2018年3月7日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)


・台風10号災害からの復興について

【斉藤委員】
 台風10号災害の対策室が今年度で終わるということもあり、しっかりお聞きしたい。
 被災者の今後の住宅確保の意向把握はどうなっているか。現状はどうなっているか。

【台風災害復旧・復興推進課長】
 岩泉町が昨年8月に取りまとめた住宅再建意向調査では、全壊等となった406件のうち、被災した場所とは別の土地への自力再建希望の世帯が32世帯・7.9%。被災した場所での再建または補修希望の世帯が203世帯・50.0%。災害公営住宅に入居希望世帯が74世帯・18.2%となっている。
 岩泉町が本年2月に策定した災害公営住宅および被災者移転地整備計画によると、災害公営住宅の整備戸数が81戸、町が整備する移転地は25戸と計画している。
 被災者の中には、河川改修の計画を見極めるなど、いまだ未定の方もいる中にあり、岩泉町では本年4月を目途に、住宅再建意向の再調査を行う予定と聞いており、引き続き町と連携しきめ細かに被災者の相談に乗っていきたい。

【斉藤委員】
 406件のうち203件が元の場所で再建すると。これには自立再建と補修があるが、自立再建と補修の内訳は分かるか。

【台風災害復旧・復興推進課長】
 岩泉町の調査が、元地再建と補修一緒のくくりで調査しており、合算した203件という数字になっている。

【斉藤委員】
 これは被災者生活再建支援金の加算支援金を見れば分かる。圧倒的に補修が多いというのが岩泉町の特徴で、全壊・大規模半壊で補修して元の場所で生活しているのが実態だと思う。
 対策本部会議の資料を見ると、昨年8月〜11月上旬まで、被災者の健康調査を実施している。これは1026人の在宅・仮設入居者を全戸訪問した調査だが、回答が874人で、「生活で困っている者」45%、「身体の症状あり」60%、「心の症状あり」大人が48%で子どもは55%と。かなり厳しい状況の中で避難生活をしていると思う。この点についての対策はどうなっているか。

【台風災害復旧・復興推進課長】
 岩泉町においては、仮設住宅での新しい環境における生活を余儀なくされる被災者の方々が大変多くいることから、町の保健師が県宮古保健福祉環境センターおよび岩泉町社協の協力を得ながら、訪問による健康調査および保健指導のほか、被災世帯の巡回・見守り、被災者のつどいの場を開設して継続して行っている。
 また、生活支援相談員6名を町および町内関係団体に配置し、被災世帯の巡回・見守り、相談支援などの取り組みを行っており、本事業は平成30年度においても継続して実施予定と聞いている。
 そのほか、社協やNPO法人など支援団体による支援連携会議を毎月開催し、関係団体が連携して被災者の支援・見守りに取り組んでいる。

【斉藤委員】
 東日本大震災津波のときにも、自宅を補修した人たちは支援が切れて実態がつかめず大変だった。岩泉町は、十数人の保健師と6人の支援員で、町としてはかなりやっていると思うが、先ほど紹介したように、健康実態調査はかなりシビアな状況なので、しっかりした対策を引き続き講じていただきたい。
 それから全壊・大規模半壊の補修というのは、しっかりした補修にならないと思う。このフォローをしっかり見届けるようにして、必要な支援があれば支援していくことが必要だと思うがいかがか。

【台風災害復旧・復興推進課長】
 ご指摘の通り、岩泉町は補修する世帯が大変多い実情なので、岩泉町と協力しながら、町の保健師も一緒になって、住宅再建の取り組みについて被災者に寄り添いながら相談に乗っていきたい。

【斉藤委員】
 生活橋の再建整備だが、来年度1ヶ所の本格整備が町の予算で出されていると。73ヶ所生活橋が被災し、51ヶ所は応急復旧していると。町は財源的な措置が何もないので、寄付を募って対応すると。しかし1月31日現在、5億円必要だと言われながら1241万円しか集まっていない。この点で、寄付を募ってはいるものの、現時点ではなかなか見通しがないのではないか。国への引き続く要望も含めて考えないと、生活橋というのは元の場所で生活するライフラインなので、軽トラックも動かせないという状況になっているので、その点どう考えているか。

【台風災害復旧・復興推進課長】
 73ヶ所の生活橋のうち、今年度中に1ヶ所の復旧が見込まれ、町の30年度当初予算においては、本復旧のための経費1800万円を計上していると聞いている。
 生活橋の本復旧にあたっては、本格化する河川改修の進捗に合わせて進められるということで、複数年間かけて直していくというような現状であり、県としては、岩泉町が開設した支援募金について、企業・団体への橋渡しなどの支援を行っていき、国への要望についても引き続き取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 今年度1ヶ所整備して、来年度1800万円の予算と。1800万円の予算は何ヶ所分になるか。

【台風災害復旧・復興推進課長】
 橋の形状により事業費は異なると思うが、町では10ヶ所程度の再建を考えていると聞いている。

【斉藤委員】
 岩泉町の応援職員の必要数と充足状況を示していただきたい。

【市町村課総括課長】
 今年度は、3月1日時点で必要数19に対し確保数16。来年度の見込みは、3月1日時点で必要数23に対し確保見込みは19名となっている。

【斉藤委員】
 これから本格的な工事発注の時期を迎えていると思うので若干増えているが、必要数自体が増えているので、しっかりした支援をしていただきたい。

・東日本大震災津波被災地の公共交通確保について

【斉藤委員】
 被災地の公共交通確保の取り組みはどうなっているか。

【交通課長】
 復興・まちづくりが進められる中、災害公営住宅や高台団地などの生活拠点と、新たに形成される街を結ぶインフラとして、また高齢化が進む被災地での日常生活を支えるインフラとして、被災地で公共交通の果たす役割はますます重要になるものと認識している。
 このため、三陸鉄道や広域的なバス路線など、基幹的な公共交通を県が中心となってしっかり維持・確保するとともに、市町村と連携しながら地域の公共交通についても維持・確保を図ることが必要と考えている。
 県としては、有識者による活性化支援アドバイザーの派遣、地域の公共交通会議への参画などを通じて、被災地の公共交通計画の検討を支援するとともに、国の特定被災地域公共交通調査事業や、県の公共交通活性化推進事業費補助など、デマンド交通の実証運行等を支援する制度を活用するなど、被災市町村と連携し地域の実情に応じて交通の再建構築を図っていきたい。

【斉藤委員】
 被災地は課題の先進地だと思う。新しい高台団地が造られ、災害公営住宅が点在し、中心市街地はこれからが本格的な再建となり、新しい交通ネットワークが求められている。ところが、特定被災地域公共交通調査事業というのは、あくまでも仮設団地を経由したものしか対象にならない。これは10年間は継続するということだが、10年間で仮設はなくなるので、新しい必要な公共交通に対する今まで以上の国の支援策が必要だと思うがいかがか。

【交通課長】
 全く同じ認識であり、この特定被災地域公共交通調査事業は、復興・まちづくりが進み、生活拠点が仮設住宅から高台団地や災害公営住宅などに移る中、引き続き「仮設住宅の経由のみ対象」とされているが、結局、必ずしも復興の現状に則した制度になっておらず、県としては、今年度政府予算要望においても、高台団地や災害公営住宅経由の路線を補助対象とすることなどについて要望した。
 県としては、この事業は被災地にとって大きな役割を果たしていることから、引き続き国に対して要望・提言を行っていきたい。

・三陸鉄道一貫経営の対応について

【斉藤委員】
 全国最長の第三セクター路線になるわけだが、これはチャンスであると同時にリスクも背負う。実際に今でも赤字経営で、赤字の実態を示していただきたいが、再来年度から一貫経営になるということを契機に、本格的に三陸鉄道の利用・活用を促進して、赤字から黒字へ転換すると。沿岸12市町村と県が一体となって取り組むことが必要だと思う。それぞれの市町村が自分のことだけ考えていたら、三陸鉄道の一貫経営というのは全然チャンスにならない。やはり三陸鉄道の一貫経営ということをチャンスにして、沿岸全市町村と一体的な取り組みが必要だと思うがいかがか。

【交通課長】
 一貫経営後の利用促進だが、JR山田線の宮古―釜石間の経営移管後の運営を軌道に乗せることは、沿線市町村等とともに、一貫運行のメリットを生かしながら、利用促進にしっかり取り組む必要があると考えている。
 県および市町村等で構成する「岩手県三陸鉄道強化促進協議会」があり、こちらを中心に利用促進の強化を図っていきたいと考えている。
具体的には、12の利用促進ということで、時刻改正を含めた通学・通院の生活路線としての利便性を向上させる取り組み。あるいは子ども向けに三陸鉄道に乗る教室の開催といった地元住民のマイレール意識の醸成を図る取り組み。観光利用の需要喚起ということで、全国一長い第三セクター鉄道となるメリットを生かした企画切符。ジオパークなどの地域資源や各種イベントなどを組み合わせた企画列車・ツアーといったことに三陸鉄道と連携しながら、促進協議会を中心に検討し、取り組んでいきたい。
 三陸鉄道の今年度の収支決算見通しだが、取締役会で示されたものによると、5186万円の赤字ということで、昨年度も5000万円程度の赤字だったので、そういった厳しい状況である。

【斉藤委員】
 私が提起したのは、三陸鉄道の利用促進協議会というのは当然で、そうではなく、沿岸12市町村が目の色変えて、マイレールとして、一貫経営を機会にしてどう利用促進を進めるかということである。
 例えば、官公庁の関係の人たちは基本的には三陸鉄道を使うぐらいの取り組みをしなければいけない。人口減少は進むのだから。そういうことが軸になって知恵も出てくる。
 ぜひそれを踏まえて、しっかり県と市町村が責任を持って自分たちの鉄道を守ると。観光も交流人口もいろんな意味で発展させるという位置づけをしないと、何とか維持するという発想では衰退するだけである。

・三陸復興博について

【斉藤委員】
 さまざま議論があったが、設立総会と準備委員会の議事録を読ませていただいた。この設立総会と第1回のみの準備委員会でも意見がいろいろ出ている。田野畑村長からは「名称はどうなのか。時期はどうなのか」と。大槌町長からは、財源の問題や人手不足の問題も出されていた。
 やはりこれだけのことをやるんだったら、しっかり市町村と意思疎通をして進めることが必要である。準備委員会の前に意見交換をしてやったと思うが、結果的にはこういう意見が出るのだから、まだ心一つにという感じではない。
 今度の第2回実行委員会で基本計画を立てるというが、そこに向けて本気になって心一つになってできるかどうか。岩崎委員からは、今まで33市町村で頑張ってきてなぜ沿岸12市町村なのかという提起もあり、それを県は受け止めようとしているので。そういう点で、これだけ県議会で議論になったというのは、それなりのことがあるわけなので、きちんと23日の第2回実行委員会に向けて、心一つになるような状況をつくっていただきたい。

【地域振興監】
 三陸地域における広域的・総合的な防災復興行事の実施に向けては、昨年11月に設立した準備委員会で決定した基本構想に基づき、具体的な企画案について、沿岸市町村をはじめとした準備委員会の意見をうかがいながら具体の企画内容の検討を進めている。
 沿岸市町村長に対しては、具体の企画内容というところで、会期案や名称案ということも示しながらご意見をいただいている。
またオール岩手の体制というところで、内陸市町村とも担当者レベルで会議を開催し、内陸から沿岸との連携の促進といったところの協力もお願いし、オール岩手の体制の推進ということで協力をお願いしている。
 現在、基本計画案について調整を進めているところなので、現在も意見を聴取しているところなので、丁寧にうかがいながら準備を進めていきたい。

【斉藤委員】
 2019年というのは、4月に三陸鉄道の一貫経営で、4月5月はある意味全国からも注目される。しかし6月7月と参議院選挙がある。4月は新しい天皇が即位する。9月はラグビーワールドカップがある。だから、時期的にもなかなか複雑というのも事実である。そこを一律にしないで、時期の問題も含めてよく沿岸市町村の意見も聞いて、心してやらないと大変なことになると思うので、しっかりやっていただきたい。

【政策地域部長】
 ご指摘の通り、(仮称)復興博については、特に東日本大震災津波で大きな被害を受けた沿岸市町村の方々にとって良い行事になるように、真摯に意見をうかがいながらしっかり取り組んでいきたい。

・若者の定住対策について

【斉藤委員】
 復興支援員、地域起こし協力隊の現状と県内定住の状況はどうなっているか。
 若者の定住にとって、若者定住住宅というのが大変大事なポイントになってくる。これは新規学卒者の県内就職にとっても大事なので、整備状況、取り組みはどうなっているか。

【地域振興監】
 28年度の実績で、復興支援員は県で34名、8市町村で142名の計176名が活動した。うち県が委嘱した復興支援員については、現在まで退職者29名のうち21名が県内に定住している。地域起こし協力隊については、18市町村で80名が活動したところだが、28年度までに退任した18名のうち、全国平均と同程度となる約6割の11名が県内に定住したところである。県では、復興支援員や地域起こし協力隊を対象に、任期後の定着も視野に入れながら、活動のスキルアップや隊員のネットワークづくりのための研修会の開催、企業の支援制度や各種セミナーなどの情報提供などを行っているところであり、引き続き市町村や関係団体と連携し、本県の定住につながるよう取り組んでいきたい。
 若者定住住宅の整備状況については、やはり若者の移住・定住の促進にあたっては、仕事の確保とともに住居の確保が重要であり、県内市町村においては、釜石市や雫石町といったところが雇用促進住宅を取得し、新婚世帯やU・Iターン者などを対象とした定住促進住宅として活用している例があり、また葛巻町や一戸町が、若者や子育て世帯向けの定住促進住宅を整備している例があり、少しずつ市町村でも定住促進住宅を整備する例が広がっている。
 そのほか、空き家バンク制度を活用した取り組みも広がっているところであり、県としては市町村にたいし、このような住宅施策を含めた県内外の移住政策の情報提供を行うとともに、今年度からは県外からの移住者が行う空き家バンク登録物件の改修支援を行う際に市町村が補助する際に、市町村に対する補助を行っているところであり、市町村との連携を強化しながら若者の定着に向けて取り組んでいきたい。