2017年7月5日 商工文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・県立葛巻高校の学級減の見直しについて
【斉藤委員】
来年度の学科改編・学級減の計画が8月1日の商工文教委員会に提案される予定である。
6月14日に、葛巻高校、葛巻町役場に行ってきた。葛巻高校は今年51名の入学生ということで、今までになく入学生が増えて2学級規模を維持したと。これは高校自身の努力もあるし、町は1000万円の予算を葛巻高校に支援しており、スクールバスや通学補助、大学受験のための塾の受講費用などの支援をしている。こうした取り組みが効果を発揮しての51名の入学者になったのではないか。こうした取り組みについて、どのように受け止め評価しているか。
【高校改革課長】
さまざまな生徒確保や高校の魅力づくりに向けた取り組みをしており、通学支援や、山村留学といった形での県外からの募集なども取り組んでいる。
再編計画においては、基本的には計画に則った対応を考えているが、計画の中に、地域の中学校の卒業予定者数だとか、志願者の状況、さらには地域の取り組みも勘案して決定することとしているので、葛巻町の取り組みの成果のうえにそういった人数になっているものと考えている。
【斉藤委員】
葛巻高校の進学の取り組みに大変驚いたが、今年国公立大学に8名合格、8名希望して8名合格している。この生徒たちは、去年の夏に予備校の講習を1週間盛岡で受けたそうだが、それも町の支援で。就職ももちろん100%だが、少ない卒業生の中でこれだけ国公立大学の合格者を出すのは、進学の指導でも就職の指導でも、町も支援しているし学校の先生も大変頑張っていると聞いてきた。
くずまきワイン工場の支援で、毎年ドイツ研修を行っており、去年6名が行って見聞を広めている。今年の入学者にも、大学に入りたい、ドイツに行きたいという希望を持って近隣からも入ってくる。本当に魅力ある高校づくりがされてきているのではないか。
山村留学の話があったが、今年3名が入学し、3年間で6名となっている。いま町は学生寮を整備すると。いまは遠い離れたところにあり、自転車で通えるようなところに町として整備したいと。
さらに、町の学習塾を高校生を対象にやりたいと。これは北海道の自治体も学習塾をやっていて、やはり入学生を増やしており、実績もあげている。こういう全国的な取り組みも学んで、大変意欲的に、地域に誇れる学校づくりになっているのではないか。
この点で、葛巻町と葛巻高校とどういう意見交換をしているか。8月1日には具体的な計画が出されるが、おそらく提案される前に教育委員会議での合意の上で出されると思うので、この教育委員会議はいつ予定され、この間教育委員会議での検討はあるのか。
【高校改革課長】
意見交換については、昨年度計画策定後に、葛巻町だけではないが県内全市町村教委・高校を回り計画の内容について理解いただくようお願いした。今年度に入ってからは、4月中旬、6月中旬に、教育長や町長とお会いし、ご紹介あったような取り組みについてもお話いただき、町からは「現在の2学級を維持していただきたい」「長期的なスパンで考えていただきたい」という旨の要請をいただいた。
今後の予定だが、8月の商工文教委員会において来年度の学級編成について審議いただきたいと思っており、その前に7月中旬に教育委員会議定例会議があり、まだ議題は確定していないが、その場で審議していただくということになろうかと思う。
【斉藤委員】
葛巻高校は来年70周年である。歴史の節目を迎えるときに、まさか学級減などという計画は出してはならないと、実績からいってもそのように思う。教育長にも所感をお聞きしたい。
【教育長】
70周年というお話があった。我々は当然学校の設置者であるので、そういう節目があるということも十分踏まえつつ、これまでの入学者の状況、小学生・中学生の在籍状況等さまざまな面を考慮し再編計画を策定した。
葛巻町においては、学校の教育は地域振興の中心的な存在だという思いもあり、産業振興等含め消滅してたまるかという思いで、さまざまな取り組みをなさっていると承知している。
学校自身も、いずれ魅力的な学校をつくろうということで頑張っており、町との連携のもとに、お互いに協力しながら今があると思っている。
ただ、51人ということだが定員80人で、大きな欠員があることもまた事実である。ただ、近年の状況を見ると、入学者が増えたということは大きな成果ととらえる必要があると。その点も含めて現在検討を行っている。さまざまなファクターを含めて教育委員会の中で議論し、全体的な高校再編計画をしっかり進めるということも含めて取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
葛巻高校については、連携型の中高一貫教育もやっていて、英語・数学では、先生方同士が交流してやっている。そういう点で、ぜひ地域と学校の努力と成果を踏まえたものにしていただきたい。
・矢巾町の中学校2年生の男子生徒の自殺について
【斉藤委員】
今日7月5日は、矢巾町の当時中学校2年生の男子生徒が、いじめを苦に自殺をしてちょうど2年になる。新聞報道でも、特に矢巾町教委の取り組みが紹介されている。矢巾町では、町内各小中学校ごとのいじめ対策委員会を毎月定例化し、子どもや保護者から寄せられた情報の共有化などに取り組んでいる。その結果、4月・5月のいじめ認知件数は、前年度倍の32件と、感度が高くなっているのだと思う。さらに校長会も毎月開催して取り組んでいる。当該中学校では、丸2年が経過してさまざまな講演会や集会なども行われたようである。
東北各県では、引き続きいじめ自殺事件が続発している。岩手県は2年連続という深刻な事態があった。いじめ自殺というのは、ある意味学校教育の中では、事案が発生・把握した場合には最優先で取り組まれるべき、子どもの命、安全第一という取り組みが一番大事だし、そのためには、学校・教職員が情報共有できる体制が確立されることが必要だし、父兄の協力も必要だと思うが、この点について、この2年間でどのような取り組みが行われ、どういう改善が行われたか。
【生徒指導課長】
ご指摘の通り7月5日で当該中学校の事案から2年になる。矢巾町の取り組みはもちろんだが、滝沢市・矢巾町と2年連続で発生し、特にも矢巾町の事案が発生してからは、28年度の取り組みの重点としては、教職員のいじめの認知を積極的に行うこと、情報共有を行うこと、組織で対応することと。これに関わっては、昨年度県独自でフォローアップ調査をしたところだが、この3点に関わっては、ほぼ100%に近い実施(県内小中高)となっている。
そして、滝沢市・矢巾町と県での調査を分析し、およそ9つのカテゴリーに分けたが、その中でも特に今年度については、自殺予防という部分の教育、関係者への適切な情報提供と連携、子どもたちの取り組みの推進―の3つを掲げ、県立学校長会議や小中学校の校長研修講座等において、その部分の周知徹底を図っている。
【斉藤委員】
学校の先生の長時間労働が背景にあり、先生に何でもお願いするというのは酷なところが客観的にはあると思うが、しかし、学校では子どもの命・安全という立場を徹底して貫くべきである。それが矢巾の最大の教訓といってもいい。
改めて矢巾町の調査報告書概要版を見たが、担任に対して生活記録ノートで何度も、いじめのことや「死にたい」と訴えながら、担任が対応にとどまったと。これは本当に残念なことで、その背景には、気軽に相談できないような学校側の体制があったと思う。その点では、学校全体がいじめ問題が最優先課題の1つという形で、緊張感を持って取り組む必要があるのではないか。
調査報告書は、16ヶ月の徹底した審議を通じてまとめられたものだが、結論が「いじめと希死念慮および自殺との関係」というところで、「いじめが希死念慮をもたらした少なくとも1つの原因になっていたと認定する。しかしながら、最終的な希死念慮の表明とみられる記述は必ずしもない。自殺の主要な原因を特定することは困難であり、いじめが自殺に対してどの程度影響を与えたのか断定することはできないと認定した」と。徹底した調査をやって、結論として、いじめの原因を断定できなかったというのは大変残念な結果だった。逆にいくと、いじめがなかったらこの子どもは自殺したのだろうかと思う。1年生から2年生にかけて、生活記録ノートでいろんな訴えをしていながら、直前の3日間の記録がないとか情報がないとか、それだけで「断定できなかった」というのは、被害者の立場に立ったものなのか。今日の新聞報道では、「いじめを苦に自ら命を絶ってから―」と書いている。調査報告書からいけば本当はこう書けない。
滝沢市もある意味突発的な事案だったが、それでも滝沢市は「自殺の一因になった」という解明をした。そういう意味では、第三者委員会のあり方は全国的にも問われている。矢巾町は矢巾町で努力した結果ではあるが、全国的なさまざまな形の第三者委員会の報告があり、さらにその報告が覆るという例もたくさんある。そういう取り組みも踏まえて、今後の第三者委員会の取り組みはさらに発展するように求めたい。
・教育勅語の問題について
【斉藤委員】
突然、安倍内閣が、教育勅語を学校教育で使っていいという答弁書を閣議決定した。驚くべきことである。教育勅語は、昭和23年の衆参両院で、「教育勅語排除に関する決議」「教育勅語失効に関する決議」があがっている。その中身は、根本理念が今の憲法に合わないと。「主権在君」という天皇のための道徳を説いたのが教育勅語であり、基本的人権や人格の完成を目指す憲法や教育基本法には相反するということでこういう決議が出された。
こういう教育勅語の復活を許してはならないと思うが、この点についてどう考えているか。文科省から通知なり連絡はあるか。
【義務教育課長】
教育勅語に関しては、現在小学校・中学校・高校で使用される社会および地理・歴史教科書において、当時の時代背景を表す歴史的事実の1つとして取り上げている。
3月31日に閣議決定された答弁書では、「教育勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導は不適切である」とされたと承知している。
現在の我が国の教育指針は、委員ご案内の通り、憲法の精神を踏まえた教育基本法に基づいたものとなっており、本県における学校での教育勅語の取り扱いについても、そのような経緯等を十分に踏まえる必要があり、社会科等の授業の一資料として取り上げる場合であっても、社会的事象の理解を深めるために取り扱うものと考えている。
なお、これに関する文科省からの正式通知等についてはきていない。
【斉藤委員】
安倍内閣の異常性を示すものだと思う。国会の決議は一体どうなってしまうのか。そういう厳しい批判が先の都議選でも指摘されたと思う。
最近、教育17学会の会長が声明を出した。「教育勅語使用に反対する声明」である。17学会はほとんどの教育関係の学会で、今まで声明を出したことのない学会も全て出した。それほど危機感を持ってこの問題を対応されている。教育長の見解もお聞きしたい。
【教育長】
具体的には課長が述べた通りだが、教育長の私の考え方を申し上げさせていただきたい。
この教育勅語の問題がクローズアップされた、ルーツはやはり森友学園が大きかったと。非常に違和感を覚えた。この教育勅語は、明治23年に天皇主権のもとで学校教育のあり方の根本基準として進めるということになり、結果的にこれは戦争に突き進んだというようなことになったのかなと。お話あった通り、衆参両院で昭和23年に排除・失効決議がなされているということであり、いわゆる現在の教育の基本というのは、憲法・教育基本法ということであるので、これを根本的に議論するようなことは現在の日本の社会の実情に合っていないと考える。
【斉藤委員】
立派な答弁だった。ルーツが森友学園というのも重要で、あれが「素晴らしい教育」だと言って名誉園長にまでなった方がいるわけで、本当に許されない。
・学習指導要領への銃剣道の明記について
【斉藤委員】
学習指導要領の中で、銃剣道が今度入れられた。驚くべきことで、銃剣道なんていうのは今まであったか。
今日の赤旗社会面に出ているが、自衛隊の銃剣道の訓練中に死者が2名出ている。自衛隊が銃剣道をやってはならないとは言わないが、こういう銃剣道を学校の活動の中で認めるということがあり得るのか。大変違和感を感じたが、銃剣道は県内の学校でやられたことがあるのか。これをやるような体制はもちろんないと思うし、やる必要もないと思うがいかがか。
【保健体育課総括課長】
銃剣道については、今回の学習指導要領で例示として示されたものである。かつては、柔道・県道・なぎなた等は例示されたが、新たに銃剣道が示された。
本県では、銃剣道を学生時代にやったことがある方が銃剣道の指導者講習会に行き、それを受けて、授業をやってくれということで、5、6時間やったという事例はあるが、それを年間続けてやっているところはない。
【斉藤委員】
銃剣道を今の学校教育の中でやるという時代錯誤はあってはならない。そして実際に、自衛隊の訓練でも死者が出ているので。
・いわての学び希望基金について
【斉藤委員】
今日の新聞報道で、いわての学び希望基金について、約88億円の基金が全国から寄せられ、これは大変貴重なことだと思う。この基金が、本当に震災で困った方々のために使われることは大事だと思う。
この新聞報道の中で1つ気になったのは、2017年度の予算編成過程で、給付対象を大学院生まで広げるよう県教委は要望したが、財政課から認められなかったということである。いま大学院というのは、岩手大学の工学部でも半分以上は大学院へ行くので、大学院というのは特別な学生が行くというものではない。県教委が予算要望したのは正しかったが、なぜ財政課は断ったのか。逆に、震災と関係のないところに基金が使われてはならない。もっと被災者の学習教育の保障に最大限使われるべきだと思うがいかがか。
【企画課長】
いわての学び基金を活用した給付型奨学金について、昨年度、2017年度の予算編成過程で、県教委としては大学院生も支給対象にならないかと財政課と折衝したところである。具体的な人数等が分からなかったといったようなところについて、具体のアンケート調査等をやっていなかったので、そういったところに議論として入り込めなかったということもあり、財政課の方では来年度の要求に向けて引き続きやっていくということで、今年度の予算については見送ったところである。
今年度に入り、対象となる学生にアンケート調査を実施しており、一定の人数はあるものと把握しているので、こういったデータをもとに来年度の予算要求に向けて協議したい。
基金の趣旨については、お話あった通り、被災地の子どもたちが社会人になるまで息の長い支援が必要だと考えているので、基金の趣旨や寄付者の意向を踏まえながら、被災地のニーズに対応できるよう来年度の予算編成に向けて復興局等とも協議しながら必要な事業を行っていきたい。
【斉藤委員】
当初どのぐらいこの基金が集まるか分からない中で、遺児・孤児が対象だと。その奨学金もこの間拡充されてきたのは良かったと思う。同時に、一定の88億円という善意が集まった中で、遺児・孤児に限定するだけでいいのかということもあるのではないか。被災者という概念はもっと広いので。被災者の低所得者など、そういうところの子どもたちの大学進学・専門学校への進学などの補償というのも対象として検討する価値があるのではないか。ただ広げるだけでなく、教育の保障というのが学びの希望基金の最大の使命だと思うので、そういう検討をぜひして、必要なところにはきちんと積極的に活用できるようにしていただきたい。
【企画課長】
学びの希望基金の活用にあたっては、遺児・孤児の方々に対する支援を優先的に考えて進めてきたというところで、寄付をいただいた方々の意向もまずはそこに―という意向があったものと考えている。
また、震災から時が経ち、さまざまな課題も出てきており、学びの希望基金の活用にあたっては、寄付者の意向に寄り添うことも重要だと考えており、ただ、条例上の範囲の中で支援するということで考えているので、今後関係部局間での調整も必要になるかと思うが、いずれ県教委としては、被災地の子どもたちが未来に向かって成長していけるように、教育環境をしっかりと整備していくことが必要と考えているので、関係部局と協議しながら必要な事業を行っていきたい。