2018年4月9日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・仮設店舗の解体費用助成期限の延長について
【斉藤委員】
一般質問などで取り上げた時には、中小企業庁も「延長を検討する」と言っていた。しかし、ご承知のように釜石の「呑ん兵衛横丁」の仮設施設が退去を迫られるとか、7月や9月までなどと、県内では、せっかく仮設で営業を継続して本設展開を目指しているにも関わらず、その前に退去を迫られたら廃業以外なくなってしまう。東北3県の中でも、岩手の商業者だけで750店舗が仮設で営業を再開した。12月末段階で344の商業者が仮設で営業していた。陸前高田市は100件を超え、釜石もかなりの数だった。そういう点で、仮設店舗の解体に対する助成期限となっているが、まだ7年しか経っておらず、復興期間が10年となっている中で、せめて10年間は仮設店舗での営業ができるように早期に期限の延長を示すべきだし、以前も部長さんに「中小企業庁に直訴するぐらいのことをして問題を早く解決すべき」と提起したが、その後の状況はどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
先週、中小企業庁と中小機構を訪問してきた。用向きは、大槌町さんが現在の状況を説明したいということで同行したものである。
公開できるところだけ状況を説明させていただくと、大槌町は現在の仮設施設が町内に5箇所あり、3月末で50人の入居者となっている。このうち、町有地に1箇所、私有地に4箇所となっている。仮設撤去のスケジュールについては、先ほど斉藤委員からあった通り、30年9〜10月の仮設店舗からの退去、今年度末の撤去工事の完了をする旨を入居者には現時点でお知らせしているということで、町では、50者の方について今後の意向を聞いているということである。そこで現在の課題だが、1つは、町が産業集積地の整備事業―旧役場北側に産業集積地を整備する予定であり、そこは商業者が入る予定で、そちらの整備が30年度ぐらいになるという状況。それから住宅再建もピークで、建築士や設計士、施工業者が不足し本設再開したくても「待ち」の状況ということ。それから、零細事業者が多いので、従来よりテナント業者が多く、そのテナントを貸していただける大家さんが少ないという事情を中小企業庁と機構の方に説明しながら意見交換をしてきた。
今後については、延長については現時点ですぐ明言はなかったが、こうした個別の事情を説明しながらやっていく必要があるということなので、大槌町以外の部分も把握しながら連携をとって対応していきたい。
【斉藤委員】
先週大槌町と一緒に中小企業庁に行かれたということは評価したい。
大槌新聞の3月14日付で、12月末段階で60区画中52業者が入居しており、45事業者が再建希望だと。うち8業者がテナント入居希望、廃業予定が7業者と。
陸前高田市の場合は、3月市議会で党市議が取り上げたが、市内133箇所の仮設店舗の活用や解体の期限が平成31年3月で心配されているが、市は「延長の見込み」だと答弁している。陸前高田市が中小企業庁とどういうやりとりをしたか分からないが、市議会ではそういう回答をしているということなので、それなりの感触を持って回答したのではないかと思う。
ただ、7月とか9月とか退去を迫られているので、中小企業庁の判断を個別でも何でも決断を早くしなかったら、これだけの営業再開の希望があるので、一刻を争う課題だと思うが、その緊急性を中小企業庁はどう把握しているか。「検討中」と聞いているが、どういう時期までに示そうとしているか分かるか。
【経営支援課総括課長】
延長の時期については特段明言はなかったが、仮にそういう方向になった場合には随時、非公表であっても進捗状況を教えていただけるということなので、そういった状況を把握しながら、平行して事業者の支援もやっていく必要があると思う。
【斉藤委員】
岩手県の場合は12月末段階で344の商業者が仮設で営業している。東日本大震災津波で、陸前高田市や大槌町や山田町は、その時点で4割以上が廃業している。いま頑張っている人たちは、厳しい中でも営業を継続してきた人たちなので、そういう方々を切り捨ててしまったら生業の再生にならない。国の助成期限を10年も経たないうちに打ち切るということは許せない。復興期間10年と国は言っているのだから、10年かけて再建させるような手立てを当然とるべきではないか。
そして、県や市町村も、そういう営業継続を希望する業者には最大限寄り添って、退去を迫るというやり方はとるべきではない。知事は「被災者に寄り添って」と言っているので、解体の助成期限がきたから退去を迫るというやり方は姿勢として正しくない。大槌町は危機感を持って県と一緒に中小企業庁に行ったということなので、県も一緒になってどうやったら営業継続できるか、その答えを示す行政のあり方が求められるし、中には、今の仮設店舗のままで最後まで頑張りたいという業者も1〜2割いるので、だったら払い下げ・無償譲渡で営業する道もあるので、本当に1店舗1店舗実態を見て、寄り添った対応が必要ではないか。
【経営支援課総括課長】
営業継続の意思を持っている事業者で行き先がまだ決まっていないという方についてはしっかり対応していきたいし、市町村でもテナント希望の方についての単独の事業をつくったり、あるいは大家さんになる方の募集をしたりしており、仮設の移譲についても手続きできるように改正したりしているので、本設再開にあたっていろんなパターンに応じた支援をつくって市町村と連携して対応していきたい。
【斉藤委員】
先ほど陸前高田市議会で市が「延長の見込み」と回答したと紹介したが、その根拠は分かるか。
【経営支援課総括課長】
陸前高田市役所にお聞きしたが、3月議会の担当部長さんの答弁では、国に対して期限の延長要望している」という旨の答弁はしたそうだが、期間延長の部分は特段答弁していないということで確認できなかった。
【斉藤委員】
党市議団の議会報告に市長の答弁で「延長の見込み」と回答しているので。
いずれにしても、丸7年を経過して生業再生は新しい課題にいま直面している。特に水産加工の場合には、88%が再開したが原材料不足と高騰の中で新たな危機・難題に直面している。
そういう点で生業の再生、まさに商店街の再建も始まったばかりなので、そういう点で本当に県自身が被災事業者に寄り添ってやっていただきたい。
【商工労働観光部長】
被災した市町村においてさまざま新しいまちづくりの取り組みが進んでいる中で、生業の再生は重要な課題であり、まちづくりそのものでもあると思っている。
事業者の営業継続にしっかり寄り添って支援できるように努めていきたい。
・県内の雇用確保の課題について
【斉藤委員】
2月末現在の岩手労働局の発表では、大学生の県内就職率は前年同期比1.3ポイント減の42.3%で3年ぶりの減少に転じ、高校生は65.6%で前年同期比0.3ポイント減と、「県内就職率伸び悩む」という報道で、3月末までの数字を見なければいけないが、就職内定状況は順調にいっている中で、県内就職率が大学も高校も後退したということを深刻に受け止めて、県内の人材確保に取り組むべきだと思うが、現状をどのようにとらえどう対応しているか。
【雇用対策労働室長】
高校の新卒者については、6月まで数値が確定しないということもあり、昨年度も2月3月末時点からいくらか上がっているので注視している段階である。いずれ、高校生・大学生の県内就職を進めていくということで、いわてで働こう推進協議会を中心にさまざまな手は打っているが、現時点でこのような状況で、さらに今年度は一層強化していきたい。
具体的には、高校生向けについては、これまでも各振興局等に配置している就業支援員について、企業まわりや高校まわりをして、高卒者の県内就職の支援に取り組んできているが、これらを継続して実施していくとともに、昨年度初めて「働く」というテーマで開催した総合イベント「いわてとワタシゴト展」―この事業を拡充し若者に岩手の職場・働き方を訴えていきたいと考えている。あるいは新規事業としては、市町村等と連携した各学校における地域産業・企業に関心を持ってもらうような取り組みを始めたいと思っており、高校生と県内企業若手社員との交流会も協議会の中で実施していきたいということで、県内企業の認知度をさまざまな方法で向上に取り組んでいきたい。
大学生については、これまでもCOC+事業等で地方創生インターンシップ事業ということを取り組んできている。こういったインターンシップ等を進める協議会のワーキンググループがあり、そこでいろいろ協議しさらなる県内企業のインターンシップや県内就職を推進していくとともに、今年度は新規事業として、首都圏等の大学を対象に「いわてU・Iターンクラブ」というものを新たに設置して、U・Iターン就職の拡大を図っていきたい。
このような事業を推進し、今年度は高校生・大学生の県内就職率を高めていきたい。
【斉藤委員】
みなさんも努力されているが、いま売り手市場で、県外とりわけ首都圏の大企業からの求人が増加している中で、県内の企業に人材確保をするという、この厳しさ、危機感を持って受け止めないと、努力したが後退したということになりかねない。そこをしっかり見ていただきたい。
例えば、盛岡工業高校に行ったとき、1700社の求人がきていると。盛岡管内で就業支援員が発掘した求人は700社、これも増えた数で、就業支援員は頑張っていると思う。しかし盛岡工業だけで1700社となったら大変な競争である。その売り手市場の厳しさを見て、もう一方で県内で働きたい、岩手の復興に貢献したいという高校生も7割いるということを、どのように汲み尽くすかということは、本当に危機感をもって、知恵も出し合って、その時々で必要な手立てをしっかりとっていく必要があるのではないか。
特に高校の場合は、各高校が目的意識を持つことが必要ではないか。売り手市場なので生徒の自主性に任せればどんどん決まってしまう。どう県内の頑張っている企業に就職していただくかということは、それぞれの高校が目的意識性を持って、5ポイントでも10ポイントでも引き上げようと。以前も紹介したが、平舘高校は、12月末段階で37人の就職希望者全員が管内に就職した。こういう事例もあるので、教育委員会とも連携して、目的意識性を持って学校の取り組みというところまでつなげていく必要があるのではないか。その点で県教委との連携を強めてほしいと思うがいかがか。
【雇用対策労働室長】
県教委もいわてで働こう推進協議会のメンバーとして、さまざまなワーキンググループを一緒にやっている。昨年は、高卒者の地元就職に関するワーキンググループのメンバーとして、山形県の調査等も行っている。常日頃そこは県教委と連携し情報交換をしているところである。
今年度においても、学校における県内企業の認知力向上に向けた取り組み、あるいは各高校の保護者の方に対するアプローチなどについても県教委と連携し、今年度一層の取り組みを図っていく。
【斉藤委員】
これはいい話でもあるが地元の中小業者にとっては大変な課題なのが、例えば、東芝が新しい半導体の工場を整備し450人の人を確保、ゆくゆくは1000人、第二工場という話まで新聞に出ている。450人の内訳は、四日市から300人、東北各県から150人と。北上市あたりは、東北各県の大学を訪問して、ぜひ北上の東芝工場にという取り組みをしているという話を聞いた。東芝が北上で工場を開設し増設することは地域の振興にとっても雇用確保にとっても重要なことだし、この人材確保も重要な課題だと思う。昨年は商工文教委員会でデンソーに調査に行ったが、デンソーもさらに増設して人員も拡大するという話も聞いた。
だから、県内の誘致企業大手はそういう方向で人材を確保する。この人材確保も大変な課題ではないか。ただ、県内中小企業との競争という点からいけば、先にそちらが決まる。ますます県内の中小企業の人材確保は大変になっていると。その点で、県内誘致企業の採用人員の状況と確保の取り組みはどうなっているか。そことの関わりで、県内中小企業全体の雇用確保をどのように考えているか。
【ものづくり自動車産業振興室長】
東芝等の採用計画に関しては、新聞には出ているが、我々として最終的な計画については説明を受けていないということもあり、たしかに四日市の関係や、ひょっとすると1000人規模の求人として出てくるであろうという風には予測している。デンソーの関係についても、新聞紙上でも発表されている通り400人規模という求人であり、今のところ新採用を極力抑えた形で、中途採用を中心に人材をかくほするということで、これまでも順調に計画通りに作業が進んでいると聞いている。
人材確保については、どうしても大手が最初に採用計画を決めるというのは、各企業の最終製品を作っている大企業を中心としたそういうクラスターの中で、経営戦略と採用計画は表裏一体で、その中で一次下請け二次下請け、さらには中小企業という風に計画が下りていく段階で採用計画が決まるので、これに対して県内企業急いでほしいといっても、すぐには採用計画は作れないと。ましてや今の日本の経済状況の中で、1社の大手に偏った取引をするのはリスクが高いということから、中小企業は3社4社の主要取引先を持ち、そこから経営戦略を作り採用計画を作るということである。なので、必要な技術者等の部分の採用についても、実態とすれば中小企業は中途採用―即戦力に頼るという採用方法が一般的ではないかと思っている。
我々としては、その辺も踏まえて、県内大手、中小企業も含めて、採用計画や経営戦略に沿ったところのニーズを踏まえて取り組みを進めていきたい。
そのために、今回北上市に、ものづくり自動車産業振興室のセンターを設置し、職員を5名配置するというのも、そういったところに寄り添った対応策を打っていくための体制と考えている。
【斉藤委員】
東芝にしても、北上市は一生懸命東北の大学をまわって来年の採用に向けた取り組みをしていると。岩手大学工学部にしても、そういう意味でいけば県内就職率を高めるチャンスでもあると位置づけてやっていく必要があるのではないか。
盛岡工業や岩手大学の学長さんと懇談もしたが、言われたのは、地元中小企業との連携、企業紹介のタイミングがあると。そこをよく連携して必要な時期にやるということが大事なことで、どう日常的な連携を強化していくか、その点で去年上手くいったのは盛岡商業だったと思う。地元中小企業との連携で企業紹介をやって、盛商は健闘したと思う。全体として、大学・県・企業が日常的に連携して、学生の気持ちもつかみながら取り組んでいく必要があるのではないか。
本当に今の厳しい状況の中で、どのように県内の人材を確保するか、改めてお聞きしたい。
【雇用対策労働室長】
盛岡商業の取り組みについても、当部と教育委員会とで連携して行い、高校生や保護者の方も入り地元企業の紹介をやったという取り組みである。この取り組みについては、今年度拡充して実施する予定であり、中学校・高校での地元企業を知る機会というのを増やしていくということで、市町村や市町村商工会と連携して紹介の場を設けるということを工夫して進めていく予定である。
大学においても、就職説明会ということで、アピオやホテルで行うというほかに、岩手大学工学部の話もあったが、大学の方に出かけていって企業を紹介するということも取り組んでいたので、こちらについても大学と地域振興室と連携しながらこういった取り組みも今年度強力に進めていきたい。