2017年12月6日 12月定例県議会本会議
高田一郎県議の一般質問(大要)
1、東日本大震災津波からの復興の課題について
・住宅再建への支援について
【高田議員】
最初に東日本大震災津波からの復興の課題について質問します。
東日本大震災からまもなく6年9ヶ月、被災者にとっては7度目の冬を迎えていますが、いまだに応急仮設住宅等での生活を余儀なくされている被災者は8,724人(10/30現在)となっています。被災者の生活悪化とストレスは災害公営住宅へ移っても大きなリスクを抱えており、被災者の生活と住宅再建は引き続き大事な課題であります。
県が行った「住宅再建意向調査」(9月末現在)では、2,535戸世帯が自立再建を希望しています。しかし、震災前と比べ坪単価は11.4万円と24%も上昇しており、30坪で340万円も増加し、自立再建をあきらめる被災者も生まれています。「被災者生活再建支援金」の500万円への引き上げが必要ですが、国の動向はどうなっているでしょうか。
被災者生活再建支援金の申請期間は30年4月10日まで、被災者住宅再建支援事業は30年度までとなっています。宅地供給の面整備は、社会資本復旧・復興ロードマップでは32年度までとなっており、申請期間の延長が必要です。公益財団法人都道府県会館と協議中となっていますが、どうなっているでしょうか。また、災害援護資金の制度の周知や活用も重要ですが、活用状況についての実績も示してください。
【復興局長】
県ではこれまで国に対し、繰り返し被災者生活再建支援金の増額を要望してきたところだが、国は慎重な姿勢を示していることから、市町村と共同で被災者住宅再建支援事業等を実施し、住宅再建を支援している。県としては、住宅建設にかかる工事単価の上昇に対応し、被災者生活再建支援金を増額すべきと考えており、引き続き国に対して強く要望していく。
現行の平成30年4月10日となっている申請期間の再延長については、支援金の事務を行っている公益財団法人都道府県会館と協議中であり、延長決定となるよう鋭意協議を進めている。
災害援護資金の本県の市町村における貸付実績は、本年10月末までで1082件・27億7600万円余となっている。
・災害公営住宅の家賃減免と収入超過者への対応について
【高田議員】
災害公営住宅の家賃に不安の声が広がっており、減免対策に積極的に取り組むべきです。山田町の災害公営住宅に住む75歳になる被災者から、「年金が月4万円で家賃は6,100円、もう義援金は底をつきこれ以上引きあがったら暮らせない」との訴えがありました。
国の「特別家賃低減事業」の対象はどうなっているでしょうか。6年目から段階的に家賃が上がり10年目からは従来の家賃となります。入居者の多くが高齢者であり、わずかな年金で生活を余儀なくされています。引き続きの減免が必要と考えますが、県・市町村の対応を示してください。
次に災害公営住宅における「収入超過者」への対応です。
東日本大震災では特例で入居できましたが、4年目からは「収入超過者」として家賃が引きあがります。共働きの30代の被災者は、「13万円の家賃となり、民間アパートもなく行き場がない」と訴えられました。国土交通省では、「今のところ制度を見直す予定はない」としています。働き盛りの世代は復興の担い手です。高い家賃となった場合、被災地に留まらなかったら復興に逆行するものです。必要な軽減措置をとり、継続して入居していただく方が被災者や県・市町村にとっても合理的ではないでしょうか。「収入超過者」の実態と県としての対応策を示してください。
【県土整備部長】
災害公営住宅に適用される国の「東日本大震災特別家賃低減事業」は、入居者の世帯についてさまざまな控除を行った後の収入が月に8万円未満の場合に、家賃を減免する制度である。10月末時点で、県内の災害公営住宅に入居している4418世帯のうち、3447世帯がその対象となっている。
県では、国の家賃低減制度とほぼ同様の家賃の減免を、期限を設けずに受けることができる独自の制度を有しており、県の制度を活用していただくことにより、実質的な入居者の負担増にはつながらないと考えている。
この減免制度の運用にあたっては、入居されている方に自ら申し出ていただく必要があることから、8月に県営住宅にお住まいの対象の方には文書で通知したところであり、来年度以降も対象の方が手続きを断念しないよう定期的に案内を行っていく。
沿岸市町村においても、おおむね県と同様の減免制度を有していると聞いている。県の取り組みについて情報を提供するとともに、引き続き市町村の取り組みを促していく。
収入超過者への対応について。11月に実施した調査では、さまざまな控除を行った後の世帯収入が月15万8千円を超える方など、基準を超える収入がある世帯は303世帯であり、入居世帯総数に占める割合は約6.9%となっている。沿岸部では、住宅の建設コストが急騰していたことから、入居から4年目以降に収入超過者に適用される家賃に、建設時期により開きが生じる見込みであり、県において入居者間の公平性が確保されるよう対応を検討している。また沿岸部では、災害公営住宅に代わる民間賃貸住宅が不足しているという特殊事情もあり、市町村による人口流出対策や、復興の担い手確保を目的とした独自の補助制度なども考えられることから、具体の対応については各市町村と連携をとりながら検討を進めていく。
・災害公営住宅入居者の生活実態について
【高田議員】
次に、災害公営住宅入居者の生活実態についてであります。
岩手大学社会学研究室等が行った「大槌町災害復興公営住宅入居者調査」では、「生活が厳しい」57.1%、精神面では「変わらない・苦しい」が56.9%と応えており、入居者は生活困窮、精神的困窮、関係的孤立という3つのリスクをかかえています。多重リスクは50.4%、3重リスクは27%にもなっており、これは応急仮設住宅での調査を上回るものです。県は災害公営住宅入居者の生活実態をどう把握し何を強化すべきと考えるか、お伺いします。
調査に参加した麦倉岩手大学教授は、「災害公営住宅に入居したらこれで復興は終わりでなく、見守りや社会参加の創出など多様な支援が必要」と訴えています。集会所を作っても活用されず、生活支援相談員は配置計画の85.5%となっていますがなぜでしょうか。生活支援相談員は一年雇用となっており、待遇の改善も必要と考えますがどう取り組まれているのでしょうか。
【復興局長】
災害公営住宅では、65歳以上の高齢者を含む世帯の割合が約6割と高く、多くの入居者が健康や家計の不安、周囲からの孤立などさまざまな課題や、そうした課題からくるストレスを抱えているものと承知している。
こうしたことから、社協の生活支援相談員や市町村の支援員等が個別に訪問し、見守りや相談支援などを行っているほか、県こころのケアセンターにおいても、専門スタッフによる相談支援を行っている。
また、地域で暮らす方々がお互いに支え合う仕組みづくりが重要であると考えており、今年度から新たに、市町村と団体等を調整するコーディネーターを配置し、市町村におけるコミュニティ形成活動の支援を強化している。
【保健福祉部長】
生活支援相談員の人材確保について。県では、県社協が配置する生活支援相談員と市町村が配置する支援員が連携し、被災者の見守りや相談支援、災害公営住宅の集会所等における交流会の開催など、地域と被災者の実情に応じた見守り体制が確保されるよう、市町村に対し要請してきている。
近年、有効求人倍率の上昇などにより、生活支援相談員の人材確保が一層困難な状況となっており、県としても、資格要件を緩和し、本人の適性等に基づく柔軟な採用を行うよう指導してきた。また市町村社協においては、給与の引き上げなど待遇改善を図っている例もあると聞いている。
今後においても、生活支援相談員が継続して活動できるよう、県社協と協働し、研修会や情報交換会等を開催するとともに、中長期にわたる安定した財源の確保について引き続き国に要望していく。
2、子どもの貧困対策について
・県として子どもの貧困実態調査を
【高田議員】
次に、「こどもの貧困」対策について質問します。
県南の小学校の校長先生から「毎日朝食を食べる児童が8割」「親のダブルワークで子どもの食生活が粗食だ」と訴えられました。「貧困問題」は、子どもの成長・発達に大きな影響をもたらし、子どもの人生だけでなく社会全体にも損失をもたらすものです。県は昨年3月「子どもの貧困推進計画」を策定し取り組まれていますが、何よりも大切なことは、深刻な子どもの置かれている実態をつかみ、これを打開する具体的な目標と計画をもって取り組むことです。
沖縄県では、児童・保護者の生活実態を徹底して調査し、「貧困率」を明らかにして2030年までに貧困率を10%まで減らす目標を掲げ、官民あげた県民運動に取り組んでいます。沖縄県での取り組みに学び、岩手においても子どもの生活実態・課題を浮き彫りにする「実態調査」をすべきですがどう検討されているのでしょうか。
【達増知事】
県では、「いわての子どもの貧困対策推進計画」に基づき、保健福祉部門はもとより、各部局が連携して取り組みを進めてきたが、子どもの貧困対策を効果的に推進するためには、子どものいる過程の実態を把握することも必要であることから、貧困の状況にある子どもや家庭の支援ニーズなどを調査項目とする「子どもの生活実態調査」の実施について、現在、庁内関係部局で構成する子どもの貧困対策連絡調整会議等において検討を進めている。
・ひとり親家庭への支援策について
【高田議員】
次に、ひとり親家庭への支援策です。
県内のひとり親家庭の63.3%が月収15万円未満、就労率は90.5%(岩手県ひとり親家庭実態調査)になっており、働いても経済的に苦しくなっています。盛岡市の「ひとり親家庭実態調査」でも、就労率は91.6%であり、夜間労働57.6%、早朝勤務27.9%、土日労働については76.8%にもなっています。この調査から見えてきたことは、土日勤務が8割となっており、子どもの3人に1人が放課後一人で暮らしています。子どもの居場所のあり方、子どもと一緒にいられるような就労支援が必要ということではないかと考えますが、盛岡市が実施した調査結果をどう受け止めているのでしょうか。調査で浮かび上がった問題に対する県の対応についても伺います。
【保健福祉部長】
盛岡市が平成28年度に母子世帯を対象に行った「ひとり親家庭実態調査」結果を見ると、ご指摘の通り、小学生の3人に1人が放課後一人で過ごしており、また土日勤務をしている母親が8割近くいるなど、ひとり親家庭の親が子どもと過ごす時間が制約されている状況にあることから、子どもの居場所のあり方について、さらに検討を深める必要があるとされているところである。
この調査結果は、「いわての子どもの貧困対策推進計画」に示す「ひとり親家庭や生活困窮世帯等の子どもの居場所づくりに関する支援」などの方向性と合致したものとなっていると認識しており、計画の推進にあたっては、庁内関係部局で構成する子どもの貧困対策連絡調整会議において協議するなど、各部局が連携して取り組んでいく。
・就学援助制度について
【高田議員】
次に、就学援助制度は、就学に困窮する児童・生徒に対し、学用品費、給食費、修学旅行費等を支給する制度です。県内市町村では受給率が6.11%〜59.35%、被災自治体を除いても6.11%〜15.28%と2倍以上の開きがあります。こんなに格差があることは本来受給できる子どもが受けられていないのではないか。就学援助の対象となる児童数及び実際に受給している実態を県としても把握すべきですがいかがですか。
新入学児童生徒学用品費の支給は、多くが7月ごろとなっています。生活困窮世帯が立替をしなくても済むように入学前に支給するべきですが、市町村の動向をどう把握しているのでしょうか。
【教育長】
準要保護世帯への就学援助については、いわゆる三位一体改革により、国庫補助事業から地方への税源移譲と地方交付税措置に移行し、以降は市町村単独事業としてそれぞれの実情を踏まえた運用が行われており、認定にあたっても一定の所得基準のほか、個別世帯の実情等も勘案するなど、各市町村において工夫をこらした対応が図られてきている。
就学援助制度は、経済的な事情を抱えた子どもの学ぶ機会保障する重要な役割を担っており、地域の実情に応じ、真に支援が必要な世帯を適切に見極めながら、これらの方々に寄り添った対応が必要であると認識している。
このようなことを踏まえると、県が一律の基準により支援を誘導することは困難であると考えるが、各市町村に対しては、真に支援が必要な世帯の的確な把握に向け、引き続き制度の周知方法の工夫や、学校・福祉部門との十分な連携を図っていくよう助言していく。
新入学児童生徒学用品費の入学年度開始前の支給については、昨年度から八幡平市をはじめ4市村において実施され、複数の市町村において本年度からの実施を決定し、必要な取り組みが進められている。これらの市町村のほか、必要な予算を確保するため補正予算の編成等の取り組みが行われている市町村も多いと承知しており、今後においても、各市町村の考え方を尊重しつつ、各市町村における制度運用の状況等について情報提供を行うなど、適切な運用に向けた支援に努めていく。
・子ども食堂の取り組みについて
【高田議員】
この間子ども食堂を取り組む一関市と盛岡市の2つの団体と懇談・調査しました。子ども食堂は、@子どもを支援する居場所として食育や社会生活を向上させるA悩みを語り情報共有し課題解決に取り組めるB学生から高齢者まで参加することでエンパワメントにつながる―と子ども食堂の成果と効果を学ぶことができました。「インクルいわて」では、全員参加型と一人親を支援する包括支援を取り組んでいることにも感心しました。子ども食堂が果たしている役割をどう考えているのでしょうか。
全中学校区での取り組みを目指す兵庫県明石市、100箇所目指す滋賀県など各地で取組みが広がっています。岩手県内での取り組みの実態はどうなっているのでしょうか。県内に広げていくためには立ち上がりの支援とネットワークが必要ですが、県の支援策を伺います。
【保健福祉部長】
子ども食堂は、子どもたちに温かな食事の提供を行うとともに、大人や年代の異なる子どもたちとの交流の場ともなるなど、子どもたちが地域とのつながりを得られる居場所の1つと認識している。
県内では9月末現在、9市町14ヶ所においてNPO法人や社協などが子ども食堂を開設していると聞いており、県ではこれまで、国庫補助事業の導入や「子どもの未来応援基金」の活用について市町村や民間団体に周知を図ってきたほか、子どもの貧困対策の出前講座を県内各地で実施し、地域における取り組みの拡大を支援している。
こうした取り組みに加え、今年8月には、子ども食堂や学習支援などの支援に取り組む団体等と課題や支援ニーズ等に関する意見交換を行ったところであり、今後、子どもの支援に取り組む団体のネットワーク化に取り組んでいく。
・児童虐待対策について
【高田議員】
次に、児童虐待について質問します。
2016年度の県内の児童虐待相談対応件数は942件で過去最高となり、今年もこれを上回る件数となっています。相談対応する県内3つの児童相談所では、相談の増加に追いつかない職員体制になっています。「児童虐待防止アクションプラン」では、「児童相談所の相談機能と対応の充実を図る」としていますが、児童虐待相談対応件数が増加している実態に対応する増員計画がありません。5年間で2.5倍にもなっており、児童福祉司の増員に取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。
児童養護施設の子どもたちの中には、進学したくても学費やで生活費の工面が難しく、進学を断念したり退学する子どももいると聞きました。「一関藤の園」では、地元出身者から寄付を託され就学支援の給付が始まりました。子どもたちは、自ら進んで要保護児童になったのではありません。進学してがんばりたいという子どもたちの夢をかなえてあげるべきと思います。高校卒業後の進路状況など県内の現状はどうなっているのでしょうか。施設退所後のアフターケアも必要です。県としての必要性と県の支援策はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
県では、増加する児童虐待に対応するため、児童福祉司を順次増員してきており、平成29年度は、福祉総合相談センターの定数を2名増員し、3児童相談所で32名の体制としたところである。平成28年改正児童福祉法により、本県では平成31年度以降、34人以上の児童福祉司の配置が必要となることから、今後も児童福祉司を担える専門職員の計画的な確保に努め、必要な体制整備を図っていく。
児童養護施設を本年3月に退所した児童の高校卒業後の進路については、卒業者23名のうち、短大等進学者が4名、就職者14名、その他5名となっている。施設退所後の支援については、新生活に必要な家賃や生活費、資格取得に要する費用に対して貸付を行い、一定期間就労を継続した場合に、その返還を免除しているほか、就労支援や生活支援等を行う自立援助ホームへの入居等により、支援が必要な子どもへのケアを行っている。
3、子どもの医療費助成の現物給付の拡大について
【高田議員】
次に子どもの医療費助成の現物給付の拡大について質問します。
9月県議会では、「医療費助成制度の更なる拡充を求める請願」が全会一致で採択されました。県では小学校6年生まで現物給付を拡大した場合のペナルティは2000万円となりますが、来年度から未就学児を対象とした現物給付に関わるペナルティがなくなり、およそ3200万円と見込まれています。したがって新たな負担なしに小学校6年生まで現物給付ができることになります。
「子どもの医療費助成の拡充を求める岩手の会」が県に要請した時に参加した若いお母さんは、「子どもが3人いてみんな風邪を引くと病院に行く順番を選んでしまう」「喘息を抱えており医療費がかさむと大変」「償還払いのため共働きで市役所に何度も足運ぶのは大変」などと訴えていました。「現物給付で医療費が増える」という指摘もありますが、しかしこれは一時的であり、通院しやすくなったと捉えるべきです。安心して病院にかかれれば重症化することなく、医療費の削減に繋がるのではないでしょうか。子どもが病気になっても財布の心配をしないで通院できる―これこそ政治が取り組むべき課題ではないでしょうか。知事は、「市町村とも協議する」とこれまで議会で答弁してきましたが、その後の対応はどうなっているのでしょうか。
【達増知事】
28年8月から実施した未就学児・妊産婦を対象にした現物給付については、県と市町村とで協議を重ね、その合意のもとに進めたところであり、県としても、関係機関との調整、医療機関との事務負担を軽減するシステム開発、医療機関に対する説明会の開催などの支援を行ってきた。
現物給付の対象を小学校卒業まで拡大した場合は、市町村国保に対する国庫負担金の減額措置が発生する。
9月に市町村の意向を確認した際には、「国保の財政状況が厳しい中では困難」「現物給付の実施以降、医療給付費が増加しており、現時点では拡大する予定はない」など、慎重な意見が多数であったことから、市町村の意向を十分に踏まえて検討する必要があるが、先の9月定例会において、現物給付を小学校卒業まで拡大することを求める請願が採択されたところであり、その趣旨も踏まえ市町村と調整していきたい。
4、教育の諸問題について
・子どもの貧困、スクールソーシャルワーカーの配置について
【高田議員】
次に、教育の諸問題について質問します。
「子どもの貧困対策推進計画」の中で、学校はプラットホームと位置づけられています。
貧困は発見しづらいといわれていますが、子どもたち一人ひとりと向き合い、複眼的な目で接することが必要です。学校現場ではどう取り組まれているのでしょうか。
スクールソーシャルワーカーは、この4月から文科省の省令で「児童の福祉に関して支援する学校職員」として位置づけられました。不登校、行動上の問題、児童虐待、発達障害など、子どもにとっては家庭環境・保護者の存在は大きく、学校のみで解決できないと思います。学校現場等から強い要望もあり、文科省も全中学校区に配置する方針がやっと示されました。しかし、週2日、非常勤職員でもあり、これではなかなか人材は確保できません。全中学校区配置に向けた人材確保策はどう検討されているでしょうか。
また、一気に配置することは困難な課題です。要保護、準要保護率が高い地域に優先配置を行うと共に、教員以外の専門職などの配置や、一関市が独自に配置している家庭相談員制度などのきめ細かな対応も必要と考えますが、県の対応と取り組みについて伺います。
【教育長】
本県のそれぞれの学校においては、児童生徒の学力保障や健全育成を図るため、学校生活全般において児童生徒の様子を注意深く観察し、子どもからのサインのいち早い察知に努めており、貧困問題をはじめ、いじめやネグレクト等の兆候があった場合には、組織的な教員間での情報共有や対応に加え、スクールソーシャルワーカー等との協力の下に、市町村福祉関係部局等とも連携し、その課題解決に取り組んできている。今後においても、貧困問題等への適切な対応を図るため、関係部局や市町村教委等との連携を一層強め、子どもたち一人一人に寄り添った教育の充実に努めていく。
スクールソーシャルワーカーは、本県の子どもの貧困対策推進計画において、生活困窮世帯の子どもを生活支援や福祉制度につなぐ役割を担っており、学校の不適応対策においても、学校と関係機関をつなぎ改善を図るなど、きわめて重要な役割を果たしている。スクールソーシャルワーカーの人材確保については、これまで県社会福祉士会等との連携により取り組んできたが、本年度は新たに、社会福祉士の養成課程を有する県立大学に協力を要請させていただいた。国の調査研究協力者会議において、最終的には全ての中学校区等に常勤のスクールソーシャルワーカーを配置することが望ましい旨の報告がなされたことは承知しているが、協力を得られる有資格者がきわめて限られている本県の現状に鑑みると、スクールソーシャルワーカーの早期の増員は厳しい状況にある。このような状況だが、児童生徒に対するきめ細かな支援を行うことは重要なので、今後の国の動向等を注視しつつ、市町村福祉担当部局との連携強化などにも取り組みながら、学校における教育相談体制の充実に取り組んでいく。
・小学校における英語教育について
【高田議員】
2020年度実施の小学校新学習指導要領により英語教育が始まり、プログラミング教育も必須化になります。英語教育については、ベネッセの調査では「自信がない」と回答した先生は76%に上っており、日本学術会議では、「コミュニケーション重視の英語教育」に疑問を投げかけています。先行実施している学校では、英語好きと嫌いの二極化が起こっています。県教委は、こうした具体的な懸念・不安をどう受け止め対応されるのでしょうか。教員の研修と職員の増員など具体的な対応を行うべきと考えますが、どう検討されているのでしょうか。
【教育長】
小学校においては、現在外国語活動の中で外国人指導助手やICT機材等も活用しながら、英語に親しむ素地を養う学習を行ってきているが、外国語活動に携わることが少なかった教員の中には、その指導についての懸念や不安を持つ教員も少なからずいると承知している。
本県の教員が自信をもって英語の指導にあたることができるようにするため、平成27年度からの4年計画で、小学校教員を対象に英語の指導力向上研修を実施しており、外国語教育の中核教員を1校あたり2名となる約660名の育成を進めるとともに、文科省が作成した新教材を用いた校内研修に県内全ての小学校で取り組んでいる。
職員の増員については、文科省においては、平成30年度予算の概算要求において、英語の教科化等による小学校教員の負担軽減や、教科化にともなう授業準備の充実を図るため、小学校専科指導に必要な教員の充実として全国で2200人の増員を求めている。
本県においては、これまでも国に対して小学校専科加配を申請し、一定数の加配が措置されているが、これに加え、小学校英語の教科化に対応するための加配についても、その実現を要望しており、学校や市町村の意見等を丁寧に聞き取りながら適切な配置に努め、研修の充実と合わせて、小学校における英語教育の円滑な導入に努めていく。
・35人学級の拡充について
【高田議員】
こうした状況の中で35人学級の拡充は待ったなしの課題です。岩手県では小学校5年・6年生が未実施となっており、直ちに取り組むべき課題ではないでなないかと考えますが、この間の成果を含め答弁を求めます。
【教育長】
少人数学級については、相対的には集団のまとまりの構築や学力の定着、不登校、いじめ問題への対応などに効果が高いと評価しているが、さらなる導入を図るためには、乗り越えるべきさまざまな課題があるので、関係機関等との協議も重ねながら、多面的かつ具体的な検討を行っていきたいと考えている。
5、農業振興策について
・生産調整と直接支払い交付金廃止問題、農家の収入保障について
【高田議員】
次に農業振興策について質問します。
生産調整と米の直接支払い交付金の廃止は、生産者団体と生産者に不安を広げています。
県南の486haを経営する農業生産法人は、「売上げ2.4億円、補助金2.4億円、それでも純利益はわずか101万円。直接支払交付金1900万円の廃止で次年度のやりくりに頭を抱えている」と訴えられました。米価が下がり補助金が下がれば一気に赤字になってしまう状況になっています。大規模農家、農業生産法人こそ影響が大きいのではないでしょうか。県はこうした実態をどう把握しているでしょうか。
飼料米の作付け拡大で主食用米が不足し米卸に応えられない現状にあり、今後輸入米や古米とのブレンド米が市場に出て米価が下落することが懸念されています。価格競争が一層激化する中で、国は情報提供だけであくまでも生産調整の全国組織に参加しない方針を堅持していますが、これで本当に需給調整機能は発揮されるのでしょうか。
2019年から「収入保険制度」が新たに導入され、これは「基準収入」以下となった時に補填するもので、市場価格が下がれば補填後の収入も下がり続けるものです。再生産を補償するなど農家のセーフティネットになるものでしょうか。一方で、農業共済制度が「任意加入」となります。無保険者が生まれる心配はないのでしょうか。県の見解を伺います。基準収入1,000万円の農家が加入した場合保険料はどうなるのかについても示してください。
【農林水産部長】
平成28年度の本県への米の直接支払交付金の交付額は30億2千万円で、交付件数は31904件となっている。経営規模別では、水稲作付20ヘクタールの経営体では約150万円、100ヘクタールの経営体では約750万円が交付されており、交付金の廃止は大規模な経営体ほど影響が大きいと考えている。県ではこれまで国に対し、交付金の廃止後も水田農業の担い手の経営安定に向けた支援を充実するよう強く要望してきたところであり、引き続き必要な対応を求めていく。
需給調整機能については、報道によると、年内にJA全中が中心となった全国組織が設立され、米の需給について情報共有を図るとされているが、その構成や具体的な活動内容は現時点で不明である。一方で、東京都および大阪府を除く45都道府県全てで、これまでの生産数量目標に代わる生産目安を設定することとしており、全国で需要に応じた米生産を行う体制づくりが進められている。県では、国全体で米の需給の安定が図られることが重要と考えており、これまで国に対して実効性のある推進体制を確立するよう要望してきており、引き続き必要な対応を求めていく。
収入保険制度は、自然災害に加え、価格低下等、農業者の経営努力では避けられない収入減少を補償の対象とし、農業収入全体を見て総合的に対応できる制度であり、収入の著しい変動が経営に及ぼす影響を緩和するための保険制度として、農業経営の安定に資するものと認識している。収入保険制度の実施主体である農業共済組合では、無保険者が発生しないよう、申し込みが始まる平成30年10月に向け、関係機関と連携して相談窓口の設置、地域別説明会の開催、全農家への加入意向調査などに取り組んでいる。県としては、今後も農業共済組合などと連携し、国などから示される情報をきめ細かに提供しながら、制度の周知と加入促進を進め、農業者が相談窓口等を活用して適切なセーフティネットを選択できるよう支援し、制度がさらに万全なものとなるよう引き続き国に要望していく。また、農家が支払う保険料について、国が示した試算では、基準収入を1000万円、補償限度・支払率とも9割とした場合、農業者が負担する額は保険料が7万2千円、積立金が22万5千円の計29万7千円とされている。
・日欧EPA、TPP11の問題について
【高田議員】
日欧EPA、TPP11の「大枠合意」による国内農林水産物への「影響分析」について、農水省は先月2日に公表しました。しかしその中身は、「当面の影響は見込み難いが長期的には影響の懸念」という表現ばかりで、具体的な数字もない「影響試算」といえるものではありません。具体的な影響試算を国に求めるべきと考えますがいかがでしょうか。
日欧EPAはTPP以上に秘密交渉となり、農産物で82%の品目で関税を撤廃し、チーズなどはTPPを上回るものです。EUは、日欧EPAが発効すれば輸出額が24%拡大し、特にチーズ・肉類などの農産加工品は1兆3000億円に増える大勝利だと宣伝しています。食料自給率38%こそわが国の「国難」です。自給率の引き下げにつながる日欧EPA、TPP11はまだ「大枠合意」であり反対を国に求めていくべきですが知事の見解を伺います。
【達増知事】
県ではこれまで国に対し、県単独のほか全国知事会、北海道・東北地方知事会と連携し、日欧EPAやTPP11による農林水産業への影響を十分に分析し、丁寧な説明を行うよう要望してきたところであり、引き続き生産額への影響など詳細な分析を行うよう求めていく。
日欧EPAやTPP11は、本県の基幹産業である農林水産業をはじめ、県民生活や経済活動の幅広い分野に影響を及ぼすことが懸念されるため、県ではこれまで、国に対し、十分な情報提供を行い、国民的議論を尽くすよう要望してきた。
今後、国内的には、国会の場をはじめ議論を行う余地があると思われることから、詳細な分析や具体的な対策などが明らかにされ、十分な国民的議論に付されるよう引き続き国に求めていく。
6、高齢者福祉と介護保険制度について
・介護保険の改正について
【高田議員】
次に介護保険制度について質問します。
介護保険制度は、この間要支援1、2の訪問介護、通所介護のサービスから外され、地域支援事業に移行し、要介護1、2の人も特別養護老人ホームの入所制限が行われました。経済財政諮問会議などでは、さらに要介護1、2の在宅サービスを外す検討がされていますが、これが実施されれば、岩手県内では要介護認定者の61.7%・48,042人が保険給付を受けられないことになります。介護保険料を払っても必要なサービスが受けられない「国家的詐欺」ともいわれる制度改悪の中止を国に求めるべきではないでしょうか。
掃除や調理などを行う「生活援助」は、必要以上に利用されているということを問題にし、厚労省は利用回数を、介護度1は月26回など基準回数を超える人を抑制する方針を検討しています。生活援助は高齢者の変化を見つけ医療福祉などに繋ぐ大きな役割を果たすものです。回数制限は介護の重度化をまねき認知症の早期発見にも逆行するものと考えます。県は多数回数利用者の現状をどう把握しているでしょうか。
【保健福祉部長】
国において現在、平成30年度の介護保険制度改正に向け、「地域包括ケアシステム推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」の2点をより深化・推進していく観点から、具体的な見直しの議論を進めていると承知している。県としては、介護を要する高齢者が必要なサービスを必要なときに利用できることが重要と認識しており、これまでも国に対して、制度運用上の課題等を十分把握した上で必要な見直しを行うよう要望してきたところであり、今後も国における議論の動向を注視しつつ、必要な働きかけを行っていく。
ホームヘルパーが掃除・選択などの支援を行う生活援助サービスは、一定の間隔を空けてサービスを提供すれば、一日に複数回分の介護報酬を算定できるため、過剰なサービス提供につながりやすいと指摘されており、国の社会保障審議会介護給付費分科会において見直しが検討されている。検討の過程で、一定の回数を上回るケアプランとする場合には、市町村に該当プランを届け出る案が示されたと聞いているが、この場合であっても、市町村が必要と認められれば多数回利用は可能と認識している。本県の状況を見ると、平成28年9月の一人当たりの利用回数は、平均10.4回と全国平均の9.2回と同程度となっているが、市町村等保険者からは、回数の多い方の特徴として、独居や高齢者のみの世帯、認知症等の特殊事情を抱えている場合も多く、多数回利用が必ずしも不適切なわけではないと伺っている。今後、検討中の見直し案が正式に決まった場合は、利用者のさまざまな状況を十分に勘案し、引き続き必要なサービスが提供されるよう、市町村の適切な制度運用を支援していく。
・介護事業所の経営実態について
【高田議員】
介護報酬のマイナス改定で介護事業所の経営は厳しい環境にあります。全国の特養ホームの経営は3割強が赤字となっていると報道もされていますが、県内の実態はどうなっているでしょうか。あわせて介護事業所の廃止・休止の状況についても伺います。
【保健福祉部長】
平成27年に全国老人福祉施設協会が行った調査では、介護報酬改定前後の平成27年3月と4月の比較で、特養ホーム1施設あたり月額約54万円の減収となっており、また県と特養ホームの事業者団体との意見交換においても、事業者団体からは、運営規模に関わらず、一様に「厳しい」との声を聞いているところである。
県内における平成28年度の廃止・休止事業所は139ヶ所であり、そのうち経営法人主体の変更など事務手続き的な廃止を除く実質的な廃止・休止事業所は112ヶ所となっている。
・特養待機者の解消について
【高田議員】
4月現在の県内の特別養護老人ホームの待機者は、早期入所必要な在宅待機者は985人となっていますが、今年度末の整備見込みは459人にしかなっていません。入所要件が要介護3以上となってもなぜ待機者が減少しないのでしょうか。施設整備計画は待機者を解消する計画にもなっていません。
一関市では、建設用地を準備しても手を上げる事業所がない現状にあります。来年から始まる「介護施設整備第7期計画」は、待機者なくす計画とすべきですが、県の対応について示してください。
【保健福祉部長】
特養ホームの整備については、市町村の介護保険事業計画に基づき行われているところであり、現在、各市町村において平成30年度から始まる第7期計画の策定作業を進めている。
入所待機者の解消に向け、市町村では高齢者人口の動向や社会資源等地域の実情を勘案しながら、特養ホームのほか、介護老人保健施設や認知症高齢者グループホームの整備、さらには在宅介護サービスの充実などを検討していると聞いている。
県としては今後、市町村が計画に基づいて行う各種介護サービス基盤の整備が着実に進むよう支援していく。
7、国民健康保険制度の広域化について
・国保の構造的な問題について
【高田議員】
次に、国民健康保険の広域化について質問します。
岩手県の国保加入者の33.5%が年収100万円以下であり、課税所得額に対する国保税の負担率は16.54%にもなっています。平成28年度の滞納世帯は10.94%・20,617世帯、累積滞納額は65.9億円になっており、これはあきらかに支払い能力を超えています。今回「安定的な財政運営ができる規模が必要」との目的から、都道府県単位で運営が行われ、県は11月に平成30年度の納付金・標準保険料率を示しました。被災地に配慮し、値上げとなる5市町村は激変緩和で対応するなど負担増を回避する対応は評価したいと思います。しかし、これで国保の構造的な問題が解決したというものではないと考えますがいかがでしょうか。
【保健福祉部長】
現在、市町村国保においては、被保険者の所得水準が低く所得に占める保険税負担割合が高い、財政基盤が脆弱な小規模保険者が多いなどの構造的な問題を抱えている。
国保制度改革においては、毎年約3400億円の財政措置の拡充により財政基盤を強化した上で、都道府県が財政運営の責任主体となり、国保運営の中心的な役割を担うことにより、保険税負担の伸びの抑制が可能となるとともに、財政運営上のリスクが都道府県全体で分散されるなど、財政運営の安定化が図られるものと考えている。
一方で、今後も医療費の増加が見込まれることから、県としては、国の財政責任のもと、将来にわたる持続可能な制度の確立に向けて、さらなる財政措置が必要と考えており、国庫負担率の引き上げなど、さまざまな財政支援の方策を講じ、今後の医療費の増加に耐えうる財政基盤の安定化を図るよう国に要望してきたところであり、引き続き国に働きかけていく。
・国保税滞納者への対応について
【高田議員】
もう一つの問題は、高すぎて払えない国保加入者に対して、保険証を取り上げ、預金や財産を差し押さえるなどペナルティ(罰則)が行われていることです。資格証明書の発行は159件、短期保険証5,531件、財産の差し押さえ件数は2783件にもなっており全国トップクラスです。保険証がないために、具合が悪くても治療が受けられずに命まで落とすケースも出ています。盛岡市では原則、資格証明書・短期保険証は発行していません。財政運営はこれから県になります。保険証は原則発行し、財産の差し押さえはやめさせること。法定外繰り入れなど行い、値上げを回避するよう助言することが必要と考えますがいかがでしょうか。
【保健福祉部長】
国民健康保険は、加入者が納める国保税と国からの交付金等を財源としていることから、制度運営の安定化のため、確実な収納が必要であると考えている。
資格証明書や短期保険証は、国保税滞納者の納付相談の機会を確保するため交付しているものであり、また、財産の差押えなどの滞納処分は、税負担に関する公平性等を確保するため、担税能力がありながら納付していただけない方に対して十分な調査を行った上で実施しているものと認識している。
県としては、国保税の支払いが困難な被保険者に対しては、きめ細かな相談に応じ、分割納付や減免等を適切に行うよう、市町村に対して会議等を通じて要請している。
また、国保税引き下げのための一般会計からの法定外繰入については、市町村の判断により行うことができると考えるが、保険税を引き下げるために一般財源を投入することについては、健全な国保財政を確保するという観点から、慎重に判断される必要があると考える。
8、新笹ノ田トンネルの早期建設について
【高田議員】
次に、新笹ノ田トンネルの早期建設について質問します。
県は6月に、ILC整備における大船渡港活用を考慮して「公募を一時中断」という決断をしました。しかし、港湾は確保するが、そこからの道路整備は検討もされないというのは問題ではないでしょうか。県はこれまで「運搬するルート上に道路幅員、トンネルの高さ、橋梁の重量制限など支障がある箇所があれば必要な整備を検討していく」と議会でも答弁してきました。7月には有識者会議から「大型輸送に対応した輸送経路ネットワーク確保」を提起されており、「必要な整備を検討する」時期ではないではないでしょうか。さらに、陸前高田市の「復興祈念公園」との関係でも、全国に東日本大震災の経験や教訓、防災活動についてアピールすることが大事になっています。そのためにも国道343号の役割が大きくなっています。周辺自治体では、三陸沿岸道路完成後に仙台圏域へ交流人口が流れるのではないかという懸念の声が広がっており、11月24日には早期実現を求め「同盟会」が県要請を行いました。
ILCや復興祈念公園との関係でも、交流人口を増やし被災地の地域振興の力にしていくという点からも、国道343号の位置づけをもっと高めて取り組むべきです。県独自でも調査費を計上して促進すべきではないかと考えますがいかがでしょうか。
【県土整備部長】
国道343号線は、気仙地区と内陸部を結び、沿岸地域の早期復興を支援するとともに、安全・安心な暮らしを支え、観光などの振興にも資する路線であることから、県では復興支援道路に位置づけ、渋民工区等において整備を進めているところである。ご指摘の通り、ILCを推進する上でも、重要な位置づけをもつ路線と認識している。
笹ノ田峠に新たなトンネルを整備することについては、安定的な事業予算の確保が課題となるとともに、事業効果や投資の効率性を確認することが必要であり、ILCの実現に向けた進展もにらみながら、所要の検討を行っていく必要があると考えている。
なお、この検討を具体的に進めていくためには、ILCに関連する中央キャンパスや施設の立地場所・規模、施設へのアクセスルートなど、検討にあたっての前提条件が一定程度具体化されることが必要であると考えている。
9、憲法と北朝鮮問題への対応について
・憲法9条の改定問題について
【高田議員】
最後に憲法と北朝鮮問題について質問します。
先の総選挙で自民党は、憲法9条1項、2項は残しつつ、自衛隊を明文で書き込む憲法改定を重点公約に掲げました。安倍総理は、「ただ存在する自衛隊を書くだけで、何も変わらない」と繰り返し述べています。しかし、法律の世界では「後から作った法律は前の法律に優先する」ことが一般原則です。仮に9条2項が残されたとしても、後から作った条項で自衛隊が明記されれば、9条2項が空文化に道を開くことになります。そうなれば、武力行使を目的にした海外派兵や集団的自衛権の全面的な発動が可能となり、海外での武力行使が無制限に可能になってしまいます。こうした改悪には断固反対すべきではないかと考えますが知事の見解を伺います。
【達増知事】
憲法第9条については、国連憲章の理念でもある平和主義を規定したきわめて重要な条文であり、今後とも日本国憲法の原則として維持されなければならないと考えている。
憲法の改正については、国民の広範な支持の上に行うべきものと考える。
自衛隊の憲法への明記については、学説や国会においてさまざまな議論があると承知しており、広く国民的な議論を経て、結論を導いていくべきものと考えるが、海外派兵や集団的自衛権の行使を無制限に可能とするような憲法改正は好ましくなく、国民も求めていないものと考える。
・北朝鮮問題―経済制裁強化と一体に「対話による平和的解決」を
【高田議員】
北朝鮮により繰り返される核実験と弾道ミサイル発射は重大な脅威であるとともに国連安保理事決議などに違反する暴挙です。国際社会が一致結束して、経済制裁強化と一体に「対話による平和的解決」に取り組むことが唯一の方策です。しかし政府は、「対話のための対話は意味がない」と繰り返し、「『すべての選択肢はテーブルの上にある』という米国の立場を支持する」と繰り返しています。Jアラートの発動、米国からの武器輸入、秋田県への迎撃ミサイルを配備(800億円)する計画もあり一層の緊張を拡大しています。
双方の意思に反し偶発的な衝突が発生する危険が高まっていると内外の専門家が指摘しています。米朝が直接対話できるよう、先制攻撃は認めないという立場で、日本が積極的な役割を果たすよう政府に求めるべきと考えますが知事の見解を伺います。
【達増知事】
北朝鮮の一連のミサイル発射や核実験は、国連安保理決議に違反し、断じて容認することはできない。
拉致問題の解決を含む朝鮮半島における平和の実現は、日本をはじめとする周辺国はもちろん、国際社会が共通して求めるものであり、国際的な北朝鮮問題解決のための努力の中で、日本政府が名誉ある地位を占めることを望む。
・日米共同訓練とオスプレイの飛行問題について
【高田議員】
来月1月〜3月にかけて、自衛隊東北方面隊と米軍との日米共同演習が行われようとしています。この間米軍機などが重大事故を繰り返しており、今回の共同演習には、構造的欠陥があるオスプレイが参加すると言われています。オスプレイは事故率が年々高くなっており、この1年間でも沖縄での事故に続き、奄美、大分など民間空港での緊急着陸も起きており、オスプレイの事故率は年々高くなっています。県民からは「ドクターヘリとの衝突が心配だ」と懸念する声も出ています。オスプレイの飛行、日米共同訓練の中止を国に強く求めていくべきですが知事の見解を伺います。
【達増知事】
本年4月に防衛省から、今年度の第4四半期に陸上自衛隊東北方面隊と米海兵隊との共同訓練が行われる予定であることが発表されて以来、県では、防衛省東北防衛局に対し、機会をとらえて日米共同訓練の計画概要を早急に明らかにするよう求めているが、これまでのところ、具体の日時、訓練場所、訓練規模等詳細は決まっておらず、決まり次第、関係自治体等に伝えるとの回答であり、情報収集に努めている。
また県としては、岩手山演習場における日米共同訓練の実施により、県民の生命・健康・財産等に影響を及ぼすことがあってはならないものと考えており、特にオスプレイの飛行が伴う訓練については、県民の不安を払拭することが必要と考えている。
オスプレイの安全性等については、これまでも十分な説明を行い、不安を払拭するよう県から国に対し、機会あるごとに申し入れを行っており、引き続き、オスプレイの安全性についての県民に対する十分な説明と飛行ルートなど具体的な飛行内容の明示について要請していきたい。
≪再質問≫
・住宅再建支援制度の延長について
【高田議員】
被災者生活再建支援金というのは、延長できるように公益財団法人都道府県会館と協議していると。ずいぶん時間がかかっていると思うが、9月県議会でも同様の質問にまだ協議中ということで、なぜ時間がかかっているのか。
県と市町村で取り組んでいる事業の方は、市町村の意向も聞いて対応していきたいという答弁だった。しかし市町村の意向というのははっきりしているのではないか。この間陸前高田市長さんや釜石市長さんとお会いしたが、この事業の延長を求める要望も受けた。面整備が32年までかかるということもはっきりしているので、やはり県は、延長して被災者を応援するというメッセージが必要だという話をされていた。県が率先して延長し、最後の一人まで自立再建を支援するというメッセージを届ける必要があるのではないか。
災害援護資金については、住宅が全壊した被災者に対して無利子で350万円融資できる制度だが、生活再建・住宅再建をする上でも非常に有利な資金だと思う。これについても、申請期限が30年3月31日となっている。この延長も当然求めていくべきだと思うし、同時に、6年間据え置きということで、これから返済が進んでいくのではないかと思う。今の被災地の現状からいって、なかなか返済が困難な被災者も出てくるのではないかと思うが、これへの対応もお聞きしたい。
【復興局長】
被災者生活再建支援金の延長について、被害の状況に応じて支給される基礎支援金と、住宅の再建状況に応じて支給される加算支援金両方についての延長について協議しているが、特に基礎支援金については、発災後相当期間を経過しても支給が終わらない理由について詳細な説明を求められているところである。県では、それぞれの市町村の状況に応じて、例えば、発災当時住民票を移さずに居住していて被災し、その後に転出した方もおられるということで、被害が広範囲かつ甚大な中で、その方々すべてについてフォローしていくのに時間を要していることなどについて説明しており、この説明に対しては一定の理解をいただいていると承知している。
県単で行っている住宅再建支援事業費補助金は、沿岸市町村のみならず内陸の市町村についても制度を有しているところであり、沿岸市町村からは、面的整備がまだ終わっていない状況にある中での延長を求める声があるのは承知している。一方で内陸市町村からは、そうした事情にないということから、そういった内陸の市町村も含めた市町村の意向を現在うかがっている。
災害援護資金の申請期間については、関係法令による特例措置により、30年3月31日までとされているが、県では、被災地における面整備の進捗状況等を踏まえ、本年6月、政府予算提言要望において、国に対して特例措置の延長を要望している。また、実際に借りた方々の返済にあたっては、それぞれの状況に応じた対応がなされるものと考えている。
・災害公営住宅の収入超過者の家賃減免について
【高田議員】
家賃の減免について市町村と協議していくと。前向きの答弁と受け止めていいのかどうかというところだが、やはり入居から4年で収入超過者となるということは、その時点で被災者としての扱いではなくなってしまうということ、そういう対応だと思う。収入超過者となって退居の義務が発生しても行く場所がない。そして建築費が高騰して異常に高い家賃になり、同じ自治体にある住宅でも家賃が不平等になってしまうという問題もある。軽減して入居してもらった方が非常に合理的だと思うが、そういう考えに基づいて対応していくべきではないか。県としてどういう内容で市町村と協議・検討していくのか。
あわせて、福島県相馬市が独自の減免制度を行っていると。条例によって減免ができるということで理解していいか。
【県土整備部長】
県としては、県営のアパートについても、建設の時期によって、初期に建設されたものについては高騰前の建設コストに応じた家賃になるので、そこが一つの基準になり、その後に建設されたものについては、制度に則ると、収入超過者に適用する家賃が高くなるので、まずはそこの不公平感をなくすという方向で具体的に検討は進めていく。
各市町村と協議のあり方については、各市町村において家賃の問題に加え、おそらくそれぞれ人口流出対策だったり復興の担い手確保などそれぞれ抱えている課題があると思うので、家賃の問題に限らず幅広く検討されると考えられるので、その面での各市町村の対応のあり方も含めて、市町村営の災害公営住宅の家賃については考えていくということになると思うが、県としての考え方をまず市町村に理解していただいた上で、具体的にそれぞれどういう対応をするかは考えていくことになると思う。
相馬市については、市独自の判断で条例によって家賃の減免を継続するという判断をされていると受け止めている。
収入超過者に対して、入居5年経過した時点で退居の義務が生じるという制度にはなっているが、災害公営住宅については、こういう運用をしないと県は決めている。これについても市町村に対して県の考え方を伝えていきたい。
・被災者の中長期的な支援について
【高田議員】
先月、盛岡市内にある内陸被災者支援センターを訪問してきた。年間1000件を超える相談対応に取り組み、全国各地に避難している方々にも直接職員が訪問し相談に乗ったり、大変感心した。全国でも岩手だけだと聞き、これは岩手モデルだということで各地から視察が来るということを聞いた。全国災対連という災害対策に取り組んでいる住民団体の皆さんとの交流会があったが、岩手モデルは素晴らしいという話を受け、こういう被災者支援のあり方について、中長期的に被災者の皆さんを支える支援というものが必要だと思う。
兵庫県では、被災してから20年間こういう支援を行ってきた。これから総合計画をつくるわけだが、やはり次期総合計画にもこうした被災者の皆さんを中長期的に支援するセンターというものをしっかり位置づけて支援していくべきではないか。
【復興局長】
岩手内陸避難者支援センターについては、沿岸市町村からの依頼を受け、県外および内陸に避難している被災者にたいし、個別訪問などにより住まいの意向把握を行うとともに、それに合わせて生活面を含めた相談支援を行ってきている。被災者の方々が恒久的な住宅に移られた後においても、お互いに支え合いながら安心して心豊かに暮らせる生活環境が確保されることが大事だと考えている。
一方で、既存のコミュニティ支援の制度だとか、福祉施策等もあるので、恒久的な住宅移行後の中長期的な支援体制のあり方については、市町村や関係団体等のお考えもうかがいながら検討していく。
≪再々質問≫
・子どもの貧困実態調査について
【高田議員】
県としても、子どもの生活実態も含めて実態調査をして対応していきたいということであるので、それはそれとして了としたいと思うが、実態調査の中身が重要で、沖縄県では、小中高の生徒・保護者に記述式のアンケート調査を行い、生活実態や要望・課題をしっかりつかんで、市町村とも協力してもらい、県独自の貧困率を出した。これが29.9%。実態調査をすることも大事だが、より子どもが置かれている深刻な実態をつかむという努力が必要だと思うが、その点についてどういう実態調査にするか、そこが一番大事だと思うがいかがか。
【達増知事】
子どもの生活実態調査については、調査結果を施策につなげていかなければならないと考えており、市町村や民間団体と連携しながら内容を検討しているが、その結果に基づき、県全体でやっていかなければならないことを見定めたり、また調査結果によっては、ただちに市町村において対応すべき実態などがあった場合には、ただちに市町村で対応が行われると、そういった部分も含めた調査をしなければならないと考えている。
・子ども食堂の取り組みについて
【高田議員】
一関市と盛岡市で子ども食堂に取り組んでいる方々にお聞きしてきたが、非常に大きな役割を持っている。やはり立ち上がりの支援とネットワークが大事だと思うが、こういった内閣府の子ども未来応援基金というものが財政支援策であるが、なかなか要望が多くてそれに応えられないという状況にあるのではないかと思う。やはり足りないのであれば、県の支援も具体的にしていくべきではないか。
【保健福祉部長】
NPO法人や社協が運営している子ども食堂に対する財政支援として、子どもの未来応援基金という基金からの支援がある。本県の子ども食堂14ヶ所と述べたが、基金を活用しているのは2団体ということで、民間企業等からの寄付による基金であり、全国を対象としたものであるので、すべての子ども食堂への支援は難しいわけだが、県としては、子どもの貧困対策の出前講座を行って、その立ち上げの支援等も行っているが、ご指摘のあった通り、ネットワーク化というところが非常に重要なので、現在、NPO法人インクルいわてさんを中心にネットワークの検討を行っているが、今後子どもの支援に取り組む団体のネットワーク化というところを県としてもしっかり支援して、子ども食堂の来年度以降の支援につなげていきたい。
・児童養護施設について
【高田議員】
県でも、社会的養護が必要な子どもたちについて、里親制度と児童養護施設、グループホームとだいたい3分の1ずつを目指してきた。里親支援も配置して必要な支援も行ってきたが、現場の声を聞くと、里親制度というのはなかなか進まないと。ところが、厚労省が今年に入って、就学前の施設入所を原則禁止し、7年以内の里親委託率を75%にするということを目指す社会的養育ビジョンというものを決定してしまった。現場では、これまでの検証もしないまま、現場の声も聞かないままこういうことをしていいのか。行き場のない子どもたちが生まれてしまうのではないかという懸念の声が出ている。県内でも、児童養護施設を改築・整備しようという動きがあるが、こうした計画にも大きな影響が出てくるのではないか。
【保健福祉部長】
新しい社会的養育ビジョンについて。県の岩手県家庭的養護推進計画において、児童養護施設への措置児童数だとか里親委託児童数等の構成割合の目標を定めているが、それを見直すようにという内容の方針を出ている。県内の児童養護施設や団体から、里親委託を進めるビジョンの方向性は理解できるが、なかなか数値目標等についてビジョン通り進めるのは難しいのではないかという意見が大勢を占めている。児童養護施設の整備計画やアクションプランへの影響が大きいところであるので、関係団体からの意見も踏まえながら、来年度県計画の見直しを行うが、今後国の見直しの要領等も提示される見込みなので、その動向を注視しながら対応していきたい。
・子どもの医療費の現物給付の拡充について
【高田議員】
9月議会の答弁と変わらなかったが、紹介したいのは、市町村は現物給付を拡大した場合に医療費が増えるという懸念も抱えているが、実は、群馬県で中3まで現物給付を拡大し、その検証を行った。その結果は、1つは、喘息や皮膚炎などの慢性疾患治療の児童受診件数が、制度拡大後20%前後増えた、つまり重症化を抑制していると。2つは、虫歯処置の完全治療も増加し、全国平均を上回る成果を上げている。3つは、コンビニ受診が増えるのではないかという懸念があったが、その逆で時間外受診件数が減少しているという検証結果を県議会で答弁している。保護者の皆さんにもアンケートしたら、多くの保護者が適正受診に心がけていることが分かった、父母の皆さんからも歓迎されている結果が出ている。
こうした先進自治体の状況も踏まえて、市町村としっかり協議していただきたい。知事がしっかりイニシアチブをとって対応していただきたいが、群馬県の検証結果なども踏まえ、知事としてのコメントがあれば答弁いただきたい。
【達増知事】
9月定例会における請願の採択というのは、9月以前の状況と違うものと考えており、またこの請願の採択にあたっては、ご紹介のあった群馬県の例など、現物給付の拡大によるメリットというものも踏まえて採択されたと理解するので、その趣旨を踏まえて、9月前とはまた違った形で市町村と調整していきたい。
≪再々々質問≫
・子どもの貧困対策について
【高田議員】
子どもの置かれている実態を正確につかむことが一番大事だと思う。沖縄では独自に貧困率を出して、29.9%ということで、大変危機感をもち、2030年までに10%にすると。そのためのあらゆる施策を行い、知事が本部長になって、県民挙げて取り組むと。しっかりした体制もつくって、専門家にも参加してもらい、取り組みを検証してもらうと。やはり沖縄の子どもの貧困解決なくして沖縄の未来なしという高い決意で取り組んでいる。ぜひ岩手も、岩手の子どもたちの貧困対策なくして岩手の未来はないという立場で、知事先頭に頑張っていただきたい。
【達増知事】
少子化がなくても子どもというのは「子宝」というぐらい貴重な存在だが、ましてや少子化の中で子ども一人一人が大変貴重な存在で、せっかく岩手に生まれ、岩手で子ども時代を過ごしている子どもたち一人一人が幸福になってほしいと強く思う。
子どもたちにさまざまな社会経済のしわ寄せが及ぶような社会経済というのは全体として良くないわけであり、子どもたち一人一人を守り、すくすく育っていく環境を整備するという形で、岩手全体が大人たちも誇りをもって暮らし、働いていけるような岩手にしなければと思う。
・子どもの医療費の現物給付拡大について
【高田議員】
群馬県の事例もよく参考にしながらという答弁だったので、ぜひ来年から実現できるように、知事を含めて市町村とよく協議して実現に向けて取り組んでいただきたい。