2018年3月6日 予算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)
・来年度予算に占める震災復興分の予算と繰越額について
【斉藤委員】
来年度予算に占める震災復興分と繰越分の総額と推移を示していただきたい。
【財政課総括課長】
平成30年度一般会計当初予算の総額は9533億円余、そのうち震災分は2849億円余・29.9%である。
平成29年度の2月補正などに計上した繰越明許費は、1498億円余であり、震災分は923億円余・61.6%である。
平成30年度一般会計当初予算と29年度繰越明許費の震災分の総額で、3772億円余である。
これまでの推移は、震災分の当初予算と前年度から繰り越した繰越明許費のうち、繰越額を合わせた額だが、平成25年度は6315億円余、26年度は5363億円余、27年度は5726億円余、28年度は5532億円余、29年度は4562億円余である。
【斉藤委員】
震災関連の予算を見ると、減少はしているものの、来年度も3772億円余というのはかなりの規模の事業費となる。
平成31年、32年の見通しというのは分かるか。
【財政課総括課長】
見通しはまだ立たない状況だが、進捗に合わせて減少していくとは考えるが、一方で、事故繰越などもこれに加わってきて、おそらく数百億円単位になるのではないかと思われ、この規模はまだしばらく続くのではないかと考えられる。
【斉藤委員】
全体とすればピークは過ぎたと言えると思うが、例えば、陸前高田市の来年度予算は895億円で16%増えた。これは震災前の予算の8倍にあたる。
釜石市長さんと陸前高田市長さんに言われたが、「復興の度合いというのは平均で見てほしくない」「一番遅れているところを基準にして見てもらわないと、現状を正確に見ることにならない」という指摘だった。全県的にもまだまだ復興事業が一定程度あり、陸前高田市・大槌町・釜石市などのように、被害が大きくて復興が遅れているところにきちんと県は基準を定めて、取り組んでいく必要があると思うがいかがか。
【総務部長】
まさに復興の進捗の度合いに応じた事業の執行というのは当然求められると思う。また、復興の途上のステージごとに新たな課題が出てくるところもあるので、やはりそういったところをしっかり見極めながら、そして今この先の見通しの話も出たが、それは極力少なくなっていくよう、事業の進捗を早めるような形で対応していく必要があると認識している。
【斉藤委員】
復興の度合いを平均的に見るべきではないと。被害が大きく一番遅れているところに基準を定めて、しっかり県として支援していく必要がある。
・大震災発災時の避難指示等の検証について
【斉藤委員】
3月11日で東日本大震災津波から丸7年を迎えるが、東日本大震災津波の教訓を後世にどう受け継ぎ継承していくかということは、風化が進んでいると言われているだけに引き続き大事な課題である。
そこで、東日本大震災津波のときに、避難指示も避難勧告も出さなかった市町村はあるか。
【総合防災室長】
各市町村に確認したところ、東日本大震災津波の際、大槌町においては避難指示等が発令されていなかった。
他の沿岸市町村においては避難指示等が行われた。
【斉藤委員】
全県的に6200名を超える犠牲者が出た。特に、大槌町は1280名と犠牲者の率は一番高かった。犠牲者数は陸前高田市が一番多かったが。大槌町・陸前高田市というのは、2つの深刻な教訓があったと思う。
陸前高田市の場合は、多くの職員も市民も犠牲になったが、避難誘導の中で、避難施設に避難して犠牲になった。これが特別の重要な問題だった。
大槌町の場合は、災害対応で一番中枢になるべき役場が、避難勧告も避難指示も出さなかった。出せなかった。検証報告書を改めて見たが、犠牲者の7割は避難しなかった人、避難が遅れて自宅周辺にいた人と検証されている。災害対策の一番の要は住民の生命と安全を守ることであり、その役割が果たせなかったというのは、大槌町の痛切な教訓ではなかったのか。
こういう点で、全県的な教訓・検証はしていると思うが、犠牲が多いところの教訓というのももっと踏み込んで、県は明らかにして、また市町村の検証を支援していく必要があるのではないか。
【総合防災室長】
ご指摘の通り、大槌町では平成26年3月に検証報告書を取りまとめている。その中では、建物の耐震性の不安による混乱、停電による防災行政無線の途絶などにより、大津波警報あるいは避難指示等が発令できなかったという検証をしている。また今後の対応の方向性としては、情報収集・伝達手段の多重化、情報収集・伝達体制の強化、避難指示等の基準、および町民への伝達方法の具体化などを進めるという形で整理している。
これは、大槌町だけでなく、やはり県全体で共有すべきものと考えている。県としてもこうしたものの周知に努めていきたい。
【斉藤委員】
大槌町は最初の検証報告で、引き続き検証は進めていかなければならない。
そして昨年の7月に、大槌町災害対策本部の活動に関する検証報告書もまとめた。この災害対策本部の検証というのも、まだまだ中途半端なところがあると思う。大津波警報が出たら、避難指示もしくは避難勧告を出すということになっていた。それが出せなかったのはなぜか―。この肝心なところが率直に言って検証されていない。
いま大槌町では、旧役場庁舎を保存するかしないかということが大きな問題になっており、これは知事が言っているように、基本的には大槌町の自治の力で解決すべきだと私も思うが、検証が不十分な中で、その象徴である役場庁舎を解体するようなことがあってはならないと個人的には思う。そして、今度の町議会の議決結果次第では、県の出番も出てくる可能性もあると思っている。
・自主防災組織の現状と活性化について
【斉藤委員】
県は、自主防災組織活性化検討会議を立ち上げてこの間検討している。その協議の特徴と内容、自主防災組織の実態調査の特徴について示していただきたい。
【総合防災室長】
昨年11月に第1回会議を開催し、自主防災組織実態調査の実施方法などについてご意見をいただいた。また、自主防災組織の活性化を進めるうえで重要なことということで、地域コミュニティの基盤がしっかりしているところは防災活動もしやすいと。あるいは、自助を鍛えないと共助の力も伸びない、リーダーとなる人材の育成も必要といったご意見をいただいている。
自主防災組織の実態調査だが、県内全ての自主防災組織を対象に、自主防災組織および地域の状況、活動状況、自主防災組織が抱える課題や県・市町村への要望といったことについて回答をいただいている。
2月上旬に中間集計(暫定値)し、9割の自主防災組織が自治会と同一であるということが明らかになった。7割の組織が防災に関する研修や訓練を実施し、約8割の組織が防災セミナー等に参加している。一方で、防災マップや活動マニュアルを作成している組織は4割、県で実施している研修会等の認識度も4割ぐらいにとどまっているということが明らかになった。
こうした結果を踏まえ、今月中旬に第2回目の自主防災組織活性化検討会議を開催する予定だが、委員の皆様のご意見をいただいた上で報告書として取りまとめることとしている。結果については、市町村としっかり共有するとともに、来年度実施を考えている自主防災組織活性化モデル事業といったものに生かしていきたい。
【斉藤委員】
この会議のメンバーには、大槌町の安渡町内会の会長さんも委員として参加されており、1月のいわて復興塾でもお話を聞いて大変感心した。安渡町内会でも、津波で大変大きな犠牲を出したと。なぜ犠牲を出したかということを徹底して調査し、そして地区の防災計画を作っている。その中で、要援護者をどのように助けるのかということで、「15分ルール」ということで、助ける側も15分で助けると。そのためには玄関まで要援護者に出てもらうと。そういう形で厳密・緻密な計画を出されていることに大変感心した。
実態調査はまだ数字のみだが、防災マップの作成が41%、活動マニュアルの作成は41.1%と。防災マップというのは、その地域のリスクを明らかにすることである。沿岸であれば津波、内陸であれば洪水や土砂災害など。その地域の災害リスクが自覚されないと何の意味もない。そしてそれを把握したら、その危険からどのように生命・財産を守るのか。その上でも活動マニュアルの作成というのは大変大事なポイントになってくるのではないか。
もう1つは、要支援者名簿である。この実態調査では、要支援者名簿が提供されているのは51.5%で、半分しか提供されていないということも解決すべき問題ではないのか。これはやはり行政と自主防災組織が連携し、そして要援護者を誰が助けるのかという計画を立てるためには、そうした取り組みが必要だと思うが、先進的な事例もしっかり教訓にしながら、今度の実態調査でそういう点を浮き彫りにして、抜本的に自主防災組織の活動強化をすべきと思うがいかがか。
【総合防災室長】
お話の通り、自主防災組織の活性化については、それぞれの地域の市町村としっかりタッグを組みながら進めていく必要があると考えている。自主防災組織の実態調査についても、現在のところ中間集計ということで、県全体のものしか出ていないが、今後地域別の集計なども行い、地域ごとの課題を明らかにし、要支援者についてもしっかり取り組んでいきたい。
・旧盛岡短期大学跡地の活用について
【斉藤委員】
私の地元で軽石委員や福井委員の地元でもあるが、盛岡市長がかなり踏み込んで対応しようとしている。「県は必要とする場所と等価交換できればいい。早めに建物の解体と面積を県と協議し進めたい。今の面積の2倍ぐらい確保したい」と述べ、市は具体的な検討を進めて県と協議する方針だと、8月5日・9月1日の新聞でも報道された。
この旧盛岡短期大学跡地の活用について、どう協議がされているか。
【管理課長】
昨年8月4日に行われた、地元町内会長等で構成される旧盛岡短期大学跡地利用促進期成同盟会から、盛岡市への要望の内容等について、8月29日に市から情報提供等をいただいている。
要望の内容としては、期成同盟会から「旧盛岡短期大学跡地に市の山王児童老人福祉センターを移転整備したい」とのことであり、盛岡市からは「今後、移転に必要な面積等について内部で検討を進めることとしており、県とは事務レベルで協議を進めていきたい」とのことであった。
昨年9月には、直接期成同盟会から県に対し、市との協議を円滑に進めるように要望を受けており、地元の意向を含めて、市と情報共有を密にして対応していく旨回答した。
現時点で、市から具体的な動きはないが、県としては引き続き市と十分に情報交換を行いながら対処していきたい。
・入札問題について
【斉藤委員】
9月の決算特別委員会のときに、福島県と岩手県を比較して、福島県の場合には県営建設工事のほとんどが県内事業者に発注されており、発注額も九十数パーセント。岩手とどこが違うのかと質問し、稲葉課長は「福島県の事例も比較検討していきたい」との回答だった。
総括質疑でも議論があったが、今の入札状況と福島県との比較検討は進んでいるのか。
【入札課長】
まず現在の入札の状況についてだが、発注件数は1100件程度で横ばいで推移し、平均落札率も90%前後で横ばいないし微増で推移している。ただし入札不調については、平成27年度は9%、28年度は10%であり、29年度は1月末時点で20%となっている。1者入札については、27年度が212件・19.5%、28年度が218件・21.4%だったが、29年度は12月末時点で271件・35.4%と増えている。この要因については、台風10号災害を含めた災害復旧工事の発注のピークが昨年1月以降に出てきており、それに伴うものが主な要因として分析している。
入札制度の改善についてだが、福島県における入札の特徴なり状況を現在情報収集している段階で、なかなか業者の数や工事の内容から単純に比較・分析まではできていないが、今後、入札特例制度を見直す時期に合わせて、入札制度の全般についても見直ししていこうというところであり、他県の事例も検討していきたい。