2018年3月6日 予算特別委員会
高田一郎県議の総括質疑(大要)


・生活困窮者自立支援事業について

【高田委員】
 まず最初に生活困窮者自立支援事業について質問いたします。
一関生活困窮者自立相談支援センターで、活動についてこの間伺ってきました。新規相談者だけでも年間180件前後となっており、専任職員がわずか3人であること、また委託先である一関社会福祉協議会では、食糧支援などの独自の支援も行なっているなど、様々な課題があると感じてきました。
 そこで伺います。生活困窮者自立支援に取り組む県内の実態、相談件数や任意事業に取り組む自治体、そして支援員の配置数など相談体制についてどうなっているのでしょうか。

【千葉副知事】
 生活困窮者自立支援の取り組みについてでございますが、平成27年4月に施行されました生活困窮者自立支援法に基づきます、生活困窮者自立支援事業につきましては、町村部につきましては県が、市部は各市がそれぞれ自治体となりまして、生活に困窮されている方々に対し包括的な支援を行なっているところでございます。この事業の必須事業でございます自立相談支援事業は、全ての市町村で取り組んでおりまして、平成28年度の実績は県内23の自立相談支援機関で受け付けました、新規相談件数が前年度比50件増の2575件にのぼり、そのうち402人が就労につながったところでございます。
 また任意事業につきましては地域の実情を踏まえながら実施が拡大されてきておりまして、今年度におきましては就労準備支援事業は28市町村、家計相談支援事業は12市町、一時生活支援事業は1市、子どもの学習支援事業は12市町で実施されておりますが、30年度におきましては家計相談支援事業では6町村増えまして18市町村、一時生活支援事業では19町村増えまして20市町村、子どもの学習支援事業では4市町村増えまして16市町村で事業が実施される見込みでございます。
 生活困窮者自立支援事業の支援員の体制でございますけれども、相談件数あるいは各市町村社会福祉協議会の状況に応じて異なるところもございますが、兼任も含めました県全体の人数では、自立相談支援事業の支援員は81名、就労準備支援事業の支援員は25名、家計相談支援事業の支援員は14名、のべ120名の支援員を配置し各種相談に対応しているところでございます。

【高田委員】
 引きこもりがちな兄弟を地元スーパーにお願いして店頭で3日間アルバイトさせて、自信にこぎつけさせて就労につなげたと、大変苦労したお話も現場でお聞きして来ました。相談件数の6割が20代から50代の働き世代であります。就労準備支援事業も一関でやってないんですけれども、これも是非必要であるし相談には時間もかかる。あまりにも支援体制が弱いのではないかと思いますが、現場も増員を求めています。県としてこれらのところに体制を強化すべきでありますが、支援について県の考えを示してください。

【達増知事】
 生活困窮者自立支援事業については、多様な課題を抱えた生活困窮者が相談支援のワン・ストップサービスを受けられるようにする、自立支援事業に全市町村が取り組んでいますほか、就労準備支援準備等の任意事業についても、その取り組みが年々拡充してきています。
 県では国が実施する研修会に自立相談支援機関の支援員等派遣するほか、県主催の研修会も実施し支援員の資質向上を図るとともに、県自立相談支援機関及び関係機関で構成する支援調整会議を開催し、各地域において生活困窮者自立支援事業の自治体制の強化に努めています。
 また生活困窮者の自立支援の充実にあたりましては、適切な支援員の配置が必要であり、広大な県土を有する本県の実情に応じて事業実施体制を確保するための、十分な財政措置を講ずるよう引き続き国に対して要望してまいります。

【高田委員】
 相談を受ければ就労支援もやらなければいけないし、車上生活者がいれば宿泊や食糧支援などにも一体的に取り組まなければならない。大事なことは市町村自治体では任意事業をやっている自治体がバラバラですから、任意事業を広げていくことが必要ですし、さらにこの事業の国の基準額というのは人口規模なんです。面積も考慮されていない、1件相談するにも1日がかりとかこういう状況になっております。ですから現場の方々も増員すればもっと解決できるというのが現場の声です。ですから現場の声も踏まえてその実態に則した支援をお願いしたいと思いますけれども、改めてお伺いしたいと思います。

【達増知事】
 町村部の事業実施にあたりましては、県は平成27年度から支援ニーズの高い就労準備支援事業と予算事業として実施していた子どもの学習支援事業を実施しております。また家計相談支援事業については事業ニーズを十分に把握できていないことから当初は事業化していませんでしたが、自立支援事業においてプランを作成して支援者ケースの多くが、家計管理の問題を抱えている実態が明らかとなり、生活困窮者の自立促進のためには専門職員の配置よる、家計管理支援の強化が効果的であると考えられることから、平成29年度において家計相談支援事業を実施したところであります。
 家計相談支援事業の実施地域の拡大は必要と考えておりまして、平成30年度は県北広域振興局管内3町村、宮古保健福祉環境センター管内3町村においても実施することとし、学習支援事業についてはこれも実施地域を拡大し宮古保健福祉環境センター管内、盛岡広域振興局管内それぞれ新規の実施または拡充を行なってまいります。あわせて一時生活支援事業についても、平成30年度から任意事業に取り組むこととしておりまして、この町村部における任意事業の充実に県としても力を入れてまいりたいと思います。

【高田委員】
 平成28年度の相談件数が2575件と年々増加している、ですから現場の実態を踏まえて対応していただきたいと思います。
 そこで生活保護を受けるべき人を、無理やり就労支援に結びつけるのは非常に問題だと思う、制度の趣旨に反していると思います。そこで生活困窮者の権利擁護とか、あるいは支援のコーディネートなど専門性が求められますけれども、支援員に対する研修は十分やられているのかというのが一つです。あわせて住宅事情についてもお伺いしたいと思います。北海道札幌市の東区で、生活困窮者の共同住宅での火災が発生して大変な犠牲となりました。公的介護施設に入れずに民間賃貸住宅でも敬遠されて、行き場を失った生活困窮者の悲劇ではないかと思います。こうした生活困窮者に対する住宅事情について、県はどのように把握されているのでしょうか。

【千葉副知事】
 支援員の研修についてでございますが、支援員は自立相談支援機関の窓口としまして、多様な課題を抱えております生活困窮者の方々の相談に向かいあい、1人1人の状況に合わせた支援計画を作成し社会参加、自己自信の機会でもある就労の場の確保、あるいは家計の管理を行なう意欲を引き出す生活数値高めるなど役割を担っておりまして、この包括的な支援を継続するためには、生活困窮者に寄り添う支援員の果たすべき役割は大きいものという認識でおります。
 これまで県におきましては、このような支援員の資質と専門性を高めるため、毎年度国において実施しております、生活困窮者自立支援制度人材養成研修に、これまで76名を派遣しております。また自立相談支援事業従事者等対象とする毎年開催しております研修会においては、国の研修受講者の伝達研修や実際の支援例を活用したケーススタディ、特定課題ついての意見交換など実施しておりまして、今年は47名が受講しております。いずれにいたしましても今後とも様々な研修を通じまして、支援員の資質と専門性の向上を図っていきたいと考えております。
 次に生活困窮者の住宅事情についてのお尋ねでございますが、生活困窮者ということにつきましては、具体的な定義については法律上も定めておられないところでございますが、従いまして住宅事情について具体的に把握することは中々難しいとこがございます。去る1月31日札幌市で全焼いたしました、生活困窮者支援を目的とした共同住宅につきましては報道によりますと、札幌市は現行福祉関係法制度に位置付けのない施設だと判断したとのことでございまして、これらの施設を対象に、平成27年度に厚生労働省が実施しました社会福祉各法に法的位置づけのいない施設に関する調査によれば、県内には同様の施設が9施設確認されているところでございます。なお生活困窮者の為、無料または低額の料金で宿泊所等を利用させる無料低額宿泊所として、社会福祉法に基づきます届出の指定施設は県内では確認されていないところでございます。また生活保護世帯につきましては、福祉事務所のケースワーカーが、担当する世帯を定期的に訪問いたしまして、住宅など生活環境を把握してまして29年6月末時点におきましては、本県の非保護世帯10470世帯のうち約7割の7340世帯は、住宅扶助を受給してアパート等で生活しておられます。

【高田委員】
 調べてみますと、生活保護世帯の公営住宅入居は20.9%、1,531世帯が入居しています。住宅扶助についても岩手県の場合は31,000円程度になっております。私も様々な方から相談を受けましたけれども、たとえば生活困窮者はトイレが共同とか、あるいは老朽化した建物で、本当に不自由な状況の中で生活している場面も何度も見てきました。今副知事は“中々生活困窮者の住宅事情の把握が難しい”という話をされましたけれども、生活保護でいえばケースワーカーとか、あるいは生活困窮者自立支援に取り組んでいる支援員のみなさんも、住宅事情というのは把握しているわけです。だからこういう人たちとよく連携しながら実態把握をして、市営住宅の拡充とか低額の家賃で入居できる、そういう住宅整備を検討していくそういう対応をするべきだと思いますがその点についてはいかがでしょうか。

【千葉副知事】
 生活困窮者の居住環境と整備についてでございますけれども、今お話ございましたけれども、生活保護のケースワーカーやあるいは生活困窮者自立支援事業の支援員が家庭訪問等を通じて、これまでの住居に住み続けることができなくなる状況等につきまして把握した場合におきましては、ご本人の希望を確認後公営住宅など、新たな住宅の確保について様々な助言、指導等を行なっているところでございます。住宅は、生活している拠点として自立にはその確保が欠かせないものであると考えておりますことから、関係機関と連携し引き続き住宅事情の把握に努めながら、生活保護制度による住宅扶助費の支給や、生活困窮者自立支援制度によります住宅確保給付金の支援等により、適切な住居環境を確保できるよう支援をしてまいりたいと考えております。

・子ども食堂の取り組みについて

【高田委員】
 子ども食堂は1月末現在で13市町村19ヶ所において実施されています。県は全県に広げるために取り組む団体のネットワーク化を図るための対応をしようとしておりますが、さらに全県に広げていくために立ちあがりへの支援も、必要と考えますがこの点についてはいかがでしょうか。

【千葉副知事】
 子ども食堂の立ち上げ支援についてでございますけれども、広域財団法人「いきいき岩手支援財団」におきましては、岩手子ども希望基金を設置しておりまして、子育て支援や児童の健全育成活動を対象とする助成制度を設けておりますが、この子ども食堂の立ち上げ等に要する経費も助成対象としておりましております。
 しかしながらまだその制度の周知がなされていない面もございますので、今後とも県が財団と連携いたしまして、制度の周知に努めていきたいと考えております。また30年当初予算案には、子どもの支援に取り組む団体のネットワーク化と、その活動を支援するための経費も盛り込んでいるところでございますが、当該ネットワーク組織においては、新たに子ども活動を開設しようとする団体への様々なアドバイス等についての支援も行なうことを想定しているところでございます。
 いずれこれらの取り組みも含めまして、子ども食堂の立ち上げを支援してまいりたいと考えております。

【高田委員】
 立ち上がり資金については財団の支援があるとのことですが、十分な財源的な支援があるのでしょうか。手をあげればすぐ対応できるのかどうか、現在行われている19団体のうち、子ども未来応援基金はわずか2か所であって、他の民間企業からの寄付となっている。滋賀県では全県で300か所、全小学校区に開設を目指しているということでありましけれども、こういった視点で取り組むべき必要があると思いますし、先ほど言った、手をあげれば財源的に十分対応できるのかどうか、この点も含めて答弁をお願いいたします。

【千葉副知事】
 いずれ、県においてどの程度団体等があるか私は今承知しておりませんが、その状況等も踏まえながら財団と相談しながら、できる限り立ち上げを支援できるように努めてまいりたいと考えております。

・生活保護制度について

【高田委員】
 生活扶助基準の見直しは、就学援助とか、あるいは公営住宅家賃、介護保険料の減免など様々な制度の利用料にも影響するものです。厚労省は、47の事業に影響が出るとしておりますが、県としてどのように把握してされているでしょうか。今回の5%の削減については“一般低所得世帯の消費支出が減少しているから“という理由でありますが、これでは負のスパイラルになってしまうのではないでしょうか。2013年度にも引き下げの改定が行われましたけれども、その時の引き下げた時の影響はどうだったのか伺います。

【千葉副知事】
 生活保護基準の見直しの影響についてでございますけれども、本年1月19日に厚生労働省が公表いたしました“生活保護基準の見直しに伴い他の制度に生ずる影響について“によりますと、今回の生活保護受給を含む生活保護基準の見直しに伴いまして、国の47制度は直接影響を受けることが記されており、このことについては承知しております。しかしながら就学援助や保育料の免除等、43の制度につきましてはそれぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分考慮しながらできる限りその影響が及ぼさないように対応するということを、基本的な考え方とするという方針も示されておるところでございます。ただその詳細につきましては今後国から正式な通知を見て、調査・判断する必要があるものと考えております。
 また25年8月から3年をかけて段階的に始動した、前回の生活保護基準の見直しにおきます、本県の生活保護世帯の影響についてでございますが、生活保護世帯のうち、生活扶助費が減額となった世帯の割合は平成25年度は79.7%、平成26年度は消費税率の改定等に伴う増額分の影響もあり11.5%、平成27年度は87.1%となっている状況でございます。

【高田委員】
 就学援助の問題については本会議で教育長が、“影響出ないように“と前向きの答弁がありました。一関市においても就学援助については、収入基準を見直して生活保護基準の1.2から1.3にするということで、県内でもそういった取り組みが広がっております。3月1日に生活保護基準の見直しの案の説明会がありまして、そこで詳細な中身が説明されたようです。国の通知を待ってからということでの対応でありますけれども、やはり影響試算をしっかり行なって、県民生活に影響が及ぼさないような対応を求めたいと思いますが改めてお聞きします。

【千葉副知事】
 今回の見直しに関しまして国の社会保障協議会、生活保護基準部会の報告書等によりますと、地域や世帯累計ごとの増減が検討されておりますなど、このことから本県でも地域や世帯累計により生活保護費の見直しの内容が、異なる場合が見込まれているところでございます。したがいまして具体的な影響判断するためには、今回の改定の詳細について正式な通知を待つしかないという答弁をさせていただいているところでございますが、いずれ詳細が判明次第、様々な試算等行ないながら、その影響額について試算を行ない、どういう風に対応していくべきかについては検討していく必要があるものと考えております。

【高田委員】
 よろしくお願い致します。
 そこで現在の生活保護基準は“健康で文化的な”生活水準になっているのか、また捕捉率は2割ということもいわれていますけども、岩手の現状はどうなっているのか要因も含めてお伺いいたします。

【千葉副知事】
 生活保護基準についてでございますが、生活保護は国が定める基準に従い実施しておりますが、この法の基準につきましては生活保護法によりまして“健康で文化的な水準を維持することができるものでなければならない”ということが定められておりまして、現行の保護の基準につきましては国の社会保障審議会の検証等踏まえて、定められているものと理解しております。
 生活保護の捕捉率についてでございますが平成22年度に厚生労働省が、生活保護基準未満の低所得世帯数の推計においてでございますけれども、低所得世帯数に対する非保護世帯数の割合として15.3%から29.6%が示されてございますが、この割合は全国数値でございまして都道府県別の数値は示されてはないところであり、私どもといたしましてはその数値は手元で持っていないところでございます。
 生活保護に行けない要因につきましては、多様な理由があると考えられますが、厚生労働省のナショナルミニマム研究会におきましては、委員から当生活保護に対する恥の部分が生活保護制度の理解が不足していることなど、その他様々な要因が指摘されておりまして平成25年度、生活保護の一部を改正する法律に対する付帯決議におきましては、制度の周知や相談窓口の適切な相談対応を行なうことなどが決議されているところでございます。

【高田委員】
 窓口で適切な対応が必要だというお話がありましたけれども、最近生活困窮者の支援に取り組んでいる方々からお伺いいたしましたけれども、捕捉率は2割ではないけれどもそれに近い形になっているというお話をいただきました。特に事前に窓口で指導してそこであきらめてしまう。たとえば車は保持できない、借金があったらそれをなくすまで申請はできない、という間違った解釈で対応しているという話もありましたし、親族の扶養義務を求めてそこで親族にあまり迷惑をかけられないからあきらめてしまう、そういうケースがある。法の運用に課題がある、窓口の対応に課題があるというのが関係者の声であります。
 そこで最近はケース会議とかあるいはケースワーカーの研修が非常に不足しているということも言われていますけれども、窓口でしっかりと丁寧に相談に乗って法に結び付けるようなそういうケースワーカーの研修、これが非常に大事になってくるのではないかと思うのですけれどもその点についていかがでしょうか。しっかりやるべきだと。

【千葉副知事】
 生活保護のケースワーカーに対する研修でございますが、これについては私も非常に重要な取り組みだと考えております。私も地域福祉課長もさせていただきましたし部長もさせていただきましたが、少し前でございますと、まさに生活保護一筋というケースワーカーさんが、非常に県でも市でも多かったわけでございますが、世代交代とかありまして中々ベテランの方が県も市も減ってきているという事実がございます。従いましてケース会議などでいろいろな研究もしているわけでございますが、やはり外部から非常に精通したケースワーク体験のある方をお呼びしての研修とか、そこも強化していく必要があるものと考えております。いずれ窓口で正確な説明をする必要があるというのはその通りでございまして、受給について“資格がありながらあきらめてしまう”ということがないように、その辺を十分指導していく必要があるものと考えております。

【高田委員】
 そこで知事に質問したいと思います。
 捕捉率が低いのは副知事から先ほどお話がありましたけれども、生活保護が恥だという意識が、やっぱり生活保護バッシングです。それで生活保護をためらうということがあると思います。最近はネット上でも“生活保護を受給することは税金の無駄遣いなんだ”という書き込みがあって非常に私も心を痛めていますけれども、知事の口から生活保護を利用することは決して恥ずかしいことではないんだと、憲法25条に基づく国民の権利なんだということを、知事の口からもはっきりと表明していただきたいと思いますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 生活保護を受けることは憲法第25条に基づく国民の権利であり、恥ずかしいことではありません。生活保護制度はすべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する、日本国憲法第25条の理念に基づくものであり、経済的に困窮した方を支える最後のセーフティネットとしての役割を十分に果たしていく必要があります。
 県ではホームページやパンフレットの配布等により、生活保護制度に対する県民の理解の醸成に努めており、民生委員、児童委員等と連携しながら生活に困窮している方々の相談に結びつけるよう取り組んでいます。
 今後とも経済的に困窮し真に支援が必要な方に対して、適切に生活保護を実施し被保護者1人1人に寄り添った様々な支援が受けられるようにすることで、みんなが安心して暮らす事ができる実現してまいりたいと思います。

・給付型奨学金制度の問題について

【高田委員】
 新年度から始まる給付型奨学金は、住民税非課税とか成績優秀者と、対象がかなり狭くなっております。県内の申請状況はどうなっているのか。また学業成績が著しく不良のものは返還させることができると法律にも明記されています。学校側から推薦にあたって低所得者の選考をしなければならない、申し込む世帯はどの世帯も苦しいし学業の成績も考慮して決めるのは問題だ。こういう声も出ていますけれども、県は今回の給付型奨学金制度をどう評価し受け止めているのでしょうか。

【千葉副知事】
 まず給付型奨学金制度の申請等の状況についてでございますが、日本学生支援機構の今回の給付型奨学金制度は、意欲や能力のあるにもかかわらず経済的事情により、進学が困難な生徒の大学等への進学を後押しをするために創設させると、本年度は対象者を限定して先行実施されたところでございます。
 この給付奨学生の推薦にあたりましては、家計支持者が市町村民税の所得割を重ねていないこと、生活保護を受給していること、児童福祉法上の措置として児童養護施設等に入所等していることの3要件のうち、いずれか一つに該当することが前提条件となっているところでございます。
 本年度の先行実施におきましては、児童保護施設対象者等の社会的養護を必要とする者や、私立の大学等に自宅前から通学する住民税非課税世帯の者など、特に経済的に厳しい状況にある大学1年生が、大学をとおして申請をしておりまして、支援機構におきましては“都道府県別の採用者数の集計は行なっていない”ということでございまして、本県の卒業生の採用者数については県として把握していないところでございます。30年度からは国公立大学に通う者や、自宅から通う者を対象となるなど本格実施されるところでございますが、現高校三年生が在籍する高校を通じて申請してございまして、本県の県立高校におきましては199名を支援機構に推薦し、そのうち197名が採用候補者として決定を受けております。なお不採用となった2名の理由については県に対して示されていないところでございます。
 次に学業成績を先行の基準とすることについてでありますが、給付型奨学金の対象となります生徒の日本学生支援機構への推薦につきましては、各高校におきまして学校の教育目標や実情を勘案して推薦基準を策定し、支援機構から審査を受けたうえでその推薦基準に基づき、今申しました3つの要件のいずれかに該当する者を対象に、あらかじめ示されました高校ごとの推薦者数の枠内で選考を行なっているところでございます。各高校の推薦基準は人物、健康、学力及び資質、家計等の要素を総合的に勘案して策定されておりまして、学業成績のみを優先して選考を行なっているものではないと承知しております。なお独立行政法人日本学生支援機構法におきまして、奨学金を返還させる理由の一つとして、学業成績が著しく不良となった時が規定されておりますが、これは卒業の延期が確定した場合等が該当するのでございまして、意欲と能力のある学生の学業成績が一時的に低下した場合等は、これに該当するものではないという説明を受けております。

【高田委員】
 推薦が197人ということは1クラスに1人程度の数です。圧倒的に少ないと思います。今本当に貧困と格差が広がるなかで家計の収入が減少して進学を断念せざるを得ない、また入学しても在学中にアルバイトに追われて、学生の半分が奨学金を借りなければならない現状にあります。そして奨学金を借りても多額の借金を背負いながら、社会に出ていかなければならないそういう現状にもあります。
 滋賀県の米原市あるいは政令指定都市である70万人の相模原市でも、給付型奨学金制度が独自に来年度からスタートということが報じられております。やっぱり将来を担う人材の育成と地元への定住促進、そして何よりも安心して学業に取り組めるようにするためにも、県としてもこういった独自の対応をするべきだと思いますがこの点についてはいかがでしょうか。

【千葉副知事】
 現在在学生等の就学を援助する奨学金についてでございますけれども、旧日本育英会が実施しました高校生、大学生を対象とします奨学金事業は、特殊法人の整理合理化によりまして、高校生を対象とする事業が平成17年度以降の入学者から都道府県に移管された一方で、大学生等については引き続き国が担うこととされまして基本的な考え方といたしましては、今後とも国、県それぞれの役割をしっかり担っていく必要があるものと考えております。
 県といたしましては高校卒業後の教育の機会均等を図るうえで、意欲と能力のある学生への経済的な支援であると考えていまして、これまで繰り返し大学生等を対象とした国の支援奨学金制度の拡充を要請してきたところでございます。
 国におきましては先ほどにご説明申し上げました通り、給付型の奨学金事業が実際始まりましたが、これは本県の要望の趣旨が一定程度反映されたものと考えております。また本県におきましては東日本大震災津波により親御さんを亡くされました学生等を対象とした、岩手の学び希望基金奨学金の給付や医師や看護職員、介護福祉士、社会福祉士、保育士、獣医師等志望する学生に対しましては、一定の条件により返還免除制度を有する奨学資金の貸与も行なっていまして、これらに加えまして産業界等と連携してものづくり企業等の技術力・開発力向上を担う人材育成を支援するため、岩手産業人材奨学金返還支援制度の取り組みを進めているところでございます。
 今後におきましても意欲と能力のある学生への奨学、あるいは地元定着に向けまして本県の奨学金制度の定着に努めるとともに、国の給付型奨学金制度についてはその充実に向けまして、必要な要望を行なってまいりたいと考えております。

【高田委員】
 生活保護世帯については現在の制度では大学に進学すれば、世帯分離となって生活保護費が減額される、高校を出たら働くことが前提となっている、そういう生活保護制度になっています。社会的養護の子どもたちについてもやはり優秀な子どもを進学させられなかったという施設関係者の声を聞くときに、生活困窮者が本当に進学する希望があれば、そういう人たちに対するしっかりとした対応になっていないのではないかと思う。生活保護世帯とかあるいは児童養護施設入所者への進学支援というのは、十分な支援がされているのでしょうか。

【千葉副知事】
 生活保護世帯等の子どもへの進学支援についてでございますけども、県におきましては生活保護世帯を含む生活困窮世帯の高校生に対する進学支援策といたしまして、平成30年度から新たに生活困窮者自立支援事業におきまして、校舎外での学習支援を始めるほか、生活保護制度の見直しによりまして生活保護世帯の高校生が大学等へ進学する際には、新生活を始める費用として進学準備金、進学準備給付金が来年度から給付されることとなっております。また児童養護施設入所児童に対する進学支援策といたしましては、施設職員が児童の学習支援を行なっております他、学習塾への通塾を支援し学力向上や進学を希望する児童への学習支援をきめ細やかに行なっているところでございます。大学への進学に際しましては大学進学等自立生活支援費の支給や、各種奨学金等の斡旋に加えまして、進学後の住居費及び生活費等の経費につきましては、就職後一定期間就労継続した場合にその返還を免除できる、児童養護施設退所者等自立支援資金の貸付等により支援を行なっているところでございます。
 こうした支援制度によりまして生活保護世帯あるいは児童養護施設の子どもたちが、希望する進学を断念することがないように引き続き支援をしてまいりたいと思いますし、国に対してさらなる制度の拡充を要望してまいりたいと考えております。

【高田委員】
 国に対する要望をぜひやっていただきたいと思うんですけども、岩手の場合は大学等の進学率は67.1%、生活保護世帯は29%、児童養護施設は12%。これは26年度の数ですけれども子どもの貧困対策を考えても、生活保護世帯とか児童養護施設に入っている方々の率を高める必要があると思います。子どもの貧困対策のなかでも十分重要な対策だと思います。今副知事がお話ししたように生活保護世帯でも準備金が出るとお話されました、10万円とか30万円とか出るという新しい制度です。しかし3月1日の生活保護の説明会の資料を見ますと、逆に生活費保護世帯は大変になるそういう数字です。つまり18歳が19歳になれば母子加算手当がなくなってしまう。そして大学進学となると世帯分離になってしまってその分生活保護がなくなってしまう。こういうことで逆に減額になるというそういうもう説明されている。ですから私は特別な対策、支援がないと、国に対して拡充を求めることは大事なんですけれども、子どもの貧困対策を考えたときに県としてもこういった方々に対する、さらなる財政支援というのも必要ではないかと私は思いますがその点について改めてお伺いいたします。

【千葉副知事】
 今のお尋ねにつきましては私もまだ詳細な資料を熟読・分析をしておりませんので、お許しいただきたいと思いますが、いずれそういう形で制度を拡充するという一方でマイナスの面があるとするならば、その辺の影響についてきちんと把握した上で繰り返しになりますが、国に対する要望等もきちんとしていきたいと考えております。

・台風10号災害からの復旧・復興について

【高田委員】
 あれから1年半が経ちましたけれども仮設住宅、みなし仮設、修繕しない被災した自宅での生活など大変な生活を余儀なくされています。被災者への見守りなどについてどのような対応をされているのでしょうか。
 医療費、介護保険利用料の免除は被災者に大変喜ばれております。町が負担して12月までの対応となっておりますが、岩泉町はご承知のように東日本大震災の10倍の被害となっており、県としてもさらなる財政支援をすべきと思いますがどのように検討されているでしょうか。

【達増知事】
 まず被災者の見守りについてでありますが、台風第10号災害に際しては甚大な人的被害、住宅被害が発生したところであり、市町村ではすべての被災者を対象にした保健師等による各個訪問等を通じて、被災者それぞれの状況に応じた支援を実施してきています。
 特に被害が大きかった岩泉町においては、保健師等による巡回のほか、岩泉町が配置する生活支援相談員による見守り支援、生活再建の為の相談窓口の開設、支援関係者による連携会議の開催など各関係団体が連携して被災者の見守りや相談支援を実施しています。県では岩泉町からの要請に応じて、保健師等を被災者の健康調査に派遣するなど支援していますが、
 今後におきましても市町村や社会福祉協議会等の関係機関との連携し、被災者一人一人に寄り添ったきめ細かな支援に努めてまいります。
 台風第10号被災者に対する医療費等の一部負担金免除についてでありますが、国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険においては災害等により一部負担金等の減免を行なった場合、一定の基準を満たした保険者に対して減免に要した費用の8割が、国特別調整交付金で交付される制度があり、国の基準を下回った場合は国民健康保険については県の特別調整交付金により、減免に要した費用の8割を交付することとしています。災害等により一部負担金等の減免を実施するかどうか、現場の基準をどのようにするかなどについては、各保険者の判断により決定するものであり、台風第10号の被災者に対する国民健康保険、介護保険の一部負担金等の減免については被災市町村において、減免の基準や実施期間などを決定して実施しているところであります。
 東日本大震災津波の被災者に対する一部負担金等の免除については、県は国の特別な財政措置を引き継ぐ形で特例として実施しておりますが、国が示した免除基準により県内統一して行なっているものであります。

【高田委員】
 住宅再建が最も切実な課題であります。基礎支援金の申請が1056件、加算支援金は610件となっております。特に岩泉町は補修による加算金を受けた被害者は281件となっており、大規模半壊でも住宅を修繕して再建する被災者が大変多くなっています。県としてもしっかりと支援をすべきと思いますがこの点についていかがでしょうか。生活橋の再建の見通しについても伺います。寄付金の取り組み大変厳しいと伺っていますが県の支援策はどうなっているのでしょうか。

【達増知事】
 住宅再建についてでありますが、台風第10号災害では多くの住家被害が生じたところであり、被災者一人一人に丁寧に寄り添いながら1日も早く安心して暮らせる環境を取り戻す事が重要であります。大規模半壊の住家被害を受けた被災者に対しては、被災者生活再建支援法基づいて全壊の住家被害の場合の半額の基礎支援金50万円が支給され、加算支援金は被災した自宅を補修することとした場合には、自宅を新築した場合の半額の100万円が支給されるものであります。平成30年2月1日現在、自宅を補修することとして、加算支援金を申請した岩泉町の被災者の割合は82.1%と、新築等による申請と比べ高い状況にあります。
 このため県としては被災者の方が安心して自力再建できるよう国に対し、被災者生活再建支援金の増額、及び制度の要件緩和と充実を求めていますほか幅広い財政事業に対応できる、弾力的で重度の高い総合的な支援制度の創設等を要望しているところであり、今後も機会をとらえて必要な財源措置や制度改正等について要望してまいります。
【藤田政策地域部長】
 生活橋の本復旧につきましては、今後本格化する河川改修の進捗に合わせて進められる見込みでございまして、現段階で再建の終了時期を見込むことは困難でございますけれども、今年度中に1ヶ所の本復旧が見込まれておりまして、町の平成30年度当初予算におきましては本復旧の為の経費として1,800万円を計上していると伺っております。岩泉町では生活橋の本復旧に向けまして支援募金を開始して、寄付の受付を行なっているところでございますけれども、先月末現在で1,295万円余の受け入れを行なったと伺っております。県といたしましてはこの支援募金につきましても、企業・団体への橋渡しなどの支援を行なってきたところでありますが、これに加えまして先月からは県が仲介を行ないまして大手ポータルサイトによる募金も開始したところでございますが、今朝の時点で62万円余となっておりまして今後もできる限りの支援を行なってまいりたいと考えております。