2018年10月3日 決算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)


・決算額に対する震災復興分の状況について

【斉藤委員】
 決算額に対する震災復興分はどうなっているか。これまでの累計はどうなっているか。
 生活再建にかかる震災復興分はどうなっているか。

【財政課総括課長】
 平成29年度普通会計決算における歳出総額9869億円余のうち、震災復興分の額は3229億円余で総額に対する割合は32.7%である。これまでの累計は2兆7720億円余となっている。
 復興基本計画にもとづく復興に向けた3つの原則の「くらしの再建」のうち、生活・雇用の分野にかかる決算額は、平成29年度決算額167億円余、これまでの累計は3388億円余となっている。

【斉藤委員】
 震災復興は、私たちは生活再建が最大の柱だと思っているので、その点でお聞きした。

・消費税増税の影響について

【斉藤委員】
 安倍内閣の最大の懸案は来年10月の消費税増税である。8%に増税後、県民の負担額はどうなったか。
 来年もし10%に引き上がった場合、県民の負担額はいくら見込まれるか。
 法人事業税の状況について、赤字で法人事業税の対象にならなかった事業者はどのぐらいあるか。

【税務課総括課長】
 国・地方合わせて消費税率8%となった時の負担増だが、地方消費税にかかる平成25年度と28年度の決算額に基づいて推計すると、県民一人当たり年間約52,000円、一世帯当たり年間約116,000円、県民総負担は年間約625億円と推計される。
 消費税率10%となった場合の負担増だが、政府の試算をもとに推計すると、軽減税率適用後で県民一人当たり年間約24,000円、一世帯当たり年間約62,000円、県民総負担は年間約335億円と推計される。
 法人事業税について、法人事業税は、大企業、資本金1億円超だと外形標準課税もあるので100%課税になっている。中小企業、資本金1億円以下だと、課税になっている割合が42.1%なので、58%程度が赤字となっている。

【斉藤委員】
 答弁あったように、大変な県民の負担だった。8%で625億円、一世帯当たり年間約116,000円。さらに10%になれば、県民の総負担が335億円、一人当たり年間約24,000円、一世帯当たり年間約62,000円。累計すると、一人当たり年間約79,000円、一世帯当たり年間約178,000円、総額960億円の負担になる。
 消費税率8%増税が日本経済の停滞を招いている。そういう中でさらに10%増税となったら、岩手の経済にも復興にも大きな打撃を与えるのではないか。
 中小企業の課税割合も聞いたが、58%が赤字で、ところが消費税というのは赤字の事業者にもかかってくる。中小企業の経営にとっても大変な重税になることは目に見えている。
 部長にお聞きするが、これだけの負担増で、さらなる負担増がかけられようとしているが、県民のくらしにとっても、復興にとっても、地域経済にとっても、本当にこれは軽視できない問題だと思われるが、どう受け止めているか。

【総務部長】
 非常に多額の負担というご指摘があった。一方で、社会保障関係費の財源をという観点もあり、そういった国・地方を含めての財政運営という中での必要な税制改正ということもある。そうした中で対応していくことが求められていくものと思いますし、10%に引き上げられていく際に、食料品等の生活に直接影響する部分について軽減税率ということで配慮されるということもあるので、そこはきちんと県民にも理解していただくよう努めていかなければならない。

【斉藤委員】
 県民の幸福をキーワードにしてやろうという中で、部長さんがこの負担増についてそうした軽い答弁ではいけないと思う。
 10%増税になれば335億円の負担増になる。復興にしても中小企業にしても本当に大変なことになる。

・公文書の管理と条例の制定について

【斉藤委員】
 昨年来、国政の場で、公文書の廃棄・処分・隠ぺいなど、あり得ないことが起こっている。そして今、地方自治体にとっても、旧優生保護法で本人の同意も取らずに手術した、子どもを産めなくなったということが大きな社会問題になっている。こういう点で、過去のそうした証拠文書がないというのは大問題である。
 公文書管理条例では、「この法律は、公文書を民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として位置づけ、公文書管理に関する基本的事項を定める。そのことによって国民に対する説明責任を全うすること目的にしている」と。公文書の管理は「民主主義の根幹」だと。あわせて、地方自治体については、「地方公共団体はこの法律の趣旨に則り、保有文書の適正な管理に関する施策を策定し実施するよう努めなければならない」と。
条例は義務づけではないが、条例の制定を真剣に検討すべき課題になっているのではないか。公文書管理法、公文書管理条例についてどのように県は検討しているのか、していないのか。全国の条例化の取り組みはどうなっているか。

【私学・情報公開課長】
 ご指摘の通り、地方公共団体が公文書等の管理に関する法律において、文書の適正な管理に必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないとされている。本県では、知事部局・行政委員会等が定める規則等において、処理内容等を正確かつ簡明に記録した行政文書を作成すること、行政文書の類型に基づいて保存期間を設定し適切に保存しなければならないこと等を定めて運用している。
 条例の制定については、現在1都5県において制定されていると承知しているが、本県については、規則等に基づき適正に管理し、法の趣旨に沿った運用が行われていると認識しており、新たな条例の制定については、現時点では検討していない。
 なお、県が作成した公文書などについては、県が共有する知的資源として適正に管理し、その内容を将来に伝えていくという必要があることから、文書管理上の適正性を確保することは必要であり、文書管理事務の研修を行っているところであり、また、管理状況等の点検・評価の実施について検討を行うこととしている。

【斉藤委員】
 公文書管理法については真剣に検討していないと。
 公文書管理規則を読んだが、目的がどうなっているかというと、「この規則は知事が保有する行政文書の管理に関し必要な事項を定めることにより、当該行政文書の適正な管理を図ることを目的とする」と。ここには、「国民共有の財産」「県民共有の知的財産」という位置づけもないし、「民主主義の根幹」というものもない。行政が文書を管理するための規則になっている。公文書管理法と全然違っている。
 例えば県内でも、大槌町で震災検証のメモやデータを勝手に廃棄していて、町長はあとで謝罪会見もしたが、こういうことが起こってはならない。
 県政や県の政策がどのような過程で作られてきたのか、それが何をもたらしたのか、県民が検証することができるのが公文書である。
 率直に言って、規則には県民の立場は一つもない。1都5県がすでに条例制定している。公文書管理法の規定から見ても、県は具体的な施策を講じるべきと言っているので、県民の立場に立って、公文書管理法に基づいた条例化を検討すべきではないか。

【総務部長】
 条例化の検討については、先ほど課長が述べた通り、現時点では検討していないが、行政の透明性だとか公正性を確保するという意味においては、文書管理が適正に行われなければならないというのは当然のことである。
 いま検討しているのは、2020年4月から導入を予定している内部統制制度において、文書事務も対象にしようと考えている。現段階において、内部管理制度の中に文書事務も含めて、そこにはメール等も含めて、そこで取り組んでいきながら、その取り組み状況を見極めながらの検討という風にとらえている。

【斉藤委員】
 公文書管理法は「国民の知的共有財産」という位置づけで、国民の知る権利から打ち立てられた法律で、公文書を「包括的・統一的に管理する」方向を示している。だから、単なる規則とは中身が違うので。法の趣旨に沿って、県民の共有財産としての公文書の管理としないといけないと思うし、やはり公文書館の設立なども視野に入れて検討していただきたい。

・入札問題について

【斉藤委員】
 昨年度と今年度の入札率の推移、入札不調、1者入札の状況はどうなっているか。
 この間、盛岡管内の県議が建設業協会盛岡支部と繰り返し懇談してきた。そこで出された要望は、最低制限価格の導入と予定価格の事前公表制度の見直しである。この点について、岩手県はある異端のところにあると思うが、全国的な状況を示していただき、なぜこの最低制限価格の導入と予定価格の事前公表制度にこだわるのか。

【入札課長】
 県営建設工事における一般競争入札の平均落札率は、平成29年度92.1%、30年度は7月末時点で91.6%となっている。入札不調の割合は、29年度18.8%、30年度は8月末時点で13.3%となっている。条件付き一般競争入札における1者入札の割合は、29年度34.1%、30年度は7月末時点で21.9%となっている。
 最低制限価格制度にかかる全国の状況は、国の調査結果によると、29年3月末現在で、最低制限価格制度を導入している都道府県が44、導入していない県は本県を含む3県となっている。
 予定価格の公表制度については、29年3月末現在で、全国においては予定価格の事前公表をしているのは本県を含む15都県、事後公表は17道府県、事前公表と事後公表を併用しているのが15府県となっている。
 最低制限価格制度については、本県はかつて制度を導入してきたこともあるが、平成19年7月の入札制度の見直しの際に、今後一般競争入札を本格的に実施していくといったところでの透明性を一層高めるためと。それから、総合評価落札方式を拡大していくという観点から、最低制限価格制度を廃止した敬意がある。一方、現時点で本県が運用している低入札価格調査制度は、「調査基準価格を下回る入札があった場合でもすぐには失格としない」、「その入札価格で適正な工事の施工が可能かどうかを審査する制度」となっており、不良・不適格業者を排除しつつ、企業努力等が価格に反映され、より低廉で良質な調達が可能になる点で、最低制限価格制度よりもメリットがあるということで導入してきた。さらに、ダンピング防止のために、低入札価格調査制度の中で、一定の価格を下回った場合には自動的に失格する基準も設けているところであり、こうした面で最低制限価格制度と同様の効果も発揮できるという点で幅広く適用できることから、現在の方式をとっている。
 予定価格の事前公表制度の見直しについては、事前公表については、入札の透明性の向上、発注者・受注者双方の事務効率の向上、さらには予定価格にかかる不正防止の観点から有効なものとして導入している。事前公表にあたっては、国が求めている実施の適否の検証を行いながら運用してきており、現時点では、例えば入札にともないくじ引きの件数が極端に多くなるとか、落札率が高止まりになるといったような事前公表による弊害も特に認められないということから、現行制度で対応している。

【斉藤委員】
 全国の動向からいっても、岩手のやり方というのは決して先駆的ではなく異端的になっている。そして実際に入札に参加している建設業者が「矛盾がある」と言っている。しっかり検証していただきたい。
 平成19年の入札改革というのは、談合事件を契機に行った。そのときの経過はあるが、しかし当時から10年以上経っているので、それが今どうなっているのかということを全国とも比較検証して、改善に取り組んでいただきたい。

・米軍機F16戦闘機の低空飛行訓練とオスプレイの飛行問題について

【斉藤委員】
 米軍機F16戦闘機が一戸町の高森高原、これは県営の風力発電の風車の間を低空飛行した。これは自らネットに公開して明らかになったが、とんでもないことである。風車にぶつかったら大事故になり得る。
 最近は、オスプレイが衣川地区の上空を飛んでいたと。飛行ルートの通告もなかった。こんな傍若無人な米軍のやり方を許していいのか。
 全国知事会は7月に、政府にたいしてきわめて重要な申し入れを行った。「米軍基地負担に関する提言」で、日米地位協定の抜本的見直しを求めた。そういう点では、毅然としてこの問題について岩手県は、米軍や防衛省に対応すべきだと思うがいかがか。

【防災危機管理監】
 米軍機F16の超低空飛行に関してだが、ご指摘の通り本年4月27日にネットに掲載されたという報道があり明らかになった。すみやかに米軍三沢基地の報道部長がそれを認めたというステートメントを発表した。県としては速やかに5月2日に防衛省や三沢基地に対して、本県上空で米軍機が超低空飛行をしたことについての遺憾の意を文書で申し入れ、さらに5月9日には、県・二戸市・一戸町が東北防衛局を訪問し、局長に要請文書を直接手交し、強い遺憾の意を表するとともに、米軍に適切な対応を求めるよう要請した。局長からは、「要請を米軍と共有し、引き続き安全面に最大限配慮し、地域に与える最小限にとどめるよう働きかける」という回答を得たので、その確実な実行について注目している。
 オスプレイの本県上空の飛行については、7月17日に奥州市衣川区の上空を飛行し、それが撮影され新聞に掲載された。過去、平成27年9月にも二戸市上空を飛行していたと発表されている。これについては、常々、オスプレイが導入された、あるいは訓練に参加すると発表される度に知事から要請している。その内容は大きく2つあり、「オスプレイの安全性の丁寧な説明による不安の払拭」「オスプレイ飛行ルートの具体的な飛行内容の事前説明」ということで申し入れてきたが、防衛局は要請を「米軍に働きかける」ということは約束していただいている。これはかなり働きかけていただいていると認識している。しかしながら米軍の回答は、「運用に関することについては答えられない」ということで、ただし、「日本の国内法は遵守する」といった姿勢の中で、地域協定に定められたところは一応クリアし、地域に対する影響を最小限にするということで言ってくださっているということであるので、引き続き申し入れながら、随時監視していくという姿勢である。

【斉藤委員】
 日米地位協定で、米軍機は日本の航空法は除外になっている。ここがドイツやイタリアとの根本的な違いで、ドイツやイタリアは自国の航空法に基づいて、それぞれの軍隊の指揮管理の下で米軍は動いている。米軍が勝手に飛行してもルートも何も示さない、落下物があってもすぐに飛行を再開するのは日本だけである。本当に異常なことである。
 しかし私が注目したのは、7月27日付で全国知事会が、ついに「日米地位協定の抜本的見直し」を求めたので、この立場で岩手県ももっと踏み込んだ対応をしていただきたい。

・盛岡短大跡地の利活用について

【斉藤委員】
 地元の期成同盟会が8月6日に第6回の盛岡市長への陳情を行った。市長の回答は、「西側の城南小学校に隣接部分を考えており、3800mは確保したい。県との協議で、盛岡市有地との等価交換で取得を考えている。等価交換は知事にも話は伝わっている」と。
 盛岡市もかなり具体的な構想を立てて、知事や副知事にもこの話は伝わっていると思うが、県と市の協議はどうなっているか。今後の見通しはどうなっているか。

【管理課長】
 ご指摘の通り、盛岡市においては地域住民からの要望を受けて、現在同跡地への山王児童老人福祉センターの移転整備に向けた検討を行っている。市とは現在、事務レベルでの話し合いを進めている。
 しかしながら、市における活用については、同跡地の一部にとどまる見通しであることから、県としてはこれ以外の部分の利活用について検討していく必要があると考えている。
 また、旧校舎等を使用せず、仮に解体するとなった場合に、多額の費用が見込まれるところである。
 このような課題はあるが、県としては引き続き盛岡市と十分な調整を行い、跡地利活用について検討を進めていきたい。