2017年8月1日 商工文教委員会
教員の超過勤務と多忙化解消に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 4月13日付の新聞報道では、2012年に中学校の40代の女性教師が脳疾患で死亡、過労死認定されたという記事だった。この記事では、「亡くなる前、6ヶ月間の超過勤務が月平均80時間を超えていた」という驚くべき事態。しかしこのときには、出退勤時刻を明確に示す資料がなかったために、岩教組が全面支援して、同僚の証言で超過勤務の実態を明らかにした、ということだった。
 文科省も、教員の超過勤務の実態調査を行い、小学校では3割、中学校では6割が過労死水準を超えるというショッキングな実態も明らかになった。
 1つは、県立学校の超過勤務の実態調査はどうなっているか。80時間、100時間を超える超過勤務を行っている教員の実数を示していただきたい。

【教職員課総括課長】
 100時間を超える割合は、28年度の集計で教職員数に占める割合は高等学校の平均値で7.6%になっている。特別支援学校も含めた県立学校全体の平均値は5.5%となっており、人数としては、年間の単純平均でおおむね200人超となっている。
 80時間以上については、147人という数字になっている。

【斉藤委員】
 100時間を超える超過勤務が7.6%・200人超、80時間以上が5.5%で147人、合わせると13.1%になる。本当にこれは深刻な事態だと思う。特に100時間超の割合が80時間より多い。いつ教員に事故が起こってもおかしくない。
 それで、学校ごとの勤務時間外の100時間超の職員の割合もお聞きした。盛岡教育事務所管内の高校で20.3%とあるが、これはどこか明らかにできるか。

【教職員課総括課長】
 超過勤務の集計については、各学校におけるタイムマネジメントあるいは勤務の改善、文書の見直しなどにそれぞれ書き込む状況として活用する目的でとっている。個別の学校名については、公表という形ではなく、内部的に活用するということでやっているので、ご理解いただきたい。

【斉藤委員】
 これは個人情報に関わらないので、こういうところは明らかにして、全体の認識にして改善を図るというようにした方が良いと思う。事実を明らかにすることが改善につながる。
 県南教育事務所の高校は22.1%と5人に1人以上が100時間以上、県北教育事務所管内でも25.8%と4人に1人が100時間以上の超過勤務の実態と。異常な事態である。
 なぜこのようなことになっているか。実態や要因をどのようにとらえているか。

【教職員課総括課長】
 3つの学校についてご指摘があったが、県立学校の教員の時間外勤務の概況については、一般的には部活動の指導や事務作業の恒常化、複雑多様化する教育課題への対応、昨年度は国体対応といったような特殊要因もあった。
 こうした中で、ご指摘の3つの学校、学校訪問で意見交換で確認したところ、例示としての教育課題への対応というところは同じだが、小規模校で若い先生が多かったり単身赴任の方がいらっしゃる学校だったりすると、どうしても部活や教科研究などにどうしても熱が入ってしまうというような状況、また学校によって定時制を併設している学校もあり、そうした学校については、きちんとしたタイムマネジメントは十分しっかりしなければいけないところだと思う。

【斉藤委員】
 100時間以上の学校を紹介したが、80時間を超える学校を合わせると、この県北の学校は33.4%、県南の学校は30.4%、盛岡の学校は29.4%と、3人に1人が過労死ラインということである。
 この3つの学校について、教育長は把握しているか。

【教育長】
 具体的にどこの学校かということは承知している。

【斉藤委員】
 明らかにすべきではないか。異常な事態を全体が自覚してこそ本気になった改善になる。隠しているうちは改善にならない。隠す法的根拠はあるか。

【教育次長】
 この率については、ご指摘の通りかなりの水準に上っており、県教委としてもそのように自覚・認識している。いずれこうした学校については、個別に指導はさせていただいているところだが、もちろん法的根拠ということでは必ずしもないが、この数字については各学校がそれぞれ認識しているということだが、他の学校のそういったデータについてそのまま出すということになると、数字の独り歩き、単純に比較できないが、単にこの数字を見ただけで良いとか悪いといったことにもなりかねないということで、いずれ個別に当該校について直接指導させていただいている。

【斉藤委員】
 過労死によって命を落とす事態も生まれている。いま紹介した3つの高校は、その中でも異常だと指摘した。やはり明らかにして、危機感をもって、一刻も早く改善をすることが筋ではないか。事実を隠していたら本当の改善にならない。ある意味、超過勤務をしていること事態が当たり前のような感覚が教育委員会にも学校にもあると思う。善し悪しは別にしてみんなやっているから。しかしそれは異常なことだと。文科省も、それを重視して全国調査をした。一方的な超過勤務の事態も深刻だが、いま紹介したのは異常な事態について指摘したので。そういうところは明らかにして、いじめでもそうだが、隠していたら解決しない。そのようにやるべきではないか。そして個別にどのような具体的な指導をしているか。

【教職員課総括課長】
 多忙化については、県教委としても喫緊の課題としてとらえ、これまで職員団体との協議の場を通じながらしっかり取り組みをしてきたところであり、県立学校に対しては、学校長会議や新任の校長研修など、あらゆる場で多忙化の課題や学校のマネジメントの問題についてしっかり議論してきたところである。
 この3校についても、県教委として多忙化に関する取り組みはしっかり徹底していくということで、今回いただいた意見も改めて伝え、場合によっては、状況を見ながら、県教委も一緒になって業務改善や校務文書の見直し等に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 7月9日に、連合や岩教組・高教組などが主催した「教職員の多忙化解消に向けたシンポジウム」があったが、県北の中学校の教員は、6月の超過勤務は112時間だったと話していた。本当にこれは特殊な例ではない。
 盛岡市教委が行った時間外勤務調査結果をいただいたが、100時間以上は68人(小学校4人・中学校64人)、80時間以上が94人(小学校20人・中学校74人)と。中学校の方が切実だが、80時間以上の教員は138人で、549人全体の中で25.1%を占めるのが実態である。本当に大変な状況にあるのではないか。
 県教委は、教職員団体とも協議して、この間多忙化解消の取り組みを進めてきたと思うが、取り組みは評価するが、この間どういう課題について、どう取り組んだか。結果的には、実際の多忙化解消に結びついていないのではないかと感じているが、具体的な成果があれば示していただきたい。

【教職員課総括課長】
 関係団体との協議の場については、27年1月から設置し、県教委・職員団体・教職員のメンバーで度重なる協議を重ねてきているところであり、これまで、部活動の休養日の設定や、各種会議資料の精選、学校における会議の運営の簡素化などについて取り組んできた。その中でも、部活動の休養日については、国の動きもあり、今年の2月からということで結実したものと考えている。現時点においても、事務事業に関する細部にわたる事項についての事務的な意見交換をしているところであり、今年度どのような形になるかは、意見を洗い出ししている段階だが、やはり積み重ねが重要と考えているので、引き続き取り組みを進化し、少しでも多忙化解消や長時間勤務が減るように努力を進めている。

【斉藤委員】
 具体的な多忙化解消に、現段階では結実していないと。努力していないとは言わない。そういう協議もしてやっているので。しかしそれが具体的に結実しないのはなぜなのか、このこともまた真剣に検討していかなければならないのではないか。
 部活動についての週休を確保するということは、まだ数ヶ月しか経過していないので、ただ数ヶ月での改善、手応えは感じているか。

【教職員課総括課長】
 多忙化解消の取り組み、中でも部活動休養日の取り組みについてだが、2月に通知を出し、県立学校ではすべての学校で、市町村立学校についてもほぼ全数が設定をしている。市町村教委の皆さんと意見交換させていただくと、通知が非常によかった、契機になったということで、その徹底を市町村だけではなく広域で取り組むということで進めているところもあると聞いている。部活だと、自分のところの練習だけでなく、練習試合ということもあり、管内・管外の学校も関係してくるので、足並みを揃えてできるようになったという声もいただいている。
 部活動の休日を一つの先例にして、その他の多忙化解消の取り組みについても一生懸命頑張っていきたい。

【斉藤委員】
 今年度四半期の超過勤務の実態の調査は近々出るのか。

【教職員課総括課長】
 いま数値を取りまとめている段階である。

【斉藤委員】
 高体連や中体連を目前にした時期が一番大変な時期だと思う。この四半期の調査が出れば、改善されているかどうか傾向が出ると思うので、それを見て改めて取り上げたい。
 新しい学習指導要領で、小学校の英語の教科化が出されたが、これは日本学術会議からも問題視する提言が出されている。何の教育的・科学的根拠もないと。小学校5・6年生の教科となるが、授業時数は増えるが先生が増えるわけではなく、英語の先生が配置されるわけでもない、研修するわけでもない。静岡県吉田町で、夏休みの16日間、短縮して授業時数を確保すると。こういうことをやらないといけなくなる。多忙化と言っていてこんなことをやったら、ますます教員も子どもたちも大変なことになってしまうのではないか。
 小学校での英語、3・4年生は外国語活動ということになるが、これはどういう影響を与えるか。県教委としてどう対応しようとしているか。

【義務教育課長】
 委員ご指摘の通り、授業時数が喫緊の課題となっている。今般、移行措置においては、15時間のコマを2年間で行うと。それに向けて総合的な学習の時間を減じてやることも可となっているが、移行措置期間のカリキュラムマネージメントについては基本的に学校で取り決めることになると思う。本実施になったときにも、1コマ分の授業日数については、実際に1コマ分増やすか、あるいは15分程度の授業にして1時間の授業を増やさないでやるという先行事例も県内で指定をさせていただき研究を進めているところであり、学習指導要領の趣旨に則り、確実に外国語活動、小学校英語が実施できるように、県教委としても先行事例等を普及しながら進めていきたい。

【斉藤委員】
 日本学術会議が昨年11月4日に出した「ことばに対する能動的態度を育てる取り組み―初等中等教育における英語教育の発展のために」という声明を理解しているか。
 英語教育の小学校の教科化について専門家は、「官邸主導の政策として、理論的な裏付けのないまま見切り発車された教育政策」だと。教育のこういう規制緩和は、教育の論理抜きにやると大変なことになるという警鐘である。
 小学校の英語教育の教科化は、根本的に見直しを求めるべきではないか。

【義務教育課長】
 ご指摘の中身については、深い理解ではないが、承知しているところである。
 いずれ新学習指導要領においては、小学校3・4年生の外国語活動、5・6年生の英語の授業について示されたところであるので、授業時数の増加を含めた多忙化の部分が課題となっているので、その部分のカリキュラムマネージメントについて、さまざまな研究事例等を紹介しながら、負担にならないよう、指導要領等の趣旨が徹底されるよう今後とも県教委としても指導していきたい。