2018年3月1日 商工文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・教師の暴言による児童の不登校問題について
【斉藤委員】
2月13日に、小学校の教員が不適切な言動で停職3ヶ月という大変重い処分を受けた事件があった。
事実経過をお聞きしたが、本当に驚くべき人権侵害というか、虐待というか、そのことにより生徒が不登校に陥ると。いじめ重大事態にもあたるような、どういう不適切な言動が繰り返されたのか。
【小中学校人事課長】
児童が、担任が不在のときに、教室・廊下を走り回って、そのことについて担任が指導した際に、「反省文を書くように」ということで2ページの反省文を書かせたが、量が2ページに達していなかったことから、何度もやり直しをさせたということがきっかけである。
その中で、「もうお前はここの学級に来なくていい」とか「反省が足りない」という執拗な、威圧的な指導を何度も繰り返したというのが概要である。
【斉藤委員】
少しリアルさが欠けたので。そんなに甘い話ではなかった。教室や廊下を走り回ったというのが出発点で、大したことではなかった。
2ページの反省文を書かせるということで、これは子どもの方から言い出したようだが、書いてきた反省文が2ページに達しなかったので、教師は「反省してねえな。もう知らねえ」と言って、被害児童とは別の児童のノートを床に叩きつけた。そして「もう来なくていい。学校に来てもいいけど学級には入れないし、他で勉強しろ。お前たちがいなくても俺も学級のみんなも困らない。他の学校にいいよ」と。その後、この被害児童は2ページの反省文を書き直して持ってきた。そしたら「そんなに早く書けるのですか。簡単に書いたものは見たくありません」と。母親に対しても「いま受け取ると許したことになります。いま突っぱねている状態です。いま持って来られてもあれなんですよ。分かりますか」と。
反省文を書いても受け取らない、すすんで謝罪したにも関わらず、謝罪が不足だと言って、そういう叱責が、9月28・29日、10月3・4・5日と続き、結局はこの児童は不登校に陥り、いまも学校に戻っていない。
本当にこれが教師のやることなのか。言葉も乱暴、やっていることも乱暴。これはまさに人権侵害であり虐待である。なぜこういう事件が発生したのか。この点について、学校や教育委員会はどのように受け止め、今後の対策に生かそうとしているか。
【小中学校人事課長】
我々としても信じがたい事案である。子どもを守るべき教師が、こういう暴言で子どもを追いつめるということはあってはならない。想像もできないような事案だった。ただそういう教師もいるということを認識しなければならないと受け止めたので、先週の土曜にも、来年度採用する方々に、数十名を集めての最初の研修会を持ったが、そこの場でも、まず自分で抱え込まずにということで、この教師は自分で抱え込んで相談することがなかったと。プライドが高く、相談することは恥だという考えを持った教師だったようなので、そういうときはきちんと管理職なり先輩教員に聞いて指導を仰ぐと、そういう謙虚な姿勢で教育にあたるようにということを先週も指導した。ことあるごとに、研修の度に指導していかなければならないと。それとともに、管理職についても、管理職が気づかなかったということもあるので、日常の授業巡回はもとより、定期的な面談に関わらず随時面談を繰り返すとか、教職員とのコミュニケーションを活発にとり対話を心がけていくなど、管理職の姿勢についても研修等で徹底していかなければならないと考えている。
【斉藤委員】
私は教師の言動は半分ぐらいしか紹介しておらず、まだまだあるが、それは控えるが、本来教育というのは、子どもの人格の完成を目指す―これは教育基本法で、要は子どもたちの心を育てると。子どもの貧困問題を一般質問で取り上げたが、貧困のために朝食を食べてこない、物を忘れてくる―。「ケアする学校」と提起したが、本来そういう問題を抱えた子であっても、「物を忘れたなら家に帰って取ってこい」というのは教育ではない。忘れたときでも学校に物があって、「それならこれを使いなさい」というぐらいの学校でなければならない。子どもに本当に寄り添う、悪いことをやってもそれを正すというか、教育の根本が今回の事件では問われているのではないか。子どもにどう接するのか、ここの根本に大きな問題があったのではないか。
もう1つは、教師が相談してこなかった。ここにやはり学校の雰囲気・あり方が問われていると思う。やはり相談しやすいように学校がなっていない。いじめでも何でも、教師が抱え込むのはそういう学校である。そういう体制にない。そういう点で、教師の共同性、学校にとって決定的に重要。教師が協力し合って、体制、雰囲気をつくっていくということが大切ではないか。管理職がたしかに処分されているが、管理不行き届きだけでない。そういう学校になっていたのではないか。やはり校長や副校長は巡回して、特に若い先生がどういう授業をしているのか、子どもとどう接しているのか、自分の目で見て助言するとか、そういう形で先生を励ますと。こうしたことが管理職に問われているのではないか。事件があったから処分するということでなく、今回の事件で問われている問題を県教委は深めて、そしてこの事件は他の学校でも起こりえるわけだから、しっかり教訓を深めて対応していただきたい。
【教育長】
ご指摘を真摯に受け止めなければならないと思っており、またそのようなご意見をしっかりと学校現場に浸透させていくというのが教育行政の大きな役割だと思っている。
これまで、いじめ問題もそうだが、体罰問題も全国的な大きな課題となる中で、何よりも大事なのは、学校組織をあげて、しっかりと子どもに向き合う、子どもを守るということが学校の大きな責任だということを、さまざまな機会を通じて市町村教委や各学校現場に伝えてきたが、今般の事案は、単に体罰ということでなく、まさに人権侵害であり、本来の教育のあるべき姿が問われているというのが具体的な事例だと認識している。
関係市町村教委や学校から十分話を聞いたうえで今回このような大きな処分を行ったところだが、経緯等を含めて、それぞれの学校には他山の石としてもらうことがきわめて大事なので、これまでの不祥事等も含めて、しっかりと学校教育の中で生かしていく、それがまたそれぞれの教員を守ることにもなる、そして子どもたちの教育を充実させていくことにつながると思っているので、しっかり努力していきたい。
・いじめ重大事態にかかる学校・県教委の対応について
【斉藤委員】
いじめ重大事態にかかる県教委分、これは県立学校ということになるが、事故調査報告書を読ませていただいた。12月議会のときにも指摘したが、十分な調査をやっていないケースが少なくない。全くやらない場合もある。これは、いじめ防止対策推進法に基づくいじめの防止等のための基本方針に反するのではないか。
いじめ防止対策推進法で、平成29年3月14日に改定した最終版だと思うが、そこには、重大事態への対処ということで、「学校の設置者または学校による調査」と。法律では、第28条で「学校の設置者またはその設置する学校は、次に掲げる場合にはその重大事態に対処し、および当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、すみやかに当該学校の設置者またはその設置する学校のもとに組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする」と。重大事態以外も調査しなければいけないが、法律にこのように規定してある。そのガイドラインまで示している。
ところが事故調査報告書を見ると、いじめられた被害児童、そして父母が調査を求めないことを理由に、全く調査しない。これはあり得ないことである。まさにいじめ重大事態を隠すもので、法律の精神にも反する。保護者や当該児童が調査しなくていいと言っても、法律の趣旨を丁寧に説明して、問題を解決しなければ学校が再生しない、子どもたちの教訓にもならないと。こうやって必要な調査をすべきだと思うが、なぜ調査そのものを全くしないということになるのか。どういう合理性があるのか。
【生徒指導課長】
委員ご紹介の部分については、法の第28条においての規定ととらえている。いじめ重大事態に関わっては、国の基本方針において、基本方針といじめ重大事態の調査に関するガイドラインの2つを軸にして調査を進めることとされている。その中で、調査については、基本方針の中で、事実関係を明確にするための調査の実施時期というのがある。2つほど示してあり、1つは、当該児童・生徒から聴取が可能な場合、もう1つは、聴取が不可能な場合という例示がある。いずれ、いじめ重大事態に関わって、被害の児童生徒という部分について、「学校復帰」ということを第一に考えていく。ですから、被害の児童生徒およびいじめを認知し報告した児童生徒も含めて、これらを守ることが最優先という記載もある。その中に、「被害児童生徒の学校復帰が阻害されることのないよう配慮する」という部分がある。
学校の取り組みとしては、委員ご指摘の通り、事実を網羅的に明らかにし対処し、再発防止に資するということが本来の目的である。この部分については、学校は提示申し上げるが、その後の被害生徒の学校復帰等の阻害要因がある場合、つまりそれを判断するのは被害生徒および保護者であるので、その意見をきちんと聞き、それに寄り添った対応をするということが第一義と考えている。
【斉藤委員】
ガイドラインを紹介されたが、ガイドラインには、「被害児童生徒・保護者が、詳細な調査や事案の公表を望まない場合であっても、学校の設置者および学校が可能な限り自らの対応を振り返り、検証することが必要となる。それが再発防止につながり、または新たな事実が明らかになる可能性もある。決して安易に、重大事態として取り扱わないことを選択するようなことがあってはならない。以上のことを踏まえたうえで、学校の設置者または学校は、被害児童生徒・保護者に対して、自発的・主体的に詳細な調査の実施を提案すること」となっている。
全く調査しない例が昨年と一昨年で4件ある。重大事態が発生していて、いじめた側の調査もしない、いじめられた側の調査もしない。これでどうやって子どもが復帰できるのか。子どもたちが、特にいじめた子どもが誤りに気づく。そしていじめには、四層構造と言われるが、はやし立てる人、傍観する人がいる。そういうところも含めてこの問題を解決しなければいけない。子どもの自治の力で解決するというのが最後の解決の方向である。重大事態を調べもしない、子どもたちも知らせない。これでどうやっていじめを解決できるのか。
そして重大事態があったときには、学校に組織を設置するとなっている。この学校の組織の中には、第三者の専門家を入れると。事故報告書の中には、そういう専門家を入れたという形跡がない。重大事態になったら、最終的に学校が調査するか県教委が調査するかは県教委の判断となっている。県教委が学校任せにしているということも県教委の判断である。
自殺未遂をした事件もあったが、そういうことも含めて、この問題はきちんと法律に基づいて調査して、学校がその教訓を明らかにして、生徒にもいじめの問題を明らかにして解決していくと。そういう学校をつくるべきではないか。
【生徒指導課長】
ご指摘の「調査がない」学校だが、27年度・28年度4校あるということだった。「調査なし」というのは、「生徒に関わる調査がない」ということであり、すべての事案において、教職員の調査は各学校において実施している。網羅的に事実関係を明らかにし、その子どもの学校復帰へと。
いじめに関わって、どういういじめを受けたかということを、心と身体で分かっているのは被害児童生徒である。よって、できうる限りの学校での調査をし、その学校の調査結果を被害の児童生徒および保護者に提示し、了解を得られたというのであれば、一番のいじめを受けた子どもも、その保護者も、事実関係については了解いただけたものと判断はしている。
再発防止に関わっては、その報告書の中に、全ての学校が今後、この再発防止に関わって、つまり、いじめの認知から対応、今後の部分のケアということも含めて記載している。その部分は、県教委で報告書を見て、「いじめの認知が甘かった」とか「普段会話ができていなかった」「情報共有ができていなかった」というような部分にまとまってきたので、その辺りを含めて、これは1つの学校の問題ではなく、県内小中学校も含め、すべての学校において取り組まなければならないことととらえており、28年度・29年度においては、優先順位をつけて、県の重点項目として各学校に周知し、取り組んでいただいている。ただ今後の部分について、いじめの対応等もいろいろと変化しており、またその報告書等から、それについては、専門的な知見も含めて審議をいただくというような内容も認識している。県の第三者委員会、いじめ問題対策委員会になるが、この所掌事項においても、いじめの部分の現状等については審議できるような仕組みになっており、教育委員会の定例会などにおいても、そのような活用をすべきというご意見も賜っているので、その辺も含めて対応していきたい。
【斉藤委員】
先生の調査をやったと言われた。実例を紹介すると、これは日付も何もかも黒塗りだが、いじめが原因と思われる不登校の事案である。これは「調査が必要ない」としてやられなかったのだが、先生の調査をやったと。その先生の調査で、「からかい、いたずら、悪口、いじめなどを受けていたと思うか」と先生に聞いたら、「受けていたと思う」0人、「受けていなかったと思う」4人、「分からない」70人。これで何が分かるのか。先生は分かっていない。生徒を調査しなかったらいじめは分からない。これが実態である。74人の先生に聞いて一人もいなかった。これでは先生も生徒も学校も教訓にならない。いじめというものは隠すものだとなりかねない。先ほどガイドラインで紹介したが、特に、いじめの重大事態について問題にしている。こういう重大事態というのは法律で規定されているのだから、きちんと責任をもって学校・県教委が調査すると。そして、本当に再発を許さない学校をつくっていくと。そういう姿勢がないから、父兄の言葉をいいことに調査もしない、それは学校の敗北である。これはいじめを隠す、いじめが蔓延するだけの話である。そして、そういう学校にどうして被害生徒が戻れるのか。私が言った4件はまったく調査しなかった。他の事例についても読んだが、いじめの当該関係者だけ調査しているのが多い。そうではなく、いじめというのは、いじめに直接関わった子どもだけではなく、見ている子ども、はやし立てる子ども、黙認している子どももいる。そういう子どもたちも、同じ気持ちでこの問題を解決する、克服していくという風にしなければ、本当の意味で解決しないのではないか。
県内の小学校でも勇気のある校長先生がいるなと思って、「いじめから我が子を守る具体策」という父母のために書いた本を出された。これは大津の事件に衝撃を受けて書いたと。直接校長先生にお会いして話を聞いてきたが、校長先生は「今のいじめというのは見えにくい。いじめる子どもに罪悪感がない。だから深刻になりやすい」と。よく事態を見ていると思う。
だからこの解決方法というのは、本当に先生も生徒も一緒になって、事実を明らかにして、その事実の重大性を共通認識にして、いじめを許さない学校をつくる以外に方法はない。
そういう意味でいくと、重大事態が起きているにも関わらず、その学校こそ今後のモデルにならなければいけない。それが隠蔽するようなことになったら解決にならない。
【教育長】
いじめ問題については、法律の制定や国におけるガイドラインの策定、基本的な方針と。それを踏まえた各自治体の方針、学校の方針も定めている。その原理原則に立って、しっかり対応していくことがまずもって求められていると思っている。
やはり子どもたち一人一人に寄り添った教育をしっかりやっていくと。いじめられた子どもをいかに良い環境で学校生活をおくってもらうかということは、学校教育に求められているきわめて大きな課題だと思っているので、今いただいたお話等も踏まえてしっかり対応していくということを基本にしつつ、また、当事者の子どもや保護者とも十分な意思疎通を図りながら適切な解決策を見出していくために努力していきたい。
【斉藤委員】
2つの提言をしたい。
1つは、いじめ防止等基本方針にも書かれているが、重大事態については、事実・結果について教育委員会議に報告すると。
もう1つは、せっかく第三者委員会をつくったのだから、第三者委員会にもきちんと報告すると。そして全県的な教訓にしていくと。
この2つはきっちりやるべきである。事務局で対応するだけの話ではないと思うがいかがか。
【生徒指導課長】
2つのご提案をいただいたが、いじめの重大事態に関わった各学校からの報告については、教育委員会定例会後の協議等で委員には報告している。
第三者委員会での検証については、所掌事項として、県の基本方針の策定に関わること、いじめ全般に関わることも所掌事項の1つとしてあるので、その部分を踏まえながら今後対応していきたい。
【斉藤委員】
教育委員会議の協議会に報告しているという答弁だった。協議会というのは議事録が残らない正規の会議ではない。正規の会議にきちんと報告すべきである。そうすれば教育委員会議として、いじめ事案についてどういう議論がなされているか分かるので。そのようにすべきではないか。
【教育長】
教育委員との意思疎通の場は、教育委員会議を中心としつつ、別途協議の場を設けながら、情報共有に努めている。
協議会の場で話し合うということについては、これは個人情報等を明らかにしなければなかなか議論が進まないということもあり、そういう場も活用しているが、全体像などについては、個人情報に十分留意した中で、どのような情報提供等ができるか検討させていただきたい。
【斉藤委員】
ガイドラインは教育長も読んでいると思うが、「調査結果の報告―地方公共団体の長に対して報告・説明すること。その際、公立学校の場合には、教育委員会議において議題として取り扱い、その後教育委員会議において議題とすることも検討する」となっている。中途半端なことではなく、この通りしっかりやっていただきたい。
【教育長】
今手元になく確認しないまま答弁したが、そのようなことがあるのであれば、その辺のあり方をしっかり検討させていただきたい。