2018年2月27日 2月定例県議会本会議
一般質問(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。県民の切実な要求実現の立場から、達増知事に質問します。
1.東日本大震災津波からの復興の課題について
・高齢者の見守り、コミュニティの確立、心のケアの強化について
第一に、県政の最大の課題である東日本大震災津波からの復興の課題です。
大震災から3月11日で丸7年を迎えます。1月末現在、全壊、大規模半壊等で自宅をなくし、被災者生活再建支援金の対象となる23645世帯のうち、住宅の建設購入、自宅の補修、賃貸住宅入居など住宅を確保した世帯は13093世帯、56.6%、災害公営住宅に4468世帯が入居していますので、合計17561世帯、74.2%が住宅を確保したことになります。
しかし、丸7年を迎えようとしている中で、4分の1の世帯がいまだに住宅を確保できない事態は深刻です。不自由な生活で被災者の命と健康が脅かされています。昨年1年間の仮設住宅での孤独死は5人、累計では43人、災害公営住宅での孤独死は6人、累計では16人となっています。震災関連の自殺は48人に及んでいます。こうした中で、被災者の医療費・介護保険利用料等の免除措置を来年度も12月まで継続することは、被災者にとって命と健康を守る文字通りの命綱となっています。
仮設に取り残されている高齢者、災害公営住宅で孤立する高齢者等の見守りとコミュニティ確立の支援、子どもの心のケア、被災者の心のケアの取り組みはこれまで以上に強化すべきと考えますが、来年度は具体的にどう取り組まれるでしょうか。
【達増知事】
被災地においては、町の再生が本格化するとともに、恒久的な住宅への移転が進むなど環境が大きく変化しており、時間の経過にしたがい被災者の抱える問題も複雑・多様化している。県では、関係機関と連携し、高齢の被災者等が孤立することのないよう、生活支援相談員による見守り相談や、災害公営住宅等におけるコミュニティ形成の支援を行うとともに、心のケアセンターや子どもケアセンターにおける専門的な相談支援を行うなど、被災者の生活再建のステージに応じた切れ目のない支援に努めてきた。
これまでの大規模災害の例からも、被災者が安心して暮らすことができるようにするためには、中長期的な見守り体制の充実や、地域への支援体制の確立が必要と認識している。平成30年度においては、地域づくりワークショップの開催など、地域での支え合い活動の推進に向けた取り組みを行うとともに、災害公営住宅がある地域の住民も広く対象とした居場所づくりによる新たな福祉コミュニティ形成支援を行う。
また心のケアセンター等の専門スタッフの確保や、スキルアップ等により支援の質を高め、被災者の心のケアの充実に取り組むなど、被災者一人一人に寄り添ったきめ細かな支援に努めていく。
【斉藤議員】
取り残された仮設団地での被災者見守りは、いま自治会が崩壊して、本当に今まで以上に深刻な事態である。ここへの支援というのは今まで以上に強化すべきではないか。
災害公営住宅では、新たな孤立化・孤独化が進み、孤独死が増えている。災害公営住宅に入ると、生活支援相談員の訪問も月1回か2回程度で、十分でないと思うが、生活支援相談員は今年度は150人程度だった。1年雇用で先の見通しが立たない。10年間この制度があるのなら、やはりあと2年3年はやっていただくと。こういう形で必要な体制を確保すべきではないか。
【達増知事】
仮設住宅団地に残っている方々が、長期間不自由な生活が続くということで、より厳しい状況に置かれており、見守りの必要性が増しているということについてはその通りと考えている。
災害公営住宅、恒久住宅に移ったということであっても、それで全てOKということではなく、やはり環境の変化、新しいコミュニティ形成といった課題を抱えていることに対しては、見守りということが必要だと考える。
【保健福祉部長】
生活支援相談員の関係だが、平成29年12月末現在で、159名の配置となっているが、30年度当初予算で186人分ということで、ご指摘の通り、なかなか資格や雇用形態の関係で難しい面もあるが、そこを柔軟に市町村や市町村社協とも連携して、しっかり配置できるように努めていく。
災害公営住宅に移った方々のコミュニティ形成ということで、これまで以上に災害公営住宅への見守り・相談活動を強化し、さらには地域住民の方の支え合いのところでコミュニティ形成支援ということに努めていきたい。
・住宅確保への支援について
【斉藤議員】
とくに切実な問題は、仮設住宅住まいの被災者です。
1月末現在、応急仮設住宅には2910戸、5955人、みなし仮設住宅には745戸、1803人、合わせて3655戸、7758人が狭く不自由な生活を強いられています。仮設暮らしの被災者はピーク時の18%です。今年の3月以降、すべての市町村で特別の理由がなければ仮設住宅等からの退去が迫られます。文字通り被災者一人一人に寄り添って安心して生活できる住宅の確保への支援と対応が求められています。
12月末段階の調査では、仮設入居世帯3505世帯のうち、特定延長対象世帯は1679世帯、対象外は1615世帯となっていました。それぞれの住宅確保の意向状況をどう把握されているでしょうか。
【達増知事】
昨年12月末で特定延長の対象となった世帯のうち、今後完成する災害公営住宅に移る方が33%、土地区画整理事業や防災集団移転促進事業により造成される宅地で自主再建する方が55%、それ以外の自主再建の方が12%となっている。また特定延長の対象外となった世帯では、災害公営住宅に移る方が24%、自主再建する方が40%、民間賃貸住宅などで再建する方が31%となっている。
・災害公営住宅の家賃減免について
【斉藤議員】
災害公営住宅入居者は、今、家賃の引き上げに直面しています。
国の家賃の特別低減措置が6年目から10年目まで縮小し、通常の家賃に値上げされます。制令月収8万円以下の国の特別家賃低減事業の対象は、災害公営住宅入居者の77.3%に及んでいます。県は、国の低減措置とほぼ同様の恒久的な減免制度への移行・申請を呼びかけていますが、県・市町村の減免制度への移行・申請の状況はどうなっているでしょうか。
とくに切実なのは、収入超過者の家賃引き上げの問題です。収入超過者といっても、給与所得控除や扶養控除などを行った後の月収が15万8千円を超える世帯です。県は、被災3県では先駆けて収入超過者の家賃軽減対策を示しました。その内容は、県営の災害公営住宅で近傍同種家賃が一番低い77400円(3DK)を上限とするものです。一歩前進と評価しますが、それでも2倍近い値上げとなる世帯も出ます。現在の家賃が収入基準に基づくものですから、そのまま10年間は現状のままで維持することもできたのではないかと思いますがいかがでしょうか。
【達増知事】
県営住宅については、所得が少ない方が国の特別家賃低減事業と県が独自に有する減免制度を比較して、より低廉な家賃を選択できる制度になっており、本年1月末時点では、98世帯の方に県の減免制度を利用いただいている。今後、国の制度による減免が縮小していくのにともない、県の制度を利用する方が増えていくものと考えている。ほとんどの市町村は、県と同様の減免制度を適用すると聞いており、すでに減免手続きが開始されたところもあると承知している。
また、継続して相当の収入がある世帯が、入居後3年が経過すると当該住宅の建設費をもとに算定される家賃が適用されるが、この家賃は、復興事業の集中による建設費の上昇などにより、一部の団地では高額となることから、入居者間の公平性を確保するために、家賃の上限を設けて超過分を減免することとしている。今回上限に設定する家賃は、沿岸部の民間賃貸住宅家賃の相場と同程度と報告を受けており、一般の公営住宅の入居者や、民間賃貸住宅に入居された被災者との公平性の観点からも、今回の低減措置は適切なものと考えている。
・仮設店舗で再建した商業者の本設移行の状況と今後の支援策について
【斉藤議員】
仮設店舗で再建した商業者は合計で725店舗でした。
@昨年12月末段階で本設移行できたのは277店舗となっています。残された仮設店舗の本設移行や無償譲渡等の意向をどう把握されているでしょうか。
A国は、仮設店舗の撤去費用等に対する助成の期限を18年度末としています。被災市町村では仮設店舗の退去期限を7月とか9月としています。本設移行の前に退去させられたら再建どころではない状況です。中小機構の仮設店舗の撤去費用の助成期限をせめて復興期間の20年度末まで延長するよう強く求めるべきと思いますが、どう取り組んでいるでしょうか。
【商工労働観光部長】
本設移行等への意向について。市町村を通じて商業者をはじめとする被災事業者の状況を把握してきた結果、29年12月末現在では、仮設施設に入居している商業者は344者となっている。
本設移行等について、8月に県が行った被災事業者復興状況調査においては、仮設店舗等事業者で本設再開を予定しているのは63.4%となっている。仮設施設での営業を希望している事業者も約10%となっており、大船渡市や陸前高田市では、仮設施設の無償譲渡の取り組みを進めている。
仮設店舗の撤去費用の助成期限については、中小企業基盤整備機構が整備した仮設施設の撤去費用等の助成については、本県等が要望を行った結果、平成26年度に創設され、その後助成期間の延長についても要望を行ってきた。28年2月には、当面30年度末までの延長となったものである。土地区画整理事業の進捗状況等により、本設移行が平成31年4月以降となる地域が見込まれていることもあり、助成期間のさらなる延長等について、これまでも国に対して要望してきたところだが、引き続き強く要望していく。
【斉藤議員】
ピーク時は725店舗で、現在344店舗で本設に移行したのが277店舗と。陸前高田市の場合は、現在129店舗あるが、本設移行はたった14 店舗、釜石は106店舗のうち61店舗、大槌は47店舗のうち22店舗しか本設展開していない。こういう方々が入居期限きたら、本設移行どころではない。陸前高田市は4割以上、大槌も4割以上の事業者が被災して廃業している。今頑張っている事業者を守らなかったら、地域の再生、経済の再生、商店街の再生にならない。
中小企業庁は、最初は「当面」と言っていた。当面なので延長は可能だと思う。先日、小池晃書記局長が来県し、知事とも意見交換した。その際、中小企業庁に問い合わせていただいた。回答は、「中小機構の助成制度の期限は、中小機構の現中期目標期間の最終である平成30年度末となっているところ、平成31年度からの次期中期目標の策定とあわせ、本助成事業の実施についても検討することとしている」と。しかしいつまでも検討されては困るので。入居期限が決められ、すでに退居している業者も出ている。今月中にでも延長の方向をしっかり示していただくよう、中小企業庁に強力に働きかける必要があると思うがいかがか。
【商工労働観光部長】
我々としても同様の認識であり、度あるごとに国への要望等は行っている。
ちなみに、中小機構の「当面」といっている話については、議員がお話いただいた通りの内容になっているが、次期5年計画という5年ごとの区切りの中では、きちんと対応していただけるものと信じている。
【斉藤議員】
すでに退居時期が迫られている問題なので、県として精力的に対応していただきたい。良いことは早く。国はそういうところが鈍感なので。
・区画整理事業における利用計画、空き地対策について
【斉藤議員】
@かさ上げされた土地の利用計画、住宅再建の見通しをどう把握されているでしょうか。
A大槌町では「空き地バンク」の取り組みを進めています。陸前高田市もマッチングの取り組みを進めようとしています。県として区画整理事業の空き地対策にどう取り組もうとしているでしょうか。
Bまた、これだけの空き地が出る問題点をどう認識しているでしょうか。大震災の復興事業として、このような従来の土地区画整理事業でよかったのか、改善点はないのか、検討・見直しが求められているのではないでしょうか。
【県土整備部長】
事業を実施している市町村が公表した土地利用意向調査の結果によると、地区ごとにばらつきはあるが、「利用予定あり」の割合は約4〜8割となっている。
県としては、大槌町の空き地バンク制度など、市町村の先進的な取り組み事例について、担当者会議などを通じて情報共有をはかることや、被災者住宅再建支援事業と生活再建住宅支援事業の実施期間を延長し住宅再建を支援することなどの取り組みにより、引き続き土地利用の推進を図っていく。
なお、事業の完成までに時間を要する中、地権者の意向が変化したことも土地利用が進まない要因の1つと考えられるが、市町村においては、起工承諾による着工など震災特例を活用した事業期間の短縮にも取り組んできたものと承知しており、県においても、将来の大規模災害等に備え、土地等の私有財産制限のあり方などについて、幅広い議論・検討を進めるよう国に提案している。
【斉藤議員】
利用予定が4〜8割と。4割というのは本当に大変で6割が活用見込みがないと。陸前高田市の高田地区・今泉地区が4〜5割が予定なしと。利用予定というのは、利用予定=住宅再建ではない。利用予定の中で住宅再建は半分程度。本当にこれは大変な事態だと思うので、せっかく区画整理で整備された土地の活用、大槌町や陸前高田市などは必死になって取り組んでいるが、まちづくりの中心なので、県も一緒になって取り組んでいただきたい。
・沿岸被災地の基幹産業である漁業・水産業の復興の取り組みについて
【斉藤議員】
本県の主力魚種である、サケやサンマ、スルメイカが震災前の3割前後と大不漁となり、ワカメ、コンブ、ホタテ、カキ等も震災前と比べて生産量は4〜7割程度となっています。
@漁業、水産加工業への影響をどう把握されているでしょうか。
A復興途上での二重災害というべき状況ですが、県の具体的な対策を示してください。
B漁業就業者が震災前と比べて36.7%減少している中、漁業の担い手育成は極めて重要な課題です。この間の漁業担い手育成の実績と水産アカデミーを含め今後の対策を示してください。
【農林水産部長】
平成29年度の魚市場の水揚げ量および主要な養殖種目の生産量は、震災前に比べ減少、金額は単価高により約9割となっており、収入減少分は漁獲共済などの制度で補填している。また、これらの主要魚種を加工原料とする水産加工業者も、地元魚市場以外からの原料調達を余儀なくされている。
県では、漁獲量の回復に向け、サケについては、計画的な種卵確保や健康な種苗の育成、適期放流など、サンマやスルメイカ等については、漁海況情報等の迅速な提供や、資源管理の推進などに引き続き取り組んでいく。養殖生産量の回復については、意欲ある漁業者の生産規模拡大や、漁協の自営業職の推進、収益性の高い漁業者をモデルとした生産方法の普及指導、省力化機器の導入などに引き続き取り組むとともに、新たに生産者と加工・小売業者等との共同により、水産物の販売拡大などに向け、両者のマッチングを支援していく。水産加工業の回復については、原料魚種の転換についての事業者への助言、国の補助制度の活用など支援しているほか、漁獲が好調なサバ・イワシの巻き網漁船を地元魚市場に誘致し、加工原料の安定的な確保に努めていく。
担い手育成について。県では、漁業担い手の確保・育成の取り組みを進めるために策定した「岩手県漁業担い手育成ビジョン」に基づき、漁業経営力向上研修や、漁業担い手対策の推進母体となる市町村就業者育成協議会の設立、新規漁業就業者への現場での実務研修などを実施してきた。こうした取り組みにより、中核的漁業経営体数は、平成28年度の目標数390経営体にたいし419経営体、新規漁業就業者数は目標数50人にたいし57人となっており、漁家子弟以外の新規漁業就業者の参入割合は、震災前の約3割から5割と増加してきている。今後は、これまでの担い手対策に加え、漁業就業希望者にたいし、漁業の基礎知識や技術をはじめ、ICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援し、将来の本県漁業を牽引していく人材を養成する機関として、2019年4月の開講に向け、「(仮称)岩手水産アカデミー」を設置することとしている。県では、市町村・漁業関係団体と連携し、このアカデミーを核とした取り組みを積極的に進め、漁業担い手育成ビジョンの実現に向け、本県漁業の担い手確保・育成対策を推進していく。
【斉藤議員】
漁業、水産加工業は沿岸被災地の基幹産業なので、地域経済の再生もここにかかっているので、ぜひ全力をあげて取り組んでいただきたい。
2.子どもの医療費助成の小学校までの現物給付化の見通しについて
【斉藤議員】
@医療費助成の拡充を求める9月県議会での請願採択を受けて、知事は「市町村と協議・調整を進める」としてきましたが、市町村の意向調査結果はどうなっているでしょうか。
Aできるだけ早く小学校卒業までの現物給付化の方針を示すべきではないでしょうか。
【達増知事】
昨年9月に、市町村に対して現物給付の拡大についての意向を確認した際には、新たな減額調整措置が発生することや、医療給付費の増加が懸念されることなどから、慎重な意見が多く見られたが、先の9月定例会において、現物給付を小学校卒業まで拡大することを求める請願が採択されたことを踏まえ、1月に市町村ごとの国庫負担金の減額調整額を示した上で、現物給付拡大についての意向を改めて確認したところ、現物給付の拡大の方向性については、賛成の意向を示す市町村が多数を占めた。一方では、市町村の財政負担が増加することに対する不安や、県に財政支援を求める意見などもあった。
【斉藤議員】
問題は、県議会が請願を採択し、知事が市町村と協議・調整すると。圧倒的多数の市町村が賛成している。だとしたら、来年度からでも実施の方針を示して取り組むべきではないか。
いま子どもの医療費助成は、一関市・北上市・花巻市が一気に高校卒業まで拡充する。県都の盛岡市も来年度から中学校卒業まで拡充すると。市町村がこれだけ頑張っているときに、県のイニシアティブとしては、現物給付を拡充すると。この点で県が責任と役割を果たすべきではないか。
【達増知事】
さまざまな課題について意見があったことから、今後市町村と県との間で協議の場を設置し、必要な調整を行い、来年度には具体的な方向性を示したいと考えている。
【斉藤議員】
来年度のできるだけ早い時期に、良いことは早く。圧倒的多数の市町村が現物給付化賛成なので。財政負担が増えるというのは正確ではない。来年度から就学前のペナルティはなくなり、3200万円の負担が減る。新たなペナルティは2000万円で、新たな負担なしにできる。こういうことを丁寧に説明して、ぜひ来年度早期に実施の方向を示してほしい。
子育て中のお母さん方は、「就学前の子どもは現物給付だが、小学校に入ったら償還払いで手続きが大変」「お金の心配をしながらギリギリまで子どもを病院に行かせない」と。ぜひこの点はしっかり対応していただきたい。
3.子どもの貧困対策について
・子どもの生活実態調査の内容と手法について
【斉藤議員】
来年度予算案に、初めて「岩手県子どもの生活実態調査」の実施と、子ども食堂など「子どもの居場所ネットワーク形成支援事業」に3960万円が予算化されました。遅きに失した感がありますが、@子どもの実態調査については、全国に先行事例があり、これまで以上に充実した調査、他県と比較できる調査を行うべきと考えますが、実態調査の内容と手法について示してください。
【保健福祉部長】
実態調査については、調査項目が3つある。
1つ目は、小学5年生・中学2年生とその保護者すべてを対象に、世帯の就業・収入の状況や生活状況等を把握するための調査を行う。
2つ目は、生活保護世帯や就学援助制度利用世帯等の保護者を対象に、困窮世帯の生活実態や公的支援の利用意向等を把握するための調査を行う。
3つ目は、小学1年生〜中学3年生までの全世帯を対象に、子育て世代の支援ニーズを明らかにし、個別支援につなげるための調査―。
この3種類の幅広く詳細な調査を学校を通じて実施する方向としており、先行して実施している都道府県の調査もベンチマークしながら、具体の調査内容を調整している。
【斉藤議員】
ぜひ実のある実態調査をお願いしたい。
・子ども食堂の状況と支援策について
【斉藤議員】
A子ども食堂などの取り組みが県内でも広がっています。状況をどう把握されているでしょうか。子ども食堂など子どもの居場所づくりとネットワーク形成を含めた県の具体的な支援策を示してください。
【保健福祉部長】
子ども食堂は1月末現在、13市町村の19ヶ所において、NPO法人や社協等が運営主体となり開設しているものと承知しており、昨年、子ども食堂等を実施している団体等と意見交換を行った際に、実施団体同士のネットワーク化が必要との意見をいただいた。
県では来年度、子ども食堂や学習支援などの子どもの支援を官民一体となり進めるため、子どもの支援に取り組む団体のネットワーク化を支援し、その活動を推進するための経費を当初予算案に盛り込んだ。
【斉藤議員】
子ども食堂というのは、子どもの居場所づくりである。盛岡市内に7ヶ所設置されており、その内容を聞いてきたが、子どもが子どもを呼んでくると。子どもの数と同じぐらい大人がボランティアで参加している。新しい居場所、まちづくりの一貫としても地域づくりとしても進んでいると思っているので、必要な課題は調査しなくても分かる課題もあるので、そういう課題についてはスピード感をもってやっていただきたい。
・就学援助制度について
【斉藤議員】
B子どもの貧困打開の緊急課題として、就学援助制度は、子どもたちの教育の保障にとって極めて重要な役割を果たしています。
就学援助の受給割合は、従来の制度では北上市の6.03%から久慈市の25.41%と4.2倍の格差があります。被災児童生徒就学援助を含めると、北上市の6.11%から大槌町の59.35%と9.71倍の開きがあります。この格差の要因は何でしょうか。本来就学援助が必要な子どもが受けられていないということではないでしょうか。
就学援助については、申請主義となっていることから、就学援助制度の趣旨と申請の仕方を徹底することが必要です。また、準要保護児童については市町村によって基準に違いがあります。子どもの貧困打開と教育の保障の立場で、できるだけ必要な児童が受けられるように県が役割を発揮すべきですがどう取り組んでいく方針でしょうか。
【教育長】
要保護世帯への就学援助は国が定めている制度なので、対象世帯や費目、支給額に違いはないが、いわゆる三位一体改革により税財源が移譲され、市町村単独事業となった準要保護世帯への就学援助については、それぞれの地域の実情を踏まえた制度運用が行われており、具体的には、一定の所得基準のほか、個別世帯の実情等を勘案した認定が行われるなど、それぞれの市町村において工夫を凝らした対応が行われている。
市町村別の対象児童生徒数の割合は、東日本大震災津波後に設けられた被災児童生徒就学援助制度の対象となる児童生徒が多い沿岸部において高い傾向にある一方、これを除く違いについては、真に支援を必要としている世帯の状況が、都市部や農村部などの生活地の違い、世帯を取り巻く状況の違いなど多種多様であり、各市町村がこうした実情を踏まえて対象とする世帯を定めていることも一因であると認識している。
県の役割について。就学援助制度は議員ご指摘の通り、対象世帯からの申請によることが基本となっているが、本制度が経済的な事情を抱えた子どもの学ぶ機会を保障する重要な役割を担っているので、市町村が真に支援が必要な世帯を的確に見極め、これらの方々に寄り添った丁寧な対応を行うことが求められていると認識している。
県は、広域的な自治体として、各市町村の考えを尊重しつつ、的確な対象世帯の把握に向けた、学校・福祉部門との連携を図るための調整や、各市町村における制度周知の工夫、対象世帯の把握の工夫などの状況について、全市町村に情報提供することなどにより、支援を行っていくことが求められていると考えている。
県教委においては、定期的な通知や、市町村教育長会議等の場を通じて、一層の学校・福祉部門との連携や、周知・把握の工夫などについて要請しているところであり、このような取り組みにより、援助費目の見直しや、新入学児童生徒学用品費の入学前支給などの取り組みを進めてきている。
今後とも、市町村における適切な運用が図られるよう努めていく。
【斉藤議員】
被災児童就学援助を除いても、4.2倍の格差があると。被災児童生徒就学援助を含めれば9.71倍の開きがある。市町村民所得を調べたがこんなに差はない。問題は、就学援助制度を受けられるはずの人が受けられていないということに格差の実態が示されているのではないか。
沖縄県では、就学援助の利用状況の調査を行い、本来援助の対象となる困窮世帯でも50%程度が利用していなかったこと。その理由として制度自体を知らなかったと回答したのが20%いたことから、沖縄県自身が就学援助制度の周知徹底策を打ち出しました。テレビCM放送や親しみやすいポスター、リーフレットの配布、学校での書類配布だけでなく、生活の中で就学援助制度に触れる機会を増やす画期的、迅速な対応を行っています。
この就学援助制度というのは、貧困の子どもを含めて、子どもたちの教育を保障する、憲法・教育基本法に基づいた制度である。これが本当に実行されることが必要ではないか。岩手県としても、沖縄の経験に学びながら、正確で徹底した就学援助制度の趣旨・活用を徹底する必要があるのではないでしょうか。
【教育長】
各市町村における制度周知の取り組みについては、市町村広報による周知や、学校における書類配布を基本としつつ、これらの取り組みのみによっては把握しきれない対象世帯の的確な把握に向けて、学校や福祉部門と連携した取り組みも行われている。
県教委においても、学校が子どもの貧困対策のプラットホームの役割を担っていることを踏まえ、学校と関係機関をつなぐスクールソーシャルワーカーの体制の充実にも努めながら、市町村教委と連携し、就学援助制度の対象となる世帯の把握や、制度の周知に取り組んできている。
教育機会の保障の観点等から、就学援助制度が適切に運用されることはきわめて重要なので、今後とも制度周知の徹底や対象世帯の的確な把握が行われるように、市町村教委とともに取り組んでいく。
・学校における総合的な対応について
【斉藤議員】
C政府の「子どもの貧困対策に関する大綱について」では、学校をプラットホームとした総合的な子供の貧困対策の展開が提起されています。県教委と学校では、具体的にどう位置付け取り組まれているでしょうか。高校における中退や不登校対策を強化することも、新たなワーキングプア、貧困をつくらないという点で、今まで以上に取り組みが必要です。現状と対策について示してください。
【教育長】
本県においては、国の大綱を踏まえ、「いわての子どもの貧困対策推進計画」において、学校を子どもの貧困対策のプラットホームと位置づけ、市町村等と情報共有に努めながら、「学校を窓口とした福祉関連機関等との連携」や「学校における学力保障」、「学習環境や相談体制の整備」などに取り組んでいる。
具体的には、子どもたち一人一人に寄り添った学校教育の推進に加え、生活困窮世帯の子どもを早期の段階で生活支援や福祉制度につなぐため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを活用した教育相談体制の充実を図るとともに、学校と福祉関係機関等と連携しながら、個別の事案に応じた支援等を行っている。
あわせて、放課後子ども教室や児童クラブによる学習支援の充実などにも取り組んできているが、今後においては、関係機関と連携し、教職員を対象とした子どもの貧困に関する研修の強化などにも取り組みながら、その充実に努めていく。
【斉藤議員】
子どもの貧困対策で、高校における中退・不登校対策も指摘した。新たなこういう貧困をつくっては絶対にならない。
いま学校に求められているのは、子どもたちの悩みや苦しみに心を寄せて、子どもたちを包摂・ケアする学校づくりである。
被災地の取り組みというのは、ある意味そういう先進的な取り組みをしていると思う。被災地におけるさまざまな教育実践を、今後の貧困対策にも生かしていただきたい。
・県として推進する体制強化について
【斉藤議員】
D知事に質問します。子どもの貧困対策は、子どもにとっても、県政にとっても緊急の最重要課題の一つです。「幸福」をキーワードする新しい県の総合計画に位置付けるとともに、部局横断の取り組みが求められています。推進体制の強化が必要です。知事を本部長とする例えば「子ども貧困打開推進本部」を設置するとともに、推進する独自の部署・課を設置し、県民運動としても取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。
【達増知事】
県では、いわての子どもの貧困対策推進計画に基づき、保健福祉部門はもとより、教育部門や労働部門など、庁内各部局が連携して取り組んできたところであり、今年度は庁内関係部局で構成する「子どもの貧困対策連絡調整会議」を設置し、部局横断的に取り組みを進めている。
次期総合計画については、現在、幸福に関する12の領域を基に、県民目線に立ち、ひとに着目して、「家族・子育て」をはじめとする8+1の政策分野を設定する方向で、県総合計画審議会で議論いただいている。
現在、子どもの貧困対策については、子ども子育て支援課が担当しているが、ご提言のあった庁内の推進体制や組織、県民運動的な取り組みについては、来年度実施を予定している「子どもの生活実態調査」も参考にしながら検討していきたい。
【斉藤議員】
子どもの貧困実態調査と平行して体制をつくらないと、この調査もできない。沖縄県は、本部をつくり調査をして、そして1つ1つスピード感をもって取り組んでいるので、ぜひ必要なことは直ちに。知事が一番強調している「幸福」ということだったら、子どもの貧困問題はまさに最優先、緊急の課題だと思うので、知事のイニシアチブを是非ともこの分野でも発揮していただきたい。
4.県立病院の医師・看護師確保の課題について
・医師確保について
【斉藤議員】
@県立病院の医師確保は、医療局の経営計画に対してどうなっているでしょうか。奨学生の医師はどう配置されているでしょうか。医師確保が進まない要因は何でしょうか。今後の対策を含めて示してください。
【医療局長】
県立病院等の経営計画では、5ヶ年で109名の増員を計画したところだが、1月時点では当初の現員数から3名減という大変厳しい状況である。
奨学金養成医師の配置だが、平成29年度は25名、30年度は現在配置調整中だが、7名が加わり計32名が県立の基幹病院等に配置される見込みである。
医師確保が進まない要因については、これまで、医学部卒業生の都市部や大規模病院志向により、初期研修医の採用が計画を下回ったこと、また、大学院等で専門資格取得を目指す医師の増加により、後期研修医の採用が計画を下回ったことなどによる。
今後、関係大学に医師の派遣を要請していくことに加え、来年度から始まる新専門医制度に対応して、県立病院に勤務しながら専門医資格を取得可能なプログラムを策定したところであるので、これを初期研修医の段階から十分に周知し、専門医資格取得を目的とした退職が生じないよう重点的に取り組んでいく。
・新県立高田病院の医師確保と機能・役割について
【斉藤議員】
A県立高田病院が3月1日開院します。被災した県立病院の再建整備が実現したことは被災地、被災者にとって最も重要なセーフティーネットです。先日新しい高田病院を訪問してきました。今後辞められる医師もあるとのことですが、医師確保の見通しはどうなっているでしょうか。新病院の機能、役割はどう改善されるのでしょうか。
【医療局長】
現在7名の医師が常勤医として勤務しているが、任期付職員、いわゆるシニアドクターとして勤務いただいている医師を含めて3名の医師が家庭の事情等により県外に帰られる予定となっている。後任については、県立病院間の異動により2名確保することとしており、もう1名については、県外の医師から内諾をいただいている。
高田病院の機能・役割については、高田病院が立地する地域は高齢化率が高く、高齢者を中心とした地域医療を提供する必要があることから、地域のプライマリーケアを担い、かつ入院機能を有する病院として整備した。今後、陸前高田市が高田病院隣接地に保健福祉総合センターの整備を予定しており、医療と福祉・介護との一層の連携強化が図れていくよう取り組んでいきたい。
・看護師確保の状況と労働条件の改善について
【斉藤議員】
B看護師確保の状況と、あってはならない9日夜勤の状況、年次有給休暇の取得状況、今年の看護師の募集と合格者の状況を示してください。
9日夜勤はあってはならないものです。増加し続けている要因は何でしょうか。いつまでに、どう解決する方針ですか。
【医療局長】
夜勤回数が月8回を超えた職員は、平成29年度12月までの実績で、12病院、延べ784人となっており、28年度の同時期比で延べ187人増加している。
平成29年の年次有給休暇の平均取得日数は8.2日で、平成28年に比べ0.3日増加している。
平成30年度採用にかかる看護職員の採用試験の状況は、29年7月の通常募集において124名が合格し、11月の特別募集において7名が合格しており、29年度の退職予定者をほぼ確保した。
看護職員一人当たりの夜勤回数については、育児休業取得職員の増減などのほか、新規の採用職員の配置などにより影響を受けるものだが、新規採用職員が夜勤に従事するまでの期間を含む第1四半期においては、例年一人当たりの夜勤回数が増加する傾向にある。
看護職員の体制の整備については、これまでも育休者等を正規職員により補充してきたところだが、近年は受験者の確保が難しい局面が続いていることも原因となっている。
このことから、応募者の確保に向け、大学や養成校との連携を強化してきたが、本年度は新たに県内の大学と連携して学生の父母を対象としたセミナー、県立病院を見学するツアーも開催するなど、さまざまな取り組みを進めており、何とか少しずつでも改善していきたい。
【斉藤議員】
9日夜勤が改善されるどころか毎年どんどん増えている。ここに危機感を持ってやらなければいけない。県立病院の基本方針は「職員に優しく」となっている。ところが、年休もとれない、夜勤は増える。
看護師さんの切実な声を紹介すると、「年末年始も休みなく働いて、代休なし。どうにかしてほしい」「定時で仕事を終えて、子どもと一緒にご飯を食べたり、お風呂に入ったりしたいと日々思います。いつも寝顔を見るだけ」「今年も年休を30日以上使わずに年を越しました」―。本当にブラックと言われても仕方のない事態である。9日夜勤というのはあってはならないものなので、これをなくす具体的な対策をもってやってほしいし、子育て中の方々もいるので、取りたい年休取れない。取れなければ20日の有給休暇が30日40日まで延長できる。それなのに平均して8日、取れない人は5日、3日程度である。ここの改善について、本気でどうやって打開しようとしているか。
【医療局長】
現在年齢構成上のバランスが、若い職員が増えてきて、ちょうど働き盛りの主任看護師以下の部分が非常に手薄になっているという現状がある。そういった現状の中で、それらの方々の方に、特に新採用が入ったばかりの第1四半期には無理を強いている部分が当然あると私も認識しているが、抜本的な改革という話になると、やはり人数を増やすしかないと思っているが、今の募集の状況ではなかなか進まないということもあり、1つは夜勤専従の看護師を増員すること、それから病院の病棟によっても、深夜勤がかなり楽になる部分もあるので、そういったところで職員の方からの提案があれば、シフトの見直しということもあわせて考えていきたい。
【斉藤議員】
大幅増員以外に打開の道はないと思う。
そして、来年度の合格者は131人、前年が退職者148人なので、実態は退職者の数を補充できていない。
本当に選ばれる県立病院にならなければいけない。看護師さんを確保するために、派遣会社や紹介会社に何百万もお金をかけて確保しているのが全国の状況なので、そこにきちんと対応できるようにしていただきたい。
5.高すぎる国保税と国保の広域化について
・国保税引き下げのための一般会計からの繰入について
【斉藤議員】
来年度から国民健康保険制度は、県が財政の責任を持ち、各市町村の納付金と標準保険料を課すことになります。国民健康保険制度の最大の問題は、低所得者が多く、国保税が高すぎて払えず、滞納世帯が県内平均で10%を超えていることです。滝沢市は20%、一関市は18%を超えています。最大の要因は国庫負担が減らされてきたことです。国保の広域化は、国保のこうした構造的な問題を解決するものとなっていません。そればかりか、一般会計からの繰り入れなど高すぎる国保税を引き上げない市町村独自の取り組みに背を向け、医療費も医療資源も大きく違いがあるものの、将来的には統一保険料をめざし、さらなる国保税の引き上げとならざるを得ないものとなっていることです。
@岩手県の最終の標準保険料率の算定では、激変緩和措置を講じて2016年度の保険料を下回るものとしたことは一部評価しますが、一般会計からの繰り入れがなければ、陸前高田市や宮古市など16市町村が国保税の引き上げとなることは問題です。これまで通り国保税を引き上げないために一般会計からの繰り入れを行うことは当然と考えますがいかがですか。
【保健福祉部長】
一般会計からの繰り入れについて。国民健康保険財政の健全な確保という観点から、法定外一般会計繰り入れについては、その計画的な解消をお願いしているが、国保制度改革が施工される平成30年度のあり方については、改革施行前後における被保険者の負担に十分に配慮した対応が必要であると考えている。
【斉藤議員】
今の国保税でさえ、滝沢市は20%が滞納、一関市は18%、盛岡市は16.7%である。これだけ滞納する制度というのは、機能していないと思う。こういう国保制度で、引き下げのために一般会計からの繰入をしたら、そういう方向はなくすと。とんでもない話である。国保財政以上に、国保加入者の命と生活を守ることを優先すべきではないか。
【保健福祉部長】
一般会計からの法定外繰入は市町村の判断により行うことができるものだが、法定外繰入については、特に赤字補填分については、計画的な解消に努める必要があると考えている。
ご指摘の通り、国費が引き下げられていること、国保の構造的な問題については国にも要望しながら、その解消に努めていきたいと考えているが、一般会計からの法定外繰入の赤字補填については、今申し上げたような考え方である。
【斉藤議員】
その考え方なら県民は苦しむ。5世帯に1世帯が滞納するような制度は機能していない。だから16市町村が一般会計からの繰入をして値上げを抑えている。逆に繰入をしなかったら16市町村が値上げになってしまう。そのリアルな実態を見て、県民の命と暮らしを守るということが必要である。
・滞納者への資格証明書等の発行、財産差し押さえについて
【斉藤議員】
A滞納者に対する資格証、短期保険証の発行―いわゆるペナルティだが、しかし盛岡市は基本的にやっておりません。他の市町村でも正規の保険証の取り上げは中止すべきではないでしょうか。
とりわけ、2月1日現在、短期保険証の未交付(1092世帯・1367人)は事実上の保険証の取り上げであり、こうしたことは中止すべきではないでしょうか。
【保健福祉部長】
短期被保険者証の未交付については、納付相談に来ないことなどを理由に、窓口における留め置きを放置することなく、電話連絡や家庭訪問等による接触を試み、できるだけ速やかに手元に届けるなど、未交付の解消について市町村に要請している。
【斉藤議員】
保険証の取り上げは、本当に命を奪うような悪政なので、厳しく指導していただきたい。
B滞納者に対する給与等の差し押さえは、2016年度は2783件、13億2216万円余となっています。全国的にも最悪の差し押さえです。差し押さえ率は滞納者に対して13.1%にも及んでいます。全国的には、滞納を市民生活のSOSとしてとらえ、生活再建につながる条例を制定して取り組んでいる滋賀県野洲市のような自治体もあります。国保税を払えない滞納者に懲罰のような差し押さえを行うことは、憲法13条の幸福追求権、25条の生存権の精神にも反するものではないでしょうか。
【保健福祉部長】
滞納処分は、税負担に関する公平性等を確保するため、担税能力がありながら納付していただけない方に対して、市町村において十分な調査を行った上で実施されているものと認識している。
県としては、保険税を納付できない方は、失業や疾病などに起因する経済的理由による場合などさまざまなケースがあることから、分割納付や徴収猶予等にきめ細かく対応するよう、市町村に助言をしており、それぞれの方々の事情に応じてきめ細かな指導をするよう要せいている。
【斉藤議員】
国保税の滞納者は、基本的に高すぎて払えない方々である。それに対して、13.1%も資産を差し押さえるということは、本当に国保の広域化の成果主義である。この差し押さえ件数は全国トップレベルである。国保の広域化というのなら、加入者が助かる、いくらでも負担軽減になるような、人権を脅かすような保険証の取り上げはやらないという改革こそ求められている。
6.高校、大学における県内就職率の抜本的な引き上げについて
・県内就職率引き上げ目標と今年度卒業生の状況について
【斉藤議員】
社会減ゼロをめざす課題の一つである高校、大学における県内就職率を抜本的に引き上げる問題について質問します。
@高校、大学の県内就職率引き上げの目標と今年度卒業生の県内の就職内定率はどうなっているでしょうか。
【商工労働観光部長】
県内就職率の目標について。現行のいわて県民計画第3期アクションプランにおいては、高卒者の県内就職率の目標値は、平成27年度65.0%から平成30年度66.5%に、岩手医大を除く県内4大学と県立大学の2短大および一関工業高専で構成する県内学卒者の県内就職率の目標値は、平成27年度47%から平成30年度53%に、それぞれ段階的に引き上げる目標となっている。
今年度卒業生の県内就職内定率については、岩手労働局の発表によると、昨年12月末現在、新規高卒予定者は64.4%、新規大卒予定者は43.9%となっている。
【斉藤議員】
A就職内定率は向上しているが、県内就職率は12月末現在で64.4%と前年から比べて後退しており、きわめて由々しき事態です。なぜ下がっているのか。県教委と各高校では具体的にどう取り組んでいるのか。
B平舘高校は就職希望者が全員県内・管内に就職内定しています。聞きますと、八幡平の市長さんが熱心に管内就職に取り組んでいること。高校の先生も熱心に管内就職の取り組みを行っていること。管内の企業も地元の高校に大変期待し、インターンシップや企業説明会などに熱心に取り組んでいるとのことです。学校・行政・企業が一体となってこうした成果が上がったと思いますが、こうした取り組みをすべての高校で行うべきではないでしょうか。各学校で県内就職率を5%、10%引き上げる目標を持って取り組むべきと考えますがどうですか。
【教育長】
ここ数年、高校卒業予定者の県内就職率は上昇してきたが、本年3月卒業予定者の12月末現在の状況については、ご指摘の通りである。
高校卒業者の県内定着を推進するために、県立高校においては、インターンシップの充実や企業見学会などの実施に加え、地元自治体や企業との連携のもと、社会人へのインタビューや出前授業、地域が直面する課題解決のための学習などを行い、生徒や保護者がそれぞれの地域や地元企業に対する関心や理解を高めながら、生徒の就職支援を進めてきている。
昨年同期比で低下している理由は、首都圏等県外企業からの求人が一層高くなってきている中で、生徒や保護者があらかじめ示された労働条件などを比較考量し、県内企業への就職を希望している実態もあると聞いているが、一方では、生徒や保護者、教員の県内企業等に対する理解がまだ足りない部分があるのではないかと考えている。
就職未内定者もおり、本年度の最終的な状況は流動的な面もあるが、いずれ社会減に歯止めをかけることは県政の重要課題なので、県教委としても学校における適切な進路指導などを行うなど、関係機関と十分に連携しながら、高校生の県内就職の促進に努めていきたい。
【斉藤議員】
C盛岡工業に行って校長先生から取り組みをお聞きしました。大企業を含めて1700件の求人があると聞きました。大変な売り手市場です。そういう中で、県内企業に人材を確保することは特別の努力をしなかったら成功しない。そういう点で率直に言って高校の現場は危機意識がない。目的意識性が弱いと思う。だから、各高校が県内就職率を5%、10%引き上げるということは難しいことではない。どうやって地元企業の魅力を知らせるのか、これは小学校・中学校からやっていただきたい。そういう形で、県内就職率が後退するということは、行政の取り組みの失敗と言ってもいい。どう向上させるかという執念を持った取り組みをやっていただきたい。
・県内大学と連携した取り組みについて
【斉藤議員】
D県内大学は、COC+で大学生の県内就職率を45%から55%に引き上げる目標を掲げています。先日岩手大学の学長さんと懇談してきました。学生が中心となった県内企業との大交流会など新たな取り組みがなされていますが、実績はまだ出ていません。行政、とりわけ県との連携が弱いと感じてきました。県内大学と県との連携を強化すべきと考えますがどう受け止め、取り組まれているでしょうか。
【政策地域部長】
人口の社会減対策の観点からも、新規学卒者の県内就職率を向上させることは重要と考えており、岩手大学を中心とした文科省の補助事業「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」COC+に、県立大学等の高等教育機関や市町村、経済・産業団体とともに、事業協働機関として県も参画し、産学行政一体となった地方創生の取り組みを推進している。
具体的には、大学と企業との共同研究成果を基にした新規雇用の創出、起業を志向する学生を対象とした起業マインドを醸成する実務教育の実施、インターンシップや企業見学会など、学生が地元企業の魅力を知る機会の提供などの取り組みを展開している。
平成30年度当初予算案においては、産学官連携による水産業等の高度化や、高度専門人材の育成を図るために、岩手大学が実施する釜石キャンパスの整備を支援することとしている。
さらに地域の中核的産業の振興や、専門人材育成などを行う優れた取り組みを支援するために、国の平成30年度予算案に100億円計上された「地方大学・地域産業創生事業」を活用し、岩手大学や県立大学等と連携していきたい。
県としては引き続き、県内の大学等との連携を図りながら、ふるさと振興を強力に推進していきたい。
・高等教育の振興計画について
【斉藤議員】
E知事に質問します。長野県では、高等教育の振興計画を策定しています。岩手県としても高等教育の振興を新しい県の総合計画に位置付け、独自の振興計画を策定すべきと考えますがいかがでしょうか。
実は、文科省は今、国立大一法人複数経営と言って、各県に一大学なくてもいいと。岩手大学がなくなるかもしれない。そして毎年1%ずつ交付金が減らされる状況である。やはり地元に必要な高等教育機関をどう育ててどう守りどう活用するか、そのことが必要だと思うがいかがでしょうか。
【達増知事】
高等教育機関において、地域社会に貢献する意欲のある人材の育成や、地域に根ざした特色ある教育と研究が推進され、地域の産業・文化等の振興につなげていくことは重要であり、現行の「いわて県民計画」では、「高等教育の連携促進と機能の充実」を政策推進の基本方向として位置づけている。
大学の運営は、基本的には、大学の自立的な判断により行われるものと考えているが、高等教育機関において、本県の教育等を支える人材の育成が安定的に行われることは重要な課題であり、県としては、本県における教員需要の見通し等について、県内の大学等の連携機関である「いわて高等教育コンソーシアム」などを通じて情報提供等を行い連携を深めていきたい。
また県では、岩手大学や県立大学などの高等教育機関や、市町村、経済・産業団体と連携しながら、ふるさと振興の取り組みを推進しており、次期総合計画においても、引き続き高等教育機関との連携による地域課題の解決に向けた取り組み等を長期ビジョンの中に位置づけ、アクションプランに具体的な取り組みを盛り込む方向で検討していく。
7.憲法9条と自衛隊の問題について
・憲法9条の改正に対する知事の認識について
【斉藤議員】
@安倍首相は、憲法9条に自衛隊を明記する憲法の改憲に執念を燃やしています。憲法を擁護すべき内閣の立場を投げ捨てるものではないでしょうか。憲法9条に明記される自衛隊は、災害の時に出動する自衛隊ではありません。安保法制=戦争法の強行採決によって、米軍とともに海外で戦争できる、集団的自衛権を行使できる自衛隊であります。結局は、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とした9条2項を空文化するものではないでしょうか。国民が求めていない、海外で戦争できる国をめざす憲法9条の改憲は許されないと考えますが、知事の認識をお聞きします。
【達増知事】
日本国憲法第9条は、先の大戦とそこに至る日本のあり方について、深い反省の下、過ちは繰り返さないという国民的な決意として定められたものであり、その趣旨は、国連憲章の理念にも合致するものと考える。
このような過去の反省と、国連憲章もうたう平和の誓いを、国民的に共有することなく、9条を変更することは憲法の改悪であり、そのような考え方や感じ方を多くの国民は有していると考える。
・自衛隊の海外派兵の問題について
【斉藤議員】
A一昨年11月、陸上自衛隊第9師団岩手駐屯地の自衛隊員も南スーダンに派兵されました。南スーダンの状況は自衛隊の日報にも示されたように、文字通り自衛隊の宿営地を挟んだ銃撃戦が展開されている戦場そのものでした。安倍政権は昨年3月に撤退を決め、自衛隊員は無事帰ってきたようですが、その後自殺した自衛隊員も出ました。県はどう把握しているでしょうか。自衛隊の毎年の自殺件数も含めて示してください。
【総務部長】
南スーダンのPKO活動に平成28年11月から派遣されていた、陸上自衛隊第9師団等による第11次隊は、昨年5月に任務を終え全員無事帰国したと聞いている。その後、自殺した隊員数については公表されておらず、県としても把握していない。
自衛官の毎年の自殺者数については、平成29年6月に国会に提出された質問主意書および政府答弁書によると、平成26年度は66名、平成27年度は65名、平成28年度は57名とのことであった。
【斉藤議員】
岩手駐屯地所属の自衛隊員が帰国後1ヶ月で自殺した。本当に深刻である。いま答弁あったように、年間57名〜66名が自殺する職場というのはどういう職場なのか。だから自衛隊の実態というのはここに示されていると思う。そういう自衛隊に対して、私は進路指導は慎重にやるべきだと思う。
B政府は、今度はジブチに海賊対処を名目に岩手駐屯地の自衛隊員を含めて第9師団を派兵する予定です。どう把握されているでしょうか。
【教育長】
自衛隊を就職先と考える生徒や保護者も一定数いるということだが、自衛隊のさまざまな活動について、適切に情報を提供しながら判断していただけるよう努めていきたい。
【総務部長】
自衛隊も本県において、高等学校からの求めに応じて、進路指導の一環として、警察や消防の他の公務員と合同、あるいは単独で説明会を行っていると考えている。
自衛隊の公表資料によると、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処を目的として、ジブチ共和国に派遣している派遣海賊対処行動支援隊の要員交代のため、陸上自衛隊第9師団を中心とする第9次隊が昨年12月11日から3回に分けて出国したと承知しているが、岩手駐屯地からの派遣の詳細については把握していない。
【斉藤議員】
岩手駐屯地からも派兵されていることははっきりしているので。海外派兵の実績をつくると。海賊対処件数はゼロである。本当にこういう実績づくりのための取り組みは大問題だと指摘しておきたい。
8.県警察の諸問題について
・東日本大震災津波行方不明者の捜索について
【斉藤議員】
@3月11日で東日本大震災津波から丸7年を迎えます。いまだに行方不明者が1122名に及んでいます。遺族の方々は一日も早い遺体の発見を求めています。3月11日には大規模な遺体捜索の取り組みがなされる計画と思いますが、海中ドローンなどの活用を含め、海中での捜索を行うよう求めるものですが、どういう計画となっているでしょうか。また、来年度からは月命日での捜索ではなく、各警察署ごとの捜索となるとのことですが、具体的な取り組みを示してください。
【警察本部長】
来たる3月11日には、沿岸署のほか本部および内陸署から総勢約210人を動員し、海上保安部など関係機関と連携し海岸線等の捜索のほか、陸前高田市内の古川沼とその周辺区域における機動隊等を動員しての捜索、宮古湾内の捜索等、陸上・海上両面の計12ヶ所において実施する計画である。
古川沼については、機動隊で所有している水中ドローンと同様の性能を有する水中探索機を活用した捜索を予定している。
来年度からの取り組みだが、東日本大震災津波による行方不明者の捜索活動は、今後もご家族のご要望、復興工事の進捗等を踏まえ、随時沿岸署単位の捜索活動を実施していく方針である。捜索の方法として、これまでは本部主導で沿岸署ごとの月命日捜索と3月・9月の節目に本部員等を動員した集中捜索を実施してきたが、4月以降は、地域の実情をもっともよく知る警察署長の判断で実施する随時捜索に移行するものである。
具体的には、高田松原津波復興祈念公園等の大規模工事の進捗に応じた捜索や、台風や大雨等の直後に海岸に打ち上げられた漂着物を捜索することなどが考えられるので、月命日にとらわれることなく、こういった現場の状況に機動的に対応し、随時捜索を実施していく。
県警察としては、これからも行方不明者のご家族の心情に寄り添いつつ、それぞれの地域の実情を勘案しながら、行方不明者ご本人・所持品を発見するための「より実効性のある随時捜索」という形で捜索を継続していく。
【斉藤議員】
先日、広田湾で人骨が発見された。やはり海底に流されたのではないかというのが遺族の思いである。海中ドローンなどの活用、さまざまな団体とも協力しながら、遺族の願いに応えた捜索を引き続き強めていただきたい。
・警察職員の不審死について
【斉藤議員】
A昨年2月10日に県警察本部の警察官が行方不明となり、13日に盛岡市内の北上川で遺体となって発見されました。頭部に陥没があったのではないかと思われますが、捜査されたのでしょうか。死因は何だったのでしょうか。公安委員会は警察を管理する機関ですが、この事件について報告があったでしょうか。
【公安委員会委員長】
警察職員が盛岡市内の北上川で遺体で発見されたことについては、昨年2月と9月の定例会開催状況とあわせて、斉藤議員からのご質問と、これに対する答弁の内容について報告を受けている。
【警察本部長】
捜査については、昨年2月に盛岡市内の北上川で遺体が発見され、身元確認の結果、当該遺体が警察職員であったという事実はあった。頭部に陥没があり捜査をしたのかということについては、足取り調査や死亡の原因等、所要の捜査を遂げた結果、事件性や自殺をうかがわせるものはなかった。
死因については、検視や司法解剖を実施し、所要の捜査を遂げて死因は特定しているが、死因を含めて捜査の詳細については、本人のプライバシーや死者の尊厳に関する内容であるので、答弁を差し控えさせていただく。
【斉藤議員】
公安委員会委員長、私が2月・9月議会で取り上げた報告を受けたということでは足らないと思う。警察官が不審死しているのだから。だから取り上げている。
答弁の中で、「事件性や自殺をうかがわせるものはなかった」と。だったら何なのか。私はよく聞いたが、まったく自殺の関連はなかったと。おそらく最後まで一緒に付き合っていた人が警察官でいるはずである。頭部に陥没という話も聞いているが、自殺でなかったら何なのか。
そして、ここの課は、簗川大橋から2年連続で飛び降り自殺しているところである。この背景に何があるかということを、公安委員会もきちんと調べなければいけない。報告を受けるだけでは警察を管理することにならないのではないか。簗川大橋から、同じ課の警察官が2人も連続して飛び降り自殺したということに、公安委員として疑問を感じなかったか。
【公安委員会委員長】
公安委員会は、県警察を管理し、法律の規定に基づいて、その権限に則された事務を司ることとされている。
公安委員会が行う管理は、個々の事務執行を含まず大綱方針を定めて、これによる事前事後の監督を行うものと承知しており、この考え方に基づき適切に対応している。
・岩手医大元教授の覚せい剤疑惑事件と刑事部長の岩手医大への天下りについて
【斉藤議員】
C岩手医大元教授の覚せい剤疑惑事件と刑事部長の岩手医大への天下り・再就職の問題について、この覚せい剤疑惑事件について捜査されたのでしょうか。覚せい剤事件は初動が大事だと思います。週刊誌に証言した女性の捜査は行ったのでしょうか。この元教授はその年の3月末に理由も示さず退官されました。退官せざるを得なかったのではないでしょうか。疑惑を抱えた岩手医大に、当時の捜査の責任者である刑事部長が「病院長顧問」として再就職されました。これは世間的には癒着ではないでしょうか。公安委員長はこの再就職は県民の理解が得られるとお考えでしょうか。
【公安委員会委員長】
公安委員会としては、退職者の再就職について、民間企業等がどのような人材を必要とし、どのような採用を行うかについては、あくまで当該企業等の独自の判断によるところであり、再就職は、雇用主と退職職員本人との雇用契約に基づいているものと承知している。
【警察本部長】
捜査については、個別の事件を捜査しているか、していないか、その捜査状況については、一般論として、捜査の相手方に手の内をさらし、今後の捜査に支障を及ぼすおそれがあるものであるので、答弁は差し控えさせていただく。
元教授の退官については、部外機関の雇用関係に関することであり、お答えする立場にはないので、同じく答弁は差し控えさせていただく。
【斉藤議員】
公安委員長、私は一般的な再就職・天下りについて聞いているのではない。覚せい剤事件が週刊誌に報道され、相手方の女性が「自分は覚せい剤をその教授から打たれた」と証言した。その大学に、捜査の責任者が再就職することは異常ではないか。こういうのを癒着というのではないかと言っている。だから県民に理解されないのではないかと。一般的な再就職の善悪を聞いているのではない。
【公安委員会委員長】
本件については、県警察から報告を受けており、癒着はないものと認識している。
【斉藤議員】
まったく説得力も根拠もない。公安委員会の責任を放棄するものだと指摘して質問を終わります。