2017年10月13日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)
・台風10号豪雨災害の復興について
【斉藤委員】
被災者の状況把握と見守りの取り組みはどうなっているか。
被災者の生活実態として、被災した自宅、仮設住宅、みなし仮設等にどのように居住されているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
岩泉町においては、仮設住宅での生活を余儀なくされる被災者の方々が多くいらっしゃることから、町の保健師が宮古保健福祉環境センターや岩泉町社協の協力を得ながら、訪問による健康調査および保健指導のほか、被災世帯の巡回・見守り、被災者のつどいの場の開設を継続して行っている。また生活支援相談員6名を、町および関係団体に配置し、被災世帯の巡回・見守りや相談支援などを行っているほか、社協やNPO法人などの支援関係者による岩泉町被災者支援連携会議を毎月開催し、各関係団体が連携し被災者支援に取り組んでいる。さらに、NPO法人と関係団体が共同し、多様な課題を抱える方への生活相談支援も行っていると聞いている。
被災者生活再建支援金の加算支援金等を活用して、被災した自宅を補修して居住している世帯が多いものと認識しており、補修にかかる加算支援金を活用している世帯は、9月1日現在、県全体で416世帯となっている。
新規に仮設住宅に入居している世帯は147世帯、東日本大震災時に整備した仮設に入居している世帯が38世帯、みなし仮設26世帯で、計211世帯となっている。
【斉藤委員】
岩泉町は何度も訪問しているが、保健師が十数人配置されて地域に密着した取り組みをされており、6人の相談員も巡回しているということで大変努力されていると思う。
ただ、被災した自宅で生活している方々が多く、補修した人、これからも補修する人もいる。まだ加算支援金を申請していないが補修する予定の方はどのように把握されているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
岩泉町が29年8月に行った調査では、対象406世帯のうち203世帯が補修をして現在住まわれているという状況にある。
【斉藤委員】
加算支援金をまだ受けてなくて補修の予定はどうかと聞いた。加算支援金の受給はまだ半分なので。
【台風災害復旧・復興推進課長】
岩泉町で、補修で加算支援金を受給している方が247世帯、それ以外に全壊世帯・大規模半壊の世帯は586世帯が岩泉町にあり、その一部の方々が加算支援金をもらうものと考えている。
【斉藤委員】
基礎支援金の申請が1030件で加算支援金が538件、実際に再建に着手したのは53%と。
災害公営住宅の整備の予定はどうなっているか。
小本川・安家川の河川改修との関係で、移転対象世帯はどのぐらいになっているか。集落の維持の対策はどうなっているか。
【台風災害復旧・復興推進課長】
災害公営住宅は、岩泉町においては現在、町内4地区10ヶ所で災害公営住宅建設のための用地取得を進めており、一部では取得済みとなっている土地があると聞いている。町においては、早ければ年度内に着工を行い、30年度内にすべての災害公営住宅の完成を目標としていると聞いている。
移転対象世帯について。岩泉町が8月に取りまとめた住民意向調査では、全壊等406世帯のうち、災害公営住宅の入居希望74世帯のほか、被災した場所とは別な場所への自力での再建希望が32世帯、町が整備する移転地への再建希望が13世帯となっている。また、住宅再建の意向が未定の方は24世帯おり、今後の河川改修の進捗状況等によりこの中からも元地からの移転が必要となる世帯が発生すると見込まれる。
岩泉町においては、災害公営住宅の建設のほか、希望する方への移転用地の整備を行う予定だが、いずれの場合も町内の岩泉地区・小川地区・小本地区・安家地区のそれぞれの地区内での移転が可能となるよう、できる限りの配慮を行うこととし、集落やコミュニティの維持に努めていく方針と聞いている。
【斉藤委員】
本当に地元に対する愛着が強いので、さまざまな形の支援を強化していただきたい。
・特定被災地公共交通調査事業について
【斉藤委員】
事業の実施状況と被災地の交通確保対策はどうなっているか。
【交通課長】
この事業は大震災直後の23年度から制度化され、被災地の公共交通について10分の10の補助、6000万円の上限ということで、これまでの間被災地の交通を支えてきた重要な制度である。当初5年間ということで27年度までの制度だったが、県として延長を要望し32年度まで延長となっている。昨年度は7市町村・67路線にたいし4億5457万円余が補助されている。今年度は、6市町村・65路線にたいし2億4851万円余が補助されている。
被災地の交通確保だが、復興まちづくりは着実に進んでいるものの、面的な整備が流動的な状況にある中で、公共交通網も街の形に応じて変化しながら再構築している。被災地では高齢化が進んでおり、近くのバス停に歩いて行けない方、高台団地に移転し従来の大きなバスが入れないところもある。そういったところについては、機動性のあるコミュニティバスやデマンドバス、団地内でのバスターミナルのシステムといった部分にきめ細かい交通施策が必要と考えている。したがい県としては、市町村をしっかり支援していくという意味で、有識者による活性化支援アドバイザーを派遣しながら、地域交通の再構築を応援すると。また、特定被災地公共交通調査事業をしっかり活用いただきながら、被災地の交通体系の構築をしっかり応援していきたい。
【斉藤委員】
特定被災地公共交通調査事業は大変重要な役割を果たしていると思うが、条件があり、仮設団地を回ると。昨年までは野田村もやっていたが今年はなくなった。
いま、陸前高田市にしても中心商店街がやっとつくられはじめ、病院が高台に整備中と。そういう形で街の姿が変化しているので、それを回る新たな交通体系が必要だと思う。
1つは、特定被災地公共交通調査事業を拡充・発展させ、新しい市街地や病院などを回れるようなものにも活用できるようにしなくてはならない。もう1つは、それがダメだと言うのなら、実証運行をやっているわけなので、実証運行で明らかになった公共交通のあり方、その政策提言をして、復興は10年では終わらないので、さらに10年ぐらい新しいまちづくりを形成していくという取り組みになると思う。そういう新たな復興の公共交通体系の確保のための調査事業の新たな構築が必要ではないか。
【交通課長】
さまざまご提言いただいた。特定被災地公共交通調査事業については、2つ問題があると思っており、1つは、期間が延長されたが32年度までであり、復興まちづくりはまだまだ続くものであるので、期間の延長が重要だと。もう1つは、政策の拡充ということであり、仮設住宅が集約化されていく中で、仮設のみではなく、新たな生活拠点―災害公営住宅・高台団地などを結ぶような制度設計にすべきではないかと。そういうことで6月の政府要望にも盛り込んでいる。
なお、実証試験であるので、当然、成果・評価を踏まえて新たな政策提言をしていくのも1つの視点だろうと思うので、ご指摘の点を踏まえ国にたいし、被災地の現状とともに伝えたい。
・復興にかかる応援職員について
【斉藤委員】
昨年度の実績、今年度の状況、来年度の見通しはどうなっているか。
台風10号豪雨災害でも、特に岩泉町は技術職員を強く求めているが、どうなっているか。
【市町村課総括課長】
昨年度4月1日現在での応援職員の確保状況は、必要数734人にたいし確保数672人で充足率は91.6%。今年度10月1日現在では、必要数676人にたいし確保数626人で充足率は92.6%となっており、単純比較すると充足率は1ポイント向上している。来年度については、現在の必要数について被災市町村にたいし聞きながら取りまとめているところであり、全県で具体的にはお示しできないが、復興事業の進捗にともない27年度をピークに必要数が減少しているので、今後もそういった状況が続くのではないかと考えている。ただ一方で、区画整理事業や一部の復興事業は長期化が想定され、地域コミュニティの再生や被災者の見守りなど継続的に取り組む必要がある事業もあるので、引き続き応援職員の確保が必要と考えており、昨年度から始めた沿岸被災地の視察事業だったり、全国を訪問し要請活動に引き続き取り組み、来年度も充足率の維持・向上に努めていきたい。
台風10号豪雨災害の関係については、10月1日現在で、宮古市・久慈市・岩泉町それぞれで、必要数26人にたいし15人が確保されている。土木職員が特に必要となっているが、岩泉町については14人にたいし11人が確保されている。県としても、内陸市町村からの人的支援をお願いしたり、全国を訪問する際にも台風10号豪雨災害の状況についても合わせて説明することで、全国にも応援を要請しており、県の平成30年度採用の任期付職員を11人ほど考えているので、そうした方を派遣することにより人材確保に努めていきたい。
・JR山田線の復旧について
【斉藤委員】
釜石−宮古間の復旧状況、新駅の設置、駅舎等の整備状況はどうなっているか。
盛岡−宮古間の復旧の見通しと山田線活用の対策はどうなっているか。
【交通課長】
現在、流出した区間4工区8キロについてはJRの東北工事事務所が、非流出区間4工区47.4キロについてはJR盛岡支社が復旧工事を行っている。JRにおいては27年10月に宮古市に工事事務所を開設し、閉伊川の橋梁や大槌川の橋梁といった難しい工事の地区から工事を着手している。現在は閉伊川の橋梁等も完工しており、橋脚復旧や盛り土作業や線路復旧なども進めており、30年度末の開業をめざして工事はおおむね順調に進んでいるとしている。30年度半ばまでには工事を完了し、残りの半年で信号試験や試運転などを行うと聞いている。
新駅等の整備は、宮古市において、JR山田線沿線の八木沢や払川地区の2ヶ所に新駅を設置するということが計画されている。30年度末に三鉄に移管になるが、それに向けて現在この2駅の実施設計を三鉄が行っており、来年度工事に着手すると聞いている。駅舎の再建については、大槌と山田においては、復興まちづくりの拠点スポットに駅を位置づけ、新しい中心市街地に復旧させるという計画で、周辺施設などとも十分機能連携し、例えば観光拠点機能のようなものの併設なども計画している。
盛岡−宮古間の復旧については、一昨年12月に土砂が崩落し運休が続いていたが、昨年9月から崩落斜面の所有者である林野庁が本格的に工事を進め、本年4月からは、この土地を借り受けて鉄道事業を行っているJRが軌道部分や斜面下部の工事を進めており、今月末にも工事が完了すると聞いている。先日JRの発表があったが、運行再開日は11月5日となっており、約1年11ヶ月ぶりの再開となる。
運行再開後の山田線の活用については、現在再開時にあわせて盛岡市や宮古市がイベントを行うと聞いており、もともとこの路線については、内陸から沿岸、三陸鉄道につながるという基幹路線なので、沿岸の観光施策や三陸鉄道の連携といったことで、運休前にやっていたJRと三鉄との相互乗り入れの企画列車だとか、宮古市においては例えば2月に毛ガニまつりがあるが、こういったものと連携したようなイベント企画でもって盛り上げていくということを聞いている。
・U・Iターン者と若者の定住対策について
【斉藤委員】
U・Iターン者の状況、復興支援員、地域おこし支援員の状況と県内定着の状況、若者定住対策について示していただきたい。
【地域振興監】
28年度の移住者数は、ハローワークを通じて県外から就職された方、市町村の窓口等を通じて移住された方などを積み上げたもので1333人となっている。
28年度の復興支援員は県34名、市町村142名の計176名が活動した。県の委嘱した復興支援員については、現在までに退職者が27名おり、うち7割の19名が県内に定住した。地域おこし協力隊については、市町村で80名と拡大しており、28年度までの任期終了者18名のうち、全国平均と同程度だが約6割の11名が県内に定住している。県では、復興支援員や地域おこし協力隊等を対象に、任期後の定着も支援に入れながら、活動のスキルアップや隊員のネットワークづくりのための研修会の開催、起業の支援制度や各種セミナーなどの情報提供を行っており、引き続き市町村や関係団体と連携し定住につながるよう取り組んでいきたい。
若者の定住については、やはり移住・定住を促進するためには、やりがいをもって働きたいと思うような魅力のある仕事の確保といった部分が重要な要素の1つと考えている。このため、商工労働観光部と連携し、昨年度から、岩手の移住相談窓口である「いわて暮らしサポートセンター」にキャリアカウンセラーを追加配置し、移住と就職の一体的な相談機能を強化した。あわせて、若者や子育て世代をターゲットとしたセミナー等を開催している。移住者への個別の支援については、市町村の役割が重要だと考えているが、県内市町村においては、例えば釜石市が雇用促進住宅を取得し、新婚世帯やU・Iターン者などを対象とした定住促進住宅として活用している例、葛巻町や一戸町が若者や子育て世帯向けの定住促進住宅を整備している例があるほか、空き家バンク制度を活用した取り組みも広がっている。県としては、市町村にたいしこのような住宅施策を含めた県内外の移住施策の情報を提供するとともに、今年度から新たに、県外からの移住者が空き家バンクの登録物件の改修を行った場合、市町村がそれに支援する場合に対する補助を新たに設けたところであり、市町村との連携を強化し若者の定着や住宅確保につながるよう取り組んでいきたい。