2017年3月21日 東日本大震災津波復興特別委員会
第3期復興実施計画案に対する質疑(大要)
・平成31年度以降の復興計画について
【斉藤委員】
1ページのところで、被災者の人間らしい「暮らし」「学び」「仕事」を確保し、一人ひとりの幸福追求権を保障すること及び犠牲者の故郷への想いを継承することを、基本方針を貫く二つの原則と位置づけると。これは大変大事なことだと思う。
そして、「平成31 年度以降は、次期総合計画において、『東日本大震災津波からの復興に向けた基本方針』に位置付けた二つの原則の考え方を引き継ぐとともに、復興の取組を明確に位置付け、国が平成32
年度までと位置付ける『復興・創生期間』と連動し、市町村における復興の取組の進捗との整合性に十分に配慮し、市町村への継続的な復興支援を行いながら、被災地の未来のあるべき姿を実現する取組を進めていく」と。本会議での答弁は、「平成31年度以降の復興の推進にあたっては、国が平成32年度までと位置づける復興創生期間と連動し、市町村における復興の取り組みの進捗との整合性に十分配慮する必要があることから、復興に関する県の計画については、県民的な議論を通じて作成していきたい」と。本会議での答弁と、実施計画の中で、総合計画の中に震災復興編という形で盛り込むのか。実施計画を見ても、31年以降に事業が継続するものがたくさんある。市町村の事業ももちろん残る。そこの方向性を明確する必要があるのではないか。
【復興推進課総括課長】
31年度以降の取扱については、計画上は次期総合計画において2つの原則の考え方を引き継ぐことと、復興の取り組みを明確に位置づけるというところで表現はおさえている。また、本会議で知事が述べたとおり、復興に関する県の計画については、県民的な議論を通じて作成していくものと答弁している。どう位置づけるかというところは、まったく現時点では未定だが、2つの原則の考え方を引き継ぐことと、復興計画を県民計画においても明確に位置づけると、この2つだけは明確に決まっているが、具体のところはこれからの議論ということになる。そういう趣旨である。
【政策推進室調整監】
31年度から始まる次期総合計画だが、今年度新たに総合計画審議会20名の委員を新たに選任している。先月開催した審議会では、第3期復興実施計画案を示すとともに、今後10年の岩手の目指す将来像についての議論を始めており、こういった議論を通じて次期総合計画においてあり方を盛り込む内容を決めていくということになる。
【斉藤委員】
今の2人の答弁は少しニュアンスが違って、本会議での知事の答弁とも違うので、実施計画では明確に「次期総合計画において」と書いている。国が10年間、市町村でも10年間にしてるところもある。そしてこの実績計画の中でも、平成31年度以降引き続き事業を実施するものがかなりある。そこの考え方を明確にして、復興事業は10年間で終わるものではないので、県とすれば、国に対し、平成31年度以降の復興のあり方も提言していかなくてはならない。そういうしっかりした足場を築くような31年度以降の復興計画をしっかり定める必要があるのではないか。
【復興局長】
復興計画については、復興基本計画において、まずは迅速な復興の推進を図る必要があるということ。平成31年度から次の総合計画がスタートすることが想定されているので、策定した23年度の時には、そのことを念頭に置いて計画期間を8年間と決めているものである。
31年度以降の部分については、いずれそこで終わりではないということで、次の総合計画を見据えてということで今の復興計画ができているので、次の計画の中にいずれ位置づけると。その位置づけ方を具体的にどのように位置づけるのか、復興編という形になるのかどうか、期間をどうするかなどいろいろ論点がさまざまあると思うので、それをこの2年間で新しい総合計画をつくる、それから復興計画を推進している復興局という立場、それぞれ十分連携を図りながら決めていきたい。
【斉藤委員】
私が強調したように、10年間は国の復興期間。同時に、10年間だけでは終わらない、継続してやらなければならない課題もある。だから、県として国に対してきちんと政策提起や問題提起できる足場をつくるような31年度以降の復興計画を検討していただきたい。
・第3期復興実施計画の考え方について
【斉藤委員】
16ページで、社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)の観点に立った取組の展開が重要だと。これは大変大事な視点だと思う。被災者に寄り添って、一人一人の命と生活の再建を進めると。自治体で一番大事なのは、被災者の命と暮らしを守ることである。これは自治体の使命なので、そういう進め方として社会的包摂を打ち出したことは大変重要だと。
そこで、仮設住宅や災害公営住宅での高齢者・要支援者の見守り、絆・コミュニティーの確立の問題だが、読売新聞の報道で神戸市の取り組みが紹介されていた。1997年から高齢世帯支援員を派遣してきたと。2006年から復興住宅などに設置した「安心健やかルーム」に、1人〜2人の見守り推進員を配置し、今も復興住宅42箇所53人が常駐していると。大事なことは、この支援員が、民生委員や自治会等と協力して、週3回復興住宅の空き室を活用した「健やかサロン」を行っている。阪神大震災後も、今もこうした形で取り組まれている教訓をしっかり受け止めて、6年が経過した中で、災害公営住宅での要支援者の見守りは一番重要な時期だと思う。市町村は、全国から応援の職員を受けて余裕なく頑張っているが、要支援者の命を守るという点で、こうした阪神大震災の今も続く教訓をしっかり生かすべきではないか。
【生活再建課総括課長】
基本的には、恒久住宅へ移行してそれで支援が終わりという認識は持っていない。やはり移行段階においては手厚い支援が必要だと考えている。この計画にもある通り、引き続き社会福祉協議会と連携し、生活支援相談員を配置するほか、市町村事業になるが、被災者支援総合交付金を使った支援員による見守り体制を継続していくということに計画上位置づけている。
また、阪神・淡路大震災の事例をご紹介いただいたが、阪神・淡路大震災の方からお聞きしたのは、支援員と人の関係になってしまうところがあるので、支援員は必要だが、地域でいかに見守り体制を構築していくか、それも考えた方がいいというアドバイスもいただいているので、そちらにも力を入れるべく、29年度は市町村へのコミュニティー活動支援事業を新規事業で盛り込んだ。
【斉藤委員】
災害公営住宅は、121団地のうち集会所があるのは72箇所で、だいたい一定規模の災害公営住宅には整備され、支援員の事務室もあると。これは阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて整備した。阪神・淡路大震災の復興住宅には今も支援員を配置して、今でもコミュニティーづくりと一体で行っている。専門家の研究報告書でも、健やか安心サロンの取り組みを評価し、東日本大震災の取り組みとも連動して生かすべきだと提言もしている。それでも阪神・淡路大震災では、22年間で1195人の孤独死を出してしまった。そういう痛切な教訓をしっかり学んで東日本大震災津波でも生かす必要がある。
・心のケアの中長期的な取り組みについて
【斉藤委員】
予算特別委員会で、子どもの心のケアの受診が急増していると指摘した。実施計画を見ると、相談もかなり増加する計画になっているのではないかと思うが、この取り組みを第3期復興実施計画ではどう進めるのか。受診ということになると医療行為になるので、その財源はどういう財源か。
【保健福祉室企画課長】
現在、岩手医大に委託し、矢巾のセンターを中心に、巡回相談等をしながら受診しており、増加傾向にいる。
財源については、現在国庫10分の10ということで、診療行為以外については、復興創生期間については国で10分の10をみるということで対応しているので、受診については診療行為なので、通常の診療行為のルールにしたがいやらせていただいている。
いずれ大人もそうだが、子どもについても心のケアについては中長期的な取り組みが必要と認識しているので、財源確保については、復興創生期間中においても国の方に働きかけていきたい。
【斉藤委員】
受診行為は、県の医療費免除制度で対応しているのだと思うので、これは大変重要な役割を果たしていると。そしてこれはまさに31年度以降も継続して進めなければいけない課題だと思う。
・いわての学び希望基金について
【斉藤委員】
奨学金給付事業、小学生の入学者に一時金を支給すると。被災児童就学支援事業も、小中の入学者に一時金を支給すると。この制度を進めることは大変大事だが、入学準備金というのだったら、入学前に支給するようにすべきではないか。学びの希望基金含めてどうなっているか。
【教育企画室企画課長】
大きく分けて、就学援助と学びの奨学金に分かれるが、就学援助については実施主体が市町村で、市町村でそれぞれ定めており、これまでのところ一部の学校を含めて入学前に支給しているのが4市町村、沿岸では久慈市・野田村となっている。いずれ市町村が実施主体なので、一方で入学準備金ということで、入学前に必要な物品の購入に充てられるという性格もあり、4市町村ということだが入学前に支給する市町村が広がってきているので、こういった支給実態など必要な情報提供はしていきたい。
学びの奨学金だが、小学校入学時に一時金として支給している。現在は、入学後の支給になっている。入学された小学校で手続きをしていただき、市町村教委でまとめ、県教委に申請していただくという手続きになっており、そういった関係で入学後の支給になっている。ご指摘の通り早期に支給すべきというのはその通りなので、手続き面も含めて早期に支給できるように考えていきたい。
【斉藤委員】
国も、入学前の就学援助金の支給を検討すると前向きであり、被災地でこそいち早くやっていただきたい。
・被災者の住宅再建への支援について
【斉藤委員】
県の住宅再建支援事業、2年間で1679世帯が支給対象になっている。ただ、1月末の仮設暮らしの方々の意向調査を見ると、6100世帯のうち3534世帯が「自立再建」となっている。そういうときに、この1679世帯というのは半分にもいかない。なぜこうなっているのか。2年間で自立再建がこの程度しか進まないということか。見通し、目標設定は正確なのか。
【生活再建課総括課長】
この考え方だが、実は事業を始めるときに、計画を9518世帯と見込んでいた。したがいこの1679世帯というのは、28年度の2月補正後の実績までの分を差し引いた数になる。ご指摘の通り、意向調査の状況で見ると、2月補正は若干数を多めにみているが、それでも現時点で1000世帯程度は不足する可能性がある。したがいこれについては、いずれ被災者間で不公平感があってはならないので、財源等含めて29年度協議していきたい。
【斉藤委員】
被災者の意向と整合性が保たれるようにやっていただきたい。
・被災地域の商業機能の回復、持続的な発展について
【斉藤委員】
被災地域の商業機能の回復と商店街の持続的な発展を図る取り組みは、まさにこれからが正念場である。第3期復興実施計画では、商業再生アドバイザーの派遣がわずか20人日である。数m〜10mかさ上げして新たに中心市街地・商店街を形成する、その周りには住宅がまだ再建されていない中で、本当に前例のない取り組みをしている。さまざまな専門家が一緒になり経営指導や交流人口の拡大など、経営努力だけでは成功しないと思うので、まさにまちづくり、交流人口をどう増やすか、町中にどう人を呼ぶか―。交通ネットワークの関係もあると思う。そういう意味では、商業再生アドバイザーの派遣数だけでは不十分ではないか。もっと総合的な、地域それぞれにチームをつくるような支援体制を検討すべきではないか。
【経営支援課総括課長】
事業再開した事業者の経営はこれから非常に重要になってくる。商業再生アドバイザーには、それぞれの市町村に限って専門家を派遣するものと、商店街や共同店舗等の運営管理者と商工団体とまとまってのセミナーという形で実施するものがある。それぞれの内容に応じていろいろな方々に参加していただいている。こういうアドバイザーの派遣はこの通りだが、この中でさらに具体の相談が必要といったものについては、各専門機関から改めて派遣したり、国でやっている事業もあるので、そちらを使っての派遣もしている。それから、債権買い取りなどを行った事業者の支援もあるので、関係団体と連携し個々に入っているものもある。特にまちづくりの関係は、市町村や商工団体が地元でどのようにまちづくり・商店街を形成していくかということが重要なので、引き続き連携をとって進めていきたい。