2018年3月16日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・新卒者の県内就職率について
【斉藤委員】
中小企業基本計画に基づく実施状況について報告があった。新卒者の県内就職率は、平成28年度実績で県内高卒者66.3%、達成度はAだと。計画目標値が30年度で66.5%と、そもそも目標が低すぎて、今年度で達成度がAというのは、全然現場の実態・要望とかけ離れているのではないか。
議会でも取り上げたが、今年の12月末だと64%に落ち込んでいる。これはきわめて重大で、そもそも高卒者の県内就職率の目標をせめて10ポイントぐらい上げて取り組まないと、取り組みにならないと思うがいかがか。
【雇用対策課長】
本県においても、これまで就業支援員による県内就職への支援のほか、企業見学会やインターンシップなどの取り組みを展開してきた結果、着実に地元就職への意識が高まってきていると考えており、県内就職率も上向いてきている。
今年度特に、高卒者の県内就職ワーキンググループも設置し、2月に開催された協議会に対して提言されたが、県としても提言を受けて、各構成団体とも連携しながら、学校との連携による県内企業の魅力の向上に一層取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
目標が低すぎると聞いたので。一般質問でも取り上げたが、全国、東北各県と比べても低い。山形は78%、宮城は80%、福井や富山などは90%を超えている。それらと比べて、平成26年度の現状値が63.4%で低いのに、平成30年度の目標が3ポイント程度上げるだけの目標だったら取り組みにならない。
中小企業条例、中小企業基本計画を立てるときに、中小企業の要望を実態調査した。一番切実なのは「人材確保」だった。こんな低い目標で確保できるわけがない。学卒者の場合は、45%の現状値に対して53%の目標である。COC+は10ポイント上げるとなっているので、55%の目標を当事者は決めている。そこと比べても、県内高卒者の目標は目標になっていない。こうなるとどうなるか、率直に言うと、現場の高校では全然目的意識性がない。
盛岡工業は、1700件の求人が大手その他からきている。そういうときに意識的に取り組まなかったら、今までより落ちるのははっきりしている。そういう危機感を県は持って、それぞれの学校が、今までの歴史と伝統があるのでそこもしっかり踏まえながら、しかし5ポイント10ポイント上げようという意識性を持ってやらなかったら、県内就職率は上がらない。
私は何度もこの問題を指摘しているが、なぜ目標が上がらないのか。
【商工労働観光部長】
目標数値の設定の前段階として、ご指摘があったが、県内の高校の進路指導者・先生方は本当に苦労されて取り組んでいる。目標意識は非常に高いと思っており責任感も持っている。父兄や学生とも相対して指導されていると思っている。
これまでの世の中の推移を見ると、やはり県内雇用が落ち込むときもあれば、今のように人手不足感が高まって、県内企業が「一人でも欲しい」という状況、さまざま波がある。そういったことを見据えながら、先生たちは社会的な環境の変化も研究しながら、また県内のものづくり産業のみならず、全産業界の動向を見ながら進路指導されていると思っているので、これは名誉のためにも先生方の努力は強調させていただきたい。
目標の設定については、一般質問でも申し上げたが、現在次期計画を検討している最中にあるので、その検討の中で新たな設定値ついては検討していきたい。
【斉藤委員】
昨年来この問題を取り上げているが、結局来年度の次期計画の中で検討となると1年2年取り組みが遅れてしまう。本当にこれは深刻である。いま売り手市場で、大手からどんどん求人がきているのも事実である。一つ紹介したが、平舘高校では、30人全員が管内に就職した。特徴は、首長さんが頑張っていると。それを受けて学校の先生も必死になって、何よりも地元の企業が高校に来て、インターンシップやいろんな取り組みをやっている。
一生懸命学校がやっていないとは思わない。ただ、5ポイント10ポイント上げようという意識がない。売り手市場の中で、どうやって県内就職率を高めるか。5ポイントといったら決して大きな数ではないと思うので、そういう目的意識性を持ってやらなかったら、県内就職率は上がらない。
沿岸は今まで低かったが、それでも64%ぐらいで上がった。これはやはり地元企業を復興させたいという思いである。そういう今まで以上の努力をしているところは成果をあげているのも事実である。
ただ、山形や宮城と比べたら10ポイント15ポイント違うということを自覚して、そこの遅れは取り戻さないと、いま中小企業が人材確保しようと思っても、どんどん中央に持っていかれてしまう。そういう雇用情勢である。
地域ものづくりネットワーク等と連携した工場見学への参加高校生は1728人の実績で、これもAということだが、やはり今の県内就職率の状況を見たら、どういう規模の目標設定が必要なのか。Aという評価は良しとするが、県内就職率を高めるところまでいくにはどういう規模で取り組むべきなのかということで、低い目標でAということにしないで、やっていただきたい。
就業支援員による企業訪問数で、これは台風10号で被災したことにより訪問できなかったという状況のようなので、これは平成28年度はやむを得ないと思うし、私も話を聞いたが就業支援員はかなり頑張っていた。盛岡管内でも700ぐらいの求人を確保して、それで県内高校をまわって頑張っていると。ただ、700という数は今までよりも多いが、盛岡工業で1700件である。外圧と努力されていることの差をよく見て、管内でも増えてきた求人をどう生かすかという取り組みをやっていただきたい。
大学のインターンシップの参加者数は737人で達成度A、平成30年度は800人の目標だが、COC+で55%まで上げる計画、みなさんの計画でも53%まで上げると見れば、これももっとレベルアップしてやることが必要ではないか。岩手大学の学長さんと懇談した際に、学生が主体になって企業との意見交換会をやっている。学生が主体になるということは、事前に企業訪問をして意見交換会の開き方も工夫してやっている。「今までは国の補助があって、これからはなくなる」ということで、県の支援、参加企業からの参加費もとろうかという話になっていた。この点では、高等教育に対する県の振興計画もしっかり立ててほしいと一般質問でも取り上げたが、今まで以上に大学との連携を強めていただきたい。開き方、時期、取り組み方というのは、高校の場合もそうだが、よく相談してやらないと効果的にやれないという話を聞いたので、その点ぜひ抜本的にレベルアップしていただきたいと思うがいかがか。
【雇用対策労働室長】
まさに、いわてで働こう推進協議会において、大学と市町村もメンバーに入っている。教育界・大学関係と市町村と連携を図り、現在の県民計画での目標値はあるが、それに関わらず目標値を上げていくように今後とも努力していく。
【斉藤委員】
ぜひ大学関係、高等教育の関係については、長野県が高等教育振興計画を策定し、県独自にやっているので、それも参考にしながら大学との連携を抜本的に強化していただきたい。
経営革新計画の承認数は508件で達成度Aと。実は、中小規模の振興のときにはこういう取り組みが大事で、1つ1つの企業をしっかり支援して経営計画を立てると。この取り組みはぜひ支援して強めていただきたい。
・水産加工業者への支援について
【斉藤委員】
食料品製造出荷額の28年度実績は3649億円で達成度Aとなっているが、29年度が大きく落ち込んでいると思うので、今年度の取り組み状況について、農林水産部とも関わると思うが、8月の復興局が主体となった調査があるが、今年の状況はかなり厳しいので、もっとこまめに、特に水産加工業の実態について調査しながら支援策を考えるべきではないか。
【産業経済交流課総括課長】
29年度の出荷額が落ちているということだが、その結果はまだきていないが、いずれ水産加工業については、設備が回復し、その中で取引先や販路が開けない、材料の高騰等で利益になかなか結びつかない、業績が回復しないという数値が多くなっているので、いずれその辺は水産加工の関係では、水産関係でいろいろと魚種が変わってきているとか、魚の水揚げが足りなくなってきているということも踏まえ、新商品の開発だとか産業創造アドバイザーによる新商品の開発など支援しながら、出荷額の向上、業績向上に努めていきたい。
【斉藤委員】
予算特別委員会の農林水産部の審査でも取り上げたが、サケ・サンマ・スルメイカは三陸沿岸の主要魚種で、震災前と比べて水揚げ量が27%、スルメイカは19%である。だから、ほとんど県内では買い付けできない。物がないということと高すぎて買えないという二重の事態に陥っている。そのことに危機感を持ってやっていただきたい。いま復興途上で災害並みの被害を受けている。水産加工業は88%再建したが、まだ復興過程である。水産庁の11月〜1月までの調査では、「売り上げが8割以上回復した」と答えたのが40%台、6割近くは売り上げが8割以下である。
・アンテナショップの販売額について
【斉藤委員】
アンテナショップの県産品の販売額が26年度の現状値よりも下がっている。その割には達成度はBで評価が間違っているのではないかと思うが、下がった理由は何か。
【地域産業課長】
26年度が6億5800万円にたいし、実績が6億3900万円ということだが、アンテナショップについては、27年度については、ふるさとの3割引販売というのがあり大きく伸びたところであり、国の交付金を活用した3割引販売ということの反動もあり、28年度は落ち着いた状況があった。大阪でもアンテナショップがあり立ち上げた段階のところだが、大きく減少するというよりも前年の反動もあり落ち着いたところの金額になったという背景がある。
【斉藤委員】
落ち着いたどころか26年度の現状値より下がっている。反動はあるかもしれないが、達成度Bということではいけないのではないか。
【経営支援課総括課長】
30年度の目標に向けての進捗状況と合わせて、進み具合ということで、目標値と現状値を比較して計算するということになっているので、数字の上下があってもBになったりということはあり得る。単純に前と比べるということではなく、30年度に向けての進捗率に合わせての評価になる。
【斉藤委員】
算数的に間違ってはいないか。目標に遠ざかっているのではないか。
・仮設店舗の延長について
【斉藤委員】
仮設店舗の入居期限、解体期限の延長は大変切実で、緊急にでも中小企業庁に行って打開してほしいが、我々も中小企業庁への対応をしているが、「検討する」とは言っている。ただ、半年も1年も検討されたら困るわけで、現場はどうなっているかというと、7月とか9月までに退去してくださいと。退去してから延長が示されても意味がないわけで、逆に年度末ぐらいまでに方向を示さないと、岩手県は被災3県の中で一番仮設店舗での営業再開が多いので。
入居実績は、ピーク時で商業者は725店舗、本設移行が277店舗、現在仮設店舗で営業中は344店舗である。344の方々は理由があって残っている。今すぐ本設展開できない、土地の問題も資金の問題もある。こういう方々に退去しなさいと言ったら廃業しかない。極めて深刻である。最近記事にもなったが、大槌町は、60区画中52業者が入居、45業者が再建希望で、うち8業者はテナント入居希望だと。しかしこれで追い出されてしまったら再建できなくなる。山田町の場合は、県の把握と少し違うようだが、おそらく商業者だけではない数だと思うが、160事業者が仮設店舗で営業、1月時点では104事業者が営業している。この方々が7月までに退去しなさいと言われたら、再建できないまま終わってしまう。陸前高田市は、155事業者があり、本設移行は14事業者、現在129事業者が仮設店舗で営業している。
岩手の復興にとって、仮設店舗が果たしている役割はきわめて大きく、土地の問題や資金問題等があって、今すぐ本設展開できずに残っているので。この問題は、岩手の実情をしっかり国に伝えて、国が「検討している」というのだったら、今すぐ方向性を示すように強く取り組んでいただきたい。
【経営支援課総括課長】
市町村の方にヒアリングすると、やはり助成期間の関係もあり、それと合わせて資金面の関係もあるというところもあり、市町村により譲渡してそのまま使えるようにしようということも見ながら、なおかつかさ上げなどの関係で、この場では続けられないという場合には移設が必要だとか本設までの期間が必要だということで、市町村でも定期的に中小機構にヒアリングしており、その中でも期間延長の話はしているが、なかなか明確な回答が出ていない。
担当レベルでは、実情をきちんと国に説明したいという市町村もあり、事務レベルではあるかもしれないが、市町村と日程等を相談しているところもあるので、ただ我々が話をするときには、向こうもいつ決まるという話もなかなかなく、改めて対応をしたいと調整している。
【斉藤委員】
極めて重要な、緊迫した状況を迎えているので、国に対しては実情を掴んでもらい早期に延長の判断をしていただきたい。
もう1つは、期限がきたから退去というやり方にも問題があると思う。たしかに国の期限は30年度末になっているが、今まで仮設店舗で必死に営業してきた、そういう方々は再建の希望を持っている。そこに寄り添って、どうしたら営業継続できるか、本設展開できるか、本当に寄り添って最後の最後まで支援するのが県や市町村が問われている姿勢ではないか。
そこで、本設希望のところ、仮設店舗を払い下げしてもらいそのまま継続したいところ、実情を見て、再建の方向を見定めて、再建希望のあるところは絶対につぶさないという支援をしていただきたい。
【経営支援課総括課長】
仮設店舗での営業期限については、中小機構が整備をしているが、すべて市町村に譲渡されているので、いつまで使うかは市町村の判断になっている。ですので、市町村によっては、長く使えないか検討しているという話もあるが、いずれ市町村のまちづくりの進み具合等の兼ね合いだと思うが、一方で、撤去・移設するとなった場合は、費用とまちづくりの進み具合等を勘案して、市町村でもなかなか難しいところを考えているのだろうと思う。
譲渡に関しては、実際にそういう形で譲渡を行っている市町村も大船渡とか行っており、陸前高田市も制度をつくって具体的な相談を進めているところもあるので、本設で出店するという方ももちろんいるが、仮設店舗を自分の施設として使いたいという希望もあるということで、そこは市町村によっては、テナントに入るための支援メニューを作ってやっているところもあるので、それぞれの状況に応じた対応をしているので、そこも含めて、県としても取り組みを聞きながら、グループ補助金の支援もあるので、そういったところの連携は引き続きとって取り組んでいきたい。