2017年10月3日 9月定例県議会本会議
千田美津子県議の一般質問(大要)


 日本共産党の千田美津子でございます。県民のいのちとくらしを守る課題について、お聞きします。

1.東日本大震災津波からの復興と被災者支援について

・被災者への医療費・介護保険利用料等の免除について

【千田県議】
 東日本大震災津波からまもなく6年7カ月が経過しようとしておりますが、8月末現在、応急仮設住宅等には4,524戸(9,640人・ピーク時の22%)が未だに不自由な暮らしを余儀なくされています。災害公営住宅には、7,882人が入居していますが、最後の公営住宅の完成は平成30年度までかかる見通しであり、一層の被災者支援の強化が求められています。
 まず、被災者への医療費・介護保険利用料等の免除についてであります。
 被災3県では、唯一岩手県のみが継続実施してきた被災者の医療費・介護保険利用料等の免除が今年12月末までとなっておりますが、昨日の答弁で、来年も継続実施する方針が示されましたが、被災者の皆さんにとってはまさに命綱ともいうべき事業であり、達増知事の決断を大いに歓迎するものであります。そこで、お聞きしますが、知事は被災者のみなさんの声をどう受け止められ、決断されたのかお聞きします。また、この間、どれだけの経費でどれだけの被災者の皆さんが免除されてきたのか、その実績についてもお聞きします。

【達増知事】
 被災者の国民健康保険等の一部負担金免除についてでありますが、 応急仮設住宅等の居住者についてはピーク時の約22%に減少したものの、いまだに多くの被災者の方々が不自由な生活を余儀なくされており、自宅が被災しなかった方々に比べて、こころの健康や生活習慣病の有所見者が多い傾向が見られる状況にございます。
 また、被災者の方々からは、「免除のおかげで日々の生活が助けられている」「病院までの交通費がかかり免除が終了したら通院ができなくなる」などの声があることも承知していることであります。
 こうした現状を踏まえ、最終的にはすべての市町村等から、現行制度のまま一部負担金免除を実施するとの回答を得たことから、被災者が引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保を図るため、来年12月までの1年間、これまでと同様の財政支援を継続していきたいと考えております。
 一部負担金等の免除の実績については、平成24年10月から昨年度末までの県負担額は総額約26億円であり、免除対象者は、最も多かった年度で約4万人となっております。

・被災者の住宅再建への支援について

【千田県議】
 被災者生活再建支援金についてです。東日本大震災被災者については、申請期間が平成30年4月10日までとなっておりますが、土地区画整理事業の完了が平成32年度と見込まれており、被災者生活再建支援金については申請期間の延長を検討するとのことでありましたが、どうなったでしょうか。さらには、被災者住宅再建支援事業は県事業であり、平成30年度までとなっておりますが、被災者が必要とする期間までの延長が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

【佐々木復興局長】
 被災者生活再建支援金及び被災者住宅再建支援事業についてでありますが、被災者生活再建支援金の申請期間は、住宅再建の前提となるまちづくりの進捗状況等を踏まえ、被災世帯の世帯主が期間内に申請することができないやむを得ない事情があると認められる場合には、 国通知により1年を超えない範囲で繰り返し再延長できるとされており、現行の平成30年4月10日までとなっている申請期間の再延長については、本支援金の事務を行っている公益財団法人都道府県会館と現在協議を進めているところです。
 また、県と市町村が共同で行っている被災者住宅再建支援事業についても、被災者生活再建支援金の申請期間の延長の協議と併せて検討してまいります。

・被災者の心のケアについて

【千田県議】
 被災者の心のケアについてお聞きします。被災者のみなさんは、時間の経過とともに将来不安や環境の変化などから、「岩手県こころのケアセンター」での相談件数や「いわてこどもケアセンター」の受診件数は依然として多く、特にも「いわてこどもケアセンター」では、27年度の相談件数4620件に対し、28年度は6379件、約1.4倍と増加しています。被災者の心のケアについては引き続き重要課題だと考えますが、現状と今後の対応策についてお聞きします。

【八重樫保健福祉部長】
 東日本大震災津波被災者のこころのケアについてでありますが、岩手県こころのケアセンターにおける相談支援件数は、依然として年間1万件近い件数であり、住居環境の変化に伴うストレスや家庭問題、経済問題など、相談内容が複雑化・多様化してきております。
 また、子どものこころのケアについては、議員ご指摘のとおり、受診件数が増加傾向にあり、トラウマ関連障害に加え、発達障害や不登校、虐待などの問題にも対応してきているところであります。
 そのため、県としてはこころのケアに中長期的に取り組む必要があると考えており、引き続き、専門スタッフの確保やスキルアップ、関係機関等との緊密な連携により支援の質を高め、対応してまいります。

・災害公営住宅における要援護高齢者の見守りについて

【千田県議】
 次に、災害公営住宅における要援護高齢者の見守りについてお聞きします。災害公営住宅では高齢者世帯が多く、5月末現在で入居世帯の29%、1,165世帯が一人暮らしの高齢者となっており、孤独死や孤立を防ぐための見守り活動や生きがい対策、相談活動等の強化が求められております。しかし、県内の生活支援相談員の配置は、昨年8月には全県で172名配置されていましたが、今年8月では155名と逆に17名減っています。生活支援相談員の活動は、多くの被災者を励まし、支えています。しかし、現状は、計画数と比べても31名の減となっています。なぜこのような状況となっているのか、現状と課題についてお聞きします。

【八重樫保健福祉部長】
 災害公営住宅における要援護者高齢者の見守りについてでありますが、県においては、県社会福祉協議会が配置する生活支援相談員と連携し、被災者の見守り相談支援、交流会の開催などに努めてきたところであり、8月末現在定員186人に対し155人の配置となっています。
 生活支援相談員は、県社会福祉協議会が各市町村社会福祉協議会の意向を踏まえながら、地域の実情に応じた配置に努めてきましたが、これまでも人材確保には苦慮しており、各地域においては、市町村が配置する支援員や民生委員等と連携して必要な見守り体制を確保しているところであります。県内では有効求人倍率が上昇している地域が多いこともあり、配置計画と実人員に一層の開きが生じたものと認識しています。
 災害公営住宅では、一人暮らし高齢者世帯の割合が3割を占めるなど、被災者の孤立を防止する活動等は引き続き重要であり、被災者の生活の変化に応じ、一人ひとりに寄り添ったきめ細かな相談支援に努めていきます。

・災害公営住宅などの特別家賃低減事業について

【千田県議】
 次に、災害公営住宅などの特別家賃低減事業についてお聞きします。
 災害公営住宅に住む低所得世帯の家賃負担を軽減している、国の東日本大震災特別家賃低減事業が6年目から縮小し、元々の負担額に引き上げられることから入居者に不安が広がっています。そのため、国に対し家賃軽減制度の延長を求めることが必要と考えますが、いかがでしょうか。

【中野県土整備部長】
 災害公営住宅の特別家賃低減事業についてでありますが、国による家賃低減は、高齢者世帯など収入が少ない世帯に対して、収入に応じて5%から70%程度家賃を減免する制度であり、入居後6年目以降10年目まで、毎年段階的に縮小されることになってます。
 このため県は、本年7月に国土交通省及び復興庁に対し被災3県の担当部長連名で、低減事業の期間延長を要望したところです。
 なお、県では、入居者が申請手続きを行うことにより、国の家賃低減制度とほぼ同様の家賃の減免を、期限を設けずに受けることができる独自の制度を有していることから、県の制度を利用すれば、実質的に入居者の負担増にはつながりません。
 災害公営住宅を管理運営している沿岸の市町村でも概ね県と同様の減免制度を有していると聞いていることから、県の取り組みについて情報共有してまいります。

・復興期間終了後の取り組みについて

【千田県議】
 復興期間終了後の取り組みについて、お聞きします。
 国は復興期間を10年間としているのに対し、岩手県では8年間となっており、その後は次期総合計画に位置付けるとしています。私は、被災地や被災者の皆さんの現状等を見るにつけ、8年間の復興期間終了後も引き続き、しっかりと復興に取り組むことが必要と考えます。そこで知事は、被災者支援をはじめとした復興にどのように取り組むお考えか、お聞きします。

【達増知事】
 復興期間終了後の取り組みについてでありますが、県では、「いのちを守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造」を目指す姿とする「岩手県東日本大震災津波復興計画」に基づき、これまで、被災者一人ひとりの復興を見守り、寄り添った支援を行いながら一日も早い復興を目指して取り組んできたところであります。
 一部の社会資本等の整備については、復興基本計画期間内に事業が完了しないことが見込まれていますが、復興基本計画期間後も事業が完了するまで実施するとともに、被災者支援のためのソフト事業についても、計画期間等で区切ることはせず、必要な事業は最後まで実施してまいります。
 次期総合計画の具体的な内容は、今後、総合計画審議会において議論することになりますが、今後10年間の岩手の未来を示す「長期ビジョン」においては、復興に関する一章を設け、復興基本計画に掲げる3つの原則を踏まえながら復興の取組方向を示し、アクションプランでは政策編とは別に復興に関す計画を策定し、現行の復興実施計画と同様に具体的な施策や事業を盛り込むなどにより、切れ目のない復興の取り組みを進めていく考えであります。
 今後とも、国の「復興・創生期間」と連動し、また、市町村における復興事業の進捗状況を踏まえ、市町村それぞれの復興計画や総合計画と足並みを揃えながら、被災地の未来のあるべき姿を実現する取組進めてまいります。


2.台風10号災害からの復旧・復興と自然災害から県民の命を守る取組みについて

・国が東日本大震災と同様に支援する恒久的な制度を

【千田県議】
 台風10号被害は、特に岩泉町では被害額が東日本大震災の約10倍に匹敵する一方、国の扱いは「通常の災害」として東日本大震災のような特例措置がありません。従って、地元負担・自己負担も重く、復興には長い年月を要します。「通常の自然災害」であっても、現に困窮している被災市町村や住民に対し、国が東日本大震災と同様に支援する恒久的な制度がどうしても必要だと考えますが、いかがでしょうか。

【藤田政策地域部長】
 被災市町村や住民に対する支援でありますが、千年に一度の大災害と言われている東日本大震災津波は、岩手県や宮城県、福島県を中心に、広範な地域に渡って甚大な被害が発生したことから、国においては特別会計を設けた上で、異例の財政措置を講じることとしたものと承知しております。
 一方、平成28年台風第10号災害につきましては、東日本大震災津波の場合と同様の財政スキームの設定はされておりませんけれども、その被害の甚大性に鑑み、国の財政措置等は欠かせないと認識しておりまして、被災した市町とも連携を図りながら、国に対し、必要な要望を行ってきたところであります。
 この結果、サケ・マスふ化場等の災害復旧事業における国庫補助率のかさ上げや、「小規模事業者持続化補助金」の新たな支援枠の創設、光ファイバーやテレビ共同受信施設等の復旧対する制度の適用などが認められてきたところであります。
 台風第10号災害は東日本大震災津波に重ねての災害でもあり、また、いまだに実現されていない要望項目もありますことから、今後も引き続き被災した地域の実情を国に伝え、必要な財源措置等について強く求めてまいりたいと考えております。

・住宅再建・住宅確保の現状について

【千田県議】
 次に、被災者の皆さんの住宅再建・住宅確保の現状はどうでしょうか。また、岩泉町の特徴でもある生活橋の再建については、独自の財源もなく、再建のための募金が呼びかけられているようですが、早期復旧のためにも県も支援すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。

【藤田政策地域部長】
 住宅再建等の現状についてありますが、特に被害の大きかった岩泉町が本年8月に取りまとめた住民意向調査によりますと、全壊等406世帯のうち半数の203世代が被災した場所での再建・補修を希望しているほか、別な土地での再建希望が32世帯、災害公営住宅への入居希望が74世帯、町の整備する移転地への希望が13世帯などとなっております。
 一方で、住宅再建の意向が未定の方が24世帯おりますことから、町と連携し、必要な情報を提供しながら住宅の再建を支援してまいりたいと考えております。
 また、岩泉町内の生活橋については、190箇所のうち73箇所が被災しましたが、町においては、所有者が本復旧する場合に必要となる経費の一部を補助する意向と伺っております。
 個人の資産にあたる生活橋の復旧に対し、県による独自の支援は困難でありますけれども、町が開設した支援募金についての企業・団体への橋渡しなど、できる限りの支援を継続してまいりたいと考えております。

・水位周知河川・洪水浸水想定区域の指定、社会福祉施設における防災対策について

【千田県議】
 次に、台風10号災害では、岩泉町のグループホームにおいて、9名もの犠牲者を出しました。今年も全国各地で豪雨災害が多発しており、岩泉の教訓をどう生かして行くかが問われています。そこで、県では「新たな風水害に対応した防災体制の整備に係る報告書」をまとめ、減災のための努力がなされていると思います。そこで、水位周知河川・洪水浸水想定区域の指定はどの程度進んでいるでしょうか。
 また、社会福祉施設における非常災害対策計画策定と避難訓練の実施の状況はどうなっているでしょうか。さらに、社会福祉施設間の連携した避難の取組も重要だと思いますが、どうなっているでしょうか。

【中野県土整備部長】
 水位周知河川・洪水浸水想定区域の指定についてでありますが、県では、台風10号災害の教訓を踏まえ、指定を計画的に進めていくこととしております。
 水位周知河川については、台風10号により甚大な被害の発生した小本川及び安家川を、本年5月26日に指定したところであり、これにより県全体で30河川34区間が指定済みとなりました。
 また、洪水浸水想定区域については、現在、県内では27河川を指定済みであり、本年12月に小本川を追加する予定としております。
 今後の指定については、国、県、市町村で構成する浸水減災対策協議会において、年内に5カ年計画を策定し、5カ年で20河川を目標に、計画的に指定を拡大してまいります。
【八重樫保健福祉部長】
 社会福祉施設等における非常災害対策計画策定と避難訓練の実施の状況等についてでありますが、本年8月末現在の調査結果では、洪水浸水想定区域に立地する545施設のうち、十分な計画を策定している施設は418施設、その割合は76.7%となっています。また、同地域で避難訓練を実施済の施設は369施設、その割合は67.7%となっています。
 更に、土砂災害警戒区域に立地する278施設のうち、十分な計画を策定している施設は206施設、その割合は74.1%であり、同地域で避難訓練を実施済の施設は203施設、その割合は73%となっています。
 次に、社会福祉施設間の連携した避難の取組については、複数施設を運営する法人において、同一法人の他の安全な施設に避難する計画を作成している例や避難訓練を地域に隣接する施設が合同で実施している例などがあるところであります。
 県では、これらを事例集としてまとめ、市町村等に配布し、施設等に対する周知や指導・助言を依頼したところであり、今後も、施設等利用者の安全の確保のため、施設間の連携した防災体制の構築をして支援していきたいと考えています。


3.子どもの貧困と児童虐待への対応、子どもの医療費助成事業の拡大について

・「いわての子どもの貧困対策推進計画」の進捗状況について

【千田県議】
 子どもの貧困とは、子どもの権利条約で明記されている子どもの権利が保障されていない生活状況で、衣食住などの基礎的生活が保障されないままにいる貧困世帯のもとで暮らしている子どもの存在のことです。また、子どもたちが厳しい生活を強いられている事例が各地で続出しています。夏休みに10キロも痩せてきた中学生、虫歯が20本あり、治療されていない子ども、修学旅行の積立金を取り崩して生活費に充てる親など、このようなことを放置しておいて良いのかが今私たちに厳しく問われています。
 2013年6月、議員立法である「子どもの貧困対策の推進に関する法律」いわゆる「子どもの貧困対策法」が衆参両院の全員一致で成立しましたが、政府の子どもの貧困対策法及び大綱では数値目標も義務規定も不十分であり、自治体レベルでの政策づくりと条例化は大きな意義があると考えます。また、貧困対策法や大綱で示された4項目に即して具体的な削減計画をしめしていくことなど、子どもの貧困をなくしていくための具体策が求められています。そこで、「いわての子どもの貧困対策推進計画」の進捗状況についてお聞きします。

【八重樫保健福祉部長】
 次に、「いわての子どもの貧困対策推進計画」の進捗状況についてありますが、主な指標の平成28年度の実績みると、スクールソーシャルワーカーの配置人数や生活保護世帯の子供の高等学校等進学率などの5指標については、平成31年度目標値以上となっているところであります。
 一方、生活保護世帯の子供の大学等進学率など、計画策定時に基準とした平成26年度実績を下回っている指標もある状況となっています。
 このため、主な指標の目標達成に向け、多部局とも連携して、引き続き計画に基づく教育の支援などの重点政策の取り組みを進めてまいります。

・子どもの医療費助成事業と現物給付の拡大実施について

【千田県議】
 子どもの医療費助成事業と現物給付の拡大実施についてお聞きします。
 子どもの貧困への対応と子どもの権利を守るという観点からも、子どもの医療費助成事業と現物給付の実施は大事な施策であります。昨年、実施された盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態調査結果を見ますと、「支払いが困難なために受診しなかった」と答えた方が33.8%もあったことは、子どもたちを取り巻く現状を示すものとして、さらなる充実が求められています。
 さて、岩手県は一昨年から小学校卒業までの入院の無料化を実現し、さらに昨年8月からは未就学児及び妊産婦に対して現物給付を実施し、多くの関係者から大変喜ばれております。
 そこで、岩手県内では全市町村において、子どもの医療費助成事業の現物給付を、最低でも小学校卒業まで拡大実施することは可能ではないかと考えますが、知事にお聞きします。

【達増知事】
 子どもの医療費助成事業と現物給付の拡大実施についてありますが、昨年8月から実施した未就学児を対象とした現物給付については、県と市町村とで協議を重ね、その合意のもとに実施しているところであり、県としても、関係機関との調整、医療機関の事務負担を軽減するためのシステム開発、医療機関に対する説明会の開催などの支援を行っています。
 医療費助成の現物給付を小学校卒業まで拡大する場合、市町村国保に対する国庫負担金の減額措置が発生することから、市町村の意向を十分に踏まえて慎重に検討する必要があると考えております。

・就学支援について

【千田県議】
 いわての子どもの特にも就学支援として入学準備金の早期支給が期待されていますが、県内ではどのようになっていますか、お聞きします。
 また、義務教育における就学支援についてですが、市町村が行う就学援助により引き続き必要な支援を行うとしていますが、市町村の対応にどの程度の差があるのか、又その場合県としても一定の支援が必要ではないかと考えますが、如何でしょうか。

【高橋教育長】
 就学支援についてでありますが、準要保護世帯への就学援助については、いわゆる三位一体改革により、国庫補助事業から、地方への税源移譲と地方交付税措置に移行し、以降は市町村単独事業としてそれぞれの実情を踏まえた運用が行われております。
 新入学児童生徒学用品費の入学年度開始前の支給については、昨年度から、八幡平市を始め4市村において実施されており、更に、多くの市町村で本年度から実施を含めた検討を行っていると承知いたしております。
 次に、準要保護就学援助の具体的な運用については、その認定に当たっても生活保護認定の基準額に一定の係数を掛けたものを基準として用いている市町村や、市町村民税の非課税・減免などを要件としている市町村のほか、個別世帯の実情等も勘案している市町村もあるなど、それぞれ工夫を凝らした対応が行われております。
 就学援助制度は、経済的な理由により修学が困難な子どもの学ぶ機会を保障する重要な役割を担っていることから、それぞれの地域の実情に応じ、支援が必要な世帯に寄り添った対応が必要であると認識しているところであり、今後におきましても、引き続き、各市町村の考え方等を尊重しつつ、県内各市町村における支給時期や認定基準等について情報提供を行いながら、適切な運用が図られるよう助言してまいります。

・子どもの貧困の実態調査について

【千田県議】
 次に、貧困の実態調査についてです。この間、沖縄県をはじめ、今年度は広島県など12県が実施しており、岩手でも来年度実施予定であり、是非とも具体的な施策につながる調査となるよう期待するものです。そこで、この実態調査の内容と調査後の対応等どのように進める考えかお聞きします。また、28年度は盛岡市、今年度は宮古市、一関市、陸前高田市、北上市、紫波町が実施されるとのことであります。この取組が県内で広がり、全県できめ細かな対応がなされることが重要だと考えますが、全自治体が取り組むよう、何らかの指導や助言が必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

【八重樫保健福祉部長】
 貧困実態調査についてありますが、今年度、庁内関係部局で構成する「子どもの貧困対策連絡調整会議」を新たに設置し、他県等の例も参考にしながら、本県における「子どもの生活実態調査」の実施に向けて、調査項目や調査方法等についての検討を行っております。
 併せて、連絡調整会議の中で、子どもの貧困対策として今後、県が取り組むべき支援施策についての議論を進めているところであります。
 県内の市町村では、昨年度に盛岡市が、また今年度は9月末現在で5つの市と町が、子どもの貧困に関する調査を実施する予定としており、このほかの自治体からも調査の実施に関する相談が寄せられているところです。
 引き続き、先行実施している自治体の状況や国の交付金の活用について情報提供するなど、子どもの貧困対策に取り組む市町村を支援していきます。

・児童虐待の現状と課題、今後の対応策について

【千田県議】
 次に、児童虐待の現状と課題、今後の対応策についてお聞きします。
 児童虐待については、警察から児童相談所への通報が増えたことなどにより、増えていると認識しておりますが、保護につながるような深刻な事例など、その実態はどうなっているでしょうか。また、体制上の問題では、市町村が果たす役割も重要となりましたが、市町村との連携や体制上の課題についてお聞きします。

【八重樫保健福祉部長】
 児童虐待の現状と課題についてありますが、本県における平成28年度の児童虐待相談対応件数は、1477件で、前年度に比べて419件、39.6%増加したところです。
 一方、児童相談所が一時保護した児童は、平成28年度258人となっており、平成27年度の250人と比較して、ほぼ横ばいの状況となっています。
 市町村では、市町村要保護児童対策地域協議会を設置し、児童福祉、母子保健、教育等の関係機関が連携して児童虐待に対応しており、県では市町村の地域協議会に参画するとともに、平成28年1月に運営マニュアルを提供するなどの支援を行ってきたところであります。
 また、今年度から義務化された要保護児童対策地域協議会調整担当者研修の実施などを通じ、引き続き市町村の取組を支援していきます。


4.国保の広域化に伴う課題について

・国保がかかえる現状と課題について

【千田県議】
 まず、国民健康保険制度がかかえる現状と課題についてお聞きします。
 国保税は住民税などと同じく前年度所得にもとづいて計算されるため、会社を退職して年金生活になった人や事業不振に陥った自営業者など、収入が激減した人が多額の国保税を請求され、保険税の滞納が生じるという実態があります。また、国保の特徴として、農林水産業者、自営業者、退職者、年金受給者、無職者などの低所得者が多く、所得なしの世帯が28.7%、所得100万円以下が62.2%となっています。このような状況下にあって所得に対する負担率が16%と高率の保険税が課せられたために、滞納が多く、滞納差し押さえや、無保険による受診遅れ、受診できずに死亡するケースが後を絶たない現実もあります。このような国保がかかえる現状と課題について、知事はどのようにお考えでしょうか。
 また、国保財政がきびしい根本的原因は、国庫負担が引き下げられたことにあります。1980年代には50%を超えていた国保の総会計に占める国庫負担金の割合が、いまでは25%程度まで下がっています。このような点からも、国庫負担の増額を求める必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 さて、国保について、国保法第一条には「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保険の向上に寄与することを目的とする」と、国保は社会保障に寄与する制度と明確に規定しています。国保は「助け合う制度」ではなく、国が財政的責任を負い、お金のあるなしで差別されない制度であると思いますが、知事の認識をお聞きします。

【達増知事】
 国保制度が抱える現状と課題についてでありますが、医療の高度化や高齢化の進展等により保険給付費が増加している中で、国民健康保険の被保険者の課税所得額は減少傾向にありますことから、県民の国民健康保険税に対する負担感は増加しているものと認識しております。
 今般の制度改正において、毎年約3400億円の財政支援の拡充により、財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が可能となりますが、一方で、今後も医療費の増嵩が見込まれますことから、県としては、国の財政責任のもと、将来にわたる持続可能な制度の確立や保険料の平等化等に向けて、さらなる財政措置が必要と考えます。
 次に国保制度に対する認識についてでありますが、国民健康保険制度は、他の医療保険に加入していない方を被保険者としており、国民皆保険制度を支える基盤として、重要な役割を果たしているものと認識しております。
 こうした国民健康保険の役割を踏まえ、国民健康保険の安定的な運営に関して、国としての責務を果たすため、一定の国庫負担が制度化されているほか、低所得者が多く加入しているという構造的な課題に対応するため、 低所得者の保険税軽減措置が図られているものと承知しております。
【八重樫保健福祉部長】
 国民健康保険財政に対する国庫負担の増額についてでありますが、市町村国保の収入全体中での国庫支出金の割合については年々減少傾向にありますが、一方で被用者保険からの交付金や都道府県、市町村負担なども含めた公費全体の負担割合は増加しています。
 今般の制度改革において、毎年3400億円の財政措置の拡充が図られましたが、一方で、今後も医療費の増嵩が見込まれることから、国庫負担率の引き上げなど様々な財政支援方策を講じ、今後の医療費の増嵩に耐えうる財政基盤の安定化を図るよう国に要望しているところであり、全国知事会からも同様の要請行っているところであります。

・国保の広域化による問題点について

【千田県議】
 次に、国保の広域化により、心配される問題点についてです。9月に示された試算では、一般会計からの繰り入れをしない場合、24市町村が値上げとなる見込みです。これでは何のための広域化か疑問であります。とりわけ沿岸被災地は軒並み引き上げとなり、これは構造的に大きな問題があるのではないかと考えます。そして、構造的な問題であれば、そうならないような対策が求められると思いますが、いかがでしょうか。

【八重樫保健福祉部長】
 保険税の試算結果の課題と対策についてでありますが、試算結果では沿岸市町村において保険税負担が平成28年度と比較して高くなる傾向にありますが、これは医療費水準が高い状況にあることに加え、東日本大震災津波の影響による医療給付費の負担増等に対し交付されていた、国の特別調整交付金が平成28年度から減額されてきており、その分を保険税で賄う必要があること等が影響しているものと考えています。
 保険税が上がる市町村の対応については、保険税負担が平成28年度と比較して一定割合を超えて増加する市町村に対して、県繰入金等を活用して保険税負担を軽減できることとされています。県では平成30年度において新制度を円滑に移行させるため、制度施行当初に市町村の保険税が急激に増加することがないように、最大限配慮する必要があることから、平成28年度の保険税と同水準まで激変緩和を講じる方向で、市町村と協議しているところであります。


5.地域医療構想と県民のいのちを守る医療体制について

・地域医療構想について

【千田県議】
 地域医療構想は、大きな医療制度改革の一環として登場し、平成30年度からの第3期医療費適正化計画や国保の広域化など、公的医療費抑制策との連動が想定されます。
 また、地域医療構想に象徴される医療提供体制の再編により、医師不足・看護師不足といった人員不足の固定化、医療難民・介護難民の増大への懸念も広がっており、地域における医療保障づくりを進めるためには、具体的な地域の実情を反映した取組みが求められております。
 そこで、地域医療構想に係る地域ごとの調整会議等の実施状況と今後の進め方についてお聞きします。

【八重樫保健福祉部長】
 地域医療構想に係る地域ごとの調整会議等についてありますが、限られた医療資源のもとで、高齢化の進展などに伴う医療需要の変化に対応した将来のあるべき医療提供体制の構築に取り組むためには、9つの構想区域ごとに医療関係者や介護関係者、市町村等を構成員として設置した地域医療構想調整会議の場において協議を行いながら取り組むことが必要であります。
 県では、今年度をこれまでに7つの構想区域で調整会議を開催し、病床機能の現状や将来の予定、医療従事者確保や在宅医療等の体制整備などの地域における課題等について協議を行ったところであります。
 今後、未開催の構想区域においても開催を予定しており、引き続き、地域の実情や課題を踏まえて、構想区域における病床機能の分化と連携の推進、医療と介護の連携等についての協議を進め、地域における必要な医療提供体制の構築に取り組んでまいります。

・県立病院の医師不足の現状と対応策について

【千田県議】
 次に、県立病院の医師不足・看護師不足の現状と対応策について、お聞きします。
 県内の医師不足は依然として深刻であり、県民の要求に応える状況とはなっていない現状があります。しかしながら、被災地沿岸の大槌病院・山田病院は昨年度新病院が開院し、高田病院も年度内には開院する予定であり、課題はありながらも県民のいのちの砦として県立病院が果たす役割は、ますます重要となっています。
 そこで、医師の現状でありますが、9月1日現在、平成28年度の562名に対し、29年度は568名と6名増えておりますが、この数は配置計画に比べてどうなのか、医師確保の取組と今後の見通しについてお聞きします。

【大槻医療局長】
 まず、県立病院の医師不足についてございますが、経営計画では、勤務医に初期臨床研修医を加えた各年度末時点での医師数を計画するとしておりますが、平成28年度末時点では、当初の現員数と同数にとどまっており、逆に研修医を除く勤務医数では計画策定時と比べて5名の減となるなど大変厳しい状況となってございます。
 その主な要因といたしましては、当初示された専門医制度の仕組みが大学病院等を中心とするものであった影響もあり、大学等で専門医の取得を目指す医師が増加したこと、震災から一定期間が経過し、復興支援などを目的にいらっしゃっていただいた医師の退職が相当数発生したことなどによると考えてございます。
 今後に向けましては、引き続き、関係大学等に対する医師の派遣要請を進めるとともに、新専門医制度の開始に向けまして、診療領域ごとに県立病院が連携して研修プログラムを策定し、医師が県立病院に勤務しながら、専門医を取得ができるようにすること、即戦力医師の招聘にあたっては、過去に復興支援などで本県に勤務していただいた方の人脈を生かした招聘に重点的に取り組むことなどによりまして、引き続き必要な医師数の確保に向けて取り組んでまいります。

・県立病院の看護師不足の現状と対応策について

【千田県議】
 看護師不足についてであります。全体の看護師数は、28年度に比べ今年度は25名増えているとのことですが、この程度では根本的な解消にはなりません。ましてや職場の実態は超過勤務が多く、きっちり申告できないとの声が聞かれること。また、2時間以上の超過勤務を書くと看護事務室に呼ばれたり、みんなの前で叱責される等の実態も聞きました。このような状況について、どう把握され、今後どう改善されようとしているかお聞きします。
 また、月8回を超える夜勤者の発生状況を見ますと、28年度の同じ時期に比べて増加しております。特にも大船渡病院は28年度が1年間で延べ274名だったのが、今年は4月から6月までの3ヶ月間ですでに延べ117名となっており、続いて久慈病院が延べ83名、二戸病院が延べ67名となっており、改善が急務でありますが、いかがでしょうか。
 また、途中退職者の実態も多く、働き続けられる職場づくりは、急務ではないでしょうか。看護師不足の実態と看護師確保策について、お聞きします。

【大槻医療局長】
 次に、看護師の勤務環境と体制についてでありますが、今年度8月までの看護師の1人1ヶ月当たりの超過勤務実績は、昨年度より0.5時間減少しているところです。
 各病院におきましては、超過勤務縮減の取り組みの一環といたしまして、業務手順の見直しや、業務の平準化に取り組んでおりまして、その過程において、業務内容や手順等を詳しく確認する場合もあるものと認識しております。
 超過勤務の縮減は、何よりも、業務そのものの見直しと、職員の意識改革が重要であるため、これらの取り組みを総合的に進めてまいります。
 また、体制につきましては、患者数の増減など業務量の変動に加え、出産や病気、退職などによりまして、従事可能な職員数も変動することから、病院によっては、年度過中に不足を生じたり夜勤回数が増加することもございます。
 今後におきましては、夜勤体制の適正化を引き続き進めますとともに、夜勤専従制度等の多様な勤務形態の実施をはじめとする勤務環境の改善を推進することによって、離職防止や新規採用職員の確保につなげ、さらには県立病院間での総合応援も実施することにより、必要な体制の確保に努めてまいりたいと存じております。

・胆沢病院の産婦人科・小児科の充実について

【千田県議】
 次に、胆沢病院の産婦人科・小児科の充実についてお聞きします。
 県立胆沢病院の産科が無くなってから、かなりの年月が経過しておりますが、地域の基幹病院でありながら、産婦人科がないというのは、少子化対策に逆行するばかりか、さらに拍車をかけることにつながり、大きな問題だと言わなければなりません。
 このような中で、岩手県が取り組んできた奨学金養成医師の状況を見ますと、配置対象者59名の医師のうち、産婦人科を専攻するのは1名のみであり、小児科は4名となっています。 
 このようなことから、医師確保についての県のこれまでの取組を強化するとともに、この危機的状況を多方面に強く働き掛け、医師を確保する以外に術は見当たりません。
 まさに、仕方ないでは済まされない事態だと考えますが、胆沢病院の産婦人科・小児科医師の配置について、どのようにお考えかお聞きします。

【大槻医療局長】
 次に、胆沢病院の産婦人科・小児科の充実についてでございますが、県の周産期医療体制では、胆江地域が含まれる県南圏域(岩手中部・胆江・両磐)は、県立中部病院、県立磐井病院と北上済生会病院が地域周産期母子医療センターとなり、ハイリスク出産、新生児医療を担い、それ以外を地域の開業医等が担うこととなっているところでございます。
 お尋ねのありました県立胆沢病院の体制は、現在、開業医による診療応援によりまして、週1回婦人科の外来診療を行っており、小児科については、常勤医師1名を配置して地域の小児救急医療等にしている状況であり、現状では出産や新生児医療への対応は、なかなか難しいものと考えておるところです。
 産婦人科・小児科の医師については、専攻する医師が少ないため、直ちに常勤医師を増員し配置することが困難な状況ではございますが、関係大学等への医師派遣要請や即戦力医師の招聘を粘り強く続けていくとともに、地元開業医と県南圏域の周産期母子医療センターとの連携強化、小児医療遠隔支援システムなどICT を活用したシステムの整備によりまして、地域の方々が 出産や子育てに不安を感じずに安心できるよう、地域医療の充実に努めてまいりたいと存じております。

・地域医療基本法(仮称)の制定に向けた取り組みについて

【千田県議】
 最後に、(仮称)地域医療基本法の制定に向けた取り組みについてお聞きします。
 医師不足が深刻な当県にとって、これまで取り組んできた医師奨学生の養成や即戦力医師の獲得、大学への働きかけは重要であり、今後も継続実施していくべきと考えますが、周産期・小児科医師の確保などでは、もう限界ではないでしょうか。しかも、新専門医制度の開始などで、当県の医師確保は、いっそう困難を極めています。このような点からも、岩手発の(仮称)地域医療基本法こそ、今最も力を入れるべき課題だと考えます。今年、岩手で実施された全国知事会議において、達増知事が全国の知事を前に(仮称)地域医療基本法について、プレゼンテーションを行ったと聞いておりますが、知事の皆さんの反応はいかがだったでしょうか。
 私は、知事や県議会、行政、医師会は勿論のこと、これまでの範囲を思い切って広げ、企業や商工団体、教育関係者の皆さん等々、まさに県民あげてアピールしていく時ではないかと考えますが、知事にお聞きします。

【達増知事】
 仮称地域医療基本法の制定に向けた取り組みについてでありますが、7月に本県で開催された全国知事会議では、全都道府県の知事等に仮称地域医療基本法のパンフレットを配布したうえで、地域医療、そして日本の医療の未来を守るために、一刻も早く具体的な医師偏在対策を実現する必要があることを説明し、その場で複数の知事から賛成の意見がございました。
 今後におきましても、国の動向なども踏まえながら、地域医療基本法の実現に向けて情報発信や関係団体との連携等に取り組んでいくこととしており、来年1月には全国自治体病院協議会の院長・幹部職員セミナーで知事講演を行うことを予定しております。
 また、本県では平成20年に医療団体、商工団体、教育団体等で構成される県民みんなで支える岩手の地域医療推進会議を設置し、県民を挙げて地域医療を支える県民運動に取り組んでおり、地域医療基本法の必要性を国等に訴えていくため、同会議と連携し、取組の一層の強化を図ってまいります。


6.TPP、日欧EPA、日米FTAと岩手の農業振興について

・日欧EPAが岩手の農業に与える影響について

【千田県議】
 安倍政権は7月6日、日欧EPA(経済連携協定)の「大枠合意」を表明しました。これは、史上最悪の農業破壊協定であるTPPを土台に交渉されたもので、米の除外を除けばTPP並みかそれを上回る内容となっています。特にも農産品では、TPPでは手つかずだったソフトチーズに低関税輸入枠を設定し、関税をゼロにすることや世界的に競争力のあるワイン、パスタ、木材などの関税を撤廃するなど、TPPを上回る水準となっています。EUが示した試算では日欧EPAにより「日本への食肉や乳製品など加工食品の輸出が最大1.3兆円増加する」等としており、日本の農林業、とりわけ酪農への打撃は計り知れないものがあります。今回の大枠合意が今後の11カ国TPPや日米2国間交渉、すでに発効している日豪EPAにも波及することは必至であり、弱体化している日本の酪農に追い打ちをかけるものであります。
 そこで、日欧EPAが岩手の農業、とりわけ酪農や林業に及ぼす影響は大きいと考えますが、どの程度になるとお考えか、お聞きします。

【紺野農林水産部長】
 まず、日欧EPAの県内への影響についてでありますが、日欧EPA 交渉の大筋合意について、酪農においては、安価な乳製品の輸入量が増加した場合に、北海道産の加工原料乳が飲用向けに供給されることによる本県酪農への影響、林業においては、輸入品と競合する県産材製品等への影響などが懸念されております。
 一方、国においては、本年秋を目途にとりまとめる国内対策を踏まえ、影響分析を公表する考えを示しており、その詳細が不明な現段階におきまして、県への影響を推し量ることは困難であると考えております。

・コメの直接支払い交付金の廃止にについて

【千田県議】
 次に、コメの直接支払い交付金の廃止に伴う、岩手のコメ作りについてお聞きします。
 日照不足が心配されておりましたが、田んぼの稲は黄金色に染まり、刈り取りの季節を迎えました。しかしながら、来年からの米の生産調整の見直しに伴い直接支払い交付金(7500円)の廃止も行われることになれば、大規模に稲作を経営している法人や営農組合などは、このままでは経営が成り立たなくなるのではないでしょうか。先日、奥州市内で大規模な経営を行っている農事組合法人を訪問し懇談しましたが、役員からは、交付金の廃止による影響は、200万円の減収であり人件費分がそっくり無くなってしまうと話しておられました。
 まさに、岩手のコメ農家にとって、大打撃となる影響を及ぼすものでありますが、その影響は岩手県全体でどれ位の減収となるでしょうか、お聞きします。

【紺野農林水産部長】
 次に、米の直接支払交付金廃止の影響についてでありますが、平成28年度の本県への米の直接支払交付金の交付額は30億2000万円で交付件数は3万1904件となっておりますことから、県では、国に対し、交付金の廃止後においても、水田農業の担い手の経営安定に向けた支援を充実するよう要望しており、引き続き、必要な対応を求めてまいります。

・農業再生協議会について

【千田県議】
 また、岩手県では農業再生協議会によって、今後5年間の水田農業推進方針が策定され、需要に応じた生産を推進する方針が打ち出されました。その場合、この再生協議会を全国組織にしていく必要があるのではないかとの指摘がありますが、いかがでしょうか。

【紺野農林水産部長】
 次に、農業再生協議会についてでありますが、平成30年産以降において十分な対応が行われなければ、米の生産量が需要量を超え、全国的に米価が下落し、農業経営に大きな影響を及ぼすことが懸念されてます。
 このため、県では、これまで国に対して、需給安定に向けた実効性のある推進体制を確立するよう要望してきたところであり、引き続き、必要な対応を求めてまいります。


7.県立高校の再編について

【千田県議】
 この間、生徒数の減少により学級減が予定されている学校と学科改編が予定されている胆江管内3つの高校と葛巻高校を訪問して来ました。どの学校も、学級減は教師の減少につながることから、今実施しているきめ細かな指導ができなくなるのではないかと大変心配しておられました。特にも、胆江地区からは、他地区の高校に入学する生徒が200人もおり、中学校の先生方に地元の高校の特徴をよく知ってもらおうと、様々な努力がなされていました。例えば、1クラスになるのではないかと心配されている前沢高校では、先生たちが毎日ブログを更新しながら、地域に根差した学校の活動や生徒の活躍ぶりを多くの人たちに理解してもらうため取り組んでおり、先生との距離が近いなどで子どもたちの満足度も高いということであり、今年の一日体験入学に訪れた中学生は69人とのことでした。また、学科改編が見込まれる水沢工業高校では、生徒が自信を持って取り組めるようにとDプロジェクト(Dはドリームの略)を立ち上げ朝学習に取組む中で、機械加工2級技能士、電気機器組立2級技能士などでは県内初の高校生取得者を出すなど、資格取得者を増やすための努力が行われていました。これらの状況を見るにつけ、高校再編は地域にとっても大事な問題であり、各学校や地域の様々な努力や取組を重視しながら、検討すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。
 学科改編や学級減が実施された場合の職員体制について、教員が減らされた場合、教科指導が十分できなくなるとの心配がありますが、いかがでしょうか。

【高橋教育長】
 新たな県立高等学校再編計画は、生徒にとって良い教育環境を整備していくため、望ましい学校規模の確保による教育の質の保障と、本県の地理的諸条件等を踏まえた教育の機会の保障を大きな柱に、昨年3月に策定したものであります。
 県教委におきましては、前期再編プログラムを着実に実施することがまずもって重要と考えておりますが、併せて、各地域おける、ふるさと振興に向けた取組の推移や、入学者の状況等も十分見極めたうえで計画を推進していくこととしてしており、これまで、市町村や高校との丁寧な意見交換等に努めてきているところであります。
 県内の各地域においては、高校と連携し様々な魅力化向上の取り組みが進められておりますので、今後におきましても、地域との丁寧な意見交換等を行いながら、適切に対応してまいります。
 また、学科再編に伴う教員の配置に当たっては、一定の制約は出てまいりますが、できる限り生徒の進路希望に対応した指導に取り組むことができるように、教員の加配や兼務等の措置なども検討しつつ、適切な対応に努めてまいります。


7.核兵器禁止条約について

【千田県議】
 核兵器禁止条約は、7月7日、122か国の賛成で採択され、人類史上初めて核兵器の使用や保有を禁止する核兵器禁止条約の各国政府による署名が、9月20日ニューヨークの国連本部で始まりました。この条約は、核兵器の使用や保有を史上初めて禁止。核兵器の非人道性を厳しく告発し、核兵器の開発・実験・生産・製造・取得・保有・貯蔵・移転等とともに、「使用、使用の威嚇」を禁止しています。完全廃絶に向けた枠組み、被ばく者支援も盛り込まれました。
 しかし、日本は唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず、この条約に背を向け、国連会議に参加しないばかりか、日本政府は署名しない、批准しないと言っており、これに対し長崎県平和運動センター 被爆者連絡協議会議長の川野浩一さんが「あなたはどこの国の総理ですか」と問いかける場面がありました。本来であれば、核兵器禁止条約や核廃絶の運動の中心に日本がいなければならない筈です。
 県内では真っ先に達増知事に署名していただきましたが、岩手県民として高く評価をしたいと思います。
 私は、政府はすみやかに核兵器禁止条約に署名すべきと考えますが、改めて、知事のご所見をお聞きします。

【達増知事】
 核兵器禁止条約についてでありますが、核兵器や戦争のない平和で安全な社会が人類普遍の願いであり、我が国は平和憲法の下にいわゆる非核三原則を国是として、国の平和と安全の確保に努めています。
 核兵器廃絶に向けた取組は、世界各国が協議しながら着実に進めていくことが重要であり、岩手から核兵器廃絶の声を示すのは重要と考え、今年2月、県議会の各会派の皆様にも同席いただき、「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」いわゆるヒバクシャ国際署名を行ったところであります。
 日本は唯一の被爆国であり、政府においては、核兵器をなくしていこうという日本国民の思いを受け止め、核兵器のない平和な世界を構築するため、積極的な取り組みを期待するものであります。


≪再質問≫

・生活支援相談員の配置について

【千田県議】
 知事からは切れ目のない復興をということで進めていただきたいと要望したい。
 被災者生活再建支援金、住宅再建支援事業については、検討・協議中ということで、ぜひこれも前向きに進めていただきたい。
 被災者の心のケアについても、これからさまざまな複雑化した内容の相談が増えると思うので、中長期的に取り組むと答弁があったので、ぜひお願いしたい。
 生活支援相談員の配置だが、いろいろ人材確保という点で大変苦労されているとは思うが、有効求人倍率が高くなりなかなか引き受けてくれる人がいないということもあると思うが、待遇面で、1年雇用ということだったと思うが、何かそういう部分でもう少し長期的なスパンで委嘱できないのかお聞きしたい。また、生活支援相談業務について、国の予算が不安定だと聞いているが、今後の見通しについてお聞きしたい。

【保健福祉部長】
 生活支援相談員について。生活支援相談員の配置については、資格要件があり、看護師・社会福祉士のような資格を有する者が望ましいということもあり、なかなか人材確保に苦慮しているが、同じ方を継続して雇用できるようにするとともに、市町村や民生委員とも連携し、必要な見守り体制を確保していきたい。予算については、平成32年度までという見込みだが、心のケアについて昨年度予算が削減されたが、来年度の概算要求においては増額されているということで、そうした予算の確保についても国に要望していきたい。

・災害公営住宅の家賃低減事業について

【千田県議】
 災害公営住宅の家賃低減事業については、要望したということは承知した。県の制度があるからということだったが、収入基準を超過した被災者について、家賃がどんどん上がるシステムになっているわけだが、そうした方々も同じような扱いになっているか。実は民間アパートや新築もできない状況の中で大変困っている、そして県外に出た方もいると聞いているので、そうした方々についての対応についてお聞きしたい。

【県土整備部長】
 災害公営住宅において、一定の収入がある方における家賃について、入居後3年を経過した後で一定の収入がある方については、段階的に近傍の家賃と同額になっていくという制度になっている。これは、公営住宅自体が住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的としたものであるということ、一方で、入居後3年を経て一定以上の収入がある方については、住宅を明け渡すよう努力義務が生じること。また5年以上入居する場合には、事業主体が明け渡しを請求できるという旨も規定されている。この運用については、沿岸被災地の事情―民間賃貸住宅が不足し住宅確保が難しい状況であること、また基準を超える収入がある方についてもさまざまな事情があるので、こうしたことに配慮し、県では明け渡し請求については猶予するという運用を行うこととしている。市町村にもその旨を通知したところであり、今後も引き続き市町村と情報共有を図り、被災者一人一人に寄り添った暮らしの再建に努めていきたい。

・台風10号豪雨災害―防災対策について

【千田県議】
 水位周知河川これからの計画で、5ヶ年で20河川と答弁があった。たしか去年の質問で、1ヶ所あたり2000万円くらいかかると。お金も時間もかかるということで、そう簡単にはできないということだったが、簡易水位計というのが今研究され設置されているところがある。例えばそういうものも活用しながら、この間西和賀に行ったときに「ぜひ設置してほしい」というお話もあったので、市町村との相談にはなると思うが、ぜひ災害を防ぐ、人命を守る点からも、これを増やす方向で検討されるべきではないか。
 洪水想定区域等の中にある社会福祉施設の計画策定と避難訓練の実施について答弁があった。計画が76.7%、避難訓練が67.7%で、これは国の制度が変わって義務化された。やはり命を守るという点で、できるだけ早くこれが100%になる必要があると思うが、これについて、指導するだけではなく、いつまでにどうするかという対応が求められるのではないかと思う。県内広域振興局単位でまとめていただいた数を見ると、洪水浸水区域内の状況を見ると、県南広域振興局と県北広域振興局管内で不十分な計画が非常に多かったので、全県としても足りないと思うが、これらについて具体の取り組みが必要ではないか。

【保健福祉部長】
 洪水浸水想定区域内の非常災害対策計画の策定状況について、県南広域振興局管内では、要改善施設の割合が32.1%、県北広域振興局管内では35.1%と高い状況になっている。この結果を受けて、改めて市町村に対して改善・指導の徹底を依頼し、災害時の実際の避難行動に結びつけていくことを促すために、施設等が特に留意すべき事項を取りまとめて、市町村等を通じて施設へ周知したところである。早期に100%となるよう指導・助言を継続していきたい。
【県土整備部長】
 水位周知河川の指定にあたっては、まず観測体制ということで水位計を設置する必要がある。1基あたり2000万円程度かかるというもので、これについては近年、特に中小河川での観測体制強化という観点から、国で危機管理型水位計というものを技術開発しているところであり、1ヶ所あたり100万円台で整備できるものとして進められており、県としても勉強会に参加し、水位周知河川の指定に活用できるかどうか検討している。こういったものの活用も検討していきながら指定のスピードアップに努めていきたい。

・子どもの医療費助成について

【千田県議】
 知事から、現物給付の拡大については、ペナルティも新たに発生するので、市町村との話し合いでということだった。たしかに就学前についてはペナルティは8000万円だったと思うが、もし小学校6年生まで現物給付を拡大した場合、ペナルティはどのくらいになると試算されているか。

【保健福祉部長】
 小学校卒業まで現物給付を実施した場合の減額調整措置の金額は、約2000万円が市町村にたいし実施されるものと見込んでいる。

・児童虐待対策について

【千田県議】
 以前児童相談所に行ったときに、虐待の件数が大変増えているために、専任の対応チームが必要だが、それがなかなかできない、体制上できていないというお話だった。このくらい虐待の数が増えているとすれば、専任のチームをつくっていくことが必要だと思うのでお聞きしたい。

【保健福祉部長】
 専門職の配置については、一時保護人数は横ばいではあるが、身体的虐待など虐待により保護を要する児童が増えている傾向にあるので、要保護児童対策調整機関による専門職の配置ということで、児童の問題については専門性を要する人材が必要であり、そうした専門職に研修事項を義務づけることなどが対応として考えられ、そうしたことに市町村とも連携しながら取り組んでいきたい。

・地域医療基本法(仮称)について

【千田県議】
 地域医療基本法(仮称)について知事から答弁があったが、今年の全国知事会議の場で複数の知事から賛同の声があったと。来年も知事が講演するということだった。去年も一昨年も取り上げたが、少しずつ前進よりも、やはり今、この間東北・北海道の議員の研修会が秋田市であったが、そのときに私も岩手県の地域医療基本法について説明したら、初めて聞いたという方々が大半だった。パンフレットも事務局からいただき配布したところ、やはり東北・北海道にとっては、こういう法律の制定こそ求められるということで、座長にまとめていただいた。やはり知事会としても、県議会としても、大きな力で進める、そういう年にしていかなければならないのではないかと思うので、もう少し押し出した作戦を立てていただきたい。

【達増知事】
 地域医療基本法(仮称)の制定ということについては、北海道・東北地方知事会の国への提言書にも記載されているところであるので、さらにそれぞれの道内・県内への浸透も図ってもらえるように働きかけていきたい。
 また県内的には、みんなで守る岩手の地域医療推進協議会―あらゆる団体に参加いただいているような場もあるので、そうした団体を通じても全国に広げていくよう努めていきたい。


≪再々質問≫

・子どもの医療費助成―現物給付の小学校卒業までの拡充について

【千田県議】
 小学校卒業まで現物給付の拡大で2000万円のペナルティとお聞きしたが、就学前は8000万円だったので、それに比べればやりやすいのではないかと思うし、償還払いだと市町村の事務量が大変で、現物給付にすればすごく減るわけで、ぜひ市町村と前向きに、実施の方向で話をしていただきたい。

【達増知事】
 現物給付の拡大について市町村の意向をうかがっていると、減額調整措置が新たに発生するということのほかに、すでに行った現物給付の実施以降、対象者の医療給付費が大幅に増加しているという意見も聞こえてきており、現物給付の拡大についてはこうした市町村の考えも踏まえなければならないと思っているが、他方、地方創生・ふるさと振興という観点から見た場合、現物給付拡大の検討はしていかなければならないと思っており、市町村とのやりとりをきちんとしながら検討していきたい。