2017年10月4日 9月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
議案第1号は、2017年度岩手県一般会計補正予算(第2号)であります。240億円余の補正であります。補正後は1兆37億円余の予算額となります。具体的な内容について質問します。
・地域防災力強化プロジェクト事業費について
第一に、地域防災力強化プロジェクト事業費284万円余の補正で総額4226万円余となります。自主防災組織の育成強化に要する経費ということですがその具体的な内容を示してください。県内の自主防災組織の状況と、研修、具体的な訓練の状況はどう把握されているでしょうか。防災士の資格取得も重要と考えますが、防災士の状況と資格取得にあたっての県・市町村の支援はどうなっているでしょうか。今後の取り組みを含めて示してください。
【総務部長】
平成28年4月現在の自主防災組織の組織率は84.6%となっているが、市町村別に見ると、県北沿岸地域の7市町村は50%未満で、組織化が進んでいないことや、自主防災組織の活動が低調なところがあるといった課題があるととらえている。このため、今回、県内全ての自主防災組織を対象とした実態調査を実施することとし、県・市町村・自主防災組織のリーダー・有識者等による検討会議を設け、自主防災組織が抱える課題を明らかにし、県内の自主防災組織の組織化の促進や活動の活性化を進める方策を検討・実施しようとするための経費を計上するものである。
自主防災組織を対象とした研修等については、県が、自主防災組織リーダー研修会や、自主防災組織結成支援研修会、自主防災組織連絡会議を開催しているほか、今年度においては、7市町村で県の地域防災サポーターを活用した研修会を実施しており、これらについても、この検討会議で議論していただくなど、より具体的・効果的な取り組みにつなげていきたいと考えている。
防災士の状況等については、7月末現在、1614名の防災士の登録がある。資格取得にあたっては、宮古市・釜石市・二戸市が養成講座の研修機関への委託や、研修受講料の助成などの支援を行っている。県としては、防災士の方々に、住民への防災知識の普及や、自主防災組織の活性化などの役割を期待しており、県内の防災士20名を地域防災サポーターに登録し、先ほど申し上げた地域における研修会に派遣している。今後においても、市町村や日本防災士会岩手県支部等と連携を図りながら、地域防災力の向上に向け、地域主体の取り組みを支援していきたい。
・三陸総合振興推進費負担金について
【斉藤議員】
第二に、三陸総合振興推進費負担金が485万円余の補正となっています。平成31年度に開催する予定の三陸防災復興博(仮称)にかかる機運を醸成するための広報等に関する経費の追加ということですが、三陸防災復興博(仮称)の内容、位置づけ、今後の取り組みはどうなっているでしょうか。
【政策地域部長】
三陸防災復興博(仮称)は、平成31年に予定されている三陸鉄道の一貫経営や、ラグビーワールドカップ2019の開催など、三陸地域や国内外から大きな注目を集める好機ととらえ、東日本大震災津波支援への感謝の気持ちや、復興防災モデルを含めた新しい三陸・ひとつの三陸の姿を国内外に発信し、三陸地域の交流人口の拡大をめざす取り組みとして位置づけている。
内容としては、三陸鉄道の車両や駅を活用した企画のほか、防災や復興をテーマとしたシンポジウム、市町村・民間等が主体的に実施するイベントなど、三陸地域全体で一体的に開催したいと考えている。
また、復興の先を見据えた三陸地域の振興にもつながるよう、三陸ならではの体験旅行プログラムや、豊かな食材を活用した特産品の開発なども検討している。
現在、市町村等とも企画案の検討を行っており、今後早期に実行委員会を設立して、具体的な準備を進めることとしている。
・さんりく地域企業・新事業活動等支援費補助について
【斉藤議員】
第三に、さんりく地域企業・新事業活動等支援費補助が1098万円余の補正で総額7098万円余となります。これまでの実績はどうなっているでしょうか。
【復興局長】
この事業は、復興まちづくりにあわせた生業の再生を図るため、若者や女性をはじめ、被災地において起業や新事業活動など新たなビジネスを立ち上げようとする事業者にたいし、初期費用等の支援を行うもので、29年度当初予算において30件分・6000万円を措置した。年3回の募集を計画しているところ、これまで2回の募集において、仮設で再開した事業者が本設再開を機に中心市街地において新たな事業に取り組むなどの申込が増加しており、31件の事業計画を採択した。
大型商業施設の開業等にともない、今後さらに申込が予想されることから、今般の補正予算案において増額しようとするものである。
・復興道路における速度可変標識の整備費について
【斉藤議員】
第四に、警察本部の交通取締費の交通安全施設整備費が4448万円余の補正で、総額10億4167万円余となります。今回の補正は、復興道路における速度可変標識の整備に要する経費ということですが、全体では交通安全施設がどれだけ整備される見通しでしょうか。
【警察本部長】
平成29年度の全体での交通安全施設の整備の主な内容としては、信号機の新設は12基
で、盛岡市2基、奥州市・一関市・八幡平市・釜石市に各1基、復興対応分で釜石市に2基、大槌町に4基を設置することとしている。
可変標識の新設については49基で、すべて復興対応分で三陸沿岸道路に設置するものである。
道路標識の新設は、計999本で、久慈市におけるゾーン30に設置するものなどで、復興対応分は、三陸沿岸道路のインターチェンジの取り付け部分に88本を設置するものである。
・台風第10号災害による河川改修事業、土砂災害対策の進捗状況について
【斉藤議員】
第五に、河川災害復旧助成事業費が3億3800万円の補正となり、総額10億6200万円となります。今回の補正は、台風第10号による河川改修事業費の国庫支出金の内示等によるものですが、台風10号災害による河川改修事業の進捗状況は具体的にどうなっているでしょうか。今後の見通しを含めて示してください。
砂防事業費の7億5524万円余の補正も台風10号による土砂災害箇所における土石流対策施設の設置等の補正であります。併せて具体的な進捗状況と今後の見通しを示してください。
【県土整備部長】
河川災害復旧助成事業など各種事業を7河川に導入しており、詳細設計・用地測量を進めているほか、用地が確保された区間がこれまでに5河川で工事に着手しており、見通しとしては30年度から32年度にかけて順次すべての区間の完成を目指していく。なお今回の補正は、小本川など2河川の増額分である。
土石流対策の進捗状況は、30ヶ所で事業を実施中だが、うち昨年度事業化した16ヶ所については設計を終え、用地取得を進めており、平成30年度の完成を目指す。今年度事業化した14ヶ所については、現在測量や設計等を進めており、平成31年度の完成を目指し事業を進めている。なお今回の補正は、先行する16ヶ所のうち10ヶ所の増額分である。
・内陸部の災害公営住宅の整備、コミュニティの確立について
【斉藤議員】
第六に、災害公営住宅整備事業費が1億4862万円余の補正となり、総額96億4586万円余となっています。今回の補正は、内陸部に整備する災害公営住宅の建設等に要する経費ですが、内陸部の災害公営住宅の整備戸数と入居者はどう確定しているでしょうか。いつまでに整備される予定でしょうか。
災害公営住宅のコミュニティの確立と自治会の設立は重要な課題です。状況はどうなっているでしょうか。入居前に入居予定者の交流や自治会準備の取り組みが重要だと被災者支援の団体は指摘しています。内陸部の災害公営住宅を含めてしっかり対応すべきと考えますがどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
これまで、整備主体である県・花巻市・遠野市において、入居希望者の要件の確認を行い、整備戸数は、盛岡市内168戸、花巻市内30戸、北上市内34戸、遠野市内22戸、奥州市内14戸、一関市内35戸の計303戸の整備を予定している。
入居者については、要件に該当する希望者すべてが入居できるよう調整している。
完成時期は、盛岡市のアパート・一関市のアパートは平成30年度に完成予定で、その他の敷地の造成等が必要となる団地は平成31年の完成を見込んでいる。
【復興局長】
災害公営住宅のコミュニティについて。29年8月末現在で入居済みの県内の災害公営住宅団地146ヶ所のうち、30ヶ所では新たに自治会を組織し、79ヶ所では既存の地域自治会に入る形で、合わせて109ヶ所・74.7%の団地で自治会が組織されている。残りの37ヶ所についても、自治会の設立に向けた準備が行われている。
県ではこれまで、社協と連携し、生活支援相談員による入居者交流会や自治会の立ち上げ支援を行うなど、災害公営住宅入居者のコミュニティ形成を推進してきたほか、今年度新たにコミュニティ支援に課題がある市町を対象に、市町村と支援団体とを調整するコーディネーターを配置し、コミュニティ形成活動を支援している。
今後建設される内陸部の災害公営住宅も含め、県・市町村・支援団体が連携し、コミュニティ形成に取り組んでいく。
・高田松原の砂浜再生工事について
【斉藤議員】
議案第21号は、高田地区海岸砂浜再生(本格施工)工事の請負契約案件です。高田松原の砂浜再生をめざすものですが、どういう手法で砂浜再生をめざすのか。工事期間は平成31年3月15日までとなっているが、砂浜の再生はこの期間だけではできないのではないか。全体の砂浜は約1700mだったのに対し、今回の事業区間は1000mとなっているが、全体の再生の見通しはどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
手法としては、海岸に取っ手を築き、その間に採石と砂を段階的に投入し定着させ、砂浜景観の復元を図るものである。
全体1700mのうち、復興事業により200mの区間の試験施工に続き、今回当該区間を含む1000mの区間において本格施工に着手しようとするものである。残りの700mは、本格施工区間の砂浜完成後、砂浜の利用状況等を勘案の上、具体的な事業手法や着手時期を検討していく。
・宮古港鍬ケ崎地区海岸防潮堤工事の変更請負契約について
【斉藤議員】
議案第22号は、宮古港鍬ケ崎地区海岸防潮堤工事の変更請負契約に関する議案です。7回目の変更となったのはなぜか。この防潮堤は直立型の防潮堤ですが、傾斜型の防潮堤と比べた安全性、強度はどうか。地区での説明会では、維持管理費等について質問も出されているが、どう対応されているでしょうか。
【県土整備部長】
当該工事は、当初標準断面により発注したものであり、工事発注後の詳細な地質調査等を踏まえ、随時工法や工期の見直しを行ってきた。このほか、適用単価の変更や年度ごとの出来高の変更もあり、今回7回目の変更契約となるものである。また、防潮堤は、国が定めた基準により合同検査を行っており、直立系・傾斜系にかかわらず、強度・安全性については良好である。
維持管理費用については、地域の方々の説明において、県が負担する旨説明している。今後も定期的な点検や適正な修繕により施設の長寿命化に務めていきたい。
・簗川ダム取水放流設備(選択取水設備工)工事の請負契約案件について
【斉藤議員】
議案第39号は、昨日追加提案された簗川ダム取水放流設備(選択取水設備工)工事の請負契約案件です。
工事の内容、堤体工事、ダム事業全体の進捗状況はどうなっているか。8月24〜25日の大雨で、簗川の葛西橋水位観測所で氾濫危険水位2.5mを超える2.83mとなったが、被害はなかったか。降雨の状況はどうだったのか。平成14年7月11日の台風第6号の際には、氾濫危険水位を超える3.13mの水位となり、河岸が決壊する事態となったが、その後の堤防強化の取り組みはどうなっているか。
ダムより、堤防強化の取り組みこそ進めるべきと考えますがいかがでしょうか。
【県土整備部長】
今回の工事の内容は、ダムに付随する選択取水設備・取水ゲート・試験湛水用ゲート等の製作と据え付けを行うものである。
ダム事業全体の進捗状況は、総事業費530億円にたいし、29年度末までの事業費402億円・76%の進捗となる予定である。
ダム堤体の打設については、本年4月から開始し、9月末時点で47700立米が打設済みであり、進捗率は21%となっている。
8月末の大雨時の被害状況は、簗川流域の雨量観測所での総雨量は143mm、最大時間雨量は33mmを観測しているが、浸水被害はなかった。平成14年の台風6号の際は、堤防等の損壊被害が発生している。この被害河川については、災害復旧事業により復旧を行い、また一連の堤防についても、土質調査や安定計算などにより、所要の安全性を確認していることから、堤防の機能強化については実施していない。
簗川ダムは、100年に1度の取水に対して洪水調節する機能を有しており、ダムの完成により簗川沿川の治水安全度の向上が図られるものと考えている。
・県営住宅の家賃滞納者に対する訴えの提起について
【斉藤議員】
議案第32号は、訴えの提起に関し議決を求めるものです。県営住宅の家賃の滞納者に対して、住宅の明け渡しと滞納家賃等の請求をするため訴えを提起するものです。2名の訴えとなっていますが、1名は入居の実態がないということであります。
もう1人の藤原さんの場合、本人は年金生活者で、施設入所中。同居している3人の息子・娘さんたちは低賃金・低収入と思われます。生活の確立の見通しを立てることが先決問題だと思われます。福祉の機関と連携して、この方の生活再建の対策と合わせて滞納家賃の解決を図るべきと考えますが、そうした対策は具体的にどう取られたでしょうか。こうした生活困難な世帯が県営住宅の立ち退きを迫られれば、一層生活困難が深刻になると思われますが考慮されたのでしょうか。この訴えは撤回されるべきと考えますが答弁を求めます。
【県土整備部長】
ご指摘の事案については、これまで再三の家賃納入のお願いにも全く応じていただけなかったことに加え、今回の議案提出に至るまでの間に、分割納入の合意による和解の再三の呼びかけにも応じていただけなかったことから、やむを得ず提訴しようとするものである。
県では、滞納者に対する家賃納入のお願いの過程で、明らかに支払い能力に問題があると考えられる世帯については、福祉事務所や生活困窮者自立相談支援機関への情報提供も行っているが、今回のケースでは、一定の世帯所得があるということから、そのような対応は行っていない。
県営住宅の家賃については、低所得者の方がその所得に応じて納入可能な家賃が設定されており、家賃をいただいている他の入居者との公平性の観点から、今回提訴しようとするものである。
≪再質問≫
・台風10号豪雨災害の復旧状況について
【斉藤議員】
河川改修と土砂災害の復旧について、災害査定箇所の額に対して現在の発注額・率をしっかり回答して欲しい。
【県土整備部長】
8月末時点の発注状況は、県・市町村あわせて1891ヶ所のうち790ヶ所が発注済みである。
・宮古港鍬ケ崎地区海岸防潮堤工事の変更請負契約について
【斉藤議員】
直立型の防潮堤だが、この強度・安全性について。3.11の津波で、2009年に完成した釜石市の湾口防波堤、これは1200億円かけたが、あっという間に崩れた。国が言っている安全基準というのは、どういう津波に対する安全基準なのか。今度の直立型がそれに耐えられるのか、耐えられないのか。
【県土整備部長】
構造にかかわらず、国の基準により津波や地震により作用する、耐えられる構造であると確認できているので、強度・安全性については、形式にかかわらず同等である。
・県営住宅の家賃滞納者に対する訴えの提起について
【斉藤議員】
この方の家賃は25800円で低額である。滞納額は14ヶ月で53万円余。世帯主は年金生活者で施設に入所中である。そうすると、この方だけで月10万円以上かかる。そして3人の子どもさんは残念ながら低所得・低収入である。まさに非正規の実態である。
こういう生活に困った方々というのは、必要な支援制度を知らない。そういう相談機関にも行けないというのが実態である。だから福祉機関にきちんと繋げたかと聞いた。こういう厳しい状況の中で退居を迫られたら、まさに行き所がない。それに対して訴えという法的手段で脅して解決しようとするやり方は、手を尽くしていないのではないか。きちんと生活再建の見通しを立てることと合わせて、家賃の滞納問題を解決すべきではないか。決して大きな額ではない。
盛岡市の場合だったら必ず機関が連携してあたる。県と盛岡市の連携となるかもしれないが、そういう気持ちの通った、システムをつくるべきではないか。
【県土整備部長】
県営住宅の明け渡しの提起をした後においても、分割納入等の合意ができれば、和解により入居の継続を認めた前例もある。ただちに今回の提訴により強制退去を求めるものではなく、今後も引き続き入居者の生活状況を踏まえた対応を行っていきたい。その中には、盛岡市の福祉機関との連携も入ってくると思う。