2017年3月8日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)
・台風10号災害の復旧・復興について
【斉藤委員】
全壊・大規模半壊等の被災者の住宅確保の状況はどうなっているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
現在応急仮設住宅の整備を行っており、みなし仮設を含めた入居戸数は233戸となっている。全壊・大規模半壊の被害を受けた世帯に対し、被災者生活再建支援法に基づき、基礎支援金のほか、住宅再建の意向に沿い、住宅の建設・購入や補修等に応じた加算支援金が支給される。
被災者の住宅確保の状況だが、市町村により集計方法などが異なるため一概には言えないものの、在宅で生活している世帯が全体の6割弱程度、仮設住宅入居世帯が3割弱程度、その他―市町村営住宅・民間賃貸住宅、親類等の住宅に入居していると推計している。
【斉藤委員】
全壊・大規模半壊の現在の把握はどうなっているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
全壊471世帯、大規模半壊523世帯となっている。
【斉藤委員】
在宅が6割と仮設の倍、466戸前後となると。岩泉町が大変被害が大きかったが、在宅で避難生活をしているのが今回の災害の特徴である。岩泉町も、6人の支援員を新たに配置し、連日被災者を訪問し対策をとっているが、在宅被災者の住宅再建の意向、改修なのか、建設なのか、災害公営住宅なのか。現段階で意向把握はどうなっているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
岩泉町については、現在町の方で住宅意向調査を行っており、その結果を受けて県では今後災害公営住宅の建設について必要な助言を与えていく。
【斉藤委員】
台風10号豪雨災害から半年が経過し、厳しい冬を乗り越えつつあるが、大変な状況にあると思う。
岩泉町の復旧・復興の課題で、国の補助制度がない生活橋の再建、情報通信施設の復旧はどのように取り組まれているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
生活橋や情報通信基盤等について、現在町の方で災害箇所数や本格復旧の方法、規模等について検討しているということなので、県でもその方向性が決まったところに向けて、相談しながら今後の対応について町と一緒になって考えていきたい。
【斉藤委員】
例えば、テレビの共同受信施設は国の補助ができた。その他のものは、一般災害債を活用するという方向を出しても、来年度予算を岩泉町は出しているので、リアルに答えていただきたい。
【台風災害復旧・復興推進課長】
生活橋については、本格復旧の方向が町で決まっていないので、町の当初予算にはまだ計上されていない。
【情報政策課総括課長】
テレビ共聴については、国の方で、既存の制度の要綱を改正する形で、久慈・岩泉の共聴の復旧については補助対象として認められた。ただし光ファイバー等については、一般単独災害債ということで、国の新たな補助制度は現時点では難しい。
岩泉町については、基本的に応急復旧を進めており、テレビについては、応急復旧ができるところはすでに終了しており、応急復旧に入れないところはBSアンテナを希望者に貸与し、インターネット環境についても仮復旧としては復旧していると把握している。
【斉藤委員】
情報通信施設はまさに生活インフラで、生活に不可欠の大事な課題だと思う。岩泉町では今でもテレビが映らないところがあると言われるので、県は引き続き課長も配置して岩泉町に寄り添ってやっているので、しっかり取り組んでいただきたい。
改めてお聞きするが、災害復旧は3年で終わらせなければならない。あれだけ大規模な事業を抱えて、そこから実施設計・発注と。そういう点で土木職員や事務職員の確保、3年でやりきるという点では切実な課題だと思うが、現段階で来年度の要請と確保数はどうなっているか。
【市町村課総括課長】
発災以降、これまで避難所運営や災害査定などの対応を行っており、3月1日現在で、短期派遣が延べ1631人、中長期派遣3人ということで3名で対応している。
29年度は、道路や河川等の災害復旧事業が実施されるということで、岩泉町からは16人の派遣要請を受けており、現在の確保数は土木職7名となっている。
【斉藤委員】
東日本大震災津波の際にも県内市町村から派遣し、県外からも派遣を受けているので、大震災津波の10倍の被害を受けた岩泉町、現状はまだまだ厳しい数なので、引き続き努力していただきたい。
・特定被災地域公共交通調査事業について
【斉藤委員】
今年度の実績と、来年度の実施計画はどうなっているか。
【交通課長】
28年度においては、7市町村67路線に対し、2億6407万円余の交付決定となっている。
29年度の実施計画については、国において、市町村に対して要望照会しており現時点では未定である。
【斉藤委員】
被災地の状況は、陸前高田市の場合はやっと盛り土が終わりつつあると。全体として、防集など、やむを得ず分散的なまちづくりになっている。
この事業というのは、仮設団地と公共施設などをつなぐことが原則になっており、この仮設は、災害公営住宅が今年度末で8割、来年度末で9割が完成する流れの中で、この1年間で急速に集約され、事業の対象が減少してしまう。一方で、被災地は新たな交通体系を求めている。災害公営住宅や高台団地と中心部などを結ぶと。国の調査事業が、新たなまちづくりに対応できるようなものにしないと、町が成り立たないのではないか。県はどのように対応し国の対応はどうか。
【交通課長】
ご指摘の通り、この調査事業は被災地の交通再建にとって非常に重要な役割を果たしていると認識している。
制度自体については、発災直後の23年から5年間の時限措置で、27年度をもって一旦終了という話になっていたが、国に対して制度の延長を要望し、28年度から32年度まで延長となっている。ただ、中身については、刻々と変わるまちづくりの状況にマッチしているかと言えば、仮設を結ぶという要件が依然としてあり、高台や災害公営住宅といった新たな生活拠点を結ぶ仕組みになっていない。これから仮設住宅も集約されていく中で、新しい生活拠点をうまくつなぐような制度、かつ32年度までとなっているが、もうしばらくの間復興の状況を見ながら延長するといったことも視野に入れながら、国には提言・提案していきたい。
【斉藤委員】
この問題でも国の復興に対する姿勢が示されている。被災地の実態に合わない。32年度まで継続は一本前進で、課長が言うように32年度で済む話でもない。新しい前例のないまちづくりを被災地はしているので、それに対応した交通体系への支援策をぜひ強力に求めていただきたい。
・JR山田線の復旧について
【斉藤委員】
釜石―宮古間の復旧状況、それから新駅も設置すると。山田町では、JRがつくる駅は本当にプラットホーム+α程度で、町では独自に駅舎にさまざまな機能を加味した駅をつくるという話を聞いてきたが、そういう駅舎・新駅の設置、今後の見通しはどうなっているか。
【交通課長】
釜石―宮古間については、現在津波で流失した区間については、JRの東北工事事務所が施工しており、流失していない区間については盛岡支社が工事を行っており、大槌川橋梁などの難工事地区から工事を進めている。JR盛岡支社においては、平成30年度内の開業を目指し、おおむね計画通りに進捗しており、現在は橋脚復旧や盛り土、線路補修などを進めており、復旧工事は順調に進んでいると認識している。来年度においては、まちづくりの進展に合わせて、軌道の工事、電気・通信系の工事に着手し、30年度半ばまでに完成させ、その後半年間かけて信号試験や試運転を行い、31年3月ごろを目途に開業を目指す予定となっている。
新駅の設置については、具体的に動きがあるのは、宮古市において、山田線内の磯鶏―津軽石間の八木沢地区、津軽石―豊間根間の払川地区の2箇所に新駅設置の計画と聞いている。来年度の市の予算案に実施設計費を盛り込み、31年3月までに整備したいという予定と聞いている。
山田町の駅について、復興まちづくりを進めるうえで、駅を中心としたまちづくりは重要であり、山田駅を再建する場所の前には商業施設や災害公営住宅ができてきている。そういった中で、単に駅というだけでなく、観光の機能などを持たせて、駅を中心に交流人口拡大や町民の利便性向上といった施策は重要であり、町からそういった整備の相談を受けている。JRと施工面での協議がこれからいろいろあるので、そういったところをお手伝いできればと考えている。
【斉藤委員】
盛岡―宮古間の土砂崩落による休止が続いているが、工事は順調に進んでいるのか。開通の見通しはどうか。
【交通課長】
昨年9月から本格的な復旧工事に着手しており、具体的には、土砂が崩落した山の所有者である林野庁が、崩壊地域の崖の上の方の土砂を撤去し、そこにアンカー抗を打ち付け崩れてこないようにする工事をしている。この工事については3月までに完了する予定になっており、順調に工事が進んでおり、4月からは下の方の崖をJRが同じようにアンカー抗を施工し、崩落しないようにしたうえで、その下にまだ車両が残っているが、車両の撤去を行い、鉄路の復旧、軌道を直し、その後運行を再開する予定としている。スケジュールとしては、今年秋頃までという見通しが示されており、その後に速やかな運行再開をJRではかりたいという意向が示されている。
・人口減少対策―県内就職率向上の取り組みについて
【斉藤委員】
岩手の創業戦略、2020年までに社会減ゼロを目指すと。きわめて大胆で戦略的な目標だと受け止めているが、知事が1995年が329人だったと述べ、この根拠がよく分からなかったが、91〜93年はバブル崩壊後で、日本経済が落ち込み、東京の有効求人倍率が岩手より低いというときに、外的要因で329人になったと。それ以上の数をゼロにする目標なので、大変なものである。そうした目標を提起するんだったら、それを裏付ける積極的で具体的な方策が示されなかったら絵に描いた餅になる。残念ながら現段階では、社会減ゼロを目指す根拠が示されていない。
特に、岩手で働く―高卒の県内就職率が64.1%と東北でも全国でも低い。この目標が67%程度で、東北の下位グループから脱出できないような低い目標では社会減ゼロどころではない。せめて山形に追いつくような10ポイント以上引き上げるような取り組みをすべきではないか。北陸は県内就職率が90%を超えている。
大学については、今45%前後で、大学はCOC+という大学間連携で55%にするという目標を掲げている。だとしたら、県内の高卒の県内就職率も10ポイント以上、専修学校も10ポイント以上引き上げるような目標を立てて、そのための具体的な取り組みを進めるべきではないか。
【政策監】
県内就職率については、いわて県民計画第3期アクションプランを目指す姿指標として、高卒者については30年度までに66.5%とするといったこと、これについては、過去10年間の最高値に近づけることを目指すといったことで設定したものである。
大卒者については、地方創生推進事業の取り組み効果を勘案し、26年度の実績値45%を30年度までに53%とするということを掲げた。
他県との比較やゼロを目指せるのかといったご指摘もあるが、重要なのは18歳から20大全般の社会減にしっかり手当していくことが重要といった人口ビジョンの分析に基づき、総合戦略を策したところであり、まずはこの目標の達成に向けて取り組んでいきたい。
社会減の内訳を見ると、進学・就職期の転出が顕著であるといったことから、これまでの取り組みに加え、いわて働き方改革推進運動の展開等を通じた長時間労働の是正、正規雇用の拡大など雇用の質の向上、奨学金返還支援制度を活用した大学生等の県内への還流・定着、首都圏の大学生等を対象としたインターンシップなど、若者の県内就業の促進に向けた新たな取り組みを進めることにより、社会減ゼロを目指すという考えである。
【斉藤委員】
第3期アクションプランの後に、ふるさと総合戦略でもっと大胆な戦略が出ている。だとしたら第3期アクションプランで対応できないとはっきりしているのではないか。
そして若年層が減っている。その中で県内就職率を上げなかったら、県内中小企業のもっとも切実な方々が人材不足である。中小企業は県内雇用の9割を占めている。新しい戦略を掲げたら、それにふさわしい政策を具体化することは当然ではないか。
県内高卒の就職率は、高校でばらつきがある。40〜80%と。個別にしっかり取り組んでいけば10ポイントぐらい上げることは可能である。例えば、就職支援員が配置されているが、「就職率向上」が第一義的目標で、「県内」就職率の向上がしっかり位置付いていないと思う。今地元志向があるのだから、地元の元気な中小企業を紹介し、キャリア教育やさまざまな取り組みを強めれば、十分そういう方向を切り開くことは可能だと思う。
社会減ゼロという目標がどれだけ大きな目標なのか。目標を掲げても中身がないということではいけない。ふさわしい対策を求める必要があるのではないか。
【政策地域部長】
県内就職率の向上のためには、さまざまな手法があると思っている。企業の魅力を高めるとか、給料を上げる、地元の企業を知るなど、さまざまあるので、当部のみならず、教育委員会や商工労働観光部など関係部局でもう一度、社会減ゼロという目標の周知を機会を捉えてさらに徹底するようにし、目標に少しでも近づけるように県をあげて取り組んでいく。