2018年9月27日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)


・県内就職率の向上に向けた取り組みについて

【斉藤委員】
 8月末に、県立黒沢尻工業とハローワーク北上を訪問し、雇用状況を聞いてきた。というのは、東芝メモリをはじめ大企業・誘致企業の求人が続出している中で、ものづくりの誘致企業はどう人材を確保するのか。一方で、地元中小企業の人材確保は今まで以上に大変で切実になっているのではないかという問題意識で聞いてきた。
 県立黒沢尻工業については、県内就職率が今年3月卒で61%と工業高校で一番高く、なぜ61%という県内就職率を維持しているのかということでその取り組みを聞いてきた。
 1つは、今年の雇用情勢を具体的にどのように把握し、誘致企業の人材確保や地元中小企業の人材確保に取り組もうとしているか。
 2点目は、そういう情勢の中で、高卒者の県内就職率を抜本的に高める取り組みが今までになく必要だと。労働局の調査でも、就職希望の7割は県内就職である。だから、本当にこれに応えるような対策がしっかり講じられるべきだと思うがいかがか。

【雇用対策課長】
 今年に入っても、直近の有効求人倍率1.43ということで、かなりバブル期より長い1倍強ということで、県内の企業さんも人材確保が厳しい状況になっていると認識しており、また、5月以降においては、新規求職者のうち、仕事に就かれている方々の求職者も前年対比で増えているということを把握しており、まさにご指摘の通り、誘致企業の影響なども出ているのではないかと認識している。県としては、それらの状況を踏まえて、県内企業が人材確保を進めていくためには、生産性の向上などにより、収益・経営力を高めるとともに、より働きやすく安心して働くことができる待遇や労働環境の整備を進めるということが必要と考えており、生産性の向上、働き方改革を両輪として魅力ある企業づくりに努めていくことができるようしっかり支援していきたいと考えている。
 高卒者の県内就職率の抜本的向上に向けては、まさに最近のデータで、近年にないくらい7割の県内就職意向ということで、まずはその方々が自分の意向に沿った就職ができるよう、きちんと就業支援員や学校の先生方と連携し、意向に沿った企業のマッチングができるよう就業支援員を通じて働きかけていきたいと考えており、また引き続き県内就職意向がより一層高められるよう県内企業の認知度や県内で働くことの魅力、地域の企業を知っていただく取り組みを強力に進めていきたいと考えている。

【斉藤委員】
 北上が一番有効求人倍率が高く1.85倍と。今もお話があったが、求職者の5割以上が在職者でとても驚いた。ということは、今の職場の待遇・状況が悪い、非正規が多いということである。だから求人が出ているときに新しい職場を求めると。やはり今の雇用実態の劣化・悪化というのは、有効求人倍率が高いといっても求職者の半分は在職者ということに表れているのではないか。
 例えば東芝メモリ、この新規求人の岩手の採用計画というのは、大卒で80人、高卒290人、中途採用140人、四日市からの転職を約300名見込んでいる。ただこの計画通りにいっていない。大手の東芝メモリも、大卒でも確保できていないし、高卒も報道では東北各県から190人と。それでも求人数が多いのでそれなりに確保はしているが、大企業でさえ十分確保できていない。その他にもたくさん大手が求人を出しているので。大手は、求人を確保する力も営業も体制もある。自力でそれなりの対策を講じることができる。
 しかし、地元中小企業はその煽りを受けて、二重の厳しさに直面している。そこを踏まえて、生産性の向上・労働環境の改善―たしかにこれは中長期的に大事だが、今年・来年・再来年といったときに、そこに取り組みながらもやはり特別の支援をしてやらないと、県内中小企業はますます大変になってくる。
 黒沢尻工業高校はなぜ61%の県内就職率になっているか。最大の秘訣は、地元企業との連携である。インターンシップは5日間行い、1学年240人が5日間地元の中小企業・関連企業(70〜80社)に、毎年協力を得て行っている。5日間のインターンシップというのは県内でも一番長いと思うが、そういう取り組みを2年生の時期に行い、3年生になったらだいたいそういうインターンシップをやったところの工場見学をやって決めると。意外と黒工から東芝メモリに大きく流れるということはなかった。それだけ地元企業との協力関係が密になっている。
 黒沢尻工業と比較すれば、盛岡工業・水沢工業・一関工業は弱いのではないか。だから県内就職率は4割にとどまっている。私は黒沢尻工業の校長先生に「ぜひ7割まで上げてほしい」と言ってきたが、他の工業高校も4割台ではなくせめて5割、さらには黒工並を目指していく必要があるのではないか。その秘訣は、やはり県南にはそれなりの企業があるので、黒工並に地元企業との連携・協力関係を築くことが大事なのではないか。「北上川ものづくりネットワーク」も大変力になっていると黒工の校長先生は言っていたが、しかしこれには水沢工業も一関工業も入っている。それを生かしてやっているかどうかである。
 さらに黒工は、専攻科22名は全員が県内就職である。専攻科の2年目には、自分の就職先の研究をやる。だから61%の比率はこれも含めればもっと高くなる。
 この経験をしっかり県としても把握し、他の工業高校も同じような取り組みをすれば、工業関係でも5%10%の引き上げは可能ではないか。それは高校生の希望にとっても、地元の中小企業にとっても、そういう形で安定して人材を確保していくことができるのではないか。

【産業集積推進課長】
 地域ものづくりネットワークが、地域の産業界・教育界の連携により活発に活動しているが、ご指摘の通り、強弱は多少あろうかと思う。そういった中で、今年から地域産業高度化支援センターを設置し、良い取り組みが県内全域に波及するよう、各地域のものづくりネットワークと連携して強化していこうと。そういった中で、ご指摘のあったような地元企業との連携、学校との連携が進むよう今後も取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 もう1つ紹介すると、就業支援員から聞いた話だが、普通科の平舘高校は管内に100%就職している。これも管内の企業との連携カギになっている。地元から就職することが定着すると。これは企業側もそういう思いで。高校の取り組み、地元企業の取り組みもあるが、その取り組みの違いでかなりアンバランスがある。頑張って成果をあげているところがあるので、しっかりそれを踏まえる必要がある。
 次期総合計画で、県内就職率が新たな指標になっていて、私は何度も言っているが、今の低い県内就職率の指標では取り組みにならないと。せめて山形の79%とか宮城の80%に肩を並べるような県内就職率を高めるということにしないと、希望も幸福も見えてこないと思うがいかがか。

【雇用対策労働室長】
 前回のアクションプラン策定時点(平成26年度)とさまざま状況も変わってきている。県としても、高校生の地元定着を図るということは非常に重要な課題と認識している。現在、新たな総合計画、アクションプランに向けて、そうした情勢の変化等を分析し、新たな目標を検討していきたい。

【斉藤委員】
 11月に具体的な指標を示すと思うが、今までは低い目標(66%)で、今年は65%、去年は66%だった。この程度の目標では取り組みにならないと繰り返し指摘してきたが、しっかり目標をもって、それを実現するための取り組みや方針が具体化されなければならない。私は芽はあると思っている。だから、中長期的に打開すべき問題と、1年2年3年で成果をあげる問題とあるわけで、ぜひそういう立場で、希望が見える計画・方針をしっかり練っていただきたい。

・被災中小企業の再建の問題について

【斉藤委員】
 今日いただいた資料だが、被災市町村における商工団体会員事業所の被害状況で、被災事業所数は4341、営業再開・継続が3067(70.7%)だった。どんどんこの率が減っているのだが、よく見なければならないのは、陸前高田市が53.5%、大槌町54.3%、山田町57%と、被害の大きいところは5割台にとどまっている。そういう意味では、今がんばって営業再開・継続している中小企業・事業者を本気になって支援しないと、今でさえ4割以上減っているので、大変なことになってしまう。県の被災地における中小企業の営業継続や本設移行に対する支援策はどうなっているか。
 千田美津子県議が一般質問で聞いたが、仮設で営業している店舗の方々の本設移行、あるいは今の仮設を譲渡してそのまま営業継続したいという意向などはどのように把握されて、どう支援しようとしているか。

【経営支援課総括課長】
 本会議の千田県議の際の答弁にもあった通り、現在も仮設店舗で営業している商業者は280者ほどあり、現在市町村では、仮設に入った皆さんの意向がどういうものかという、聞き取り・訪問・書面でアンケート調査などを行い把握しているものと承知している。県もその状況を四半期に一度集計している。
県としては、本設再開の準備が整った方には、グループ補助金の活用について計画づくりから商工団体と一体となって支援しており、自己負担分の費用について工面が難しい場合、あるいは高度化スキームというグループ補助金の4分の1の自己負担を貸し付ける制度があるので、その辺の金融の支援も合わせて行っている。
 国においては、仮設撤去費用を10分の10補助し撤去する制度があるが、その助成について今回の概算要求で要求している部分もあるので、市町村においては、今までは撤去の期限が30年度末だったが、概算要求を受けて延長される可能性が大きいので、撤去の期限によらず被災事業者の皆さんには支援できるものと思うので、まだ転居先が決まらない方や迷っている方については、県も一緒になって支援をしていきたい。

【斉藤委員】
 5月の政府交渉の際に、中小企業庁の企画官から「中小企業庁としては来年度も継続する。あわてて退去を迫ることがないように」という話を皆さんにも市町村にもお伝えした。7月の政府交渉の際には、「平成32年度まで継続する予定だ」という回答だった。
 今回概算要求に盛り込まれた中身は、やはり復興期間の10年間、あと2年間は継続するという方向で示されていると思う。せっかく国がそういう形で10年間は仮設店舗解体補助をやると言っているときに、見通しも立たない中で退去されられることがあっては絶対にならない。ましてや、すでに4割以上が廃業を迫られているようなところで、今がんばっている事業者を応援しないでどうするのかと。まさに復興に対する基本的姿勢が問われる。どうやったら営業継続できるか、本設移行できるか、もしくは譲渡というやり方で継続するか、親身になって支援することが県や市町村の一番大事な姿勢ではないか。
 思い出されるのは、釜石市の呑兵衛横丁の方々が退去させられてしまった。テレビで観たが、「営業継続したい」と言っていた。しかし行き先がなく3月末で追い出されてしまった。こんなことはあってはならない。
 やはり基本姿勢として、国もそういう方向を示した中で、1者1者の状況を踏まえて、親身になって営業継続と本設展開を支援すると。県から市町村まで心一つに取り組んでほしい。
 「幸福」をキーワードに次期総合計画を策定するとしているが、幸福を踏みにじるようなことをしてはならない。
 まだ280の商業者が仮設で頑張っている。このうち陸前高田市は129もある。そういう行政の立場ということを貫いていただきたい。

【商工労働観光部長】
 仮設施設撤去費用の助成についてはご指摘の通りだが、いずれ仮設で営業されている方が多く残っている4市町、大槌町では集約した上で延長するということにしており、残りの3市町についても個別の相談に応じながら対応するという意向を示しているので、被災市町村のまちづくりの中でどのように考えていくかということと密接に関係してくるので、本設移行、テナント営業、仮設の譲渡といった方法など、県としても市町村と事業者に寄り添いながら最後までしっかり支援していきたい。

【斉藤委員】
 一昨日、県の商工会の会長さん方と懇談する機会があったが、陸前高田商工会の会長さんは、今アバッセに20店舗、その回りに20店舗、数年先には100〜120店舗ぐらいに集約される予定だと。だからこれからが勝負である。今、力のあるところが先行的に中心市街地に出店している。これからどのぐらいの店舗が集約されるかが勝負どころ、これからが本番だと思う。
 大槌町は、仮設商店街「復幸きらり」のところに集約すると。ただ大槌町は、中心商店街の中心が定まっていない。だから県も専門家の知恵を借りて、どういう形で中心市街地を構成するのか、他のところと違った困難さを持っているのではないかと思っているので、そういうきめ細かな対策をしていただきたい。
 陸前高田市は、仮設営業者の調査を行った。そしたら6割が無償譲渡を希望すると。理由は、1つは資金問題―これから1千万円2千万円借金して出店し10年後に元が取れるかという不安。2つ目は住宅の近くで商売がしたいと。ここがなかなか複雑なところで、商店街からすれば、周りに家があるということが決定的な条件になっている。そういうことが反映されているのではないか。
 やはり仮設で営業されている方々、その他のことも含めて、事業者の実態・要望・意向をしっかり把握して、その意向に応えた支援策、そして中心市街地の形成ということで。大槌はこれから駅もできてくるが、どこが中心地になるのか、それでどこに出店したらいいかということで迷っている。まちなか再生計画もそのようにならなかったという話も大槌の場合はあるので、まちづくりときめ細かな支援策をしっかり進めていただきたい。

【商工労働観光部長】
 被災市町村のまちづくりと密接に関わってくる事案でもあるので、大槌町の場合は、まちづくりの全体図を描くところで少々時間がかかっていると思っている。
 いずれ市町村が主体になってまちづくりは進めていくべきものだと思うので、我々としては、そこに暮らす方々、そこで事業をされる方々、一体となって支援していきたい。