2018年8月1日 商工文教委員会
来年度の県立学校の編制に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
来年度の県立学校の編制について、全体としては評価したい。
特に注目したのは、4つの高校について、学級減・学科減を延期すると。ここを一番心配していたので。
・前沢高校について
高校再編計画が示されてから、2学級が1学級になれば学校の存立が危ういと、大変な危機感をもって、学校改革プロジェクトをつくって学校改革に取り組んできた。その取り組みが今年の入学生59名に結実した。前沢高校は胆江地域にあり、交通の便も良いので、水沢にも一関にも進学できるということで、そういう点でいけば、前沢高校自身の魅力が生徒にも周りの中学生にも伝わるということが大事で、先日訪問した際に、最初に紹介されたのは、生徒自身がつくった学校紹介のDVDであった。学校でどんな改革をされているか、どんな部活動がされているか、3つのDVDを中学校にももちろんお知らせし、学校公開でも紹介しているということで、そういう点では学校改革で、授業改革、魅力ある高校づくり、広報と。どこに行っても感じるが、意外と地元の中学生というのは地元の高校を知らない。そういう点でいけば、積極的に高校からそうした取り組みを進めてきたというのは大変特徴的で、その努力が今年の入学生の確保に結実したので、こういう努力は評価されたということで、大変良かった。人口規模その他から見て、地域で必ず支えられる学校だと思うので。
・山田高校について
2学級から1学級減の計画が示されていたが、2学級から1学級というのは、学校にとっては質的な変化で、1学級で残るというよりは学校の存立が危うくなると。本当に危機感をもち、まず町民が立ち上がった。1月28日に町民集会を開き、山田高校2学級を守れということで、同窓会の会長さんが会長になり、もちろん町からも参加して。
山田高校自身も、高校の魅力化について、校長先生に聞いたが、ボランティア活動に積極的に参加していると。市日の取り組みや、社協の子どもたちのサマースクールのような取り組みに参加していると。生徒たちがいろんな活動をする際に、山田高校の生徒だと分かるようにベストを作ったが、予算の制約で4着のみだった。そしたら商工会が16着プレゼントした。やはり地元の中学校にも山田高校は頑張っているなと、そういう山田高校の魅力化の反映が今年の52名の入学生に確保につながったのではないか。特に山田高校の場合は、震災復興の過程で三陸鉄道もまだ通っていない中で、こうした努力で52名確保したのは積極的に評価すべきだと。
校長先生にも教育長にも聞いたが、今度三陸鉄道は、織笠駅が山側に移動して、新駅が高校に大変近くなり、通学の環境も良くなると。そうすると、吉里吉里や豊間根からも通学しやすくなるのではないかという話もあったので、山田高校は復興途上でこうした努力で今年度の52名の入学生を確保したということは評価されるべきだと思っていたので、今回の延期の措置を歓迎したい。
・水沢工業高校について
昨日訪問してきたが、ここは今年157名の入学生で、ほぼ定員通り確保したということで、いまトヨタ自動車東日本が1000名規模で生産をこちらに移すという計画を示しており、デンソーは生産設備を増設して求人を増やしている。一番大きな激変は東芝メモリで、秋田県に進出し、昨日の新聞報道だと、四日市と同じ規模の6000人規模の工場に将来的になるのではないかと。いま1000名2000名規模でやられたとしても、かなり大規模な工場の増設が計画されており、人材確保・雇用確保をめぐる情勢は、高校再編計画の時と比べて激変している。こういうときに、工業高校・専門高校の役割は、再編計画策定時とは違った重要性が明らかになっているのではないか。ましてや基本的に定員も確保している水沢工業高校の学科減は問題だという思いで訪問してきた。校長先生は、今年度の入学生は確保したので学科減の根拠はないと。4学科存続ということで第一次案では考えていると。しかし県教委の計画なので、学科減になった場合にはどうするかということを第二案・第三案・第四案と検討されている中身も聞いてきたが、やはり一番は学科減せずに4学科維持したいという強い思いが伝わってきた。
専門高校の場合、学科が1つなくなれば、1つの分野の学習ができなくなり、その分野の就職が断たれてしまう。なので普通高校の学級減とは性格が違う。そういう意味で、水沢工業高校には4つの学科があるが、東芝メモリが進出すると、設備システムの学科がかなり重要な役割を果たすのではないかと。機械・電気はだいたい汎用性があってどこでもあるが、インテリア―これは建築関係だが、今年31人の女子学生が入学し、あわててトイレを整備したという話も聞いたが、そういう意味でいくと、やはり雇用環境の激変の中で、工業高校の役割が今まで以上に大きくなっている。
そういう点で、今回学科減を延期した措置をとったことは大変良かった。全体として専門高校のあり方を再検討することが必要ではないか。平成27年12月に高校再編計画を立てた時と雇用情勢は激変している。そして県内で雇用を確保できるかどうかは、岩手県政のもっとも重要な緊急課題にもなっているので、そういう意味では今度の水沢工業高校の学科減の延期だけではなく、専門高校のあり方全体を再検討することが求められているのではないか。
・葛巻高校について
引き続き学級減の延期ということが示され大変安心した。6月に葛巻高校を改めて訪問し、今年は町が特別の努力をしており、昨年9月からの公営塾開設、今年は30人規模の寮を整備し、山村留学も二桁を目指して頑張るという状況があったので、46名ということで若干入学者は少なかったが、特徴的なのは、町内トップクラスの中学生が葛巻高校に入ってきたということで、質的に変わってきたなと。本当に町内で葛巻高校が頼りになる高校になったと感じていたので、そういう点が県教委として評価されたということは評価したい。
私の評価とあわせて、教育長の答弁をお願いしたい。
【教育長】
それぞれの学校に斉藤委員が訪問し、それに対して校長が学校での取り組みや将来ビジョンに力を入れて頑張っていきたいということをお伝えしたということは、校長としてのあるべき姿をしっかりお伝えしたということで、私も心強いなと思っている。
一例を挙げると、山田高校については、たしかに外から通学しやすくなるということがあるが、逆に外に出て行く機会も増えてくるということで、将来的な方向性を見極めるにはもう少ししっかりと毎年度の状況を見ていかなければならないと思っている。
全体的な高校再編のあり方を見直すべきではないかということだが、後期プランの策定に向けて、本年度から各市町村での地域との意見交換も行うこととしており、その中で後期プラン、今の計画そのものの考え方、社会情勢の変化に対する対応がどうあるべきかということもあわせて検討する必要があると思っており、現段階で具体的な方向性を申し上げることはできないが、高校のあり方というのは地域にとってきわめて大きな課題だという認識は年々高まってきているということを十分に踏まえつつ、丁寧な対応をしていきたい。
【斉藤委員】
そういう意味でいけば、高校再編計画は、かなり地域でも議論して、いろんな意見が反映された計画だと思う。同時に、生徒が急速に減少する中で、統廃合や学級減・学科減の計画が出たことも事実。そしてそういう学級減・学科減が示された学校が必死になって学校を守るために魅力化などの取り組みを始めたことは、大変新しい動きだったと。そういう意味で、学校の改革の努力が入学生の確保にも結びついてそれが県教委にも評価された。これは県教委に対する見方をも変えるものだと思う。一度決めた計画その通りではなく、地域や学校が努力して成果もあげ変化もつくれば県教委がそれを評価すると。今回の計画は、来年度は12校の学級減・学科減という大規模なもので、全てがうまくいっているわけではないが、そういう形で頑張っているところを県教委が評価したことは、県教委のあり方としても私は評価したい。
・過疎地や専門高校への35人学級の導入について
【斉藤委員】
もう1つ、調査の中で要望されたのは、ぜひ専門高校や過疎地の高校は35人学級にしてほしいと。専門教育などの場合にとてもではないが40人ではできない。やはり生徒減少の中で、2学級をどう維持するか。この40人学級にこだわらないで、過疎地や専門高校の場合には、35人学級を導入すべきではないか。
先日、商工文教委員会で秋田県の大曲農業高校を視察してきた。ここは35人学級で、秋田県は専門高校や過疎地の高校については35人学級で、青森県でもやっている。他県では、そうした取り組みを部分的に進めているので、40人で2学級を維持することは大変な課題でもあるので、35人学級ということを検討する時期にあるのではないか。それは岩手県の学校の現実と、他県でも導入していることを見れば、踏み込む時期にきているのではないか。
【高校課長】
県立高校への少人数学級の導入については、まずは県内では小・中から順次進めるということで、子どもの発達段階を考えるとまずは義務教育からということがあると考える。
その中で、現在でも各校においてさまざま工夫しており、習熟度別だとか、進路希望別といった対応をしているところであるので、まずは当面はそういった対応になるのではないかと考えている。
高校教員の定数については、高校標準法ということで国の措置を前提に措置されているので、少人数学級を導入すると、標準法に基づく配置が少なくなるといったこともあり、そうすると県の負担がなければ進めにくいということがある。こういった中で、現時点ではなかなか難しい面はあるかと思うが、今後とも国に対する定数改善の要望などはしているので、そういった中で将来的にどのような方法がいいか考えていきたい。
他県の状況についてご紹介あったが、他県でも、私が聞いている範囲では、県独自に教員を配置しているということではなく、全体の高校標準法に基づく配置の中で検討がされているとも聞いているので、それらについても研究していきたい。
【斉藤委員】
35人学級については、小中は来年度で全学年実施するという方向が示され、これは大変画期的なことだと。いよいよ高校なのである。
同じ高校標準法のもとで、秋田や青森は努力してやっている。基本はもちろん国で、国が教育にお金をかけないでこの国の将来はないと思う。本当に逆立ちした政治で、教育や福祉にこそお金をかけるべきだと思うが、しかし高校の現場を見れば、切実にこのことが求められていると。特に専門高校や過疎地で35人学級ということは、ぜひ後期計画を検討する過程で、この問題の全国的な取り組みを研究しながら具体的な検討課題にすべきではないか。
【教育長】
少人数学級をどう進めていくかという考え方については、課長から答弁申し上げた通りだが、まさに生徒数が減少してきている中で、日本の全体の力、岩手の力を維持させていくということで、一人一人の力を大きく育てていかなければならない。そういう中で、教員体制の充実を図っていくということはきわめて重要な視点だと考えている。
一方で、現実的に少人数学級を推進するにあたっては、国で示す標準法での財政事情の現実があるので、そのあたりを十分勘案していく必要がある。
他県の事例もお聞きしたが、それぞれの県に特徴があり、学校統合を強力に進めている県もあり、本県のように広大な県土を有するところにおいて、きめ細やかに小規模校でも可能な限りは残していくと。そしてまた現実として、小規模校、少人数学級になっているという中山間地を中心に、そういう実情もあるので、それらを含めて総合的な判断をしていく必要があると考えている。