2018年7月3日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・県内就職率向上の取り組みについて
【斉藤委員】
東芝メモリやデンソーなどさまざまな企業の進出・増設、今後5年間で約5000人の雇用創出効果だという答弁が本会議であった。これはこれで大変良いことだが、しかし地元中小企業の人材確保にとっては、今まで以上に厳しさが増すと思う。6月30日付の岩手日報では、すでに3166人の就職希望者にたいし5364人の高卒求人が出ていると。年度末までには6000人を超えるのではないかと言われている。県内中小企業にとって人材確保は、今まで以上に大変厳しい状況にある。
いわてで働こう推進協議会の簡単な報告を受けたが、その程度の取り組みでは県内就職を進めることにならないのではないか。かなり抜本的な取り組みにしないと、本当に首都圏等にどんどん人材が流れてしまうのではないかという危機感を私は持っている。
雇用情勢と人材確保の状況についてどのように把握・認識しているか。
【雇用対策課長】
ご指摘のあったように、新たな雇用者増ということはありがたくも厳しい、ピンチとチャンスが同時にという状況ということで、県内就職率の向上だとかU・Iターンの促進ということも強く進めていかなければならないと認識している。
高校生に関しては、今まで以上に就業支援員による支援を発揮するとともに、地元企業をきちんと知ってもらうような工場見学やインターンシップの実施、若手社員との交流というようなこと。大学生に関しては、まさにU・Iターンクラブを活用した企業情報や県内就職情報の提供と合わせて、インターンシップだとか就職面接会といったような就職関連イベントに参加するための交通費の支給なども取り組んでいくとともに、産業人材奨学金の返還支援制度といった経済的な支援ということも実施していく。あわせて、保護者に対しても、企業説明会という形でも実施してまいりまして、まずは就職を検討するときは地域を、そして地元でなければ今までは「県外に」と向かっていた志向を一足飛びに県外に向かうのではなく、地元に自分の希望に合う企業がなければ「県内に目を向ける」というようなことを学校とも連携して意識転換、進路指導担当者や保護者の方々にも働きかけていく必要があると考えている。
【斉藤委員】
現状はどうなっているかというと、東芝メモリ岩手が290人の求人を出している。東芝メモリは、岩手県内だけでは確保できないということで、県内高校生を全部まわり近県も回っている。県内でいけば大企業の東芝メモリがそういう取り組みをやっている。おそらく中小企業と比べれば東芝メモリの雇用確保の方が可能性があるのではないか。そういう取り組みをしているところと県内中小企業が競争して人材確保しなければならない。5年間で5000人増えるということは、本当に今までの延長線上ではますます地元の中小企業は大変になってくるということである。
先ほどの報告の中で、山形県を調査したと。山形県の高卒者の県内就職率は78%、岩手県は65%である。この差は何なのか。産業構造に違いがあるとは思わない。やはり取り組みの差なのではないか。山形に調査に行って、どこに違いがあると感じてきたか。
【雇用対策労働室長】
昨年度、高校生の県内就職のワーキンググループで山形県を調査してきた。1つは、企業集積が伝統的にかなり進んでおり、そういう環境に幼少期からいたと。要するに、保護者が仕事で就職するということがある程度意識していたと。
また、教育委員会とも一緒に行ってきたが、本県も今年度かなり力を入れるつもりではあるが、キャリア教育の部分、職業関係の高校のみならず、進学校も含めた教育、地元の産業・歴史・文化といったものをきちんと小学校・中学校のときから子どもたちの頭の中に入れてもらうという教育をされていた。
そういったことも受けて、今回いわてで働こう推進協議会を中心に、意識を共有したと思っているので、今年度本県でもそういったことをやっていきたいと考えている。
【斉藤委員】
真剣に検討してほしいのだが、中小企業や企業集積で山形県と岩手県には大きな違いはないと思う。県南の企業集積を見ても、決して岩手は山形に劣っていない。
30年度の方針で、いくら指摘しても変わらないのは、県内就職率の目標が平成31年度までに67%だと。いま65%である。わずか2ポイントしか上げないという目標だったら、今まで通りでいいということにはならない。それで、高校生は減っているので、同じ比率だったら就職者数は減ることになる。なぜこんなに低い目標を変えないのか。
いくつか高校に訪問してきたが、残念ながら高校で意識的に県内就職率を目標を持ってやろうという学校はない。ある意味自主性に任せている。以前盛岡工業高校の例も紹介したが、県外から1500件もの求人がきている。だまっていても就職できる状況にある。そういう中で、どうやって県内の企業・産業を紹介してやっていくかというのは、だまっていたら絶対にできない。
有効求人倍率は1.44倍、東北は1.6倍と高い。人材不足は岩手だけではない。だとしたらそちらに引っ張られるのは当然である。県教委とも連携して、67%ではなく、せめて山形並みに78%を目指すということがあってしかるべきではないか。
良い例として紹介したのは平舘高校である。40人の今年3月の卒業生全員が管内に就職した。素晴らしい成果である。その理由は、市長さんが先頭になって頑張っているということと、地元企業が平舘高校に足を運んで、そうすると地元からの就職が定着すると。そういう形で行政が真剣に、企業もそうした取り組みの中で平舘では全員が管内就職と。
今年3月末の各高校の県内就職率を見ると、盛岡工業は39.5%、水沢工業46.7%、一関工業45.6%と。県南の企業集積が多いところでなぜ県内就職が低いのか。頑張っているのは黒沢尻工業で61.9%が県内就職。これは地元企業と大いに連携強化し、OBなども頑張って、いま北上や奥州といったら求人がどんどん出ているところで、半分以上が県外に出ていくということはないのではないか。アンケートによれば7割方「県内に就職したい」という希望も持っている。そういう意味でいくと、本当に各高校でしっかり目標も方針も持って、就業支援員と連携してやれば、せめて5ポイントぐらいはすぐ上げられるのではないか。10ポイント上げるような運動が必要なのではないか。
【雇用対策課長】
ご指摘の通り、平成30年3月卒業の県内就職率は、高校・大学とも前年度より低下しており、県外企業が本当に積極的な採用活動を展開したと、進路指導の先生方からも聞いている。大学においても、かつてなかった企業からの求人があったと。
まさにこれから5000人、さらには地域の企業にも雇用を確保していくためには、地域・学校・行政が本気になってというお話、まさにその通りだと考えており、目標値などについては、今年度、次期総合計画のアクションプランにおいて、今後県内で見込まれる新規雇用の状況だとか、県内就職率動向、地域の活動などを具体的な取り組みと合わせて検討していきたい。
今年度に関しても、当部の方から進路指導の先生方の会議でお話をさせていただく機会を設けて、まずは地元、そして地元に生徒の意向に添う企業がなければ県外に行くのではなく、県内に目を向けて就職先の選択肢を岩手から考えてもらう指導をしていただけないかとお願いしたところである。地域の企業との連携、生徒の意識を変えていく必要があると考えているので、その点を、先進の取り組みなどを普及させていきながら県内就職率の向上を図っていきたい。
【雇用対策労働室長】
教育委員会との連携、高校ごとの地元就職率の違い等についてご指摘があった。当部と教育委員会あるいは移住定住を担当している政策地域部と一体となって取り組んでいるところだが、県立高校については、ご指摘のあったようなことも背景にあるということは、県として地元就職率を高めていくということで、教育長答弁にもあったが、先月の中旬に、各県立高校長に県内就職の促進という趣旨の通知を出したところである。いずれ岩手県の人口減少社会の中で、岩手県の産業振興のためにはやはり地元就職が必要だという意識を庁内で共通認識をもって、さらに連携して取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
いまの雇用情勢は、全国的にやはり人材不足である。いわば、労働生産年齢が全体として減少しているわけであり、そういう社会現象である。そういう中で、どうやって県内の優秀な人材確保をするかと。トヨタ東日本は「岩手県の労働力は優秀だ」ということで素晴らしい成果をあげているわけで、そういう人材を持っている。しかし県内の産業・企業で十分活用できていない。
行政・官僚の大問題だと思うのは、低い目標をなぜ変えられないのかということである。私はずっと一貫してこの問題を取り上げてきた。平成31年度67%という低い目標、しかし低い目標さえできない。山形は78%、宮城は80%、福井・富山は90%である。せめて山形並に、1年で5ポイントぐらい上げるぐらいの取り組みをしないと、そのために英知を結集しないと、皆さんも学校も心一つに頑張らないといけない。そういう意味で、次期総合計画で目標を考えるという話をしていたらいけない。この1年間で5ポイント上げようとか、そういう取り組みの中で次期総合計画の積極的な目標も出てくる。低い目標を維持して、突然次期総合計画で目標を示してもいけない。
そして中小企業で人材確保をするということでいえば、中小企業の皆さんの努力も大事だが、しかし中小企業は営業の人材がいないのも事実である。そこへの支援が必要である。東芝メモリは県内の高校全部回って、秋田や宮城も回っている。そういうところと競争してやろうとすれば、地元中小企業に対して、大企業のようにはできないようなところを支援して、地元の産業・企業を知ってもらうと。キャリア教育でいけば、小中学校から地域の産業や地域の企業と連携した学校づくりが必要だと思うが、そういう取り組みをぜひ今年度からやっていただきたい。その取り組みが次期総合計画の中身を作ると思う。
本会議でも議論があったが、産業振興政策は、次期総合計画の中でも不十分だと思う。産業振興は県行政の柱なので、そういう意味で、ぜひ今年度の取り組みから進めていくことが必要なのではないか。
【商工労働観光部長】
さまざまご指摘いただいたが、ここ数年の企業集積、人口減少等の動きの中で、雇用情勢を取り巻く環境はまったく変わってしまったと思う。この間の県内に求職した企業における岩手県の人材の働きぶり等が評価去れ、そういった認識が企業に広まってきている。これはこれでさらに伸ばしていかなければならないと思っている。大手を中心に企業がどんどん進出してきているので、これは大きなチャンスである。岩手県の若者たちも、自分が希望すれば県内で就職ができる、岩手を支える人間になれるというチャンスが広がってきているので、これは何としてもやり遂げなければならないと思っている。
今年度の取り組みの中でも、特に保護者の皆さんにもそういった意識をしっかりと持っていただこうということで、地元企業の説明会等も予定しており、また高校生と県内の企業で働いている若手社員との交流会の中で、地元企業の良さを感じてもらうという機会も持っていこうと思っている。いずれ現時点で我々が考えている最大限のことはやっていくつもりであり、また最終的にこれがベストということではなく、毎年度さらに伸ばしていきたいと思っている。
目標については、次期総合計画アクションプランの策定にまさに準備をしている段階なので、しっかりとしたものを作っていきたい。
いずれ地元企業も含め、地域産業全体としてしっかりと人材が確保されて振興につながっていくよう取り組んでいく。