2017年3月15日 予算特別委員会
農林水産部(水産部門)に対する質疑(大要)
・漁業・水産業の復興の現状について
【斉藤委員】
漁船、定置網、養殖施設の復旧状況について、震災前と比べてどこまで復旧しているか。
ワカメ・コンブ・カキ・ホタテの生産量・生産額は震災前と比べてどこまで復旧しているか。
【水産担当技監】
漁船は、震災前14278隻にたいし稼働可能な漁船は10592隻・74%。定置網は、震災前351ヶ統にたいし264ヶ統・75%。養殖施設は、26514台にたいし17428台・66%である。
28年度のワカメ養殖生産量は14900トンで震災前対比67%、金額は36億5400万円・87%。コンブ生産量5200トン・46%、8億4400万円・56%。カキ生産量は12月までで剥き身生産量188トン・46%。2月までのホタテ貝養殖は3100トン・56%、15億6000万円・101%となっている。
【斉藤委員】
だいだい7割前後まで全体とすれば復旧してきたと。
深刻なのは、主要魚種―サケ・サンマ・スルメイカが今年は激減だった。この現状と主な要因を示していただきたい。
【水産担当技監】
サケ生産量8045トンで震災前対比33%、62億円・70%。サンマは21872トンで42%、40億円・116%。スルメイカ4545トンで25%、25億円・76%となっている。
これらは震災前を下回っているが、原因としては、サケは震災後の稚魚の放流数が少なかったこと、サンマ・スルメイカについては本県沿岸に長期にわたり高水温が分布しており、サンマやイカが近寄れず良好な漁場は形成されなかったことが大きな要因と考えている。
【斉藤委員】
サケは北海道も落ち込んだと聞いているが、岩手との関連性はないのか。宮城はどうだったのか。
【水産担当技監】
国の研究機関の調査によると、北海道の太平洋岸の漁獲と岩手県沿岸の漁獲の動向はリンクしていると報告されている。
宮城県も、やはり北海道・岩手がかなりリンクしているような報告になっている。
【斉藤委員】
サケは県南が特に激減しており、県北は以外と前年比を超えたところもあるということで、海水温の水域の影響が大変大きかったのではないかと。
今後の見通しとしてはどうなるか。
【水産担当技監】
サケについては、沿岸の暖水塊が影響するのは、漁獲される場所に大きく影響するので、今回の場合は南が暖かく北の方に回っていったと考える。今後の見通しは、サケは震災後の放流数がまだ少ないということもあるので、しばらくは減少傾向ではないかと水産技術センターでは見ている。
スルメイカについては、国の調査では、資源が少ないということもあるので、来年度もあまり好転は見込めないのではないか。
サンマについては、現時点では国の長期の見通しが出ていないので、出た段階でお話させていただきたい。
【斉藤委員】
主要魚種が激減して一番影響を受けているのは水産加工だと思う。水産加工の復旧状況、事業再開率、出荷額の震災前との比較も示していただきたい。
特に、今年これだけ主要魚種が激減して、原材料が倍近く上がっている。これが水産加工にどのように影響を与えているのか。県としてどう対応しているか。
【水産担当技監】
復興局の28年8月時点での被災事業者復興状況調査では、被災事業所の86%が「事業再開または一部再開」としている。64%が「ほぼ震災前の状況に復旧した」となっている。
今年の水産資源の減少による影響だが、やはり原料が入らず加工施設をフル稼働できていないという状況がある。県としては、水産技術センターが中心となり、水揚げ状況の情報提供を各加工業者に出しており、また加工原料が多様化するというか、今まで使っていた原料を別なものに変えるということになると、さまざまな機械設備も変更しなければならないということで、それらも国の事業を導入して補助するという措置をとっている。また遠隔地から原料を調達するという状況にあっては、かかり増し経費を、国の事業を使って助成するという対応をしている。
【斉藤委員】
水産加工が壊滅的な被害を受けながら、86%が事業再開、64%が震災前の状況に回復しているのはすごい努力だと思う。ただ、今年の原材料高の影響が8月時点での調査には反映されていないと思うので。そしてグループ補助を使った方々は、ちょうど5年目以降から返済が始まる。そういう意味では、二重の厳しさに直面するので、しっかりした対応をしていただきたい。特に水産加工では、700〜800億円ぐらいの製造出荷額となっているので、まさに沿岸の基幹産業、人材の確保を含めて手厚い対策を求めたい。
・サケ資源の公平配分をめぐる裁判について
【斉藤委員】
公判の審理状況と論点、今後の見通しについて示していただきたい。
【漁業調整課長】
これまで6回ほど口頭弁論が行われてきた。県の不許可処分の理由の適法性が主な論点だと認識している。
今後は、4月20日に第7回口頭弁論が予定されている。その後、原告および被告の双方から申請のあった証人に対して尋問が行われるものと想定している。
【斉藤委員】
この裁判は、小型漁船漁業の方々が「復興のなかで獲る魚がない」ということから始まったもので、小型漁船漁業の方々の経営をどうやって維持するかということが根本で問われていると思う。この点について、裁判に関わらず、県はどう対応しようとするか。
【漁業調整課長】
小型漁船漁業の振興についての県の考え方だが、水産資源がかなり自然環境に左右されるものであり、場合によっては広域的な漁場管理も必要になる。
そういった意味で、水揚げが不安定であるので、県としては国の資源管理利用経営安定対策事業を、あるいは漁業経営セーフティーネット構築事業を導入し、経営の安定化を促進している。事業の要件となる漁協の資源管理計画の策定を支援し、漁船漁業者の収入安定対策に取り組んでいく。