2018年7月3日 商工文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)


・県立高校統合の延期について

【斉藤委員】
 遠野と久慈の統合について延期をするというのは英断だったと思う。一度決めた計画を無理矢理やるというのではなく、特に地域の取り組みや高校の取り組みの成果を踏まえて延期をされたことは評価したい。
 先日、遠野緑峰高校と遠野市教育委員会を訪問してきた。遠野緑峰高校は2学科の高校だが、この間さまざまな賞を受賞しており、「日本学校農業クラブ全国大会優秀賞」「全国ユース環境活動発表大会環境大臣賞」など、全国的にも注目される取り組みをしており、特に地元のホップの廃棄物を使って和紙づくりに取り組み、卒業証書はその和紙で作られている。数年前の物より新しい和紙はかなり精度の良い物になっていた。情報処理科では、県内で初めて、スマホを活用しての農商連携・6次産業化の授業が行われている。そういうことで、新しい挑戦がされている。そういうことで、今年の新入生は昨年度と比べて、どちらの学科も増えている。もう1つ感心したのは、校長先生が言われていたのが「学年が進むごとに自己肯定感が高まっている」と。これは高校に入って生徒が成長して、自己肯定感というのは、日本の生徒は低いというのが特徴で、この高校ではそういうさまざまな取り組みを通じて自己肯定感を高めていると、ここに大変注目してきた。もう1つは、そうした生徒の取り組みを支援した教職員が表彰された。平成29年度文科大臣優秀教職員表彰という形で表彰されている。小規模だが、大変学校の魅力づくりに生徒・教職員が一体となって取り組んでいるということを実際に見て、聞いてきた。
 遠野市教育委員会では、遠野高校と遠野緑峰高校の2校存続を目指して、昨年2月に「高校魅力化アクションプラン」を作成した。市として2つの高校を存続させると。この魅力化プランは作り方も良く、中学3年生へのアンケート、高校生へのアンケートで、「高校に何を期待しているのか」「高校の何が分からないのか」ということを毎年行い、そのアンケートを踏まえて高校の魅力化につなげたり、以外と2つの高校の実態を中学生は分かっていないので、高校PR活動という形で、遠野市自身として4つのアクションプランに取り組んでいる。高校PRプランで、高校説明会・オープンスクール、スマホ版ホームページ“学び場遠野”、プロモーションビデオの作成、市が支援して高校のPR情報誌を発行している。市の担当者は言っていたが、私立高校のパンフレットと比べると、公立高校のリーフレットはあまりにも貧困だというので、財政的な支援をして私立高校に負けないような立派なパンフレットを作っていた。2つ目は、高校魅力化プランで、海外派遣支援―遠野市は、テネシー州チャタヌーガ市と姉妹都市で、ここに市が支援し、10日間ぐらい毎年海外派遣も行うと。あとは、何よりも高校通学費の補助―列車通学には半額補助。そして、就学生活支援プランということで取り組んで、かなりの財政的な支援をやっている。遠野市自身は、本気で高校の存続・魅力化に取り組んでいる。
 県立高校というと本来県の仕事となるが、ここはまさに市が「自分たちの地域の高校」と位置づけて取り組んでいる。そういう取り組みの成果はまだ始まったばかりだが、出始めつつあるのではないかと受け止めてきた。
 1つの典型例で、そういうところでの統合計画が延期されたということは大変地域の取り組みと相まって良かったと。
 震災復興の時もそうだが、高校のあるべき姿ということで、地域と結びついた高校、地域に支えられた高校、地域に貢献できる高校―。遠野市長さんは、岩手モデルで高校再編を考えるべきだということを言っていたが、震災復興の教訓、葛巻や遠野などで取り組まれている教訓を踏まえれば、こういう高校の姿というのをきちんと岩手モデルとして打ち出していく必要があるのではないか。

【高校改革課長】
 今回の統合の判断にあたっては、計画の中に盛り込んでいる通り、地域の取り組みの状況、入学者の状況ということを基に判断していくものである。その際には、ご紹介あったように、地域といかに結びついて、地域に貢献する人材を増やしていくということは非常に大事な点だと思っており、再編計画の中にも、復興人材の育成といったことも踏まえ、地域の心情も踏まえて、地域に貢献する人材を育てていくということが考え方として記載されている。その中で、望ましい規模、教育の機会の保障ということも考えながら進めていきたい。

【斉藤委員】
 久慈東と久慈工業の統合については、統合して工業の学科を2から1にすると。専門学科高校の場合、実習施設もあるので、1学科というのは存続できないのではないか。工業科を残すというのなら、やはり最低複数の学科を維持しないと、実習施設、職員も含めて、効率的ではないし、例え1学科で残しても、それは持ちこたえられないのではないか。だから2学科で存続するような方向性を考えて、県としても地域と一緒になって魅力化を図る必要があるのではないか。

【高校改革課長】
 専門高校の規模についてだが、再編計画の中でも、普通高校については、1学級校も現在数校あるが、専門高校については、やはり1学科というのは難しいというのは委員のおっしゃる通りで、複数の専門科目の教員配置も必要ですし、実習を行う場合にも一定程度の人数がいないとなかなか難しいと。ですので、専門学科についてはできる限り複数学科で残すことを前提としつつ、それが難しい場合には統合を含めて考えたいというのが今の再編計画の考え方である。
 久慈工業については、今回は野田村の取り組みもあって生徒数が増えているということで、ただ、なかなか将来生徒数が減っていく中では、改めて判断する必要がある時期も出てくるのではないかと思っている。

・葛巻高校の学級減の延期について

【斉藤委員】
 昨年、葛巻高校の学級減が延期になった。これは大変良かったと。これも地域の取り組みの評価と、新入生が2学級規模で確保されたということだが、延期されても、毎年延期されるかどうか検討される。これはこれで大変切ない話である。6月20日に改めて葛巻高校に行ってきたが、葛巻高校は今年度46名の入学生でギリギリ2学級は維持したということだが、地元の中学校からの進学率は80%。今年の特徴は、中学校のトップクラス―盛岡一高・三高に行くような生徒が入学してきたと。ここから医大進学なども目指したいと町教委は話していた。昨年9月から町の公営塾を開校し、セミナーハウスで3名の先生が常駐し、5時〜9時までで、昨年度の実績は57名、今年は51名。だいたい夏のさまざまな部活の大会が終わるともっと増えるという話をしていた。これは、進学希望者にも、勉強が遅れている子どもたちにも寄り添って、学習を支援するという仕組みである。9時まで行っているが、帰りのスクールバスも出している。町は、公営塾に2100万円、スクールバスに300万円の支援をしている。さらに、山村留学は今年は県内県外合わせると3名ということだが、来年度は10名を目指すと新たな努力をしており、30名規模の寮を高校の近くに建てるということで、かなり中長期な展望で、今まで以上の高校の支援策をやっている。国公立大学の合格者も、10人志望のうち9人合格、去年は8人だった。だから、葛巻高校に入って、国公立大学にも入れて、もちろん進学率も100%ということで、こうしたこれまで以上の取り組みということはしっかり評価して、毎年延期するかどうかという判断は見直すべきではないか。

【高校改革課長】
 新しい高校再編計画においては、策定の段階から、各地を回り、さまざまなご意見をいただき、計画についても、統合の延期や学級減の判断について、なかったものを付け加えてこの形にしている。それを踏まえて、統合を延期したり、学級減についてもそうだが、それらについては、やはり皆様のご意見を踏まえて、全国的には再編計画の通り進めていくことが学びの質の確保や機会の保障の場に則った考え方だと思うので、そこの原則からすると、あとは具体的に毎年の状況を見ながら判断していくことが望ましいのではないかと思っている。そこは、進める段階では、各学校などを回り、具体的な状況、例えば山村留学の状況、あるいは過去3年間は葛巻高校は地元からの進学率が上がっている、それらの状況を具体的に考えながら、計画を基本としつつ進めていきたい。ですので、やはり毎年の判断ということで進めていかなければと考えている。

【斉藤委員】
 去年もそうした取り組みを評価して、延期したと。しかしそれが毎年どうなるかと。教育は、競馬のように赤字になったら廃止というような話ではないと思う。こういう町の取り組みは1年単位でやっているのではない。2億7000万円予算化され、30名規模の寮をつくるのである。計画を基本にしながら、毎年の近視眼的な対応でいいのか。やはり高校のあり方については、見通しをもった判断を県教委はすべきではないか。

【教育長】
 葛巻高校や遠野地区における取り組みを具体的にお話いただいた。我々も、さまざまな意見交換をしており、具体的な取り組みは承知しているが、それぞれの県立学校においても、県教委の機関として積極的に市町村行政と一体的に教育を推進するという基本的な考え方に立ち、お互いに連携しながら学校教育を進めてきている。
 課長も申し上げたが、新たな高校再編計画については、基本としては計画に沿った再編を着実に推進するということだが、そういう中で、見直しの基準も設けているので、その基準に基づいて、これまでの取り組み等をしっかりと検証したうえでそのような判断をしたということである。特に学校統合については、統合をするには最低でも2年ぐらいの期間を置かないと、統合の形態や学校名、教育課程の問題もあるので、ある程度のスパンをもってしっかりと判断していきたいと思っている。
 葛巻高校の学級減については、高校教育を将来的にしっかり残していくのは大事だというような判断をし、特例校としての位置づけをしており、そういう中で、町も頑張っているが、地元の進学率は高まったが、50数名から今年度46名となかなか現実は厳しい状況にあるということで、町の施策と実態がどのように進んでいくかということをしっかり見極め、責任ある対応をしていくということも教育行政の役割だと思っている。
 現在の計画が平成32年までの計画となっているので、今後、後期計画の策定に向けて今年度から具体的に議論していきたいと思っているので、委員からお話いただいた課題等も含め、改めてしっかり検討していきたい。

【斉藤委員】
 葛巻高校の場合、やはり2学級規模を維持するということで必死で頑張っている。これだけ進学でも実績をあげ、就職でも、町長や校長は毎年首都圏に就職した人たちを訪ねて、そのぐらい就職に執念を持ってやっている。しかし2学級規模を維持しているからそうした進学・就職に対応した指導ができる。だから2学級と1学級では質的に全然違ってくるので、そういうことで頑張っているので。

・教職員の働き方改革プランについて

【斉藤委員】
 熟読をしたが、あわてて作ったということはあるが、目標は具体的だと思う。例えば、プランの7ページで見ると、「80時間以上」を3割減、来年はさらに3割減、3年目はゼロに。「100時間以上」を半減、来年はゼロにする。目標だけは立派である。ただ、その根拠があるかというと、率直に言って乏しい。
 一番大事なのは、先生を増やすことである。先生を増やさずに別なところで細かく調整しても、長時間労働は解消されないと思う。
 実は人事委員会から重要な資料をいただいた。人事委員会が直接学校の長時間勤務の状況を調査した。平成28年度、県立学校の先生で、月100時間超は64の事業場(学校の82%)で749人・22%と。実数である。県庁職員は月30時間超で調べているが、人事委員会の調査の方が正確ではないか。

【教職員課総括課長】
 プランに定めた長時間勤務の状況だが、ここに具体的な数字は記載していないが、平成29年度における長時間勤務者は、県立学校全体として80時間以上は全体で8.8%、人数で換算すると延べ4000人強ということになってくる。その中で、実数としては我々の方ではおさえていなかったが、プランの策定を契機に、延べ数とか数字ではなく、一人一人の教職員がどれだけ時間外になっているかということを確認し、それを学校から産業医に報告するシステムを作る。それと同じものを県教委にも報告してもらうという仕組みを作っていくので、ご指摘の実数についても、一人一人の状況も含めてしっかり把握していきたい。

【斉藤委員】
 人事委員会の調査はしっかり受け止めて、本当に実態は異常で、いつ過労死が起きてもおかしくないという事態である。
 5ページのところで、「県立小中学校の教職員の健康診断の結果、約8割が有所見者」「注意や治療が必要とされる教職員の割合は58.3%で近年増加している」と。これだけの長時間労働が心身を蝕んでいる。これは皆さんが書いた通りなので、一刻の猶予も許されない課題だと思う。
 今年度から、県立学校はタイムカードを設置して、客観的に労働時間を把握できるようになると思うが、たしかに新規でいろんな努力をされようとしていることは評価したい。ただ、スクールサポートスタッフの配置というのはあまりにも少ない。30年度は小中学校160校あるうちたった13人で、これではどれだけ改善されるのかと。
 皆さんの具体的なプランの中に、「各種の学習状況調査の運用の改善」とある。一番問題なのは、全国学力テストだと思う。学力テストに向かって、過去問の学習ということで特別に行っている。前教育委員長の八重樫さんは「やる必要がない」とは言っているが、現場はそうならない。こんなムダなことをさせて、点数競争をやっている。そして、県独自の学習到達度調査も各学年で行うと。テスト漬けになっているところに先生方の負担を増やす大きな問題があるのではないか。ここに抜本的にメスを入れる必要があるのではないか。

【学校教育課総括課長】
 この働き方改革プランにおける諸調査の改善については、この調査というものは、そもそもは児童・生徒のつまづきを把握し、学習指導の改善・充実に生かすという趣旨なわけだが、なかなかその趣旨が浸透し切れていないところもあるということも踏まえ、必要な改善を図るという形で、プランに位置づけた内容の具体的な一例としては、中学校2年を対象としている県の学力調査において、5教科実施しているが、英語について、英検のIBAという新たな民間試験を活用するということを今年度取り組むこととしている。これにより、この調査については、採点・集計のところを教職員ではなく民間の力を使うということで負担軽減ということを考えている。ただそれは一部の話であるので、今後も実施のあり方については、今すぐということではないと思うが、全国学力状況調査の位置づけの変更だとか、さまざまな状況を含めて実施体制など今後検討したい。

【斉藤委員】
 一番の諸悪の根源は全国学力テストである。これは、全国平均を目標にする、平均点を上げるなどという形で行われている。過去問の勉強をさせている学校の実態は把握しているか。

【学校教育課総括課長】
 教員が学校で、過去問を解いてそういった力が必要ということを議論した、そういう時間を設定したかということの数字は小中学校で約9割ということで、生徒が過去問を活用したという数字はないが、ただ、昨年度もご指摘いただいたが、この諸調査を活用した取り決めの中で、過去問というものを、調査の点数を上げることに使用するということは適切ではないということについて、昨年度通知をしたところなので、真に求められる活用の仕方は何なのかということについて引き続き学校現場の理解を得ながら取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 学力テストをやるときにはそういうことをやってはいけないと。しかし、過去問をやれば点数は確実に上がる。秋田に行った先生は、秋田はマネできないと言っている。徹底してやっている。福井もそうである。福井はそれで指導死が起きた。福井県議会は、あり方を改めるべきだという決議をあげた。本当にそういう形で教育が歪められているのではないか。
 先日、現場の先生から聞いたが、「明日の授業の準備を今日中にできない」と。ここが問題で、授業の準備は先生の大事な時間で、それがその日のうちにできず、結局持ち帰って自宅で行っている。そこを本気で改善するようなものでなければならないし、根本は、学校の先生をどうやって大幅に増やすかということにある。

・部活動指導員について

【斉藤委員】
 今年度から配置見込みだが、自分が経験もない部活というのはどのぐらいあるのか。そういうところにこれは活用されるべきだと思う。
 もう1つは、校長先生が責任をもって研修するということになっているが、少し違うのではないか。校長先生任せではなく、教育委員会議だとかそういう単位できちんと研修しないと、学校職員としては活用できなくなるのではないか。

【保健体育課総括課長】
 経験のない部活動にどれだけ携わっているかということについては把握していない。公認の資格を持っている、経験を持っている方の配置については、未定というところもあり、全体の細かい数字は把握されていない。
 研修制度については、校長先生の研修もそうだが、県としても指導員の配置についての研修も進めながらやっていきたい。