2017年3月15日 予算特別委員会
農林水産部(農業部門)に対する質疑(大要)
・東日本大震災津波・台風10号の被災農地と復旧状況について
【斉藤委員】
東日本大震災津波の被害農地の復旧状況と作付状況、復旧となっていない農地の理由について示していただきたい。
【農村建設課総括課長】
復旧対象農地面積653ヘクタールのうち、今年の4月末までに511ヘクタールの復旧に向け現在取り組んでいる。残りの142ヘクタールについては、まちづくり計画等との調整が必要なところがあり、この部分については、現在調整をはかり、最終的な復旧面積の確定に向け取り組んでいる。最終的な復旧面積を確定し、31年春の営農再開をめざすこととしている。
【農業普及技術課総括課長】
29年4月までに511ヘクタールの復旧を見込んでいるということだが、復旧した482ヘクタールに対し、10月の調査だが作付面積452ヘクタールであり、復旧面積の94%にあたる。
【斉藤委員】
142ヘクタールが復旧していないと。丸6年経って、市町村との土地利用計画および農家との調整が必要だと。もう都市計画は決まっているはずで、だから具体的理由を聞いたのだが、かなり煮詰まっているが公表できないのか、煮詰まっていないのか。少なくとも都市計画との関係ではないと思うがいかがか。
【農村建設課総括課長】
いわゆる土地区画整理事業などの復興関連事業計画区域内に散在している農地の土地利用調整の最終的な調整を行っており、農家の最終的な意向が確認できない部分もあり、また部分的に農地を集約しようという構想を持っているところもあるので、そういったところで調整が遅れているところがある。また、防集の残土置き場となっているような部分もあり、それが撤去されるまで復旧工事に着手できないということもある。
【斉藤委員】
台風10号豪雨災害関係で、農業被害額は142億5029万円ということだった。
農地の復旧状況、特に岩泉町の被害農地と災害査定、復旧状況、春の作付の見通しはどうか。
【農村建設課総括課長】
岩泉町の被災農地171ヘクタールのうち約99ヘクタールは国の補助事業で復旧する予定であり、現在発注等を進めている。災害査定については、岩泉町で99箇所査定申請しており、全箇所が査定決定いただいている。査定金額については12億4642万円余になっている。
【斉藤委員】
査定は終わって順次発注していると。それで春の作付見込みは大方どうなっているか。
【農村建設課総括課長】
現在工事を発注しているところだが、岩泉町の被災した農地の復旧にあたっては、河川改修計画と調整するものが多くあり、その作付時期については、農家や関係機関等と協議の上決定していきたい。
【斉藤委員】
小本川・安家川の河川改修計画は住民説明されているので、十分調整できるのではないかと思うがいかがか。171ヘクタール被災して99ヘクタール復旧ということだが、先ほど述べた72ヘクタール分というのは、河川改修との調整なのか、どういう要因なのか。
【農村建設課総括課長】
河川改修計画によって、農地に堤防が入ってくるという構想だが、堤防の位置がどこになるかというのがまだ現地で確定されていないので、線引きをきちんとやらなければならないと思っている。
72ヘクタールについては、市町村事業や県の小規模農地等災害復旧事業を活用して順次復旧を進めている。
・コメ政策の見直し・生産調整廃止への対応について
【斉藤委員】
国のコメ政策の見直しの中身と狙いについて示していただきたい。
【水田農業課長】
平成30年産から、これまで国から行政を通じて配分していた生産数量目標を廃止するということ、コメの生産数量目標に従って生産した農業者に対して交付していた直接支払交付金を廃止する―この2点である。
その狙いについて国は、生産者や集荷業者・団体が需要に応じて、どのようなコメをいくら生産・販売するかなどを自ら決められるようにすることで、経営の自由度の拡大を目指すとしている。
【斉藤委員】
結局、主食であるコメの安定的な生産・供給の責任を国は放棄したということになると思う。
今半減している7500円の措置、これが30年産から廃止されるが、この7500円というのは今年度どのぐらい岩手県の農家に出される額か。
【水田農業課長】
この交付金は、国から直接農業者に交付されるものなので、県を通過しないので詳しい額は承知していない。
国が公表しているのは、27年度において約30億8000万円が交付されたとしている。
【斉藤委員】
生産調整は廃止、交付金も廃止、まさに悪政中の悪政だと思うが、いやおうなく岩手県は、県農業再生協議会を開催し、この対応を協議している。中間報告の中身を示していただきたい。
【水田農業課長】
コメ政策の見直しに的確に対応する仕組みということで検討を進めているところであり、転作を含めた水田農業の推進方針を作成するということ、毎年度県協議会が算定する市町村別の生産量の目安をもとに、市町村や農協等で構成する地域協議会が具体的生産計画を作成し、それに沿った作付を進めるとしている。
【斉藤委員】
どういう計画を検討しているか、これが示されないといけない。
農水省の資料を見ると、水稲作付状況の推移があるが、平成20年は全国で水稲作付面積164万ヘクタール、うち主食用米が160万ヘクタールで、このときは飼料用米が1.2万ヘクタールだった。28年産で見ると、水稲面積161万ヘクタール、主食用米が138万ヘクタール、加工用米5.1万ヘクタール、飼料用米が13.9万ヘクタールとなっている。岩手県になぞらえるとどうなっているか。
【水田農業課長】
28年度における水田の活用状況は、主食用米が47100ヘクタール、加工用米1339ヘクタール、飼料用米が4702ヘクタール、WCS用イネが1608ヘクタール、備蓄米1704ヘクタールとなっている。
【斉藤委員】
平成20年の数値はどうか。
【水田農業課長】
手元に25年の資料があるが、主食用米53100ヘクタール、加工用米663ヘクタール、飼料用米1651ヘクタールなどとなっている。
【斉藤委員】
全国的にも岩手県も、おそらく水稲作付面積の全体は変わらないと思う。主食用米が減って、その分飼料用米・加工用米が増えている。大豆・麦も全国を見るとほとんど変わっていない。
水田の多面的活用というのは、今度の再生協議会で具体化する大事な中身だと思うが、飼料用米だけは特別の手立てがとられたので急速に広がった。他の転作が進まない要因は何なのか。このことを示さないと具体的な計画が出ないと思うがいかがか。
【水田農業課長】
これまで水田を有効に活用していくということで、主食用米と転作作物を組み合わせた取り組みを推進してきた。
コメ政策の見直し後においても、需要に応じた生産は大事なことであり、飼料用米や大豆・野菜の転換を進めていくということで、特に国の助成制度を活用し、飼料用米の団地化、大豆の拡大に対する助成、野菜などの生産拡大に対する助成などに取り組んでいる。
【斉藤委員】
再生協議会の資料を見ると、全体とすれば、自主的な作付目標の提起は必要だと。しかし、県内のコメ生産量がいくらで、系統分がいくらで、系統外がいくらなのか。系統外の人たちが参加するということでないと、全体としてこの調整はうまくいかないのではないか。
【水田農業課長】
県内のコメの生産量のうち、およそ半分程度が全農を中心とした、4分の1ほどが検査を通らずに自家販売などになっているものがあろうかと思う。残りの4分の1ほどが検査を受けて系統を通らずに販売されているものと考えている。
現在さまざまな農業者や系統外の方も含め意見を聞いているが、30年産以降の水田農業推進方針の作成にあたり、さまざまな意見を聞いており、そこでは系統外の方々にも協力いただきながら方針を作っていきたい。
【斉藤委員】
国の悪政の後始末をしなければならないので大変だと思うが、減反政策が廃止され、今までの補助金もなくなるという中で、水田の多面的利用のためには何が必要なのか、具体的に国に要求していくようにしなければいけない。
そして今自力で販売でしている人たちは7500円もらわずにもやっているので、そういう人たちについてもインセンティブがないと、一緒にやろうとならないと思う。そういうことも含めて、国のコメ政策の欠陥を補う積極的な対応・提言が必要ではないか。
【水田農業課長】
コメ政策にかかるさまざまな制度がこれから出てくるかと思う。今後の動向なども見定めながら対応を検討していきたい。
【斉藤委員】
再生協議会は中間とりまとめの段階だが、これを成功させる上で、何が必要なのか。国の責任をどう求めていくのか。
【農政担当技監】
現在県の再生協議会が地域の再生協議会などと協議を重ねており、混乱することなく対応しなければいけないということで進めている。
一方で、かなりの都道府県は、これまでの国の政策に則り、きちんと計画に沿った生産を進めているが、ごく一部の都道府県においては過剰作付のところもある。これに関しては、これまでも国に対して話しているが、やはり全国の都道府県が同じようなベクトルで進まなければ需給バランスはとれないということなので、その部分については国が責任をもってきちんと対応してほしいということで常々申し上げており、つい先日も国のキャラバンがあったが、そこでも述べている。
その上で、我々として、やはり水田を有効活用した農業振興を図っていかなければいけないということで、コメはもちろん、水田を有効活用できる高収益の野菜生産といったものについても、実際収入を見込めるということも分かってきているので、いろんな条件はあるのだが、そうしたことをトータルで水田を使う形の農業を考えていかなければいけないということで、水田活用の推進方針に盛り込もうとしているところである。
コメに戻るが、県内を見ても、系統の生産者だけでなく系統外の生産者も一緒に取り組まなければいけないとなっており、そうだと思っているので、今いろいろ話し合いをする中には、そのような方々にも入っていただいており、いろんなご意見を聞いている。その意見を吸い上げる形で方針を作り上げるので、そのような系統外の方々にもご協力していただくということで考えている。
基本的には、農業者の所得が1円でも上がるようなことを常に考えていきたい。
【斉藤委員】
朝日新聞でもコメ政策は「歴史的転換」だと。日本の農業政策は歴史的転換の時期である。それに対して、国にもものを言うような対策をぜひ考えていただきたい。
・農業競争力強化プログラムについて
【斉藤委員】
国会に提案されている農業競争力強化プログラム、8本の悪法について県の受け止めはどうか。
主要農作物種子法案は、都道府県の品種開発・普及を廃止し、企業に売り渡すものである。
収入保険は、青色申告の農業者に限定し、農産物価格が下落すれば補償基準は下がると。アメリカの収入保険とも違ったものである。
畜産経営安定法「改正」案は、生乳の安定供給を脅かす。
TPPは頓挫したが、TPP体制下の日本農業の根本的転換を目指す代物ではないか。県はどう受け止め、どう対応しようとしているか。
【農林水産部長】
農業をめぐる劇的な動きが出ているが、まだ詳細な中身が示されないものが多く、それを今分析に努めている。本当に本県農業にメリットがあるのかないのかを見極め、デメリットがあるのならば当然ながら国に対して改善を要望していくということで今後具体的に動いていきたい。