2017年10月11日 決算特別委員会
知事に対する総括質疑(大要)


1.東日本大震災津波の復興の課題について

・住宅再建の現状、支援について

【斉藤委員】
 日本共産党の斉藤信でございます。東日本大震災津波から今日で6年7ヶ月目の月命日となりました。東日本大震災津波からの復興は、引き続き県政の最大の課題です。
 被災者の住宅再建は引き続き切実な課題です。6月末の仮設入居者の住宅確保の意向調査では、回答した4955世帯のうち、意向決定済みの4694世帯の中で、自立再建の希望が2824件で60.2%となっています。この自立再建の希望を実らせることはきわめて重要です。最大の課題は資金の問題です。
 震災前と比べて住宅建設費用はどれだけ高騰しているでしょうか。平成26年4月からは消費税が8%に増税されました。この増税分を加えるとどれだけの負担増となっているでしょうか。

【達増知事】
 県内の建築士・設計事務所・工務店・林業・木材産業関係者などからなる岩手県地域型復興住宅推進協議会では、被災地に建設された復興住宅の工事費等の調査を実施しており、その調査結果では、引き上げ分を含む消費税込みで、県全体では震災前の坪単価48.5万円から平成28年10月頃の坪単価57.2万円に18%程度上昇している。また沿岸市町村においては、震災前の坪単価47.9万円から平成28年10月頃の坪単価は59.3万円と24%程度上昇している。
 平成26年4月からの消費税率引き上げの影響については、国の住まい給付金制度等により、消費税率引き上げ分に見合う負担軽減措置が行われている。

【斉藤委員】
 30坪の家を建てれば約300万円の値上げとなると思います。
 国の被災者生活再建支援金の継続・延長はいつごろまでに明らかになるのでしょうか。

【達増知事】
 平成30年4月10日までとなっている申請期間の延長については、本支援金の事務を行っている公益法人都道府県会館に対して、9月20日付で要請を行ったところだが、同会館から、再延長を必要とする理由の精査や、すべての申請が完了すると見込まれる時期について確認を求められており、現在市町村に照会しながら協議を進めている。
 昨年度は、同会館との協議を12月に行ったが、今年度は被災者の方々に早めに周知できるよう協議開始時期を早めたところであり、できるだけ早期に延長決定となるよう協議を進めていく。

【斉藤委員】
 昨年は12月に協議していつ結論が出たのでしょうか。
 10月に発行されたばかりの「我が家のくらし再建プランのしおり」を見ると、「加算支援金は平成30年4月10日まで」となっている。これを見た人はがっくりきて、住宅再建をあきらめてしまうのではないか。

【達増知事】
 昨年度、公益法人都道府県会館との協議については、県から同会館に12月16日付で要請し、12月28日付で延長決定の通知があったところである。
【復興局長】
 加算支援金が30年4月10日となっているが、当初の期間が37ヶ月ということで26年4月10日までであった。それが国の制令改正により、4年間さらに延長できるということで30年4月10日までとなった。その後については「1年ごと」となっており、現在要請の手続きを進めている。

【斉藤委員】
 復興局が発行したこのしおりでは、期限が30年4月10日となっている。注釈も何もない。これを見たら被災者はガッカリしてしまう。きちんと注釈をつけてやるべきではないか。

【復興局長】
 事務を担当している公益法人都道府県会館と協議中だったので、発行したものについては確定的ではないということで記載しなかったものである。

【斉藤委員】
 「協議をして1年ごとに延長が可能」などと記さないと、出したばかりのしおりがまったく意味がなくなる。
 県独自の被災者住宅再建支援事業費補助金、生活再建住宅支援事業補助金、被災宅地復旧工事助成事業の延長をいち早く打ち出すべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 県独自の被災者支援について。被災者住宅再建支援事業費補助金、被災宅地復旧を含む生活再建住宅支援事業補助金については、持ち家による住宅再建を促進するための本県独自の支援策として、県と市町村が共同で実施しているものであり、いずれも平成30年度までを実施期間としているものである。
 この延長については、住宅再建の前提となるまちづくりの進捗状況等を踏まえ、市町村の意向もうかがいながら、被災者の方々が安心して自立再建することができるよう、被災者生活再建支援金の申請期間の延長協議と合わせて検討していきたい。

【斉藤委員】
 だから冒頭聞いたように、6月末の意向調査で2824件・60%の方々が自立再建したいと答えている。はっきりしているではないか。これに応えて、国に先駆けて延長の方向を示すべきではないか。

【達増知事】
 市町村の意向も重要と考えるので、市町村の意向もうかがいながら、また公益法人都道府県会館に対する被災者生活再建支援金の申請期間の延長協議と合わせて検討していきたい。

【斉藤委員】
 私が知事を評価しているのは、本当に被災者一人一人に寄り添って、被災者の幸福追求権を追求する、これが復興の理念だと。だとしたら、これだけ多くの被災者が住宅再建を希望しているとはっきりしているわけなので、これにきちんと応える必要があるのではないか。

【達増知事】
 市町村の意向もうかがながら検討していくわけだが、冒頭に紹介された仮設入居者の意向も踏まえて検討していきたい。

【斉藤委員】
 私は、釜石市長や陸前高田市長から、知事にこれはぜひ言明していただきたいとお願いされたから聞いたので。市町村の意向ははっきりしているのではないか。

【達増知事】
 首長さんがそれぞれそういうことであれば、市当局との協議についてもおおむねそのような方向にいくのではとそのように感じた。

【斉藤委員】
 こういうときこそ知事の決断が被災者を励ますので、ぜひいち早くやっていただきたい。
 住宅再建にとっても、住宅の補修にとっても、上限350万円の災害援護資金制度(平成30年3月31日まで)の申請期間の延長が必要と考えますが、県としてどう取り組んでいるでしょうか。

【達増知事】
 東日本大震災津波にかかる災害援護資金の本県市町村における貸付実績は、平成29年8月末までで1076件・27億5900万円余となっている。この申請期間について、東日本大震災津波に対処するための特別の財政援助および助成に間する法律および関係制令による特例措置では、平成30年3月31日までとされているが、県では、被災地における面整備の進捗状況等を踏まえ、6月に国に対して、特例措置の延長について要望を行った。今後も機会をとらえて国に働きかけていく。

【斉藤委員】
 自民党政権の対応も厳しく問われていると思う。

・被災者の孤独死等の実態について

【斉藤委員】
 この間の仮設住宅・災害公営住宅における孤独死、自殺の実態はそれぞれどうなっているでしょうか。
 県社協が被災者の生活実態調査を行いましたが、その調査結果はどうなっているでしょうか。
 孤独死や自殺を出さない具体的な対策について示していただきたい。

【達増知事】
 7月末現在、災害公営住宅と仮設住宅において、一人暮らしで亡くなられた後に発見された方は、災害公営住宅で13人、仮設住宅で41人となっている。同じく震災関連の自殺者は44人となっている。
 生活実態調査については、県社協では、被災者の暮らしの実態と今後どのような支援が必要なのかを把握するため、平成28年度に東日本大震災被災者実態調査を行った。この結果では、災害公営住宅入居者のうち60代以上が7割以上を占め、うち一人暮らし・二人暮らしの割合がそれぞれ4割程度となっている。孤立傾向にある人は、地域での暮らしに対して満足度が低く、周囲との関わりの濃淡が地域での暮らしや実感に影響を与えている。重点的に見守りを行っている世帯で、生活支援相談員等とのつながりに頼っている場合は、周囲との関わりの頻度が低く、日常生活の中での安否確認の漏れが心配されること等の課題が指摘されている。地域の住民がお互いを理解し、交流を深めるような支援活動に注力する必要があるなど、今後の活動の方向性も示されている。県としても、市町村や関係機関と連携し、復興しつつある地域で安心した暮らしを取り戻すため、生活支援相談員の活動等を地域の実情に応じて見直すなど、被災者一人一人に寄り添った住民同士のつながりをつくっていくコミュニティ支援に努めていく。
 孤独死や自殺を出さないための具体策だが、災害公営住宅や仮設住宅における孤独死や自殺を予防するためには、先の実態調査の結果なども踏まえ、被災者が地域で孤立を深めることがないような対応が必要である。県では、県社協と連携し、生活支援相談員による被災者への個別支援や、住民相互に支え合うコミュニティ形成等の地域支援の両面に取り組むとともに、心のケアセンターにおいて、医師による相談や専門職員による個別訪問のほか、保健所と連携し、悩みを抱えた被災者を支援するゲートキーパーの養成など、市町村が行う心の健康づくりに専門的立場から協力してきたところである。県としては、仮設住宅から災害公営住宅への移行の本格化など、被災地の状況や被災者ニーズを踏まえ、市町村や関係機関と連携を図りながら、一層被災者一人一人に寄り添ったきめ細かな支援に努めていく。

【斉藤委員】
 県社協の調査では、経済的困窮を訴えているのは9割近くで、今後さらに悪くなるというのが45%だったと。こうした実態に心を寄せてしっかりした支援を強化していただきたい。

・陸前高田市の復興の課題について

【斉藤委員】
 復興祈念公園の整備と4つの震災遺構の保存・管理と活用はどうなっているか。県の責任を明確にして答えていただきたい。
 気仙川の河川改修におけるJR鉄橋の復旧と調整はどうなっているか。

【達増知事】
 高田松原津波復興祈念公園については、国・県・陸前高田市が連携して整備を進めており、県では、平成31年に開催予定のラグビーワールドカップを見据え、震災津波伝承施設および公園の整備に取り組んでいる。国においても、国営追悼祈念施設や道の駅高田松原の整備を進めていただいている。公園内の震災遺構について、被害の程度や破壊力の大きさなどの津波の脅威を後世に伝える貴重な資料であり、遺構の周囲に安全対策を講じたうえで、外部から見学を行う、いわゆる「見守り遺構」として活用することとしているところである。今後、遺構の所有者である陸前高田市と協議のうえ、それぞれの遺構の具体的な保存・管理と活用のあり方について検討していく。
 県では、気仙川の高田地区から住田町向川口地区までの区間において、平成27年度から、築堤や河道掘削による河川改修を実施しているところである。JR東日本が被災した橋梁を復旧するとした場合には、気仙川の河川改修計画の区間内であることから、県との事前協議が必要となる。現段階では、JRから協議を受けていないが、JRからの要請に応じて河川改修の計画図面を提供しているところである。今後、JRから協議があった場合には、河川改修計画との調整を図りながら、必要な手続きを進めていく。

【斉藤委員】
 4つの震災遺構の管理・活用については、県が責任をもってぜひやっていただきたい。
 気仙川の改修については、JRに早く鉄橋を復旧すべきと。気仙川の改修の見通しが出ないとできないという市の話だったので、JR待ちにならずに大いに協議して、黙っているとJRはやらないなどと言うので、しっかりやっていただきたい。

【達増知事】
 遺構については、所有者である陸前高田市と協議し、それぞれの遺構の具体的な保存・管理と活用のあり方について検討していきたい。
 気仙川の河川改修については、JRからの要請に応じて河川改修の設計図面の提供を行っているところであり、JRから協議があった場合には河川改修計画との調整を図りながら必要な手続きを進めていくという段取りとなる。

2.台風第10号災害の復旧の課題について

【斉藤委員】
 被災者の住宅被害の状況と被災者生活再建支援金の申請件数はどうなっているか。
 全壊の世帯も住宅を補修して再建する世帯が多いように見受けられるが、支援の拡充が必要ではないか。

【達増知事】
 9月1日現在での住家被害の状況は、全壊478世帯、大規模半壊534世帯、半壊1943世帯、床上浸水121世帯となっている。住宅再建の支援としては、全壊・大規模半壊の世帯に対し、全県に適用された被災者生活再建支援法に基づき支援金が支給されており、基礎支援金1030件、加算支援金538件となっている。同法の支給対象とならない半壊・床上浸水世帯にたいし、市町村が支援金の支給を行う場合、県が補助金を交付する県単独制度を創設し支援金を支給しているところであり、この支給件数は、半壊1536件、床上浸水44件となっている。
 支援の拡充については、台風10号災害では多くの住家被害が生じており、被災者一人一人に寄り添いながら一日も早く安心して暮らせる環境を取り戻すことが重要である。被災者生活再建支援金の加算支援金は、全壊・大規模半壊等の世帯を対象とするものだが、その支援金額は被災した自宅を補修することとした場合には、新築した場合の半額となる。発災から1年後の時点で、自宅を補修することとして加算支援金を申請した被災者の割合が、東日本大震災津波では61.9%であるのにたいし、台風10号災害では77.3%と高い。このため県としては、被災者が安心して自力再建できるよう、国に対して被災者生活再建支援金の増額および制度の要件緩和と充実を求めているほか、幅広い財政需要に対応できる弾力的で自由度の高い総合的な支援制度の創設等を要望しているところであり、今後も機会をとらえて必要な財源措置や制度改正等について国に要望していく。

【斉藤委員】
 台風10号災害の場合、全壊被災者が住宅の補修で対応しているのが77.3%、岩泉町の場合は84.8%と、全壊規模でも補修している。こうなると数百万円規模となるので、ぜひこの支援策は、国にも要望しているようだが、ぜひ対応して被災自治体を支援していただきたい。

【達増知事】
 東日本大震災津波では、国の特別交付税などにより設置した復興基金を財源として、県と市町村が共同で、県内で住宅を再建する方に最大100万円を補助する被災者住宅再建支援事業を行っているほか、県産材の活用やバリアフリー住宅に対する追加的な支援措置を行った。
 台風10号災害においては、被災3市町はすみやかに住宅再建へ200万円の独自支援策を決定し、県としては、市町村独自では支援が困難な商工業など産業分野に対する支援事業を行ったほか、局地激甚災害指定を受けた被災3市町にたいし、早期復興を支援するために、自由度の高い県単交付金を交付した。
 このような独自支援を台風10号災害関係で行っているが、今後さらに被災市町・県ともに多額の財政需要が見込まれることから、県としては国に対し幅広い財政需要に対応できる弾力的で自由度の高い総合的な支援制度の創設等を要望している。

3.子どもの医療費助成の現物給付化の拡充について

【斉藤委員】
 昨日の本会議で、子どもの医療費助成を小学校卒業まで現物給付化を求める請願を全会一致で採択された。知事はこれをどう受け止めているか。

【達増知事】
 議会の決定については重く受け止めたい。

【斉藤委員】
 小学校までの現物給付化を進める上での課題は、2000万円の新たなペナルティ=医療費の増加ということだったが、来年度から就学前までのペナルティはなくなる。どれだけの額になるか。

【達増知事】
 平成30年度より未就学児を対象にした現物給付にかかる国保の減額調整措置が廃止されることとなり、減額されなくなる国庫負担相当分=ペナルティがなくなる分は、これまでの実績に基づき試算すると年間約3200万円と見込まれる。

【斉藤委員】
 そうすると来年から3200万円ペナルティがなくなると。新たに負担がかかるのは2000万円だと。だとしたら、新たな負担なしに小学校卒業まで現物給付できると思うがいかがか。

【達増知事】
 現物給付化によるペナルティは、市町村国保に対し本来交付されるべき国庫負担金が減額されているものであり、減額分は各市町村が国保財政の中で補填しているものである。
 未就学児分のペナルティ廃止にともない補填しなくてもよくなる財源を、小学生の現物給付拡大により新たに発生するペナルティの補填に活用するかどうかということについては、各市町村が判断して決定すべきものであり、県が主導できるものではないと考えている。

【斉藤委員】
 だから県議会の請願採択を踏まえて対応してほしい。新たな負担がかからないと。
 いま本当に現物給付は若い世代の方々から歓迎されている。手続きも簡単、負担もない。なぜこれが進まないのかと不思議なぐらいである。
 小学校入院まで医療費助成を拡充したときに、その点でペナルティ分を対応してほしいと、市町村に。そのペナルティ分がなくなるので。そういう経過からいっても、これはただちに拡充するという方向を、おおいに県がイニシアチブをとって進めるべきではないか。

【達増知事】
 今年の9月に、市町村に現物給付の拡大についての意向を確認したところ、新たな減額調整措置が発生することから国保の財政状況が厳しい中では困難だ、現物給付の実施以降に医療給付費が大幅に増加している状況であり現時点で拡大する予定がない、など、現物給付の拡大に慎重な意見もあった。
 現物給付を小学校卒業まで拡大する場合、市町村国保に対する国庫負担金の減額措置が発生するので、市町村の意向を十分に踏まえ慎重に検討する必要があると考えているが、昨日の本会議で、現物給付の小学校卒業までの拡充を求める請願が採択されたので、その趣旨も踏まえて市町村との協議を進めていきたい。

【斉藤委員】
 医療費が増えたことについて一言触れると、盛岡市の一人親世帯の生活実態調査で、病院・診療所に行かなければならないのに受診できなかったというのが23.2%あった。こういう方々が今安心して受けられるようになったのだと思う。子どもを病院に連れて行くのに時間休をとったりして行く、無料だから行くわけではない。そういう意味で、現物給付化というのは大きな役割を果たしていると思うので、ぜひしっかり対応していただきたい。

4.消費税の増税の影響について

【斉藤委員】
 平成26年4月からの消費税8%増税の影響はどうだったか。1人当たり、1世帯当たり、県民全体の負担増はどうか。
 10%増税になったらどういう影響を受けるか。同様に示してください。

【達増知事】
 政府の試算をもとに推計すると、国・地方合わせて、消費税率8%となったときに負担増は、県民一人当たり年間約5.2万円、1世帯当たり年間約12万円、県民総負担は年間約623億円余と推計される。
 10%となったときの負担増は、同様に政府の試算をもとに推計すると、軽減税率適用後で県民一人当たり年間約2.7万円、1世帯当たり年間約6.2万円、県民総負担は年間約338億円余と推計される。

【斉藤委員】
 すごい負担である。8%増税で1世帯あたり12万円、県民全体で623億円だと。これが消費を落ち込ませている。いま年間22万円の消費が減退しているので、本当にこれは深刻な事態で、もしこれが10%増税になったら県民全体の負担額は962億円、1000億円近い負担増を強いられる。
 消費税というのは使い方ではない。こういう大増税は中止すべきだと思う。消費税8%増税で消費不況に陥ったが、さらなる10%増税について知事の認識をお伺いしたい。

【達増知事】
 消費税率8%引き上げ後の平成26年の県内経済は、引き上げの影響による大型小売店販売額や新車登録台数といった個人消費の落ち込みなどの影響が見られた。このように消費税増税は、経済的に弱い立場にある方々や、我が国の経済を支える多数の中小企業に負担を強いることになるため、国民生活の多方面に多大な影響を及ぼすことが懸念される。特に本県の場合は、東日本大震災津波や台風10号災害の被災地への影響も大きく、被災者の方々の暮らしの再建や生業の再生の妨げとなることも懸念される。
 県としては、消費税増税によって経済的に弱い立場にある方々が困窮することがないよう、また地域に根ざした産業に十分配慮して地方経済の落ち込みや復興の遅れを招くことのないような対応を国に求めていく。

5.雇用確保対策について

【斉藤委員】
 県内誘致企業にとっても、中小企業にとっても、雇用確保問題は切実な課題と考えるが、実態をどう把握されているか。
 県内高卒者の県内就職率の状況はどうか。全国、東北各県と比べてどう認識されているか。当面緊急に10ポイント以上県内就職率を高める取り組みを進めるべきと考えるがいかがか。

【達増知事】
 県内の雇用状況の実態については、直近の8月末の有効求人倍率が1.38倍と52ヶ月連続で1倍を超える高水準を維持するなど、求人側の企業側にとっては厳しい環境が続いていると承知している。新規求人の実数についても、平成27年度の12万8707人から、昨年度は13万256人と1549人・1.2%増加しており、特に従業員300人未満の中小企業等においては、平成27年度の12万4387人から、昨年度は12万6268人と1881人・1.5%の増加となっている。全国的に、少子高齢化の進展や高学歴化等により、新規学卒者の就職者数が伸びない中で、中小企業のほか、誘致企業も多数立地している岩手県にとっては、人材の確保が急務の課題だと認識している。県としてはこれまで、いわてで働こう推進協議会の取り組みをはじめ、新規学卒者の県内定着の促進や、U・Iターンによる人材確保等に取り組んできたが、今後においてはこのような取り組みを一層強力に推進し、誘致企業のみならず、県内企業全体の持続的発展につながるよう、推進体制の強化も含めて検討を進め、人材の確保に努めていきたい。
 高卒者の県内就職率については、平成28年度は県内各地域に就業支援員を配置し、高校との連携を強化するとともに、キャリア教育支援セミナーの開催等の取り組みを展開したことなどにより、平成29年3月卒で66.3%となり、昨年度比2.2ポイント上回った。東北各県や全国と比較すると、東北各県の29年3月卒の県内就職率は、高い順に、宮城県81%、山形県78.1%、福島県76%、岩手県66.3%、秋田県66%、青森県57%となっており、全国では第37位となっている。高卒者の県内就職率の高い地域は一般的に、企業集積が進んでいることや、歴史的・地理的な特性もあり地元志向が元々強い地域と言われていることに加え、近年新卒者の就職者数が減少する中で、官民の連携により地元企業の理解促進に力を入れて取り組んできているものと考えている。岩手県においても、これまで就業支援員による県内就職の支援のほか、企業見学会やインターンシップなどの取り組みを展開した結果、着実に地元就職への意識が高まってきており、県内就職率は上向いてきている。特に今年度においては、高卒者の県内就職率の向上を図るために、いわてで働こう推進協議会に、高卒者の県内就職ワーキンググループを設置し、県内就職率の高い地域の現状分析・調査等を行い、その結果を共有し、今後の取り組みについて意見交換し構成団体の取り組みに反映させていくこととしている。また各構成団体とも連携しながら、企業における雇用労働環境の整備をはじめ、キャリア教育やインターンシップ事業の展開による県内企業と高校生のマッチングの一層の充実をはかることなどにより、本県における新規高卒者の県内就職率がさらに高まっていくよう取り組んでいく。

【斉藤委員】
 いわてで働こう推進協議会は、6月に岩手の若年者雇用動向調査結果を出した。それによると、岩手県出身者では62.9%が岩手県で働きたいと思っており、県外の人も19.7%が岩手県で働きたいと。一方で、岩手県内に本社をもつ企業を1社も知らない者の割合が37.3%もあったと。岩手県内の企業がどういう役割を果たしているのか、しっかり伝えながら、岩手で働きたいという高校生・大学生の期待に応える取り組みを抜本的に強化すべきである。少なくとも高卒は、宮城・山形・福島のところまで一気に引き上げるという取り組みが必要ではないか。

【達増知事】
 県内就職を希望している割合の方が実際就職した割合より高いという現状は非常にもったいない話であり、それだけ地元志向が高い岩手の若者たちにしっかり応えるように、企業や行政が頑張らなければならない局面だと思う。そして、今の地元就職志向の率の高さに大人たちが甘えることなく、その割合をさらに高めて、そして地元就職率もさらに高めるように、県が司令塔にもなり先頭にも立ちながら、岩手の総力を結集して県内就職率を高めていきたい。

【斉藤委員】
 問題は、県内就職率の目標が低すぎるということである。これを10ポイントは引き上げて目標を達成する取り組みが必要ではないか。

【達増知事】
 その辺はいわてで働こう推進協議会の場をはじめ、経済団体、各産業関係団体とも話し合いながら決めているところだが、先ほど申し上げたような、希望する数字も高め、実際の結果も高めていくという意識を、経済・行政・地域社会一体となり進めていきたい。