2018年1月10日 商工文教委員会
平成28年度「児童生徒問題行動等調査」に対する質疑(大要)
・いじめの認知について
【斉藤委員】
最初に暴力行為についてだが、全体でも特に小学校で大幅に増えた。いじめについては感度が高まったと分かるが、暴力行為が大幅に増えた要因・背景は何か。
【生徒指導課長】
特にも小学校の暴力行為が増えているが、大きく2つの要因があるのではないかと考えている。1つ目が児童の資質にかかること、2つ目がいじめの積極的な認知である。
児童の資質にかかることについては、詳細にデータを見ると、暴力行為の件数が多い県内小学校3校の合計の件数が130件で全体の55%を占めている。当該の教育委員会に聞き取りをしたところ、特定の児童が自分の感情をコントロールできずに、教師や他の児童を軽く叩いたり蹴ったりする行為を何度も繰り返したということで、一人の特定の児童がほぼこの件数に入っているという状況だった。
いじめの積極的な認知については、本調査において、いじめの認知が小学校で約4500件弱あり、その中で2000件増えている。今回調査から、いじめの認知に関わっては、「ケンカ」や「ふざけ合い」も加えると内容が変更になったので、そうしたものも件数に含まれている。ケンカ等においては、学校において認知されて増えたもの、よって対教師暴力、生徒間暴力が小学校で増えたといったことがあったが、こうした2つの背景があるととらえている。
【斉藤委員】
3つの小学校で130件ということだった。児童が自分の感情をコントロールできないということはよくあることである。おそらくその背景もあると思う。だから感情をコントロールできない子どもたちも少なくないのだが、それをどう受け止めて対応するかというところが問われる大問題だと思うが、この3つの小学校では学校の対応に問題がなかったのか。
いじめの認知が進んだという関わりだということも私もそのように思う。同時に、教師に対する暴力も23件から84件に増えている。これはどういうことなのか。今までは認知しなかったが今回積極的に認知したということなのか。教師に対する暴力が増えたのはなぜか。
【生徒指導課長】
学校の対応についてだが、学校においては組織的な対応がなされていた。つまり、その児童の特性を共通理解し対応していた。学年が進むにつれてこのような形の暴力の件数は減っているので、発達段階の面も1つの側面としてはあるのではないかと思われる。
対教師暴力が増えていることについては、先ほど児童の資質に関わるというところで、例えば、ケンカ等に教師が止めに入った場合、感情的またはコントロールできずに教師を叩く・蹴るという行為があると。これにかかわっては、いじめの認知の感度が高まったのと同時に、暴力行為に対する認知も高まったととらえている。
【斉藤委員】
いじめの激増と暴力行為が増えたというのは、かなり関連があるのではないかと思う。
小中高・特別支援学校合わせて5750件と、2476件1.75倍に増えている。そしてこれは件数なので、いじめというのは、いじめを受ける児童生徒は1人だが、いじめる方は複数である。これに関わる子どもたちというのは単純に約3倍以上、約17250人になる。ある専門家の調査だと、いじめている子どもたちの約7割は罪悪感を感じている。そういう子どもたちも悩みながらそういう行為に走っている。いじめが積極的に認知されたことは評価するが、同時に5750件、まだ2割の学校が認知していないという問題はまた別問題としてあるが、やはりいじめの問題が大変深刻に、子どもたち・学校にとって深刻な課題だと浮き彫りにしているのではないか。今回そういう点で、認知が積極的に進んだことと同時に、いじめの問題が子どもたちにとっても学校にとっても重要な、緊急の課題だということを浮き彫りにしているのではないか。
【生徒指導課長】
過去において、いじめの認知件数は非常に少なかった。しかし過去においてそれがなかったかと言えばそうではないと考えている。過去に見えなかった部分の認知が現在本県でも進んでいるものと。よって5750件という件数は、高いととらえられるが、次としては、これをきちんと未然に防止し、相対的な、顕在化した部分の件数が今後対応として減少させるような対応をとっていくべきものととらえている。
【斉藤委員】
この点で、いじめというのは、文科省の定義は現象の定義で、どういう現象がいじめの定義にあたるかということ。しかし本質は何かというと、いじめというのは暴力であり人権侵害だと。子どもたちが守られなければならない人権を侵害すると、そこに一番の問題があると思う。子どもたちの人権というのは、何があっても最優先して守らなければならない。それが学校だと思う。しかし、それがいろんな競争教育の問題もあり、家庭の問題もある中で、「他人に対する攻撃というのが歪んだ形で表れたのがいじめ」だと指摘する専門家もいる。他人に対する攻撃という本質的なものが、歪んだ形でいろんなストレスなどで発散される問題だと。
・いじめ重大事態について
【斉藤委員】
そこで、このように激増している中で、子どもたちの命に関わる重大事態、もう1つは、いじめによって30日以上の長期の不登校に陥っている―これがいじめ防止法による重大事態である。これはどういう件数だったのか。そしてこの重大事態の特徴・内容はどういうものか。
【生徒指導課長】
28年度のいじめ重大事態に関わる件数だが、小中高あわせて22件である。第1号該当が11件、第2号該当も11件という内容である。特徴としては、それぞれケースバイケースではあるが、昨年度と比べて重大事態が増えているというのは1つの特徴だろうと。個別の内容については差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
いじめ防止法に基づく重大事態というのは、文字通り子どもたちの人権が脅かされた事例だと思う。
県教委に関わるものについて、どういう事例だったのか、学校側がどういう調査結果をしているかという資料もいただいた。県教委が所管するのは基本的には高校なので、小中学校はまた違った表れをしているのではないかと思うが、高校の関係で、いじめ防止法制定以来の重大事態を見ていきたい。
特徴的なことだけを言うと、1つは、残念ながら退学で解決されている。本当に安心して学べる学校をつくらずに、別な学校に行かざるを得ないという形で解決されているのが多数だった。
もう1つは、いじめ防止法制定以来は重大事態については緻密な調査がされているが、当事者・父母が同意しないと生徒の調査をやらない。これでは本当にいじめの実態は明らかにならないと思う。これは、本人や家族の気持ちは大切にしつつ、きちんといじめの実態調査をやって、しっかり明らかにしてこそ生徒全体の教訓になるし、学校の改革にもなると思うが、残念ながら当事者・父母の同意を得られなかったために生徒の調査はしなかったというのが多数だった。やはり調査で実態を明らかにしなかったら教訓も何も出てこない。そして加害者に対する指導も大変不徹底だと。結局、調査しないで実態を明らかにしなかったら本質的に加害者の責任が問われない。
3つ目は、いじめの対応だが、「タイマンをはって暴力行為」というのが1件あったが、「陰口」「悪口」「LINE」で自殺未遂をしたとか、学校に来れなくなったというのが高校の場合でも特徴である。だから、「からかい」とか「悪口」というのは軽く見られるが、そのことによって生徒が孤立させられると、本当に学校に行けなくなる、自殺未遂まで起こしてしまうと。
この重大事態というのは、そういう意味でいろんなケースがあるが、県教委全体がこれをしっかり受け止めて、事例の教訓をどう生かしているのか。
そして常設の第三者委員会があるが、しかし重大事態については1件しかかかっていない。私は常設の第三者委員会設置に反対した。やはり1つ1つの案件で第三者委員会をつくって責任をもってやるべきだと。ところが常設でいつでも対応できると言いながらそこに関わっていない。そして2年間の任期が切れると変わると。やはり第三者委員会でこういう重大事態については、きちんと報告をされ、そこで全県的な教訓を返すということが必要ではないか。
【生徒指導課長】
重大事態というのは、本当に大変な事態、非常に悲しい、痛ましい事態だととらえている。その教訓については、平成28年度においては、県として3つの重点を示し、県内各学校に取り組みをお願いしたところである。
その3つというのは、中学校における痛ましい2つの事案が大きな教訓になっているが、@情報をきちんと共有する、Aいじめを積極的に認知する、B組織で対応する、これが28年度重点として取り組みましょうということがあった。
そして我々の方には、高校の重大事態の報告書等が来るので、それらも含めて29年度についても3つの重点を掲げている。@自殺防止の研修等を行う、A情報の共有はもちろん、情報をきちんと提供していくこと。例えば、「本校のいじめ防止の基本方針はこういう内容でこういう対応をする」ということを発信する、B児童生徒の取り組みを活発にして、教員だけでなく学校全体でそういう取り組みを進めていく―ということである。
委員ご指摘の、受け止めと教訓をどう生かすかということについては、このような形で明示し、各学校に示したところである。
第三者委員会にかかっている1件だが、いじめ重大事態にかかる調査については、国の方でガイドライン等が示されている。その中で、被害の児童生徒・保護者等が学校の調査にきちんと調査されていますよと了解を得た場合には、第三者委員会を開催しなくてよいとなっている。ただ、ご指摘のように、重大事態をどうとらえてどのように今後もっていくべきかということについては、条例上においてもいじめ問題対策委員会の所掌事項の1つとなっているので、この部分をどのように行っていくかというのは今後検討していくものと認識している。
【斉藤委員】
いじめ重大事態について改めて、学校で調査するということはもちろん当事者なので大事である。同時に、学校で調査した場合も、その調査結果について第三者委員会が検証すると。そして全県的ないじめ対策に生かしていくと。そこに常設の機関をつくった意味があると思うので、その点も是非検討していただきたい。
それで9ページのところで、「ひやかし」「からかい」「悪口」「脅し文句」「嫌なことを言われる」―これが小学校で2499件、全体でも3313件と一番多いが、これは決して軽いいじめではないということである。これで自殺未遂や不登校に追い込まれているのが実態なので。
ある先生が全国的な調査を行い、「いじめられた経験」について、小学校で48.9%、中学校35.3%、高校29.3%、全体で38.4%も「いじめられた経験」があると。「いじめた経験」は31.7%。かなり多くの子どもたちが「いじめられた経験」があり「いじめた経験」ももっている。そして深刻だと思ったのは、「いじめられたときに辛くて死んでしまいたいと思ったことはありますか」という設問に対して35%があったと。子どもたちにとっては、いじめというのは命に関わる、思春期の特徴というのもあるが、そういう問題としてこのいじめについて積極的に。28年度・29年度の重点課題も分かったので、29年度はおそらく28年度の重点課題も継続してということでいかないと、合わせて29年度の重点課題があると思う。
・矢巾町の中学2年生自殺事件の教訓について
【斉藤委員】
調査報告書を丹念に読んだが、学校の対応についてかなり厳しい指摘がされている。いわば、生活記録ノートで2年間6回にわたり「死にたい」と訴えていた。その訴えが共有されなかった。子どもが死にたいと担任の先生に訴えるということは、一定程度の信頼関係があったのだと思う。普通はそういうことを担任に訴える例はなく特異なケースだと思う。そういう信頼関係がありながら、それを深刻ないじめであり自殺の危険と受け止められなかった。だから情報共有もされなかった。情報共有されなかった要因には、学校の体制もあった。上司に信頼感をもって相談できなかったと。ここはきちんといじめ対策委員会もできて、いじめ防止対策方針もある。しかし全く取り組まれていなかった。もう1つ指摘しているのは、前年に滝沢市でいじめ自殺事件があり、その報告書が全然受け止められていなかった。受け止めていなかった学校はもっと多いと思う。
そういう意味で、重点課題はいいが、この報告書そのものは膨大なもので、丹念な調査をやったと思っている。ただ、結論についてはきわめて問題がある。丹念な調査でいじめは認定した。「いじめは希死念慮の一因」と。ところが自殺の関係については「断定できない」と。これは第三者委員会の責任の放棄だと思う。いじめの原因、自殺の原因を調査するのが委員会である。いじめを認定していながら、しかも報告書の中では、「かなり系統的ないじめにより子どもが追い詰められた」としながら、「自殺する3日前の動向が分からず断定できない」と。残念ながら責任回避の調査結果ではなかったかと思うが、しかしここで解明されたいじめ対策の問題については、大変重要な提起があると思う。これは実際に学校の現場でどのように受け止められているのか。
【生徒指導課長】
矢巾町における第三者委員会の報告については、中身を見させていただいた。ご指摘の通り、情報共有がなされていなかった、学校として組織対応がされていなかったと。それについては28年度の重点の教訓として盛り込んでいる。
学校でどのような取り組みがなされているかということだが、まず当該校については、いじめの認知に関わる定義の部分をきちんと情報共有し、カードに記載して集計するなど、小さなものも見逃さない姿勢で取り組み、会議も定例化し情報共有を図っていると聞いている。県内各学校においても、いじめの認知、定義の理解に関わっては進んでいるものと思っているが、まだ不足の部分もあるとも思っているので、今回のいじめ問題の県の基本方針を改定したことも踏まえ、きちんと全体を把握しながら対応していきたい。
【斉藤委員】
滝沢市での第三者委員会の報告、矢巾町での第三者委員会の報告、2つある。いま学校で年2回ぐらい研修がある。やはり具体的な事例からしっかり学ぶことが大事である。具体的な事例から、自分の学校の問題として受け止めてやっていく必要があるのではないか。
私も何度か矢巾町の教育長さんにお会いしてその後の取り組みを聞いてきたが、矢巾町は本当に真剣に検証・反省し、生徒指導個別カードによる情報共有を図っている。いじめの対応でとても大事なのは、どの案件がいじめかどうかということをやるが、しかしいじめというのは切り離されて認定されるものではない。一定の経過の中で蓄積された時にそれがいじめになる。だから矢巾町では、生徒指導個別カードで気になることは記して、それが積み重なり子どもの変化を見たりいじめの認定をしている。そしてそのカードが学年でも、校長・副校長でも共有する。矢巾町には2人のいじめ相談員がおり、相談員が学校を訪問し、カードを見てアドバイスしたり対応もしている。
そういう意味でいくと、このぐらい徹底して、いろんな気になることをきちんと書き留めながらいじめを未然に防いでいくという取り組みが大変大事ではないかと。そしてそのためには、何といっても先生に余裕がなければならない。多忙化の状況の中でそこまで求めるのは酷だということが一方である。だから、生徒一人一人に寄り添って、小さな変化もつかみながらやれるような学校の体制、教員の状況をどうつくっていくか。これは今具体的に解決していく課題だと思うがいかがか。
【教育長】
子どもたちが学校教育をしっかり受けられる環境をつくっていくことと、安心・安全を確保することがまず求められている基盤だと考えている。そして、教育は日々教職員が子どもたちに向き合いながら行われているということで、まさに教育は人なりであり、教員の資質・力はきわめて大事だと思っている。
ご指摘のあった教員の多忙化についても、教員が余裕を持って子どもたち一人一人に寄り添う教育をしていくということは、これからの社会をつくっていく子どもたちをしっかり育てていくことはきわめて重要な視点だと思っている。多忙化についても社会問題化してきており、人づくり革命の中でも大きなテーマになっている。本県の実態もまさにそのような状況にあると考えており、教育行政・学校教育でそれぞれ何をすべきか、解決に向けた取り組みは喫緊の課題であり、今年度もさまざまな議論を行ってきているが、来年度以降着実にこれまで以上に進むような取り組みをしていきたい。
・不登校への対策について
【斉藤委員】
12ページのところで、長期欠席(不登校等)の状況があるが、不登校は小学校183件、中学校は激増し876件、高校377件、計1436件となっている。この数もまた大変深刻なものではないか。不登校問題に関わるNPOの方々にお話を聞くと、やはり背景にはいじめがあると指摘している。いろんな要因があるが、その中にいじめがあると。特に中学校で激増する問題はなぜなのか。特別の手立て・対応はどうなっているか。高校で377件ということは、2つの小規模校がなくなるぐらいの数である。要因として、家庭にかかる状況というのはあるが、いま子どもたちをめぐる状況は大変だと思う。ただ、家庭に問題があっても、学校がそういう子どもたちを受け止める、学校に希望が持てるものにしなくてはならないのではないか。この点について、県教委の対応策をお聞きしたい。
【生徒指導課長】
中学校で不登校が増加したことについては、ご指摘の通り、家庭にかかる要因ももちろんあり、本人にかかわる問題もある。この調査結果を見ると、本人にかかる要因でもっとも多いのは「不安の傾向」ということで約3割、もう1つ「無気力の傾向」も約3割となっている。家庭にかかる状況については、全体の41%ということで、全体の件数の7割ぐらいがこういう要因において不登校になっているととらえている。
よって、不登校の改善に関わっては、保護者の理解と協力を得た上で、そして学校として、その子どもたちの無気力・無関心というところを、教育相談等により改善していく必要があると思っているので、教育相談体制の充実をさらに図ること。そして今毎年9月に、心と身体の健康観察という全県の悉皆調査をしているので、それらを教育相談のツールとして活用できる体制になっているので、より一層進めていく。もう1つは、不登校がなぜ増えるかというと、新規に不登校になる生徒がどんどん増えてきていることが大きな原因であり、未然防止のためにどのように学校が取り組めばいいのか、行政がどう取り組めばいいのかということを、いま国立教育政策研究所の委嘱を受けて調査をしている。今滝沢市をモデル校として実施しているが、それらも検証しながら未然防止や現在の対応を進めていきたい。