2017年7月7日 6月定例県議会最終本会議
「共謀罪法」の強行採決に抗議し廃止を求める請願の不採択に対する高田一郎県議の反対討論全文


 日本共産党の高田一郎でございます。
 請願受理番号47号、48号は総務委員会では不採択となりました。私はこの請願に賛成の立場から日本共産党を代表し、総務委員長報告への反対討論をおこないます。
 請願47号、48号は、「組織的犯罪処罰改正法」いわゆる「共謀罪法」の強行採決に抗議し、廃止を求める請願であります。
 「共謀罪法」の最大の問題は、何を考え、何を合意したかが処罰の対象となる―「心の中」、内心を処罰するということです。それは、具体的な行為があって初めて処罰するという刑法の大原則を根本から覆すものです。思想や内心の自由を絶対に「犯してはならない」と定めている憲法19条に反する違憲立法にほかなりません。
 政府は、「共謀罪法」をごり押しするために、国民を欺くウソをいくつも重ねてきました。
 一つは、「テロ対策」というウソです。政府は、国際組織犯罪防止条約の批准のためといいましたが、この条約はマフィアなど経済犯罪に対応するためのものであり、テロ対策の条約ではありません。そのことは、この条約を締結するための国連「立法ガイド」を作成したニコス・パッサス教授が、「条約の目的はテロ対策ではない」と断言していることからも明らかです。大体、日本政府自身が、条約の起草過程で「テロリズムは本条約の対象にすべきではない」と主張していました。
 いま一つは、「一般人は対象とならない」というウソです。参議院の段階で、政府は、環境保護団体や人権団体を「隠れみの」とした場合には処罰されることがあり得ると言い出しました。さらに「組織的犯罪集団」の構成員ではない「周辺者」が処罰されることがあり得ると言い出しました。しかし、「隠れみの」かどうか、「周辺者」かどうかを、判断するのは警察・捜査機関です。広く一般市民を日常的に監視することになることが明らかになりました。
 国会質疑の中で、政府は、岐阜県大垣署による市民監視事件―風力発電所に反対する市民運動を監視し、情報を中部電力に流していた事件について、謝罪も反省もせず、「適正な職務だった」と開き直りました。こうした違法な市民監視をすでに行っている警察・捜査機関に、「共謀罪法」は日常的な市民監視にお墨付きを与えかねないものです。
 5月18日、国連人権理事会が任命した特別報告者、ジョセフ・ケナタッチ氏から、「共謀罪」法案が、プライバシー権や表現の自由への「過度の制限」になると強く懸念する書簡が、安倍送致に届けられました。ところが、日本政府は、ケナタッチ氏から寄せられた質問に一切答えないまま、「強く抗議する」という問答無用の態度を取りました。異常なことです。
 「共謀罪」法案の審議をめぐって、「かつての治安維持法の再来になる」との危惧が寄せられました。それは決して杞憂(きゆう)ではありません。金田法務大臣は、治安維持法について「適法に制定され、適法に執行された」と言い放ちました。それならば、治安維持法による弾圧、拷問で犠牲になった多くの人々、―作家の小林多喜二の虐殺も、哲学者の三木清の獄死も、「適法」だったというのでしょうか。こうした安倍政権による「現代版治安維持法というべき共謀罪法」を与えるわけにはいきません。
 審議をすればするほど問題点と矛盾が明らかになってきた。森友・加計疑惑で追い詰められた安倍自公政権が、「中間報告」という異常な禁じ手を使って「共謀罪法」を強行採決しました。これは、国民の怒りの広がりの下で追い詰められた結果としての暴挙でした。
 「共謀罪法」は、思想・良心の自由を保障した憲法19条に反する深刻な違憲立法です。「数の暴力」で強行されたからと言って、そのままにしておくことはできません。違憲の「共謀罪法」は廃止すべきものです。日本弁護士連合会は、6月15日、共謀罪法は、「我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容である」として、「共謀罪法の廃止に向けた取り組みを行う」と会長声明を発表しました。学者・専門家など各界からも廃止めざす声が広がっています。
 7月2日投票となった東京都議会議員選挙では、安倍政権の暴走政治―共謀罪法の強行や国政の私物化でもある森友学園疑惑・加計学園疑惑隠しに厳しい審判が下されました。自民党は過去最低の23議席に歴史的大敗を喫しました。この都民の声、国民の声にしっかりと耳を貸すべきです。
 共謀罪法の強行採決に抗議し、廃止をめざす請願は、安倍暴走政治に対する県民の意思を示すものです。この請願に反対することは、都議会議員選挙で審判された安倍暴走政治に手を貸すものと言わなければなりません。
 請願の採択に、県議会議員の皆さんの良識ある判断と賛成のご同意を得られますよう訴え、私の討論といたします。
 ご清聴ありがとうございました。