2018年3月9日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)


・被災者支援と心のケアの取り組みについて

【斉藤委員】
 被災者見守り支援事業費が950万円で新規に来年度計上されている。中長期的な見守り等の支援体制の充実を図るためとしているが、この事業の趣旨と内容について示していただきたい。

【地域福祉課総括課長】
 阪神淡路大震災の災害公営住宅などにおいては、発災後23年が経過した現在においても、高齢被災者の孤立防止などのため、見守りやコミュニティづくりなどの支援を継続している状況にある。
 東日本大震災津波の被災地を見ても、やはり同様の見守りが必要な状況にあるので、被災者の中長期的な見守りの体制の充実が必要と認識している。
 災害公営住宅や仮設住宅などにおいて、被災者が孤立を深めることのないよう、生活支援相談員などによる個別支援はこれまでも当然やってきたことだが、これに加え、同じ地域で暮らす方々が互いに支え合う仕組みづくりを促進するため、平成30年度においては、中長期的な見守りなど支援体制の充実に向けた課題や取り組みの方向性について、有識者を交えての検討、市町村との意見交換の開催を行うとともに、災害公営住宅のある地域の住民など広く対象とし、ワークショップの開催だとか食事を囲んで会話・相談し合うようなコミュニティ食堂を実施することで居場所づくりを行うこととしている。
 今後も被災者が安心して暮らすことができるよう、被災者に寄り添ったきめ細かな支援を行い、新しい福祉コミュニティの形成支援に努めていく。

【斉藤委員】
 これはきわめて重要な取り組みだと思うので、頑張ってやっていただきたい。
 子どもの心のケア、被災者の心のケアの事業費も拡充されているが、今年度の実績・特徴、来年度の拡充の中身、新規事業の子どもの心の診療ネットワーク事業費の内容について示していただきたい。

【子ども子育て支援課総括課長】
 県が矢巾町に設置している「いわて子どもケアセンター」においては、東日本大震災津波による心的外傷後ストレス障害など、心の不調を訴える児童に対して、児童精神科による専門的な治療を行うとともに、教諭や保育士等を対象とした研修会や症例検討会等を開催し、支援者の専門性の向上や関係機関との連携強化に取り組んでいる。
 いわて子どもケアセンターの受診件数は年々増加しており、2月末現在で7021件(速報値)となっており、昨年度の6379件を上回っている。
 これに伴い、受診待機期間が長期化しており、この改善に向けて来年度においては、子どもの心の診療ネットワーク事業を行い、心の相談に対応できる関係機関等の養成に取り組むとともに、医療や保健・福祉・教育等関係機関のネットワークの構築を図ることとしている。
 具体的には、相談内容に応じて、適切な診療、相談機関につなげることにより、いわて子どもケアセンターに受診希望が集中している状況の改善を図り、被災による治療・相談を必要としている児童のケアを早期に行える環境の整備に向けて取り組んでいきたい。
 このため、いわて子どもケアセンターや地域の保健・医療・福祉・教育等の関係機関が連携できるようなネットワークの構築を目指し、心の相談に対応できる関係機関の養成や、相談窓口における関係機関からの相談対応と、相談内容に応じた適切な関係機関の紹介、さらには関係機関が対応しているケースへの支援などに取り組むこととしている。
【障がい保健福祉課総括課長】
 被災地こころのケア対策事業の拡充について。県が設置している心のケアセンターの相談件数は、12月末現在で6547件となっており、昨年同期比で600件ほど減少している。このように近年やや減少傾向にあるが、依然として年間で1万件近い件数となっており、中長期的な取り組みが必要と認識している。
 ハード面の整備が進む中、生活環境の変化やトラウマ関連障害など、時間の経過に従って被災者の抱える問題が複雑化・多様化するとともに、これまで気づかれなかったストレスが表面化する状況なども見られるところである。
 このため県では、住民が自らの心の不調にできるだけ早い段階で気づき、専門機関等に相談することにより、将来的なハイリスク者を縮小させる予防の取り組みが重要と考えている。
 平成30年度においては、市町村等とも連携し、検知器を活用した住民向け講座の開催や、啓発用リーフレットの配布など、心の健康に関する地域住民の意識啓発の活動などの充実を図ることとしており、こうした機器の整備やリーフレットの制作などに要する経費を予算案に盛り込んだところであり、こういった活動の充実を図り早期の支援に結びつけ、心のケアセンターにおける専門スタッフの確保や、スキルアップにより支援の質を高めて被災者の心をしっかりケアしていく。

【斉藤委員】
 子どもも大人も心のケアはいよいよ大変重要になっている。内容を聞いたが、就学前の子どもが倍増しており、小学生も増えている。小さい子どもの受診件数が増えているのが特徴だと思う。
 急増している中身の特徴と合わせて、今度は新規事業で、拠点病院を中心にして医療機関・関係機関のネットワークを構築すると。これは大変良いことだが、岩手での取り組みの意義、今後の取り組みの方向性についてお聞きしたい。

【医務担当技監】
 子どもにも大人にも同じことが言えると思う。まず、岩手のやり方は、県が岩手医大に委託という形で行っている。これは宮城・福島は、既存の組織でやっているのでやり方が違う。それから、全国から精神科の先生方から応援をいただき、岩手医大でもずい分苦労しながら頑張っている。そして、件数が減らずに高止まりと。小さい子どもの相談件数はどんどん増え、これに何とかしようということでの新規事業である。
 相談体制だけではなく、それを治療にタイムリーに結びつけるためにはネットワークが必要なわけで、それは医療機関・行政を含めてのネットワークで、これもまた人数に応えたやり方だろうと思っている。
 このようなやり方は32年度までは国庫事業やれるが、ただ年々予算が少しずつ少なくなっているのが心配であり、宮城・福島だけの数字だけをもって「必要がない」というしぼませ方ではなく、岩手のやり方でこのような需要があり「ますます必要」ということをアピールしていき、まだまだ続く事業だと考えている。

・子どもの貧困問題について

【斉藤委員】
 「5歳未満での貧困の経験は、その後の子どもの発達に大きな影響を与える」と専門家が指摘している。そこで、乳幼児からの貧困対策について、乳幼児検診の結果と対応、未受診の状況と対応はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 市町村においては、乳幼児全戸訪問事業だとか1歳6ヶ月児検診、3歳児検診等により、全ての子どもの心身の発達状況を確認している。
27年度における状況は、1歳6ヶ月児検診では受診率が95.7%、3歳児検診では受診率が94.6%となっている。未受診者に対しては、文書や電話のほか、必要に応じて保健師が戸別訪問を行うなどにより、受診に努めている。
検診の結果、身体面や精神面で問題があった場合には、精密検査や医療受診等へつなげているほか、育児生活環境で要観察となった児童については、戸別訪問や保育施設等と連携するなどにより、養育環境の把握に努めていると聞いている。
 このうち、子どもの養育を支援することが特に必要と認められる家庭については、市町村要保護児童対策地域協議会において情報共有することにより、関係機関が連携して支援する仕組みとなっている。
 県としては、児童相談所の職員等が市町村要保護児童対策地域協議会に参画しているところであり、この協議会での助言などを通じて市町村を支援していきたい。

【斉藤委員】
 1歳6ヶ月児検診の受診率は95.7%だが未受診の実数は389人、3歳児検診の未受診の実数は501人となっている。パーセンテージで見ると少ないように見えるが、実数にすると決して少なくない。これはその後きちんとフォローされているのか。
 受診の結果、「異常なし」というのが1歳6ヶ月児検診で70%、30%が「異常あり」ということになる。3歳児検診は「異常なし」が62.6%。実数でいくと、1歳6ヶ月児検診で2576人、3歳児検診では3295人が「異常あり」と、かなりの数になっている。例えば、要観察の乳児を見ると、「育児・生活環境問題あり」が313人、3歳児検診ではこれが330人になる。
 この検診の結果を、子どもの貧困問題打開の突破口、出発点に位置づけて取り組む必要があると思うが、対応はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 1歳6ヶ月児検診・3歳児検診は市町村が行っているが、市町村からうかがっているところでは、そうした医療面で要観察となった子どもについては、要医療・要精密等の受診に努めているとうかがっており、育児生活環境で要観察となった子どもについても、そういった福祉関係部門などにつなぎながら対応していると聞いている。

【斉藤委員】
 一般質問でも取り上げたが、「幸福」をキーワードとするんだったら、子どもの貧困問題の打開は県政の重要緊急課題である。これは全国的課題でもあるが。検診は検診にせずに、子どもの貧困打開という大きな枠の中で位置づけていくと。専門家は、就学前の対応が重要だと、この時期にどれだけチェックできて対応できるかが貧困問題を食い止めるカギがあると思う。
 保育園での対応についてだが、貧困がうかがわれる園児の対応はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 計画に基づき、保護者の生活支援として、例えば一人親家庭の子どもの保育等を確保するために、市町村においては、保育所に優先的に入所できるようにし、利用が促進されるように取り組んでいる。また、保育所においては、厚労省が定めている「保育所保育指針」において、子どもの健康状態や発育の状態を把握するとともに、子どもの心身の状態を観察し、不適切な養育の兆候が見られる場合には、市町村や関係機関と連携し、適切な対応を図ることとされており、この指針に基づき、子どもの状況の把握や支援がなされているものと承知している。
 県では、引き続き計画に基づく取り組みを進めるとともに、子どもの養育を支援することが特に必要と認められる保護者に対して、養育に関する相談・指導・助言等が行われるよう市町村等の取り組みを支援していきたい。

【斉藤委員】
 小中高には、スクールソーシャルワーカーが配置されているが、スクールソーシャルワーカーの配置が保育園にも必要だと思う。保育園も含めて、就学前の貧困対策をしっかりテーマに位置づけてやっていただきたい。
 もう1つお聞きしたいのは、50%以上が相対的貧困状態にあると言われる、ひとり親家庭の対策だが、実態をどう把握して具体的な対応策はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 県では、5年ごとに実施している母子世帯等実態調査により、ひとり親世帯の就労状況や住居の状況に加え、子どもの就学状況や未就学児の保育の状況などの、ひとり親世帯の子どもの状況等の把握に努めている。
 直近の調査は平成25年度だが、ひとり親家庭等においては、各種福祉制度の認知度や利用度が低い状況にあり、効果的な情報発信が求められていること。あるいは母子世帯の就労状況について、37%が臨時・パート等の非正規雇用であること。さらに母子世帯の就労収入について、月額15万円未満の世帯が66%となっていること―こうした課題が浮き彫りとなった。
 県では、岩手県ひとり親家庭等自立促進計画に基づき、弁護士による法律相談のほか、平成27年度からは、母子父子自立支援員等広域振興局の職員が各市町村に出向き、出張個別相談会を実施するなど、相談機能の充実に努めているとともに、ひとり親家庭等就業自立支援センターに配置した就業相談員による就業相談や、就業講習会の実施による支援の充実、さらには児童扶養手当の支給や母子福祉資金の貸付、ひとり親家庭医療費助成に加え、平成26年には父子福祉資金を創設するなど、経済的支援の充実などに取り組んできた。
 この調査は来年度が実施年度となるので、その経費について当初予算案に盛り込んでいるところであり、調査結果も踏まえながら今後必要で具体的な支援策の拡充等についても検討していきたい。

【斉藤委員】
 ひとり親家庭の実態については、去年盛岡市が詳細な調査を行い、かなり具体的でリアルな実態が明らかになった。その実態からすると、岩手県のひとり親家庭自立促進計画というのは、まったく噛み合っていないと思う。
1つは、県の調査でも9割は働いている、盛岡市は91%働いているが、働いても15万円以下の収入である。どうやって自立させるのか。就労支援といっても、働いても15万円以下にとどまっている。働き方は、夜勤勤務が57.6%、早朝勤務が27.9%、土日勤務が76.8%と。いつ子どもの面倒をみるのか。子どもの面倒がみれない状態で働いている。働いている人たちの自立をどう支援するのか。もう1つは、こうした働き方の実態の中で、子どもは3分の1が1人で過ごしている。この問題をどう解決するのか、これは新たな調査を待たなくても、はっきりとした事実なので、そういう点で今困っているひとり親家庭、その子どもたちを支援する対策が必要ではないか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 ご指摘あった通り、母子世帯等の就労収入が月額15万円未満が多数となっている。こういったことについては、早急に取り組みを進めなければならないということで、特に収入が低い臨時・パート等の非正規雇用という面もあるので、例えば、そういった方が資格を得て正規職員になるということも必要ということで、高等職業訓練促進給付金ということで、看護師や保育士等の資格取得、あるいは准看護師の方が看護師への資格取得といった形で支援しており、こういった養成機関で学ぶ場合には、所得に応じて毎月給付金を支給し、そういった資格を取得し勤務することができて、それが収入増につながるような取り組みを行っており、そういったものに引き続き取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 実態を見ていただきたい。高等職業訓練促進給付金は平成28年度は3人、29年度もたった3人だけである。機能していない。使われていない。そういう意味であなた方の事業が噛み合っていないと。使えるようにするためにはどうすればいいのか、しっかり検証して必要なことにただちに取り組んでいただきたい。
 部長にお聞きするが、子どもの貧困問題というのは、全庁的な取り組み・体制が必要だと。独自の子どもの貧困問題に取り組む部署が必要だし、全庁的な体制と県民運動が必要だと一般質問で知事にも提言した。この点について部長はどう考えているか。

【保健福祉部長】
 ご提言あった通り、まさに幼児期から保育期、子育て期にかけて切れ目のない支援を行える体制づくりを目指していくということである。
 庁内の推進体制や組織などについては、来年度に子どもの生活実態調査を行うが、中間的な取りまとめや結果を参考にしながら、推進体制・組織等について検討していきたい。

【斉藤委員】
 次期総合計画の中に子どもの貧困問題をしっかり位置づけて、そういう体制も県民運動も提起されることが必要である。

・待機児童問題について


【斉藤委員】
 10月1日現在で待機児童681人、隠れ待機児童628人、計1309人の子どもが入りたい保育所に入れなかった。本当に深刻である。そのために働きたくても働けない。この現状をどう見ているか。いつまでに県は待機児童を解消するつもりなのか。4月1日時点ではなく年間を通じて。

【子ども子育て支援課総括課長】
 現在市町村では、子ども子育て支援事業計画に定める保育定員等の見直しを行っているところであり、その見直し結果によると、30年4月1日ではなかなか解消は厳しいが、現時点で平成31年度においては保育の利用ニーズを上回る利用定員が確保される計画となる見込みである。
 計画の見直しにともない、各市町村で今後取り組みを加速すると聞いており、そういった形の取り組みがなされることを県としても支援していきたい。

【斉藤委員】
 盛岡市の実態をお聞きしたが、161人が待機児童で、うち0歳児が77人、1歳児が74人と、圧倒的に0歳・1歳児である。隠れ待機児童は293人で、これも0歳児132人、1歳児82人である。0歳・1歳児というのは、保育士の配置基準が高く、保育士を配置しないとできない。
 盛岡市はこれだけ待機児童があるが、28年・29年にかけて314人の定員を増やした。内訳を聞くと、認可保育園はたった20人で、認定こども園は141人、小規模保育が153人と。一番大事な認可保育園の増設が進まないところに一番の問題があると思う。小規模保育園は3歳で退園となり、また保育園を探さなければならない。結局3年後にそういう事態になってしまう。
 そういう意味で、実態もしっかりつかんで、認可保育園の大幅増設を軸に、保育士の待遇改善も進めるべきだと思うがいかがか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 待機児童を解消するためには、各市町村においてそれぞれの地域の実情や利用者の希望等に応じて、幅広い選択肢の中で対応していくことが重要と認識している。そういった関係で、認定こども園の整備や小規模保育、保育所の整備など、地域の実情に応じて取り組みを進めていると考えており、そういった市町村の取り組みを支援していきたい。
 保育士の確保については、県が設置している保育所・保育士支援センターによる潜在保育士の掘り起こしやマッチングといったものをさらに強化していくということと、それから、新たに地域の保育士の確保に向けては、保育士修学資金の貸付事業を今年度から創設したこと、来年度からは沿岸希望枠を設けてさらに養成数を増やしていくという形で考えており、こうした取り組みを来年度以降も進めていきたい。