2018年3月15日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・災害公営住宅の整備とコミュニティの確保について
【斉藤委員】
整備状況について、今年度末、30年度末、31年度末にどれだけの整備率になるか。
入居状況、率、空き室の状況、今後の入居の見通しはどうなっているか。
【住宅課長】
内陸部を含む整備予定戸数5871戸にたいし、今年度末で5284戸・90.0%、30年度末で5685戸・96.8%、31年度末で全戸完成する予定となっている。
2月末現在で、供用開始されている5130戸にたいし、入居戸数・率は4696戸・91.5%だが、すでに退居された住戸が279戸あり、延べの入居戸数4975戸となっている。
入居の見通しだが、今年度すべての市町村で仮設住宅の特定延長の切り替えが行われ、仮設住宅の入居期限が示されたことから、今後災害公営住宅への入居が進むものと考えている。ただ一方で、退居される方も相当数生じてきているので、今後市町村と調整しながら、新規の入居予定者の見込み数を確定させるとともに、その上で生じる空き住戸等については、一般公営住宅化への検討も進めていく。
【斉藤委員】
12月末現在、仮設住宅暮らしの方々の住宅意向調査では、926世帯が災害公営住宅に入居予定だと。この数はあまり変わらないと思う。
現在434戸が空き室で、これから整備されるのが587戸で計1021戸、だいたいカバーされると。ただ心配なのが、これまでに279戸が退居していると。この退居の理由が分かれば示していただきたい。
【住宅課長】
退居については、届出をすることになっているが、届出の際の聞き取りでは、一人暮らしの高齢者が施設に入ることになったということや子どもと暮らすことになったという例、また仕事の都合で転勤等の事情で退居される例などがあると聞いている。
【斉藤委員】
災害公営住宅の入居者がこれからどんどん増加すると思うが、新しい問題は、特に高齢者、一人暮らしの方々の孤立化・孤独化である。
高齢者、一人暮らしの状況と、見守り・コミュニティ確立の取り組みはどうなっているか。
県内最大の災害公営住宅である陸前高田市の栃ヶ沢団地、これから盛岡に整備される南青山災害公営住宅には、ぜひ陸前高田市が独自に整備している「市民交流プラザ」や生活支援員などを配置し、入居者の見守りやコミュニティ確立の取り組みを進めるべきではないか。
【住宅課長】
県営の災害公営住宅における高齢者については、12月末現在で、1260戸・2241名のうち、65歳以上の方が864名・38.6%おり、うち379名の方が単身で入居されている。
高齢者の見守りについては、県営住宅の指定管理者の実施事業として、75歳以上の一人暮らしおよび80歳以上のみの世帯を対象に、訪問巡回等を実施しており、災害公営住宅においては12月末時点で、延べ511回の訪問を行っている。また、コミュニティの形成が不可欠と考えており、団地自治会の設立を支援しており、今年度は12月末時点で、3団地で6回の交流会・相談会を開催したほか、自治会の設立準備委員会に延べ37回コミュニティ形成支援員を派遣している。
生活支援員の配置については、現在、災害公営住宅に整備した集会所、事務室への生活支援員の配置を市町村にお願いしているところだが、残念ながら実現には至っていない。ご指摘のあった県内最大の災害公営住宅である陸前高田市の栃ヶ沢団地については、私自身が陸前高田市を訪問し対応を直接お願いすることとしている。盛岡の南青山災害公営住宅については、建設に際して入居予定者との意見交換会との場において、支援団体の方といろいろ調整させていただいている。建設自体はこれからだが、そういった方々の手助けもいただきながら、入居される方にとってより良い暮らしができる形の取り組みをしていきたい。
【斉藤委員】
いろいろ努力されていることは理解するが、事態は本当に切実なので、県社協の生活支援員などとの連携も含めて、市町村とも連携して取り組みを強めていただきたい。
災害公営住宅の入居要件について、今日の新聞報道で、「84歳の母親を看るために一年前に東京の仕事を辞めて帰郷した。しかし母親に何かあったらここを出て行かなければならない。大変不安だ。転居先を探すのは難しくて町に残れないかもしれない」と。せっかく母親を見守るために帰ってきても、災害公営住宅は配偶者しか入居の継承ができないとなっているので、岩手県弁護士会も意見書をあげているが、災害公営住宅なのだから、一般公営住宅とまったく同じ条件ではなく、その地域で復興のために頑張っている方々が地域で生活できるような、柔軟な対応が必要ではないか。
【住宅課長】
新聞報道は私も拝見したが、同居人の退居についての考え方だが、災害公営住宅に関しては、東日本大震災津波にかかる被災者の住宅再建を目的に建設された建物になっているので、基本的に被災者ではない方が入居名義人になることはできないという縛りがかかっている。名義人ではなく同居の方にはこの制限が適用されないので、被災者ではない方も同居することは可能だが、仮に名義人の方が亡くなった場合、新たに同居されている方を入居名義人にする必要が生じるため、原則としてその時点で入居資格を喪失することとなる。入居名義人が亡くなった場合または何らかの事情で退居された場合、同居者による入居の承継は、例外として夫婦間の承継は認めているが、親子間の承継は一般の公営住宅でも認めていない。入居承継にかかる承認、これは承認行為になるわけだが、「長年にわたり同じ親族が居住し続け、入居者・非入居者の公平性を著しく損なうことが生じないよう」という国交省通知に基づいて運用を行っているのが現状である。
とはいえ、被災地における人口減少は大きな課題だということは重々認識している。それにともない、災害公営住宅の入居の承継についても大きな課題になってくるとも認識している。先ほども答弁したが、来年度以降、空き住戸の一般公営住宅化への検討が必要と考えており、このことにより被災者ではない方の入居の問題は解決することとなるので、そういったことも含め、質問のあった入居の承継については、市町村等の意見を聞きながら運用を検討していきたい。
【斉藤委員】
被災地の現状に合った入居要件があっていいと思うので。収入超過者も入居できるようになったわけで、今回収入超過者の家賃軽減も岩手県は独自に実施した。なぜ実施したかと言えば、被災地に民間アパートがないからである。かなり含みのある答弁だったので、ぜひ前向きに検討していただきたい。
一般質問でも取り上げたが、収入超過者の家賃軽減については一部評価するが、田野畑村や野田村は「家賃を上げない」という措置をとった。こういう選択もできたのだと思う。収入の率に応じた家賃になっているので、それを超過させる必要はないという選択肢もあったのではないか。
国の特別家賃軽減世帯は1月末現在、4492世帯のうち3473世帯・77.3%と。この方々は、県や市町村の減免で基本的に対応できると県は答弁してきたので、しっかり徹底していただきたい。新聞報道を見ると、山田町・岩泉町には独自の軽減がないという報道があったが、これは事実なのかどうか。それから、確実に県や市町村の独自減免に移行するように、申請しなかったら対象にならないということがないようにしっかり対応すべきではないか。
【住宅課長】
田野畑村等では、減免という形ではなく、現在の家賃をそのまま引き継ぐという選択をしたということは聞いている。ただ、被災地も広く種々条件が違っていると考えており、例えば、田野畑村等では民間賃貸住宅がほぼ無い状況にあるのではないかと思っている。一方、我々は県営住宅を抱えているが、市部においてはそれなりに民間賃貸住宅等も存在しているところである。それらの状況を勘案し、被災者の方々にどういった支援ができるか、また既存の公営住宅制度とのバランス等を勘案し、団地間でバランスがあるので、一番安いところに揃えるということでの減免を考えたところである。
国の減免規定がなくなった後の以降の関係だが、ご指摘のあった市町村に関して、減免制度を有しているという話は確認していたので、そちらとの整合性の関係については確認させていただきたい。
家賃の減免に関して、県営住宅の条例に基づいた運用をすることとしている。申請をして、それに基づいた減免をかけるという手法をとっているものなので、やはり申請をいただくということが必要になってくるところであるが、入居者の方々には不利にならないよう、一度きりではなくご案内を差し上げて、対象になる方がそういった手続きをとっていただくよう取り組んでいく。
【建築住宅課総括課長】
岩泉町と山田町の家賃の減免の適用についてだが、基本的に県と同じような形で条例制度が組まれていると理解しており、ただその中の減免について、事情がある方について減免を行うというようなたてつけになっているので、そのあたりも運用の余地があると理解している。その中で、運用として、県としては、被災者の方という形で減免制度を運用させていただいているが、市町村によって運用の考え方が異なってくる部分が現時点ではあるのではないかと考えている。
・閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事について
【斉藤委員】
水門工事の工事事業費は現段階でどうなっているか。工事の進捗状況、来年度の事業費はどうなっているか。
【河川課総括課長】
水門工事全体事業費について。水門土木工事や別途発注の水門機械設備工事および用地補償費などを合わせ、約400億円を見込んでいる。
工事の進捗は、現在、左岸側の水門工の基礎杭について施工中であり、29年度末の進捗率は約22%を見込んでいる。
来年度の水門土木工事の予算は52億円を見込んでいる。
【斉藤委員】
これは請負契約変更案件で高田県議も取り上げたが、70億円の当初事業費が約300億円と異常な拡大の案件だった。
今年度末の進捗率は22%、事業費で見ると37億円である。だったら今見直した方がいい。
堤防強化の場合の当初の予定額は235億円だった。民間事業だったら、当初の事業費が4倍5倍になるというものは絶対にやらない。80億円、100億円あったら笹ノ田トンネルだってできる。国の災害復旧だからといって、いくらかかっても一度決めたことはやるということではなく、まだ傷が浅いうちに根本的に見直すべきである。そして安価で安全な堤防強化に事業計画を見直すべきではないか。
【河川課総括課長】
当初、水門案と堤防かさ上げ案を比較した。比較においては、閉伊川河口部における津波対策は、平成23年度に水門案と堤防案を対象とし、まちづくりへの影響や最大クラスの津波による影響、経済性等を総合的に検討し、宮古市の意向もうかがった上で水門案を選択した。
引き続き工事を進めていきたいと考えている。
【斉藤委員】
当初比較したときの事業費は167億円で、それが400億円になった。もっと増えるのではないか。
実は宮古市議会も堤防強化案だった。それをあなた方が水門に変えさせた。しかし、あなた方の論拠は完全に崩れてしまった。こんなに莫大に事業費が増えているときに、見直しもせずに続けるという、やってはならない官僚の手法というのは根本的に見直すべきである。必ずこれは検証される。
県漁連の大井会長は、「あれは防災のためではなく災害を増やしている」と言っている。この間の大雨洪水などでも災害を増やしている。本当によく声を聞いてやるべきである。
・住宅リフォーム助成事業について
【斉藤委員】
実施状況と実績、来年度の実施予定はどうなっているか。
【建築住宅課総括課長】
県で把握している市町村の住宅リフォーム助成制度については、生活再建住宅支援事業や、障がい者向けの住宅改修制度などのように、おおむね全ての市町村が実施している助成制度を除く数字になるが、県内33市町村のうち22市町村で実施されている。
29年度の実績については、8月末現在で、補助件数が661件、補助確定額が約5100万円となっている。これにともなう経済波及効果については、リフォーム助成制度の対象工事費ととらえると、8月末時点での額は約12億6000万円となっている。
来年度の実施状況は、今年度の実施市町村については、対象の重点化等内容に変更がある自治体はあるが、基本的に継続するものと聞いている。
・下水道事業について
【斉藤委員】
3月9日の大雨の際に、県の浄化センターの下水が近隣の住宅地域で溢れたということだったが、被害の状況、なぜそういう事態が生まれたのか。これまでもあったのか。今後の対策はどうなっているか。
【下水環境課総括課長】
都南浄化センター周辺のマンホール等からの溢水の被害状況だが、県が管理している流域下水道のマンホール5ヶ所から溢水があった。ただし宅地等への流入はなかった。
公共下水道(盛岡市の施設)については、民家14区画、民間事業所1区画の公設枡やマンホール等から溢水もあったが、これについてもいずれも家屋等への被害はなかった。
原因については、処理区域内に大雨が降り、その雨が下水管に何らかの原因で侵入し、侵入した水が下流にどんどん流れていくと。浄化センターが一番下流部分になるので、そこの下水管が満杯となり、計画の流量よりも多くなったため、付近で逆流して溢れたと考えている。下水管に雨水がどういう形で侵入したのかというのは、なかなか広域なものなので今のところはっきりしたことは分かっていないが、現在調査を継続している。
過去3年間においては、昨年7月23日にやはり同じような被害があった。
対策については、下水管に雨水が浸入した原因というのは、通常だと管の老朽化、家屋からの雨水と雨水の誤接続が考えられるが、それらについては、市と連携して箇所の査定のために今後の対策として進めていきたい。