2017年10月19日 決算特別委員会
農林水産部(水産部門)に対する質疑(大要)


・漁業・水産業の復興状況について

【斉藤委員】
 昨年度の産地魚市場の水揚げ量・額は、震災前と比べてどういう状況になっているか。

【漁業調整課長】
 市場全体では、水揚げ量88000トンで震災前の51%、金額では202億円で震災前の87%となっている。そのうちサケについては8000トン(36%)・58億円(74%)、サンマは22000トン(42%)・40億円(109%)、スルメイカ4100トン(22%)・26億円(76%)となっている。

【斉藤委員】
 水揚げ量全体で震災前の51%、金額は87%ということで、6年7ヶ月経過した中では、大変厳しい現状。とりわけ昨年今年と、主要魚種であるサケ・サンマ・スルメイカが大不漁に陥っていることが、復興に打撃を与えていると感じる。
 養殖の関係だが、ワカメ・コンブ・ホタテ・アワビ・ウニの昨年度の生産量・額、震災前の比較を示していただきたい。

【漁業調整課長】
 ワカメは15000トン(68%)・37億円(88%)、コンブは5000トン(47%)・8億円(56%)、ホタテ貝は3500トン(56%)・18億円(104%)、アワビは209トン(61%)・15億円(67%)、ウニは97トン(80%)・8億円(105%)となっている。

【斉藤委員】
 養殖も採介藻も、主力のワカメ・コンブ・ホタテで大変厳しい状況にある。

・漁業の担い手育成・確保について

【斉藤委員】
 漁業就業者・経営体の推移はどうなっているか。28年3月に策定した漁業担い手育成ビジョンに基づく取り組みはどうなっているか。

【漁業調整課長】
 漁業センサスの値となるので平成25年のものになるが、6289人となっている。経営体数では3770経営体となり、減少している状況にある。
 岩手県担い手育成ビジョンについては、地域漁業を担う多様な担い手の育成ということと、漁業就業希望者の受け入れ体制の整備という2本立てで取り組みをしている。担い手の育成については、具体的には、中核的な漁業経営体の育成ということで、漁業経営の経営力向上の研修や、小規模な経営体の生産の効率化、若者・女性の活躍促進などに向けて支援をしている。漁業就業希望者の受け入れ体制の整備については、漁業担い手対策の推進母体となる就業者育成協議会の設立ということで、沿岸7市町村で設立している。また次世代を担う就業希望者の確保、就業情報の発信・共有などをして取り組みを進めている。

【斉藤委員】
 漁業センサスの値だったので、5年前と比べると約3割減ぐらいだったと認識している。
 岩手県漁業担い手育成ビジョンはいろんなメニューがあるが、具体的な財政的支援が弱いということを指摘してきたが、国の支援が細くなってそのままになっているのではないか。

【漁業調整課長】
 担い手育成の事業については、長期研修という国の事業がある。震災後については、漁業復興担い手確保支援事業というものがあり、長期研修にかかる受け入れをする漁業者に対する支援というのを行ってきた。その後、この事業については27年度までの募集で終了しており、現在は、新規漁業就業者総合支援事業ということで、これは全国対象の事業だが、そちらを活用して研修の支援をしている。

【斉藤委員】
 国も復興途上のわりには途中でやめてしまい、結局枠が狭くなって行われている。約3割が漁業就業者・経営体が減少している中で、本当に担い手確保に本気で取り組まなければいけない。
 市町村では独自に財政支援もして担い手確保の取り組みをやっているところが少なくないので、県としてしっかり対応すべきである。

・水産加工業者の状況について

【斉藤委員】
 水産加工業者の再建の状況、製造・出荷量と額、震災前との比較はどうなっているか。

【水産担当技監】
 県の復興局が平成29年8月に実施した被災事業所復興状況調査では、水産加工業では、被災事業所の88%が事業再開、68%がほぼ震災前の状況に復旧したと回答している。
 生産量については、国の調査によると、平成27年の実績で約99000トンと震災前の83%となっている。
 生産額については、国の調査で、平成26年の実績で621億円と震災前の86%となっている。

【斉藤委員】
 平成26・27年のデータなので、その後に大不漁が起きているので、現状は厳しくなっていると思う。
 8月末に主要な水産加工会社を訪問して現状を聞いてきた。あの時点でも、前年に確保した冷凍サンマでしのいでいて、それも9月でだいたい底がつきそうだと。しかし新たな水揚げはないという状況だった。ここは一定の規模の水産加工会社だったので、原料は輸入が半分もしくはそれ以上だと。そうしないと通年で商売ができないということだった。
 そこで県内の水産加工会社の輸入魚種・量は分かるか。

【水産担当技監】
 業者に対してどのくらい入っているかという統計は見たことがない。県内全体の加工業者に対する輸入量の統計はないと思う。

【斉藤委員】
 先ほどの答弁で、岩手では水揚げが激減しているので、外から買ったときには輸送費の補助があると。これはだいたいどういうところでの買い付けが実際の補助の対象になっているか。

【水産担当技監】
 距離的な制約はないので、例えば北海道に買い付けに行き、その分の運賃が掛かり増しということについては補助の対象になる。

【斉藤委員】
 いずれ漁業も水産加工業も、震災から6年、7年目を迎えて、復興の途上で新たな困難に直面している。
 88%が再建していることは素晴らしいことだと思うが、サケにしてももっと震災前から落ち込んでいるのではないか。そして5年経過すると借金返済が始まる。そういう二十の困難を抱えているので、しっかり状況を把握して、あらゆる支援策を講じていただきたい。

【水産担当技監】
 たしかに原料がなかなか確保できない中で、加工業者の冷蔵庫も空いているという話は聞いている。
 まずもって、原料が今一番潤沢なのはイワシ・サバで、まずはこれを本県の魚市場に漁船を誘致して水揚げをしてもらうと。かつては、イワシがかなり獲れた年があり、そのときは岩手県の水揚げでも10万トン以上あったかと思う。それを処理するような能力があったので、そういう今獲れている魚種を誘致してくるということが必要ではないかと思っている。それについては、国の事業で、水産加工業等販路回復取り組み支援事業というものがあり、これは機器整備のほか、新商品開発のためのマーケティング調査費だとか、商談会・フェア等の旅費補助といったものがあるので、こうした事業を活用し、加工業の振興を進めていきたい。

【斉藤委員】
 その補助事業の実績はどうなっているか。

【水産担当技監】
 この事業は、平成27年度に創設され、県内加工業者31件が利用している。

・小型漁船漁業の経営実態とサケ資源の公平配分を求める裁判について

【斉藤委員】
 小型漁船漁業の実態と経営状況をどのように把握しているか。

【漁業調整課長】
 小型漁船の漁業者数は、漁業センサスの値になるが、無動力船と20トン未満の動力船の経営体数で、平成20年度の2519経営体にたいし、平成25年度は2125経営体で84%となっている。
 小型漁船漁業者の経営状況については、本県単独の統計データはないが、国による本県を含めた被災地域の漁船漁業経営体の経営状況調査では、震災前平成22年度の漁業所得水準を100とした場合、平成27年度は84というものがある。

【斉藤委員】
 小型漁船漁業者というのは、経営体では一番多くを占めるわけで、この方々の経営を守ってこそ岩手の沿岸漁業の振興があると思う。そして大不漁の中で、こういう方々の経営をどう守っていくのかという対策、支援策をどう考えているか。

【漁業調整課長】
 このような水揚げが少ない中で厳しい状況が続いているので、漁船漁業の不漁対策としては、漁場探索のための情報等の迅速な提供をしていくということと、資源管理を徹底して資源を継続して活用していくということ、国の資源管理漁業経営安定対策制度、漁業セーフティーネット構築事業などによる漁業共済などからの減収補填などで漁船漁業の不漁対策に対応していきたいと考えている。

【斉藤委員】
 もう少し具体性に欠けるが、実態も声も聞いて対応していただきたい。
 サケ資源の公平配分を求める裁判が行われているが、原告・被告双方の主張・論点はどうなっているか。今後の裁判の見通しはどうなるか。

【漁業調整課長】
 サケの刺し網にかかる裁判の状況だが、これまで9回の口頭弁論が行われ、裁判では、不許可処分の理由の適法性と、刺し網によるサケ採捕禁止の合理性が主な争点となっている。
 今後は、12月1日に第10回の口頭弁論の予定となっており、この時点で新たな証拠等の提出がなければ結審となる見込みと聞いている。