2017年10月16日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・国保の実態と広域化の問題について
【斉藤委員】
岩手県国保加入者の所得状況は、所得なし28.7%、100万円未満33.5%で、合わせて62.2%となる。こうした中で一世帯あたりの国保税、課税所得の推移、負担率の推移はどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
国の公表データをもとに把握しており、前年度の数値についてはまだ公表されていないことから、27年度の数値で申し上げる。27年度における本県の一世帯当たりの総所得は115万7千円であり、この金額から基礎控除33万円を差し引いた課税所得は82万7千円、国保税額は13万6千円となっており、一世帯当たりの課税所得に占める国保税の割合=負担率は16.5%となっている。
これらの数字を平成18年と比較すると、課税所得は11万円減少、国保税額は1000円の減少、負担率は1.9ポイント増加となっている。
【斉藤委員】
10年前との比較が出たが、課税所得が11万円減少しているのに、国保税は1000円しか変わっていないのはなぜか。
【健康国保課総括課長】
医療の高度化や高齢化の進展などにより、保険給付が増加している中で所得額が減少しているということで、負担額が増加しているということになる。
【斉藤委員】
今の答弁は間違いで、一人当たりの医療費は、10年前は37万5800円、27年は36万3090円と減っていて、国保税は67464円から82785円に上がっている。医療費は下がっているのになぜ国保税は上がるのか。
【健康国保課総括課長】
10年前の医療費だが、後期高齢者医療制度ができるなど、10年前とは単純比較できないと、仕組みが違うということである。
【斉藤委員】
国保税が10年前から15000円も上がっている。課長の答弁は全然根拠がないのではないか。
【健康国保課総括課長】
いずれ医療費全体が非常にいま高騰しているということであり、これは国保に限らず、社会保障全体が伸びているということである。
後期高齢者医療制度ができたときの国保の一人当たりの医療費は28万4千円なので、そこから見ると8万円ほど増えているということである。それにともない一人当たりの税率も増えている。
【斉藤委員】
後期高齢者医療制度ができたときの75歳以下の方々の国保ということでいいか。
協会けんぽの場合、年収180万円、これは月15万円のフリーターの場合だと8〜10万円である。札幌市の国保は14万3千円になるが、岩手県の場合はどうなるか。
【健康国保課総括課長】
盛岡市の場合の例ということで、年収180万円の単身世帯で所得割・均等割・平等割を合計した課税額は17万3550円、負担率9.6%となる。
【斉藤委員】
低所得者が多い国保税は、労働者の保険と比べると1.5〜2倍になる。ここに国保税の構造的な問題があると思う。
低所得で高い国保税ということで、どういうことが起こるか。滞納が増える。岩手県は平均で10%、盛岡市は16%で6世帯に1世帯にのぼる。払えない実態―滞納世帯・率・額は昨年度の状況でどうなるか。そしてそれに対する財産差し押さえの件数はどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
県内市町村における滞納世帯数は、28年度の実績で20617世帯・10.9%、累積滞納額は66億円。差し押さえについては、28年度の実績で2783件、約13億2千万円となっている。
【斉藤委員】
払えずに滞納すると。そうすると2つのペナルティがかけられる。1つは財産差し押さえ、もう1つは保険証の取り上げである。実は財産差し押さえが岩手県は全国でトップクラス、これはきわめて重大である。全国的な岩手の状況はどうなっているか。
保険証の取り上げ=短期保険証・資格証明書の発行ということになるが、これはどれだけになっているか。
【健康国保課総括課長】
29年9月1日現在で、資格証明書159世帯、短期保険証5531世帯となっている。
【斉藤委員】
資格証明書の発行はこの間繰り返し取り上げてきたのでかなり減ってきたが、市町村ごとに若干の違いがあるので。
しかし短期保険証は軽視できない。5531世帯のうち929世帯・1222人が未交付である。保険証がないから病院にかかれば全額負担である。こんな冷たいことは絶対にやってはならない。実際に盛岡市は、短期保険証も交付はたった5件で、基本的にやめている。連絡先が分からないところだけ発行できなかったと。盛岡市がやっていることを全県的にやるべきだと思うが、保険証の取り上げがあっていいのか。
【健康国保課総括課長】
短期保険証・資格証明書の発行については、国保納税者の納付相談の機会を確保するために交付しており、市町村に対しては、滞納者個々の実情に十分配慮したきめ細かな対応をするよう要請している。
滞納処分については、やはり税負担に関する公平性を確保するために、担税能力がありながら納付していただけない方に対して、市町村において十分な調査を行った上で実施していただいているものと認識している。
【斉藤委員】
お金がなくて払えない、そういう方々は役場に相談に行こうとしても行けない。行けない人には保険証を交付しないという悪代官みたいなやり方があるのか。盛岡市は基本的に行っていないのだから、困っている人にきちんと保険証を交付して、医療が受けられるようにして相談に対応するのが当たり前ではないか。こんな冷たいやり方でいいのか。
【保健福祉部長】
短期保険証については、市町村に対しても、滞納者個々の事情に十分配慮したきめ細やかな対応をするように要請している。ただ、担税能力がありながら納付していただけない方に対しては、十分な調査を行った上で滞納処分を実施しているところである。
盛岡市の事例もご紹介いただいた。盛岡市は、まさに本当に払えない世帯かどうかという実態を見て交付していると聞いているので、県全体としてもそうした取り組みを進め、市町村が滞納者の生活実態をきめ細かく把握するようにしていきたい。
【斉藤委員】
滞納者の方々は、所得が少なく高い保険税で払えない方々である。それに対して財産差し押さえる、保険証を取り上げるというやり方は根本的に見直すべきである。実際に盛岡市はそのようにやっているので。一番人口が多く被保険者が多いところでそうやっているのだから、他の市町村ができないわけがない。部長が言うように、本当に実態を把握して、心の通った国保行政を進めるべきだと思う。そういうことをしなかったら国保の広域化は大変なことになる。
あまりにも国保税が高いので一般会計からの繰入をしているが、どれだけの市町村がどれだけ行っているか。
【健康国保課総括課長】
28年度において、17市町村で総額8億8千万円余となっている。
【斉藤委員】
33市町村の半分以上が繰り入れているのが実態である。
国保はこういう構造的問題を抱えているが、この構造的問題をどう打開しようとしているか。
【健康国保課総括課長】
医療の高度化・高齢化の進展により、保険給付費が増加している中で、国保の被保険者の課税所得額が減少していることから、県民の国保税に対する負担感が増加しているものと認識している。
今回の制度改革において、毎年3400億円の財政支援の拡充ということで、財政基盤の強化が図られる。保険税の負担の伸びが一定程度抑制可能となるということで、ただ一方で、今後も医療費の増加が見込まれることから、県としては、国の財政責任のもと将来にわたる持続可能な制度の確立や保険料の平準化に向けてさらなる財政措置が必要と考えている。
【斉藤委員】
今年の7月に全国知事会は、国保制度について4つの改善を提言しているが中身を示していただきたい。
【健康国保課総括課長】
いま手元にございません。
【斉藤委員】
1つは財政支援の拡充で、全国知事会は、国保の広域化の前提として1兆円の財政支援を求めたが3400億円に値切られた。そういう意味でこの財政支援は本当の解決にならなかった。全国の一般会計からの繰入は3800億円なので。
2つ目は医療保険の公平で、子どもの医療費無料化とペナルティの全廃。こうしたことが提起されている。
国保の構造的問題を打開するには、全国知事会が言っているような方向で、特に均等割に子どもが入ると。子どもが多いところほど均等割で人頭税みたいに国保税が高くなるのは見直すべきである。このような改善をしっかり図るべきではないか。
国保の広域化で、皆さんの資料を見させていただいた。医療費が高くなるから広域化しても値上げになるということだったが、盛岡市は27年度で一人当たりの医療費が37万1980円だった。陸前高田市は37万963円でほぼ同じ。ところが保険税として納めるべき一人当たりの額を試算すると、盛岡市は11万5199円、陸前高田市は15万1989円である。同じような医療費で陸前高田市はなぜこんなに高くなるのか。
【健康国保課総括課長】
医療費指数と所得指数というものがあり、それに応じた配分ということになっている。陸前高田市については、震災後の医療費の増加分に対して国の特別調整交付金で措置された部分があると。その部分が減額されるということがあり、その分についても保険税でまかなうということがあり、陸前高田市の方が高くなっている。
【斉藤委員】
いま述べたことはあまり合理性がないと思う。27年度の医療費で示したので。
【健康国保課総括課長】
1つに、一部負担金の低減分について、いま減免している部分があるが、その減免分についても医療費として積算されている状況になっている。それで減免しているところが高く出ているという実態もある。ただ、これについては国の方で見直しするということで検討しているので、今後その部分が一部負担金の低減分を医療費給付の中でみないということになれば、陸前高田市の試算結果は低くなると思っている。
【斉藤委員】
国保の広域化で新たに試算するときに、全国一律で行うが、結局医療費が同じになって、陸前高田市は安い国保税でやっているのに、広域化したらこのように1.5倍にもなる。やはり試算の仕方に大きな問題がある。実態に合っていない。とりわけ沿岸被災地は軒並み大幅な値上げである。国の数式に基づいて試算すれば高くなるというのは根本的欠陥ではないか。国にもしっかり問題提起しないと、激変緩和措置がされたとしても激変緩和措置はなくなるので。そこを県はしっかり分析して改善を提起すべきではないか。
【健康国保課総括課長】
本県の場合、国保制度改革での変更とちょうど重なるような形で東日本大震災津波の制度の見直しの部分がたまたま重なった部分があり、そこで歪みが出ているということがある。
まず国からきている特別調整交付金について、できるだけ減らさないよう先延ばししていただきたいということ、医療費指数の見直し―一部負担金の減免分を入れないような見直しといったものについて要請をしており、9月にも国に要請してきた。4月に東北・北海道ブロックの会議があったときも具体的な数値や試算結果を示して、国に説明している。
【斉藤委員】
いずれにしても、今日は皆さんの資料に基づいて質問したので。所得が低く国保税が高い。10世帯に1世帯、盛岡は6世帯に1世帯が滞納している。そして厳しいペナルティがかけられると。盛岡市がやっているように解決していただきたい。
国保の広域化については、沿岸被災地が1.3倍や1.5倍に上がるような試算の仕方に根本的な欠陥があるのではないか。全国一律でいいのか。このことは本当に制度として不完全なのではないか。
激変緩和措置の方針を見ると6年間となっているが、平成30年度は28年度並みに抑えると。これはこれでいいと思うが、6年間でまた元に戻ったら高い国保税を押しつけられるということになるので、そういうことも合わせて改善の方向を検討すべきではないか。
【健康国保課総括課長】
激変緩和措置については、いま国から示されている財源については6年間ということで、その中で激変緩和措置を講じることになるが、その後についても、それまでの間にいろいろ状況も変わってくるとは思うが、急激な増加にならないよう、基本的には国が責任をもって財政措置を講じるべきだということをずっと要望してきており、これからも要望していきたい。