2018年10月4日 決算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・復興基金・いわて学びの希望基金の活用状況について
【斉藤委員】
復興基金の昨年度の活用実績、これまでの実績・率を示していただきたい。
いわて学びの希望基金の活用状況についても同様に、残額を含めて示していただきたい。とくに30年度にかなり拡充されたようなので、その中身も示していただきたい。
【復興推進課総括課長】
平成29年度までに、くらしの再建の分野だと、住宅再建費用の一部助成や国保・後期高齢者医療における一部負担金の免除に要する経費、安全の確保の分野では、再生可能エネルギー導入促進に向けた環境整備、生業の再生の分野では、中小企業の事業再開、被災地における起業支援など、これまで44事業・220億円余を活用してきた。このうち29年度については、25事業・25億円の事業に活用したところであり、29年度末の基金残高は約75億円となっている。
いわて学びの希望基金は、平成29年度までに、遺児・孤児に対する奨学金給付、生活基盤を失った低所得者世帯の高校生等に対する教科書等の購入、被災生徒が部活動や文化活動における大会参加への交通費等の補助など、19事業・23億円余の事業に活用してきた。このうち29年度においては、16事業・4億円の事業に活用し、基金残高は約76億円となっている。
いわて学びの希望基金の拡充だが、今年度、教育委員会で遺児・孤児に対する給付事業において、支給額の増額、給付対象を大学院生まで拡充したほか、政策地域部でも、通学費用の負担軽減により就学支援する事業等を新たに実施するなどの活用となっている。今年度については、約9億円の活用を見込んでいる。
【斉藤委員】
復興基金の方は、めいっぱい積極的な事業をやられてきたのではないか。残額が75億円ということは、基本的には今年を含めた3年間は何とか維持できると。
学びの希望基金は、今年度かなり拡充し、今年度分で9億円と。残額は76億円だが、奨学金制度というのはかなりの期間が必要だと思うので、どのぐらいの期間まで活用される見込みか。
【復興推進課総括課長】
例えば、今回拡充した奨学金給付事業においては、教育委員会において遺児・孤児が大学院を修了するところまでということで、2035年度までの給付を見込んでいる。
【斉藤委員】
学びの希望基金は、90億円を超えるあたたかい支援が寄せられた。基本的には、教育の分野を中心に積極的に活用されてきたのではないか。
・被災地のコミュニティの確立について
【斉藤委員】
災害公営住宅のコミュニティの確立にとって、高齢者問題は大変切実である。仮設住宅・災害公営住宅の高齢者比率はどうなっているか。
災害公営住宅の場合は、入居者名簿が整備されるのがわずか3団地だった。知事の答弁では、自治会の要望があれば名簿は提供できるという回答をいただいたので、生活再建課も積極的にかかわってコミュニティの確立に取り組むべきではないか。
【生活再建課総括課長】
8月末現在、応急仮設住宅に入居されている世帯のうち、65歳以上を含む世帯の率は41%、災害公営住宅で65歳以上を含む世帯の率は61.1%となっている。
入居者の情報提供について、自治会で入居者名簿を作成しておくことは有効だが、個人情報保護の観点から、入居者の同意を得た場合に、その情報について自治会の方にも情報提供しており、ただ、自治会によってさまざまな設立や運営について課題があるということで、復興局でも今年度実施しているコーディネート事業を県土整備部ともしっかり連携しながら円滑な設立・運営が行われるよう対応していきたい。
【斉藤委員】
災害公営住宅の入居者名簿というのは、自治会が求めても今まで提供されていなかったというのが実態である。ただ、今回の議会で「自治会の要望があれば提供できる」と知事も答弁しているので、22団地のうち県営では3団地しか名簿が整理されていない。そうした実態も見て、自治会をつくっただけではコミュニティをつくれないので、高齢者を抱えた世帯が災害公営住宅で61%もいるので。そういう意味では、そうした方々の見守りも生活支援相談員とも連携してやらなければいけない状況になっているので、踏み込んで、知事の答弁を生かして対応していただきたい。
・震災関連死の実態について
【斉藤委員】
震災関連死の実態と要因分析、死亡時期や年齢構成等はどうなっているか。
実は、日本弁護士連合会が今年8月23日、災害関連死の事例の集積・分析・公表を求める意見書を出した。この理由は、阪神淡路大震災では919人・14.3%が災害関連死、新潟県中越地震では52人・76.4%が災害関連死、熊本地震では212人・79.4%が災害関連死で、東日本大震災津波では3676人、岩手は466人・18.7%が災害関連死となっている。これだけの犠牲が生まれている。災害によっては災害関連死の犠牲者の方が多い。
この実態・要因を分析して、災害では命が助かったが、その後の劣悪な避難生活等で命を落とすことが絶対にあってはならないというのが日本弁護士連合会の最近の意見書なので。
【生活再建課総括課長】
東日本大震災津波による災害関連死として認定された件数は、県全体で昨年度末までで466件となっている。
年齢で見ると、66歳以上の方が8割以上を占め、死亡時期については9割以上が発災後1年以内に亡くなっている。
要因別では、県が受託している審査会で認定された方については、避難所等での生活の肉体的・精神的疲労が一番多く約3分の1、既往症の悪化、介護機能の低下によるもの―などとなっている。
【斉藤委員】
どういう対策をとったら災害関連死を無くせるかというのがこの分析の目的で、日本弁護士連合会の意見書の趣旨である。
平成24年8月21日に、復興庁がこの時点での震災関連死に関する分析・報告というのを行っている。ただこれは発災1年後の分析で、犠牲者が1263人の時点での分析で、このときの岩手県の犠牲者は対象になったのは193人だった。それから466人に増えている。一人一人がどういう理由で、どういう状況で命を落としたのか。この問題をしっかり岩手としても解明して、今後の災害では、災害で助かった命を再び犠牲にしてはならないと。こういう精神で分析・検証し、対策を明らかにする必要があるのではないか。
【生活再建課総括課長】
関連死の多くを高齢者が占めていること、亡くなられた要因としては避難所等での生活の肉体的・精神的疲労が多くを占めているということから、災害関連死を防止するためには、避難所における高齢者に対するケアが特に重要と考えられ、これまで保健福祉部の方で取りまとめている東日本大震災津波における避難者支援活動記録集においても、高齢者のニーズに合った避難所の環境整備の必要性をまとめており、市町村避難所運営マニュアルモデルを作成して市町村に配布するなど、避難所の環境改善を図るなどの対応をしている。
国では平成24年に、本県を含む被災3県の主な市町村に対して行った調査の分析・対応策を公表しているが、その後も毎年2回、被災各県等からの報告を受けて、関連死の方々の性別・死亡時期・年齢等について公表している。
【斉藤委員】
平成24年の復興庁の震災関連死の報告書は、発災1年後の震災関連死の数がまだ少ない時期でも、分析をされて9つの課題が提起されている。しかしその後にもっとたくさんの犠牲が出たというのが実態なので。
岩手で467人も震災関連死が出たというのはとんでもない数で、これ自身が大災害である。これからの災害で関連死を出さないという立場で、国のレベルでもやるべきだし、岩手のレベルでも原因・分析・対策を考えていかないと、教訓を生かせないと思うがいかがか。
【復興局長】
ご指摘の通り、災害関連死をなくすというのは大変大事なことであり、せっかく助かった命がその後の環境変化で失うことになることは大変不幸なことであるので、そういったことがないように取り組むべきものと考える。
災害関連死の詳細な分析等については、個々の方々の生涯の既往歴など個人情報に配慮した情報収集が必要であり、また、医学的見地からの十分な検討も必要かと思う。行政のみでできるものではないということでもあるので、国の考え方も確認しながら今後どういう対応ができるか吟味してみたい。
【斉藤委員】
国にも求めるし、岩手としても467人の犠牲をむだにしないように。東日本大震災津波の教訓を国内外に明らかにしようと思ったら、こういう問題をしっかり解明すべきだと思う。
東日本大震災津波の最大の教訓は避難である。なぜ避難できなかったのか、避難しなかったのか、避難誘導している中での犠牲―。本当に今回の教訓を、それぞれの市町村はそれなりに行っているが、事実に基づいてしっかり検証して、それを返していく必要がある。
・津波伝承館について
【斉藤委員】
運営と体制について、1回限りのものではなく、末永く国内外に伝承されるとすれば、やはり災害の専門家が館長になるとか専門家の英知も結集した運営体制や、企画展示でも、いつ行っても同じものということではなく、その時々の資料を生かした企画展示なども行われる必要があるのではないか。
【まちづくり再生課総括課長】
運営については、県が直接管理する方法、指定管理者制度を導入する方法が考えられるが、それぞれのメリット・デメリットを勘案しながら鋭意検討を進めている。館長についても、館を代表する素晴らしい方をと考えている。
・三陸チャレンジ推進事業について
【斉藤委員】
実績と雇用効果はどうなっているか。
先日、県の商工会のそれぞれの会長さん方との意見交換・懇談もしたが、三陸チャレンジ推進事業が大変被災地の起業、第二操業などで大きな役割を果たしているので、ぜひ継続・拡充してほしいという要望をいただいた。今後の見通しはどうなっているか。
【産業再生課総括課長】
この事業については、被災地において起業や新事業を行おうとする方に対して、事業計画の策定から起業等に至る初期費用、クラウドファンディングによる資金調達、販路開拓までを総合的に支援する事業であり、28年度から3ヶ年で実施している。
初期費用については、28年度は14事業者、29年度40事業者に対して補助金を交付し、平成30年度は現在3回目の募集を行っているが、これまで2回の審査会を開催し21事業所を採択し順次交付決定を行っている。
雇用効果については、これまでの合計75事業者において、計画ベースで200名を超える雇用が見込まれている。
今後の見通しは、この事業の前身事業も含めると130者を超える事業者について新たな取り組みについての支援を行っており、今後この方々の事業の継続・拡大について引き続き支援していく必要があると認識している。
一方において、中心市街地における店舗建設がまだまだ途上であること、復興庁の31年度予算概算要求において、仮設施設の移設撤去等の助成期限が延長されたこと等を踏まえ、起業・新事業活動等を行う方々への支援を来年度以降についても現在検討している。
【斉藤委員】
現段階で3年間で75事業者が採択され、起業が35を占める。若者・女性などが起業する、事業で新展開するということでも本当に活用されている事業で、実は2回目まで21事業者だったが、3回目で15事業者が申請を予定していると聞いている。そうすると今年も36事業者まで見込まれ昨年並の実績になると思うので、まだまだそういう需要は多い。この間採択された方々のフォローと合わせて、ぜひ被災地での起業・第二操業を支援するこの事業は、ぜひ継続・拡充してほしい。
【産業再生課総括課長】
事業に対してあたたかいお言葉もいただき、まだまだ中心市街地における店舗の再建はこれからなので、その方々が前向きに新しい取り組みができるような支援については、来年度に向けて前向きに考えていきたい。