集会所を使用するルール決めといったことを決めなければいけない、そうするとやはり入居者のコミュニティ、自治会を形成して、まず自分たちの集会所をどう使っていくのかというところを進めていかなければならないと考えている。
 県としては、自治会の形成活動、これは市町村や支援団体等と連携して進めていかなければならないものであるが、そういったところに来年度はテコ入れを図るということである。一方、支援員の配置については、市町村が独自に雇用している支援員等をそちらに活用できないかということは、昨年度来市町村と何度も協議しているが、現在のところ常駐という形に至っていないのは事実である。

【斉藤委員】
 阪神淡路大震災の教訓で、当時も共用スペースを災害公営住宅につくったが使われなかった。入居者任せにしてしまった。その教訓を踏まえて、岩手県の災害公営住宅には集会所と支援員の事務室まで整備した。しかしそれが使われていない。
 例えば、大船渡市盛地区の団地の自治会は1年かかってできた。集会室の管理を入居者で決めるといっても、自治会形成に1年かかっているときに、それは難しい話である。自治会をつくる、コミュニティ形成という点でも、今必要な支援があるのではないか。

【復興局長】
 コミュニティを活性化させることについては、災害公営住宅に自治会等が設置されることが望ましいわけだが、自治会の設立については、行政が支援していきながら、基本的には自主的に、自立的に、多少時間がかかってもつくるといった方が、結果その後の自治会活動が活発になるのではないかということで取り組みを進めているというような事例もある。
 いずれ災害公営住宅での高齢の方や一人暮らしの方が多いという状況なので、せっかくある集会所なり支援員の事務室などは活用を図っていかなければならないと。いずれ市町村と連携しながら、活用を図るべく、県営については県土整備部の方の取り組みもあるので、連携してコミュニティが活発になるよう取り組みを進めていきたい。

【斉藤委員】
 ぜひ阪神淡路大震災の教訓を生かすことを真剣に考えていただきたい。

・被災者の住宅確保の見通しと具体的な支援について

【斉藤委員】
 仮設住宅暮らしの方の住宅確保の意向調査の結果はどうなっているか。
 内陸避難者相談支援センターは、まさに内陸避難者すべて訪問し、相談にも乗って意向調査もしていて大変感心したが、取り組み状況はどうか。
 U・Iターン者が仮設住宅を利用しているが、それぞれの自治体ごとにU・Iターンの目的外使用の状況を示していただきたい。

【生活再建課総括課長】
 1月末現在で応急仮設住宅の入居者6100世帯中、住まいの意向が決定している世帯は5914世帯・97%となっている。一方で再建方法が未定の世帯は141世帯・2.3%、連絡等がとれずに把握できていない世帯は45世帯・0.7%となっている。
 意向が決定している方の再建先としては、自立再建3534世帯・58%、災害公営住宅入居予定1721世帯・28.2%、その他(民間賃貸・福祉施設入所等)659世帯・10.8%となっている。
 岩手内陸避難者支援センターは、被災した市町村からの依頼を受け、内陸や県外避難者への住まいの意向把握を行うため、昨年の5月に設置した。1月末までに市町村から依頼のあった668件の意向調査すべてを行った。またセンターでは、住宅再建に関する相談にも対応しており、1月末現在で1878件の相談を受けている。相談内容としては、住宅資金の関係、家族や仕事や健康問題で地元に戻るか留まるか決めかねているといったことがあり、訪問スタッフから聞くと、これらの方々は問題が1つではなくさまざま絡み合っていることが多いと聞いている。
 U・I・Jターン者の目的外使用は、28年度の使用許可の状況は1月末現在で、陸前高田市101件、大槌町94件、釜石市16件、山田町11件、県全体で222件となっている。

【斉藤委員】
 これだけU・I・Jターン者が頑張っていると。仮設が解消されたときに、こうした方々の住宅確保をぜひ合わせて検討していただきたい。

・中心市街地再生、まちづくりと商店街再建について

【斉藤委員】
 これは前例のない取り組みをしているが、中心市街地が津波で壊滅し、2〜10mかさ上げして、何もないところに町をつくる。本来商店街は、商圏があって、購買力を見込んで形成される。これが逆になっている。それだけに、このまちづくりと商店街再生を成功させるためには、あらゆる経営支援、さまざまな公共施設の配置など、中心市街地に人を集める取り組みが必要だと思うが、そういう支援策を真剣に考える必要があるのではないか。

【産業再生課総括課長】
 大規模な土地のかさ上げなどを行った地域において、随時土地の引き渡しが行われ、新しいまちづくりが進められている一方、人口減少による地域経済の縮小などを懸念し、再生する中心市街地へ住宅や店舗の再建に慎重とならざるを得ない住民や事業者もおり、町のにぎわいの回復を不安視する声も聞こえるところである。
 新しいまちづくりは、市町村が住民や事業者等の意向に十分耳を傾け、意見を聞きながら計画づくりを行うなど、地域一帯となって進めているところであり、県や国は、専門アドバイザーの派遣や、計画づくりに対する助言や調整などを行い、町中再生計画や商業特区の計画を一緒に作り上げるような支援を行ってきており、今後も行う予定である。その他、グループ補助金等を活用した店舗の整備なども記してきている。今後もより多くの住民や事業者が中心市街地に戻ってくるための呼び水となるよう、専門家派遣や賑わいづくりのノウハウを学ぶセミナーの開催といったことにより、個店の魅力向上や商店街の集客を図る取り組みを支援するといったことで、新しいまちづくりを後押ししていくこととしている。
 復興局で所管している、創業や新事業活動を総合的に支援する三陸チャレンジ推進事業においても、来年度新たに町中再生計画区域等に出店する事業者に対して、補助率について優遇措置を設けるといったことで、中心市街地の活性化に資するような取り組みを進めていきたい。