2017年12月6日 12月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)


・被災地福祉灯油について

【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、第16号から第19号、指定管理者の指定に関する第23号から第51号、第57号について議案に対する質疑を行います。
 第1号は2017年度岩手県一般会計補正予算(第4号)です。被災地福祉灯油助成事業5350万円余が計上されました。7年連続の助成事業となったことを評価したいと思います。被災自治体に限定されていることは残念でありますが、昨年度は被災自治体以外でも北上市など5市町が被災者支援灯油を実施しましたが、今年度は被災者への福祉灯油を実施するところはあるでしょうか。低所得者への福祉灯油は葛巻町、九戸村で実施されましたが、今年度はどうでしょうか。

【保健福祉部長】
 今年度は11月時点で、助成対象の沿岸12市町村全てにおいて実施予定と聞いている。
 また、内陸部の4市町が単独事業として、東日本大震災津波の被災者を対象に灯油購入費の助成を実施予定、あるいは実施に向けて検討中である。
 低所得世帯全般を対象にした灯油購入費の助成等については、昨年度と同じく2町村が実施予定と聞いている。

・変更請負契約の異常な変更額について

【斉藤議員】
 議案第16号から第19号は、変更請負契約の締結に関し議決を求めるものであります。
 議案第16号は、大船渡港野々田地区海岸防潮堤ほか工事の変更請負契約です。当初事業費11億9448万円に対して今回5回目の変更で29億3189万円余に、17億円余の増額で、2.45倍となります。議案第17号は、大船渡港山口地区海岸防潮堤工事の変更請負契約です。当初事業費10億6488万円から今回6回目の変更で19億2496万円余に、8億6008万円増の1.81倍となります。議案第18号は、大船渡港野々田地区海岸防潮堤工事の変更請負契約です。当初事業費6億264万円に対し今回4回目の変更で13億7751万円余に、7億7487万円余の増額で2.29倍となります。議案第19号は、気仙川筋砂盛地区水門災害復旧工事の変更請負契約です。当初事業費60億1335万円が今回6回目の変更で147億3463万円余に、87億2128万円余の増額で2.45倍となります。
 これらの4件は特に変更額が当初事業費と比べて2倍前後となる異常なものです。こういう変更では、当初の入札の意味がまったくなくなるのではないでしょうか。当初の設計と設計金額の妥当性が問われるのではないでしょうか。それぞれにどういう特別の事情があったのか。詳細設計や詳細な地質調査はなぜできなかったのか。今でも詳細設計は行われていないのか。今後もこのような異常な変更は繰り返されるのか示していただきたい。

【県土整備部長】
 議案第16号の大船渡港野々田地区海岸防潮堤ほか工事については、詳細設計や地質調査の結果により、基礎杭の長さや打設工法を変更したものである。
 議案第17号の大船渡港山口地区海岸防潮堤工事については、詳細設計にともなう基礎杭の変更や用地交渉等の地元調整の進展を踏まえ、施工可能となった区間の防潮堤等を追加したものである。
 議案第18号の大船渡港野々田地区海岸防潮堤工事については、地質調査の結果による基礎杭の太さや打設工法の変更のほか、支障となる既設杭の撤去を追加したものである。
 議案第19号の気仙川筋砂盛地区水門災害復旧工事については、詳細設計にともない水門本体の形状や重量の増大のほか、地質調査の結果により、基礎杭の長さや打設工法の変更を行ったものである。
 いずれの工事についても、標準断面図等による発注方式により契約したものである。この方式を採用することは、できるだけ早期の工事の着手を目的としたものであり、この方式を採用することにより、詳細設計や地質調査を行う期間と平行し、工事積算や発注手続きを進めることができ、通常の発注方式に比べて、WTO案件の場合で1年ほど工事の着手を早めることができる。
 一方で、標準断面図等による発注方式については、詳細設計にともなう工事費の変動については設計変更にて対応するという条件を明示した上で、詳細設計を行う前の図面と数量で発注するため、詳細設計にともなう断面や構造の変更、当初想定できなかった地質条件等に対応するための工法変更等により、やむを得ず工事費が増額となる場合が多くなるものである。
 今回提出させていただいた案件については、変更内容は当初想定しえなかった内容であり、必要な内容を精査して提案しているので、何卒ご理解いただきたい。
 また、現在多くの海岸保全施設等の復旧工事が進行中であり、現場の地質条件等を反映した工法や構造の検討を行っている案件については、内容を十分精査した上で、順次対象となる工事については議会に提案させていただきたいと考えている。

・指定管理者における雇用の実態について

【斉藤議員】
 議案第23号から第51号は、指定管理者の指定に関する議案です。全体的な問題について質問します。
 第24号のいわてリハビリテーションセンターの指定管理者を指定することを除いて、指定管理者の正規職員数は今年度実績76人に対し、有期採用の非正規職員数は172人、69.3%となっています。雇用対策を推進するべき県自身が指定管理によって不安定雇用を増やすという結果となっているのではないでしょうか。今回は指定管理の期間を多くが3年から5年に延長していますが、正規職員数、非正規職員数の計画、率はどうなっているでしょうか。正規職員、非正規職員の月収、年収はどうなっているでしょうか。改善はあるのでしょうか。適正な賃金の確保をめざす「県が締結する契約に関する条例」の精神・立場に逆行しているのではないでしょうか。措定管理者の制度と在り方を全面的に見直すべきと考えますがどうでしょうか。

【総務部長】
 今回提案の29施設の指定管理者予定者から提出のあった平成30年度の職員配置計画によると、職員数の合計は440名、うち正規251名・57%、有期採用189名・43%となっている。
 これから、いわてリハビリテーションセンターの指定管理者を除くと、職員数の合計は250名、うち正規83名・33.2%、有期採用167名・66.8%となっている。
 これを今年度の実績と比較すると、いわてリハビリテーションセンターを除いた全体で、正規が7名の増加、有期採用は5人減となっており、有期採用職員から5人が正規職員化されるなど、8施設で9人の正規職員の増が図られた。
 このように、今回の指定管理者の指定にあたっては、一定の改善が見られたところである。
 また、今回の指定管理の期間を3年から5年にすることにより、指定管理者における人材の確保や経営の安定化の観点からも正規職員の増につながったものと推測している。
 正規職員と有期採用職員の賃金水準について。雇用条件等により、月収・年収の統一的な把握は困難であるため、1時間あたりの単価で示すと、29施設のうち、市町村が指定管理者である施設を除く23施設について、平成28年度の実績ベースで、正規職員は1704円、有期採用職員は999円とほぼ1000円水準となっている。これから、いわてリハビリテーションセンターを除いて同様に算出すると、正規職員は1595円、有期採用職員949円となっている。
 参考として、今年10月1日に引き上げられた最低賃金は738円で、いわてリハビリテーションセンター含みで261円、いわてリハビリテーションセンター除きで211円上回っているところである。
 指定管理者制度の運用にあたっては、適正な雇用・労働条件を確保するため、県が締結する契約に関する条例に基づく支払状況等の確認のほか、各所管部局において、事業完了の業務報告の際に、労働条件のチェックシート等を活用した確認を行っている。
 今後も指定管理者制度の運用にあたっては、適正な雇用・労働条件の確保が図られるよう努めていきたい。

・県職員の給与改定について

【斉藤議員】
 議案第53号は、2017年度岩手県一般会計補正予算(第5号)です。人事委員会勧告に基づいて県職員の給与を0.14%、512円、期末手当・勤勉手当を0.05か月、2万7千円増額しようとするものです。給与の引き上げに賛成するものです。
 県職員の給与は平成12年度から連続して引き下げられました。また、退職金も大幅に引き下げとなっていますが、今回の給与改定では、ピーク時と比べてどういう状況となるでしょうか。また、国は、給与改定とセットで退職金の引き下げを実施しようとしています。実質賃下げとなります。県は退職金についてどう対応する考えか示してください。

【総務部長】
 今回の給与改定後の状況について、40歳の主査クラスの職員を例に、平成11年度の給与改定前の給与額を試算して比較すると、年収は約86万円、退職手当は約447万円の減となる。
 現在、国家公務員の退職手当の支給率の引き下げを内容とする法律案が国会で審議されているが、県としては、国の制度改正の内容のほか、他県の動向等も踏まえながら対応を検討していく。

≪再質問≫

・指定管理者における雇用改善について

【斉藤議員】
 答弁あったように、今年は非正規の割合が69.3%、新しい指定管理者制度でたしかに3年から5年に延長されるが、そうなっても66.8%で、改善されたといっても微々たるもの。岩手県が実施する事業で、働く人の3分の2が不安定雇用というのは、岩手県の締結する契約に関する条例の「適正な賃金確保」という精神にも反するのではないか。個々の指定管理について検討する必要があると思う。働く人の3分の2が非正規ということを容認することは、安定した雇用を進める県としていかがなものか。

【達増知事】
 指定管理者に対しては、労働法令の遵守や適正な雇用・労働条件が確保されるよう指導を行ってきたところだが、県が締結する契約に関する条例においても、賃金および社会保険に関する法令遵守が位置づけられているところであり、条例の趣旨も踏まえ、所管部局において事業完了後の事業報告や実地調査等を行い、その状況について適宜確認している。
 職員の配置については、それぞれの機能、性質、設置目的に応じ、運営に必要な職員数を確保し、正規職員の占める割合は、指定管理の受託内容、業務の形態によってそれぞれ割合が異なるものと認識している。
 今後においても、適正な雇用・労働条件が確保されるよう引き続き指導するとともに、さらなる施設の利用促進と行政サービスの向上が図られるよう、指定管理者制度の適切な運用に取り組んでいく。

・異常な契約変更について

【斉藤議員】
 議案16号・18号は、大船渡港野々田地区海岸防潮堤工事、これは同じ区間の分割発注で、18号が1年後に契約されている。同じ区間で1年後に契約されても、倍になってしまうような変更契約が出てくる、本当にこれはずさんではないか。
 気仙川筋砂盛地区水門災害復旧工事は、第1回から6回まで、毎回詳細設計、詳細な地質調査を行っている。毎回値上がって60億円が147億円、これだったら当初の入札がまったく意味がなくなると指摘した。なぜ6回も詳細設計や地質調査を繰り返さなければならないような工事になったのか。
 今までは非常事態ということもあったかもしれないが、しかしかなり落ち着いてくるので、きちんとした詳細設計をして、異常な変更契約が行われないようにすべきではないか。

【県土整備部長】
 詳細設計を行う前の段階で発注しており、当初の積算の開始時点で得られる最善の情報の中で、もっとも合理的な設計により発注している。変更の回数についても、工事の準備が整ったものから段階的に地質調査も行い詳細設計も行うことをやっている。本来であれば全体の調査をした上で設計というのが順序だが、できるだけ早く着手できるところはしていくということで進めており、変更の回数も多くなり内容もそれぞれ当初想定していなかったものが出てきた場合にその都度対応してきている。
 いずれ、これまで経験したことのないような膨大な規模の工事で、最大限合理的な復旧工事・復興工事の遂行に取り組んでいる。そういった意味で、今後もしっかりと精査した上で、変更しなければならないときはその都度議会にはご説明させていただきたいと考えており、何卒ご理解を賜りたい。