2018年3月14日 予算特別委員会
農林水産部(水産関係)に対するの質疑(大要)


・主要魚種の大不漁への対策について

【斉藤委員】
 サケ・サンマは震災前と比べて水揚げ量が27%、スルメイカは19%と。この大不漁は災害並みの被害というか影響を与えているのではないか。大不漁の原因究明、科学的調査の状況、内容と課題について示していただきたい。

【水産担当技監】
 サケについては、ふ化場での飼育環境や放流後の沿岸における生育環境が不漁に与える影響を調査するために、ふ化場においては飼育密度などの調査、沿岸においては稚魚の分布調査により、生存率の把握に努めている。また新たな課題として、北洋等で減少している要因も考えられるのではないかと思っており、これについては調査の拡大を国に要望している。
 サンマ・スルメイカについては、この両魚種は広域で回遊する魚種なので、国が中心となって資源管理の動向把握や不漁原因の究明に取り組んでいる。
 県としては、岩手県沖合の漁海況の調査や漁獲物の測定などにより、国の取り組みに協力しているところであり、引き続きこのような協力をしていきたい。

【斉藤委員】
 たびたび紹介されている岩手日報の「サケの乱」の連載は、かなり力の入った連載ではないかと思う。多岐の課題も提起されているので、連載に対する県の認識をお聞きしたいが、4億匹のふ化放流の規模が妥当なのかという議論がされている。記事の中では、「県の水産技術センターが試算し、各ふ化場に示した最適飼育収容数は、県内合計3億4793万匹」と報道されているが、これは事実なのか。放流数4億匹を維持する問題をどのように受け止めているか。
 海産親魚の問題で、これは今4分の1を占める。伊藤委員が大槌湾での動向の調査を紹介したが、80匹前後を放流して14年から調査していると。一直線に川に遡上するのが20%、半数以上がすぐに湾外に移動していると。この問題も含めて、海産親魚の問題というのは、なかなか複雑な課題を抱えているのではないか。

【水産担当技監】
 4億尾の放流の妥当性だが、古い話をすると、サケの増殖を開始したとき、昭和の時代に県として計画を作った。それを増やすためには、当時の回帰率から逆算すると4億尾の放流が必要だということで、そのために国の補助事業等を使い、ふ化場を整備して、それが今のふ化場になっている。
 被災してだいぶ放流数は減ったが、現段階の20のふ化場での放流尾数は4億200万尾であり、これは過密に飼ったものではなく、適正に飼った中での4億200万尾を放せるということになっているので、震災後4億尾を放したのはまだ1年しかないので、まずは資源の回復を調査したいと思っている。水産技術センターが出した最適だとする3億4093万尾というのは、実は条件があり、ふ化場の利用を一度だけにした場合はこのぐらいということになる。ただ、9月10月に栽培したものは、2月ぐらいには放流できるものがある。そうすると、空いた池をもう一度1月ぐらいに栽培したものが使えるということで、一般的には、特に水温が高いところは成長が早いもので、回転をして種苗生産をするということになる。この岩手日報の3億4093万尾は、1回転だけを条件として試算した数量である。
 海産親魚の使用については、実は平成5年前後に、川で採卵し、そして稚魚にし放流したものと。海産親魚で稚魚にして放流したものと。これがどのぐらいの割合で帰ってくるかという調査をしている。調査結果は、ほぼ同等、厳密にいうと、海産親魚の方が実は高いデータが出ているので、海産親魚に使ってその川で放したというサケでもその川に戻ってくるというデータがある。

【斉藤委員】
 来年度に向けて、海水温に強い北上川のサケの稚魚の放流ということがあったが、この具体的な中身を示していただきたいが、7万トンを達成するときに、北海道の(  )を導入した。一時期は大きな効果をあげたが、その後やめた。遺伝子その他のいろんな問題があったと思うが、北上川となると、あそこは本格的な放流もしないからそれなりの強い稚魚が残っているのではないかと思うが、遺伝子も含めたそういう問題はクリアできるのか。どういう中身でやろうとしているのか。

【水産担当技監】
 まずもって北上川のサケは、盛岡の中津川に9月ごろに上ってくるが、河口が石巻なので8月ぐらいには上っているのではないかと思うが、高い海水のときでも上がってくるということに着目し、高水温に強いサケの稚魚を何とか作れないかということで、来年度の稚魚に新しい予算として計上した。
 1つは、高温耐性を要する遺伝子が北上川のサケにあるだろうと、そうすると、沿岸に上がってきたサケも、同じ遺伝子を持っているものがあるのではないかと。そういうのが特定できれば沿岸のサケについても高温耐性を持っているような遺伝子のサケを使って種苗を作っていくということなどを来年度から検討していきたいと思っており、当然遺伝的な耐用性についても配慮していかなければならないと思うので、そこは十分考慮しながら研究を進めていきたい。

【斉藤委員】
 秋サケ・サンマ・スルメイカの資源の確保と資源管理の課題について、今後どのように取り組まれるのか。

【水産担当技監】
 サケの資源については、対策としては引き続き計画している4億尾水準の放流を確保していくとともに、高水温の新たな種苗生産技術等の開発、あるいは北洋海域での減少要因を把握するため、調査の拡充を国に要望している。
 サンマ・スルメイカについては、他国の漁獲が影響を与えるとの懸念もあるところであるが、県としては、引き続き国の資源調査に協力し、資源状況の把握に努め、県や漁業関係団体で構成する資源管理協議会というのがあるが、この中で資源管理の徹底を指導していきたい。

・ワカメ・コンブ・カキ、ホタテ、ウニ等の現状について

【斉藤委員】
 ワカメは震災前と比べ生産量が71%、コンブは52%、ホタテは41%、カキは56%と。これもまた岩手の一番強い分野でまだまだ生産量が回復できていない。この原因と対策について示していただきたい。

【水産担当技監】
 ワカメ等の養殖については、震災により養殖施設数が減少したことと考えている。
 ウニについては、エサとなる海藻の生育が悪く、ウニの実入りが少なかったことなどが挙げられる。
 対策については、養殖生産量の回復に向けては、意欲ある漁業者の生産規模拡大や、漁協稚魚養殖の推進、省力化機器の導入等に取り組んでいき、ウニについては、自漁が多い漁協への移植放流や積極的な漁獲を推進し、養殖生産の拡大やウニの資源回復に努めていく。

・水産加工業の現状と課題、緊急対策について

【斉藤委員】
 「不漁が続けば廃業の危機」ということで、3月9日付の河北新報で、「2月19日に大船渡市の魚市場や水産加工団体・小売り団体の幹部が緊急招集されて、谷合正明農林水産副大臣に直訴した」と。この内容を把握されているか。
 これだけの大不漁、復興途上で第二の災害とも言うべき深刻な状況になっているのではないかと思うが、原材料価格の高騰の実態、水産加工業者に対する影響をどう把握されているか。売上高はどうなっているか。

【水産担当技監】
 新聞報道については把握している。
 大不漁と原材料価格の高騰の実態についてだが、まず県内産地魚市場における主要魚種の単価は、平成29年の実績で、秋サケが1キロあたり933円と震災前の2.6倍、サンマが1キロあたり244円と3.6倍、スルメイカは1キロあたり519円と2.9倍となっている。県の調査では、29年8月現在において、被災した水産加工業者の72%が、主な課題として「原材料価格の高騰や調達困難」を挙げており、主要魚種を加工原料とする水産加工業者は地元魚市場以外からの原材料確保を余儀なくされている。
 水産加工業の生産量と売上高については、国の調査では、平成27年の実績では、生産量は99000トンと震災前の83%、生産額は726億円と震災前の101%となっている。

【斉藤委員】
 27年の数字で、その後大不漁に陥っているので。水産庁が11月から1月末までに行った緊急調査では、「売り上げが8割以上回復した」業者は岩手県で43%、業者数は少ないが。57%が8割以下になっている。
 原材料を確保するための具体的な支援策、そして魚種転換に対する技術的な支援と具体的な補助、さらに丸7年を経過してこれまでのいろんな支援策が切れている。固定資産税の減免も5年、二重ローンも5年を過ぎると順調なところは返してほしいと。「海に溺れて岸に着く前に支援策が切れてしまう」と水産加工業者の率直な訴えである。そういう形で、総合的な災害に匹敵するような緊急対策が必要ではないか。

【水産担当技監】
 原材料確保の対策だが、県では、水揚げ状況などの情報提供や、サケ・サンマ・スルメイカ以外の原材料に転換を検討する事業者への助言、地元に水揚げされる魚種を対象に新商品を開発する場合の国の補助制度の活用などを支援しており、加えて、市町村や漁協等の魚市場関係者と連携し、漁獲は好調なサバ・イワシの巻き網漁船の地元魚市場へ誘致することなどで、代替原料の安定的な確保を図っている。
 魚種転換した状況等だが、例えば、マダラについては、宮古市が全国で水揚げが一番だということを言っており、地域をあげてブランド化を図っている。その一貫として、新商品を開発し、今年度県が主催する「復興シーフードショーIWATE」で最高賞を受賞されたということで、地域の魚種を活用していくということも非常に重要なことではないかと考えているので、こういうところを推進しつつ、あるいは技術的なものであれば、専門知識を有するアドバイザーの派遣、あるいは漁獲から流通・加工までの一貫した高度衛生品質管理地域づくりなどを進め、加工業者の支援をしていきたい。
 緊急的な措置が必要ではないかということだが、水産庁の補助事業で、水産加工等販路回復取組支援事業というのがあり、この事業は、新たな魚種等を使い商品を作る場合に、機器が必要であればそれに対する補助もあり、ソフト的な経費に対しても補助が出る。この補助は今後30年度以降も続いていくので、本県の加工業者も昨年度13者活用するなど、有効な事業があるので、この事業をフルに活用しながら進めていきたい。

【斉藤委員】
 水産加工業者は、まさに復興の途上で大不漁に直面し、本当に存亡の危機という状況だと思うので、よく実態を把握して必要な対策を講じていただきたい。

・小型漁船漁業の実態と裁判の見通しについて

【斉藤委員】
 小型漁船漁業の実態と刺し網を求める裁判の見通しについて示していただきたい。

【漁業調整課長】
 小型漁船漁業者数は、漁業センサスによると、無動力船および20トン未満の動力船の経営体で、震災前の平成20年の2519経営体にたいし、平成25年は2125経営体(84%)となっている。
 経営状況については、本県単独の統計データはないが、国による本県を含めた被災地域の漁船漁業経営体の経営状況調査では、震災前の平成22年の漁業所得水準を100とした場合、平成27年は84と公表されている。
 サケの刺し網を求める裁判の関係だが、昨年12月に第10回目の口頭弁論があり、それをもって結審となっている。それを受け今月23日に判決となっている。