2017年10月20日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)


・土地区画整理事業について

【斉藤委員】
 土地区画整理事業の整備状況、整備された区画の活用状況、住宅再建の状況を示していただきたい。

【まちづくり課長】
 29年6月末の整備状況は、完成宅地2209区画・約4割となっている。今後の見通しは、29年度末で約7割、30年度末で約9割、32年度末ですべてが完成の見込みとなっている。
 土地利用意向調査については、市町村が工事の進捗状況等により必要に応じて実施している。大槌町・釜石市・大船渡市・陸前高田市における意向調査によると、「土地利用意向有り」が約4割〜8割の状況となっている。
 県としては、土地利用が促進されるよう、国とともに担当者会議等を通じて他市町村の取り組み状況等について情報共有を図るなど、必要な支援を行っていく。

【斉藤委員】
 土地区画整理事業は、だいたい地域の中心部で行われており、まちづくりと直結する。それが現段階では42%、今年度中には7割までいくということだが、これは本当に復興の遅れといってもいい課題だと思う。あわせて、遅れたために、整備された区画が活用されない事態が予想される。4割〜8割という答弁があったが、これは中長期的な活用を含めたもので、実際に聞いている範囲では、整備された区画にすぐ家を建てたい、活用したいという声は約3割である。本当にこれはまちづくりにも関わる、地元の商店街の再建にも関わるので、区画整理事業を進めることと、それがしっかり活用される支援を強めていただきたいと思うがいかがか。

【まちづくり課長】
 意向調査の欠課を踏まえ、例えば大槌町においては、空き地バンク制度や区画整理区域内の各種補助制度などを8月から導入している。他市町村においても対応を検討していると聞いており、県としてもそれらの取り組み状況の情報共有を図りながら必要な支援を行っていく。

・陸前高田市の中心市街地の整備について

【斉藤委員】
 1つはシンボルロード、これは復興祈念公園から山手に避難をすることを想定した道路だが、これがかなり幅の広い道路で、最後まで整備されるとなっているか。
 2点目は、アップルロードから高田病院・保健センター・高田小学校のエリアに結ぶ道路が、仮称:高田―米崎間道路と言われているが、この整備の見通しはどうなっているか。

【都市計画課総括課長】
 シンボルロードの整備については、おっしゃる通り、津波等が発生した場合に主要な避難路の1つであり、高田松原津波復興祈念公園を通り国道45号から高田地区の高台に至る高幅員の道路として、平成25年から陸前高田市で事業を進めているものである。延長としては、全体が1920mで、全線高幅員の道路として整備されると聞いている。
【道路環境課総括課長】
 仮称:高田―米崎間道路の進捗状況は、本路線は高田地区の高台に移転する医療施設や小学校や住宅街と主要地方道・大船渡広田陸前高田線(通称:アップルロード)を接続し、米崎・小友・広田地区と連絡するなど、防災・医療・産業における地域間の連携を確保する道路で、平成26年度に陸前高田市が事業着手したものである。これまでに、現地測量や設計を進め、現在は用地取得を実施しており、今年度から一部工事に着手する予定と聞いている。
 県としては、今後とも早期整備が図られるよう技術的な助言など必要な支援を行っていきたい。

【斉藤委員】
 高田―米崎間道路は平成30年度までの事業期間になっていると思うが、そういう方向で事業が進捗していると受け止めていいのか。

【道路環境課総括課長】
 現在公表されている事業期間としては平成26年度から30年度だが、現実的なところとすると、あと2、3年はかかるのではないかと考えられる。

【斉藤委員】
 現地に行くとまだ姿が見えないので、大変心配している。事業は26年度から着手されているので、県立高田病院は来年早々にオープン、高田小学校もつくられるということで、道路がその時期と合わさって進められることが本来一番いいので、ぜひ県としても支援を強化して進めていただきたい。

・災害公営住宅のコミュニティについて

【斉藤委員】
 災害公営住宅のコミュニティの確立と集会所・支援員事務室の活用状況についてお聞きしたい。

【住宅課長】
 災害公営住宅における自治会の設立はコミュニティ確立の大きな要素であることから、これまで設立に向けた支援に取り組んできた。8月末現在で、県・市町村で供用開始している141団地のうち105の団地で、単独または近隣の自治会に組み込まれる形で自治会が組織されている。
 集会所の利用については、おおむね月2、3回程度、各市町村社協などが主催するお茶会などに利用されているほか、自治会活動が活発な団地では、住民活動の拠点として自発的な利用が始まっている。
 県営の災害公営住宅に設けている事務室については、現時点では支援員の配置がなされていないが、自治会の活動の事務室として活用され始めている。

【斉藤委員】
 阪神淡路大震災の教訓を踏まえて、災害公営住宅はかなり広い集会所、支援員の事務室まで整備されている。活用状況は集会所で月2〜3回程度で、やはり不十分だと思う。そういう点でのさまざまな支援が必要である。先日釜石市に行った際に、県営の平田住宅では、場所はあまりいいところではないが、最近は釜援隊も支援して集会所を使用して放課後児童クラブをやっている。そうすると、お年寄りも若い母親も来て、そういう方々との交流もうまくいっていると。これは市社協や釜援隊の支援もあってのことだが、1つの良い参考例になるのではないか。ぜひ集会所が使われるような、自治会をつくってもつくりっぱなしではいけない。コミュニティというのは人と人との絆なので、せっかく整備した集会所や支援員の事務室が使われるようにぜひ手立てをうっていただきたい。

・台風10号豪雨災害による河川改修について

【斉藤委員】
 台風10号豪雨災害による河川改修事業と、それにより立ち退きを迫られる被災者対策についてお聞きしたい。

【河川課総括課長】
 小本川など7河川で導入しており、そのうち小本川および安家川の2河川については、移転対象となる家屋がそれぞれ50戸の計100戸と見込まれている。
 正確な戸数や補償内容については、安家川は8月上旬から順次建物等調査算定業務を進めており、現在対象建物等の調査および補償額算定作業を行っている。
 小本川についても、住民説明会で合意が得られた箇所から順次建物等調査算定業務を発注できるよう準備を進めている。
  なお、補償にあたっては、調査時点における対象建物等の財産価値および取り壊し工事費とうについて、岩手県県土整備部の公共用地の取得にともなう損失補償基準等に基づいて算定するものである。
 住宅再建については、岩泉町において住民意向調査を実施し、災害公営住宅の建設や希望する地区内での移転が可能となるよう取り組んでいるとうかがっている。
 県としては、町と密接に連携を図り、丁寧な説明に努め、地域住民の皆さまの理解を得ながら取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 小本川・安家川で移転が求められる世帯が100戸と、かなりの規模である。被災者の聞くと、どれだけの補償額が出されるのかによって、自立再建か災害公営住宅か決めかねている。年内にでもそこまで示せるのか。

【用地課長】
 安家川の補償の関係だが、先ほど総括課長から建物等調査算定業務の委託をしているという答弁をしたが、この完了見込み時期は10月下旬〜11月下旬を見込んでいる。
 現在、受注者において対象建物の調査や補償額の算定を行っており、県ではその結果を受け、補償内容の整合性のチェックを行い、できる限り地権者の皆さまには早い時期にと考えている。そこで説明をさせていただいた上で、事業への協力と移転先等を検討する際の参考としていただけるよう作業を進めている。

【斉藤委員】
 年内という言葉はなかったが、そこに向かって頑張るということで理解していいか。

【用地課長】
 早期にということで、実は、建物等調査算定業務は5業者に発注している状況である。その成果品について、横の連携、整合性をとる作業も重要だと思っており、頑張りたい。

・若者定住住宅と空き家活用について

【斉藤委員】
 特に被災地には、U・Iターンでたくさんの若者が復興に取り組み、応急仮設住宅の目的外使用でも2百数十件入居している。応急仮設住宅も集約されるわけで、こういう若者たちが地元に定着して、引き続き復興の担い手になっていくということが必要だと考えるが、若者定住住宅の整備状況は県内ではどうなっているか。

【住宅課長】
 現在県内8市町村―花巻市・二戸市・釜石市・葛巻町・雫石町・一戸町・九戸村・西和賀町で、雇用促進住宅を取得するなどの方法により、若者などの定住や子育てを目的とした住宅を整備していると聞いている。

【斉藤委員】
 大変感心したのは、釜石市は雇用促進住宅を取得し、若者定住住宅として活用している。月35000円の家賃でこれ自身が安いが、U・Iターンの場合にはさらに最長3年間1万円減免される。こういう形で若い世代の定住を図っている。一戸町もそうした子育て世帯の住宅にしている。これは雇用促進住宅をうまく活用した例だと思うが、そうでなくとも、こういう若者定住住宅の整備は重要で、若者が共稼ぎしていると公営住宅は対象になりにくい。そうすると、被災地での生活が難しくなってしまう。ぜひ県としてもこの問題を真剣に考えて、若者を定住させようと思ったら住宅がやはり重要である。今U・Iターンで県の資料だと1300人ぐらいが岩手に来ているが、退職して退職金で岩手に家を建ててというケースはあっても、若者はそうはいかない。若者は低廉な住宅の保障があって、それで定着する。葛巻町では、若者向けの素晴らしい住宅を盛岡に近い地区に建てている。葛巻に住みながら盛岡に通勤できるというぐらいのことを考えてやっている。
 こうした取り組みを県としても研究して、これを支援するような取り組みをやるべきではないか。

【住宅課長】
 若者およびU・I・Jターン向けの住宅整備にかかる支援だが、現在県土整備部では、空き家活用という切り口で、平成27年度から空き家を活用する人材の育成に取り組んできたところである。政策地域部では、平成29年度から新規事業として、市町村の空き家バンクを利用して、県外から移住する者が空き家を改修する経費について市町村が補助する場合に県がその一部を補助する事業を開始したところである。また県内12市町村では、空き家の改修費補助や金融機関のローンを受ける場合の利子補給等を実施すると聞いている。
 なかなか新規の整備というのはハードルが高い面があると思うが、空き家の活用については今後の大きな課題になると思っているので、そちらの側面からU・I・Jターンや若者定住に向けた施策をつくっていけないかということは今後の課題として検討させていただきたい。

・空き家の活用について

【斉藤委員】
 県内の空き家の実態はどうなっているのか。
 盛岡市を含め12市町村で空き家活用の補助金を行っているが、中身、特徴を示していただきたい。

【住宅課長】
 総務省の統計局が5年に1度実施している住宅土地統計調査では、直近は平成25年度のものだが、空き家の総数が76300戸・約13.8%となっているが、これについては別荘や賃貸住宅の空き室など利用できる空き家も含まれており、目的がなく空いている住宅については41000戸と推計されている。
 市町村の補助だが、盛岡市では、市外から転入された方で空き家バンクに登録された物件を購入して改修を行う場合に工事費の2分の1(上限20万円)を補助すると。北上市では、リフォーム・解体・改築等を行う場合に金融機関のローンの利子補助の制度があると聞いている。

【斉藤委員】
 宮古市では、上限30万円だがU・Iターンの場合は上限が50万円。花巻市は、移住者が家を建てた場合に上限200万円(賃借100万円)。それぞれかなり特徴があり、この空き家対策を積極的に進めて、若者が活用できるような取り組みを進めていただきたい。まだ12市町村にとどまっているので。

・ILC誘致や復興祈念公園との国道343号の関係について

【斉藤委員】
 国道343号の役割、この改修が大変に緊急の課題だと思う。ILC誘致の際の工事関連道路はどうなるか。担当部局としてどう考えているか。

【道路建設課総括課長】
 ILCに関する有識者会議の体制およびマネージメントのあり方検証作業部会が今年7月に取りまとめた報告書において、国際研究機関の周辺環境整備について、居住・住宅・医療等の生活環境要件および広域交通基盤等の社会基盤要件が示されている。この中で道路に関しては、国際コンテナの輸送経路の確保、研究圏域から高速道路等へのアクセスにかかる道路網の確保、ILC建設にともなう掘削土砂の輸送ルートの確保などが示されているが、ILC関連の道路については今後のILCの実現に向けた進展もにらみながら所要の検討を行っていく必要があると考えている。

【斉藤委員】
 そういう悠長なことでいいのか。ILCのラインは約50キロの範囲で出ているが、予定地の真ん中を通るのが343号で、一番利便がいい。そして大船渡の港湾の工業用地、今年6月12日に「ILC整備における大船渡港活用を考慮して公募を一時中断」という決断をしている。港湾は用地を確保するが、そこからどの道路を使って行くのか、そこの整合性をもって検討しなければいけないのではないか。どういう検討をしているのか、していないのか。

【道路建設課総括課長】
 県では、大船渡港永浜・山口地区工業用地について、今後ILC整備における構成部品の陸揚げ・検査および保管等の用地としての可能性があることから、分譲にかかる公募を一時中断している。
 大船渡港をILCに関連した物流拠点として想定した場合の建設候補地までのアクセスについては、三陸沿岸道路から国道340号を経て343号を利用するルートが1つとして考えられる。
 ILC関連施設の建設にともなう資材の運搬については、運搬する部品の大きさや形に応じて、運搬するルート上に、道路幅員、トンネルの高さ、橋梁の重量制限などで支障のある箇所がある場合については、これらを改修するために必要な整備を検討していく。

【斉藤委員】
 7月28日のILC有識者会議の報告でも、大型輸送機材に対応した輸送経路ネットワーク確保となっている。提起されているのだから、真剣に対応しなければやる気が問われてくる。
 さらに国道343号線は、復興祈念公園との関係で、岩手でただ1つ、全国・海外に東日本大震災津波の経験や教訓、今後の防災活動について広くアピールする大変重要な施設である。新幹線で来られた方々がどうやって陸前高田市まで行くのかと。国道343号が1つの基幹道路だと思う。
 ILCや復興祈念公園との関係でも、本当に活用して交流人口を増やして、被災地の地域振興の力にしていくという点でいけば、国道343号の位置づけをもっと高めてやっていく必要があるのではないか。

【道路建設課総括課長】
 復興祈念公園については、追悼と鎮魂の場、震災の教訓とそこからの復興を示していく場であり、重点道の駅「高田松原」には震災津波伝承施設も設置されることから、本県沿岸部のゲートウェイとして内外からの来訪者が見込まれると考える。
 復興祈念公園のアクセスは、国が整備を進めている三陸沿岸道路、横軸の東北横断自動車道釜石―秋田線をはじめとする、内陸と沿岸を結ぶルートが主なものと考えられる。内陸と沿岸を結ぶルート上にある隘路については、引き続きその解消に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 きわめてゆゆしき答弁があった。横軸が釜石道だと。それはないのではないか。やはり一関・奥州から最短で来る道路を考えなければ本当の活用にならない。
 ILCは岩手県の戦略的課題で頑張っている。復興祈念公園は被災地の最大の活用できる施設。これらをどう生かすか、道路が決定的だと思うが、部長はどのように位置づけを考えているか。

【県土整備部長】
 ILC関係では、大船渡港から建設地までアクセス、どういった大きさのものをどう運ぶかは明らかになっていないが、徐々に実際に運ぶことを踏まえた検討も進められている。これは先日大船渡市で45フィートのコンテナについてしっかり運搬できるかという社会実験も始まっており、その結果も踏まえながら必要な改良があればやっていくと。一方で、笹ノ田峠に抜本的な改良を加えてトンネルをというようなことは大規模な事業になり、慎重に取り組んでいくのは当然だが、その中で、やはりILCは、新しい街ができるぐらいの話になるので、そういったところへのアクセスという観点から、事業性の位置づけも変わってくるのではないか。そうした動向も踏まえながらやっていくと。
 同様に復興祈念公園へのアクセスだったり、物流路線としての343号は、復興支援道路ということで、笹ノ田峠はまだできていないが、関連の整備を進めるとされているので、しっかりと横軸も対応していきたい。