2017年7月5日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・岩手県の若年者雇用動向調査結果等について
【斉藤委員】
大変大事な実態が浮き彫りになった。1つは、県内学生の地元志向が高いと。高校生で見ると72.3%が県内に就職したいと。大学でも41.8%である。高校生の希望がはっきりした中でどう応えるか。県内の高校生の県内就職率は低い、県の目標も低いと私は一貫して述べてきた。今年3月末の卒業生は66.3%と上がったが、岩手県の目標は平成30年までに66.5%である。努力しなくても達成してしまう。66.5%というのは、東北6県の平均が71%なので、それよりも低い目標だったら取り組みにならないのではないかと指摘してきた。
県内、特に高校生は72.3%が県内に就職したいと。この希望に応えて、県内就職率の目標をせめて10ポイントぐらい思い切って引き上げるという戦略を掲げて取り組まなければ、真剣な取り組みにならないのではないか。
【雇用対策課長】
第3期アクションプランにおける目標値は、26年度の63.4%を、過去10年間の最高値67.6%に段階的に近づけることを目指して設定したものである。28年度においては、岩手労働局の公表では、5月末現在で66.3%になっており、28年度の目標値である65.5%を0.8ポイント上回ったところである。
なお今回の調査では、高校生以外の在学生も含めて、本県出身者の約7割が県内就職を希望しているので、県内就職割合を高めるポテンシャルは十分にあると感じており、希望がかなうように、県内就職割合の向上に向けた取り組みを一層進めていきたい。
【斉藤委員】
質問に答えていないのだが、目標が低すぎる、これでは取り組みにならないと。平成30年度の目標が66.5%、県内の高校生が72.3%県内就職を希望しているのに、その実態よりも低い目標である。東北6県の平均はすでに71%、山形は78%、宮城は約80%である。
本会議で大事な議論があったが、社会減3700のゼロを平成32年度までに目指すと。社会減で一番多い転出は、大学進学と就職の時である。この時の県内就職率を高めることをしなかったら社会減ゼロは達成できない。かなり大胆な目標を掲げているが、その一番の根拠となるべき県内就職率についてはまともな目標がなく一番の矛盾である。
学校に就職支援員を配置しているが、就職支援員はまじめにやっていると思う。就職率100%やっていることは立派である。今までは、やはり県外でも優良なところに早く就職を決めたいというのが就職支援員の一番の目標で、これは悪いとは言わない。しかし、県内の実情、高校生の希望からいったら、現状からさらに10ポイント県内就職率を高めようと、そういう目標、意識性をもってやらなかったらいかないと思うがいかがか。
【商工労働観光部長】
この議論については、前回もさせていただいたが、まさに今回の意識調査結果を踏まえて、県内の女性や若者がどういう志向をしているかよく認識できたので、皆さんの願いが叶うよう、実態として努力していくということを今後も続けていこうと思っている。
【斉藤委員】
平成30年度までこの低い目標で取り組むといったらみんな真剣にならない。大学の県内就職率は29年3月卒で45%、前年が43.7%で前進している。大学はどういう目標を掲げているかというと、COC+で55%という目標を掲げている。大学は10ポイント以上県内就職率を高めようとやっているのに、高校生は微増程度の現状維持にとどめようという感覚は全然違うのではないか。社会減ゼロの戦略からみても、計画にも方針にもならないのではないか。
【商工労働観光部長】
この計画の目標値の設定については、過去の経緯からこのような数値に設定させていただき、アクションプランも推進している。そういう経過の中で、岩手の若者たちの思いや志向が把握されたので、数値云々というよりは実態として、その思いが遂げられるようしっかり就職支援に取り組んでいきたいと思う。
また社会減ゼロの取り組みもそれとリンクしているが、その一方では、国策として東京流入の問題を国で捉えており、それと連動する形の社会減ゼロの取り組みとなるものであり、国策とどのようにリンクして展開していくか鋭意検討しつつ取り組んでいるが、今後も努力していきたい。
【斉藤委員】
改めて述べると、県の社会減ゼロの戦略的な目標からもかい離しており、県内中小企業のもっとも切実な課題が人材確保である。今年の高校の求人は今まで以上に増えている。そして子どもたちが減っているから、就職率が上がるだけでは必要な人材が確保できないのも事実である。せめて10ポイントぐらい上げなかったら、高校生の希望にもそえず、県の戦略目標も達成できない。地元の中小企業の雇用も確保できない。そういう実態なので、66.5%という目標は完全にズレているのではないか。10ポイント上げても宮城・山形より低いので、せめてそういう目標はしっかり定めて取り組まなければ雇用対策にならない。一度決めた方針を変えないというのが官僚組織の一番の問題である。実態に合わなくなったら変えると。県の目標でも途中で変えている目標はたくさんある。ここに固執していたら雇用対策は進まないと思う。
今回の調査結果で衝撃的だったのが、「岩手県内に本社を持つ企業を1社も知らない」が37.3%もあった。特に高校生は49.2%。「1、2社しか知らない」を含めると76.5%と、多くが知らないということだった。本当に地元で頑張っている企業、地元で大事な企業を、小中高からキャリア教育という形で進めていく必要がある。特に高校の場合には、就職する年なので、特別に重視して。一関のジョブカフェに行ったときに、ここは市の委託を受けて、小中からキャリア教育をやっている。小中のときから、地元にどういう企業があるのかということを、発育段階に応じてやるのと、高校の場合には実際に就職・進路を抱えているので、地元にどういう企業があって、どういう魅力があるのかということを知らせる取り組みは特別に重要なのではないか。この点で今日の資料に、労働局からの提案ということで、「学校の場を活用して岩手県内の企業を知ってもらう取り組み」と。そういう点で取り組みを抜本的に強化する手立て、いわば知らずに県外に就職しているのが実態だと思うので、この問題を打開して県内の中小企業の魅力、また大震災を通じて地元に貢献したい気持ちが強くなっているので、その点について、具体策を含めて示していただきたい。
【雇用対策課長】
就業支援員の配置による県内就職の支援を行っているジョブカフェ等において、出張セミナーや企業説明会の開催をしている。また、就職後のフォローアップセミナーなど開催している。
また、ものづくり産業を支える人材の育成・確保を促進する取り組みとして、28年度から、工業系高校に加え、その他の高校も対象にした企業見学を重点的に実施しており、29年度は普通高校も加えて全県で展開し、ものづくり企業への理解促進を図っている。
いわてで働こう推進協議会においても、県内企業の認知度の向上ということで、「いわてとワタシゴト展(仮称)」というものを9月2〜3日にかけてアイーナでトークセッション等を開催し、高校生や大学生、短大・専門学校も含め、あるいは社会人なども対象として、岩手で働く魅力を発信する場にしたいと考えている。
こういった取り組みを通じて、県内高校生に県内企業を知ってもらい、あるいは県外に進学・就職した際のU・Iターンの各台につなげるということを引き続き取り組んでいきたい。
ものづくりの関係については、小学校・中学校も含めた企業見学会も県内各地で展開して進めているということで、きめ細やかに進めているので、そうした取り組みをさらに強化していきたい。
【斉藤委員】
今までの取り組みでこういう実態なので、29年度から新たに取り組むものもあるかもしれないが、就業支援員かなり配置されて頑張っていることは認めるが、今までは就業支援員が就職支援をやりながら、実態は76%が県内企業を知らない、1、2社しか知らないと。だから就職支援員の活動ももっと県内企業を発掘してアピールすることが必要だったのではないかと。本当にこの問題は衝撃的な実態なだけに、そこに県内就職率を高める可能性もあわるわけだから、知らないで県外に就職してしまっている。ハローワークなどとも連携して取り組みを強めていただきたい。
自動車は今好調で、企業誘致も進んでいると思うが、ここでの人材の確保、現状と課題はどうなっているか。
【自動車産業振興課長】
近年自動車産業は、昨年のCH-Rの立ち上げなどもあり、順調に推移しているが、若干今年に入ってから、トヨタ自動車東日本岩手工場の生産が落ち着いてきており、そういった点で従業員の確保についてはほぼ安定した状態にある。岩手工場も、正社員登用を進めており、県内にある主要な部品メーカーも正社員比率は8割を超えるような状況で、期間社員の正社員化も進んでいる。来たるべき来年再来年の大きなチャンスに力を蓄えているような状況であるが、懸念されるのは、来年以降新たな必要な人材をどれだけ確保できるのかというところにあり、そういった点では、我々の方でも企業見学会や、県南局とも連携し、秋には北上・金ケ崎の大きな工業祭があり、こちらに全県の高校生に見学していただくような取り組みも進めている。
【斉藤委員】
県内の工業高校の県内就職率は幅があり、盛岡工業は176人中80人、水沢工業106人中44人、一関工業94人中45人、黒沢尻工業は比較的高く182人中100人と。全体として本線沿いの工業高校は5割にいかない。もっと意識性があれば5割を超えるような取り組みにできるのではないか。優良な県外の就職先があるのも大事だが、努力すればさらに10ポイント引き上げることは可能ではないか。そういうことも含めて真剣に取り組んでいただきたい。
3年後の離職率が4割というのも、全国平均を超えると。辞めた理由が「仕事が合わない」ということだった。こうしたミスマッチ、企業側の責任が大きいと思うが、その点ではインターンシップをきめ細やかに取り組むことが必要だと。やはり現場、職場を知って就職するという取り組みをもっときめ細かに進めていく必要があるのではないか。いろいろ復興創生のインターンシップや地方創生のインターンシップがあるが、ミスマッチを解消するインターンシップの取り組みはどうなっているか。
【雇用対策課長】
岩手大学が幹事大学となり、県内大学による地方創生推進事業、いわゆるCOC+の構成機関による共同体である、ふるさと岩手創造協議会では、27年度新規企業へのインターンシップの質や量の拡大を図り推進している。
26年度からは、岩手県立大学が幹事大学となり、東北インターンシップ推進コミュニティが窓口となり、県内外の企業のインターンシップ情報を集約し、学生が希望する時期や職種に応じたインターンシップを紹介している。
28年度からは、首都圏在住の本県出身学生等の還流や地元在住学生の地元定着を促進し、本県企業でのインターンシップの実施を推進する取り組みを産官学で推進するために、いわてで働こう推進協議会に地方創生インターンシップワーキンググループを設置し、首都圏在住の本県出身のインターンシップを始めたところである。
県としては28年度、県内学生の窓口体制の整備を図るということで、インターンシップ支援窓口をジョブカフェ岩手内に設置し、インターンシップアドバイザーを1名配置した。
なお昨年度は、東京や仙台で、本県出身学生と県内企業との交流イベント「ふるさと若者ミーティング」を3回開催し、県外学生からは好評だった。
また、若者の県内就職を推進するために、U・Iターンをした方のアドバイス、首都圏と岩手県での住環境等のデータを掲載したところだが、いわて就活ガイドに掲載し、岩手の優位性について多面的に紹介している。こちらについては、県内大学やあらゆる場で配布している。さらに「知ってる?いわての良いところ2017カレンダー」を、県内の高校3年生の卒業時に。岩手の産業のこと、東京と比較した岩手の暮らしのこと等に触れており、さまざまな岩手のイベント情報やインターンシップの情報、進学後の就職活動の情報を提供している。また、「おかえり岩手ツアー」というものがあり、首都圏在住を対象に、県内企業とのインターンシップの交流事業を行うもので募集していきたい。
【斉藤委員】
雇用対策・雇用確保は、岩手県の再生にとって中心中の中心課題だと思う。そういう思いで積極的な政策、方針を掲げてやっていただきたい。
・雇用促進住宅の廃止問題について
【斉藤委員】
東日本民間賃貸サービス合同会社が売却になった。雇用促進住宅は県内でもかなりたくさんあり、一括して東日本民間賃貸サービス合同会社に売却になったが、県内の雇用促進住宅の入居状況はどうなっているか。今回売却された場合、入居者の生活はどのように確保されるか、家賃はどうなるか。
【労働課長】
売却が決まった県内の雇用促進住宅の入居状況だが、29年5月現在、51ヶ所の住宅があり、うち119棟で入居者戸数が936戸となっている。
今後の入居条件等については、まだ契約はこれからで、詳細は確定していないが、入札公告の中では、入居者がいる物件については引き渡し後10年間は転売できないということとされており、さらに10年間では基本的に家賃などのさまざまな条件については変更しないで入居できるという条件で契約すると聞いている。
【斉藤委員】
最大限本来は自治体が買い取って、若者定住促進住宅などに活用すべきで、県内でもいくつかそういう事例があるので。
今まで雇用促進住宅の入居者は退室を求められていた。全部廃止するという国の方針で。これは今住んでいる方々は退居を求められない、10年間は今の家賃で居住できるということでいいか。
【労働課長】
そのように聞いている。
・被災事業者の復興状況について
【斉藤委員】
営業再開、継続は最新でどのようになっているのか。廃業はどうなっているか。
仮説店舗の状況は現状ではどうなっているか。本設移行はどうなっているか。
台風10号豪雨災害で、地域なりわい再生緊急交付金が交付されたが、活用状況はどうなっているか。その他の国の資金の活用状況はどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
県の復興局が調査したもの、最新のものは昨年8月のものだが、全体として、再開済(一部再開含む)はほぼ8割である。
仮説店舗の方々の状況は、商工団体を通じて調査しており、営業継続・再開は6月時点で71.7%、廃業が1069となっている。本設移行した方々は170事業所となっている。
台風10号豪雨災害における地域なりわい再生緊急交付金について、28年度の交付金事業だが、今年度に繰り越しており、3市町合わせて5月末で261事業所に交付している。国の方の既存の補助事業を事業採択等をして、3つの事業を実施しており、小規模事業者持続化補助金というものが3市町で133事業者採択、革新的ものづくり商業サービス開発支援事業ということで3市町で16件、商店街の振興に関する補助事業で地域街中商業活性化支援事業が久慈市中心部の商店街組織が採択されている。