2018年10月5日 決算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)


・医師不足の解消と医師確保対策について

【斉藤委員】
 先ほど、県立病院をめぐって10年来の議論があったので、一言述べておきたい。県立病院の有床診療所化、無床診療所化ということがあった。そうした中で県議会では、地域医療を守れという請願が採択され、そうした強行的なやり方に県議会の意思が示されたと。そういう中で、再議の手段まで使って強行突破したというのが経過だった。やはりもっと県民や県議会との合意と納得を丁寧にするべきだったと。これが最大の教訓だったと思っている。
 同時に達増県政が大きく転換したのは、東日本大震災津波からの復興の中で、被災した3つの県立病院再建方針を打ち出したと。やはり県立病院・地域病院というのは、地域住民のセーフティーネットだと。ここが位置付いて20病院6診療所は基本的に維持するという方向が明確に示されて、県民も医療関係者も安心して頑張るような状況がつくられたと思う。その転換は大変重要だったと私たちは評価している。
 今の県立病院の改革・前進のために避けて通れないのは、今の医師不足の現状打開だと思う。その立場で総括質疑でも立ち入って質問したが、前向きの答弁があった。
 平成27年度に、保健福祉部が医師の必要数の調査を行い、県立病院全体では、その調査結果では245名がさらに必要という結果が出た。基本的にはこの調査結果の内容は今も変わっていないのではないかと思うがいかがか。
 また医師の過酷な労働実態を打開することが大変重要で、9月に中央病院の宮田院長とも懇談した。中央病院では、各部署とのヒアリング、職員アンケートを実施し、現状と課題を明らかにして、7つのプロジェクトに取り組んでいる。職員全体の声を聞きながら、中央病院の改革のプロジェクトを打ち出して取り組んでいることは、大変重要だと。
 その第一が、安定的な医師確保だった。そして今の超過勤務を解消するためには、今の倍の医師が必要だということも言われ、一気に超過勤務の解消というのは無理な話だが、率直に言えばそういう状況だと。
 緊急に改善すべきは、月80時間100時間という過労死ラインを超えるような実態の改善だと思うので、この超過勤務の実態はどうなっているか。

【医師支援推進監】
 平成27年度の医師の実態調査の状況で、出された状況と現時点ではあまり変わっていない状況と認識している。
【職員課総括課長】
 医師の超過勤務の平成29年6月の実績について、全病院の実態を取りまとめて調査したところ、医師で80時間超が107人、うち100時間超が50人となっている。
 平成30年6月の実績は、80時間超が85人、うち100時間超が39人となっている。

【斉藤委員】
 厳しい状況はあるが改善をされているので、80時間100時間というを直ちに無くすような手立てをとっていただきたい。
 次期経営計画の中間案では、医師の増員計画は見直された。33人という素案から81人の増員に見直されたことは高く評価したい。問題は、その内容と根拠はどうなっているか。

【医師支援推進監】
 医師の配置計画は、平成31年度から36年度の6年間の医師72名・初期臨床研修医9名の計81名の増員を計画した。次期経営計画の素案では、増員のための主な取り組みとして、引き続き即戦力医師の招へい活動の推進や、関係大学等に対する医師派遣要請を行うことにより、38名の増員を計画したところだが、中間案においては、これらに加え、奨学金養成医師にたいし、県立病院に勤務しながら専門医資格取得可能なプログラムの積極的な活用などにより、初期臨床研修後の早期の義務履行の促進を図ることとし、81名の増員計画とした。
 次期経営計画においては、これらのさまざまな取り組みを着実に行い、医師確保に努めていきたい。

【斉藤委員】
 医師の増員は本当に切実で重要な課題だが、今年までの5ヶ年計画で109人の増員計画を立てながら、残念ながら7人減少になってしまった。この事実も直視しながら、本気になって打開していくと、医療局だけではなく県をあげて打開していくことが県立病院の最大の力になっていくと思うので。

・看護師の大幅増員について

【斉藤委員】
 看護師の深刻な労働実態について、医療局長は具体的にどのように把握しているか。

【医療局長】
 看護師の労働実態について、予決算特別委員会で何度も委員からご指摘があるが、月8回を超える夜勤に従事している看護師の数というのが1つの指標という形でお示ししていただいている。
 29年度において、14病院で月8回を超える夜勤に従事した看護師は、延べ903人となっており、28年度と比較し2病院・延べ121人増加している。
 その後いろいろと増員も図りつつ、新人看護師がだんだんと戦力になってくるということもあり、平成30年度の第一次半期までの実績で、12病院で延べ299人となっており、前年同期比で延べ121人減少している。
 これをもって減少したから良いという気持ちは持っていないが、これまでの取り組みが少しずつ花開いている部分もあるのではないかと考えている。

【斉藤委員】
 いつも2つ指摘しているが、1つは9日夜勤の問題。月8日夜勤というのは今までの原則だったが、それが崩されて、崩されるどころか毎年増え続け903人のところまでいったのが29年度で、本当に看護師にとっては危機的状況だと。
 もう1つは、年休の問題である。看護師の昨年の平均取得日数は8.2日、あくまで平均の数字で、中央病院では5日以下というのが50%を超えている。本当に年休が取れない。この実態で明るく頑張るといっても無理な話である。
 経営計画の素案では看護師を減らす計画で大変ショックを受けた。しかし今回66名の増員の計画で、見直したことは評価するが、しかし現在の計画は130名の計画に対してそれを超える138名の増員だった。138名増員しても、私が指摘したような、医療局長が述べたような9日夜勤は減るどころか増えてしまった。66名の増員の計画で9日夜勤は解消できるのか、8日しか取れないような年休というのは改善されるのか。

【職員課総括課長】
 本年度までの経営計画においては138人の増員という実績だが、138人というのは全て純増ということではなく、入院患者数の減少にともなう病棟の休止や病床数を減らしたことにともなう適正化などいろいろなやりとりをしてそうした状況になっている。
 増員した中の多くは、育児休業などの職員の代替を充実されるということで配置しているが、かなりの数がそちらに回り、ほぼ充足という状況まできている。
 そういった中でまだ部分的に、お休みになる方の分が手当されないと、こういった部分を中心に手当していくということで、今後の計画では66名の増員を予定している。

【斉藤委員】
 先ほど一戸病院の質問については、病棟が2から1に削減という話があった。おそらく素案は3病棟ぐらい削減の計画だったのではないか。1病院1病棟だけの削減の計画になっているのか。

【経営管理課総括課長】
 具体的な病棟削減については盛り込まれていないところである。我々の方で、病床適正化の部分で減員となっている部分については、患者数の減少を見込んだ上での削減という部分であり、直接病床の削減ということではない。
患者数の見込みについては、だいたい毎年1.4〜1.6%の人口減少があるということで、患者数もその割合で減らしており、それに基づく看護師の試算をするとそうした数字になるといったところである。

【斉藤委員】
 看護師の数は病床よりも病棟単位であるので少し正確ではないと思う。一戸病院ははっきり答えたので。
 病床稼働率が3年間経過して70%を割っている病院はいくつあるか。

【経営管理課総括課長】
 一戸病院、江刺病院、遠野病院、大東病院となっている。

【斉藤委員】
 一戸以外のところはまだ削減の具体化はしていないと受け止めていいか。

【経営管理課総括課長】
 遠野病院においては、昨年1月から病棟を休止した上で、今年度7月から病棟を1つ廃止した。そのように、患者数の状況等を踏まえながら病棟の再編等を検討していくということである。

【斉藤委員】
 これは地域病院の果たす役割をどう発揮させるかということも問われている課題なので。
 それで、66人の看護師の増員で9日夜勤が解消されるのかという質問には明確な回答がなかった。
 中央病院の看護師さんと懇談してきたが、中央病院でさえ9日夜勤が発生するというので、どういう対応をしているかというと、夜勤専従の配置である。そうしないと9日夜勤になってしまうというので、やりたくない若手の看護師まで含めて無理してやっているのが実態である。看護師が足りないために、9日夜勤を何とか食い止めるために。そういう意味では、看護師の増員で三交代制勤務をしっかり守っていくということが必要だと思う。
 そして中央病院では、産前産後休暇の人が出ても補充されていないと。看護部長さんの話では「600人の看護師がいるが、常時約100人が育休・産休・短時間勤務などの制限勤務となっている」と。これを前提にした看護師を確保しなかったら、実働600人とはならないと。そこを踏まえた増員計画が必要ではないか。

【職員課総括課長】
 はじめに夜勤専従の関係だが、夜勤専従の第一の目的は、職員のワークライフバランスの向上である。家庭の事情や介護などにより、夜間を中心に勤務したいという方が一定数いるので、そういった方々に対して勤務の選択肢を与えるということで実施しているが、効果としては、夜勤が難しい方の分もカバーしているというのは事実である。
 中央病院の産育休の職員の補充が足りないというご指摘をいただいたが、職員配置の定数の関係とか採用の関係というのは前年の秋頃に始まり、その時点で次年度の休暇取得者の見込みを立てて、ある程度それを充足しようとして配置をしているが、やはり新たに出産される方だったり休まれる方が発生するので、そこでどうしてもズレが生じてしまう。それをまた埋めようとしているうちにまたズレが生じるということで、そうした部分を少しでもプラスして埋めていきたいというのが今度の計画の内容である。

【斉藤委員】
 夜勤専従というのは、労働組合も合意がないまま現場でやられている。そして若い人しかやれない。1ヶ月2ヶ月もやれば、本当に生活のサイクルがおかしくなってしまって、続かなくなってしまう。三交代それ自身が過酷な勤務である。それに対して、夜勤で12時間交代制となると、さらに多くのリスクを増やすという勤務形態なので、慎重にやっていただきたい。
 中央病院の院長先生と懇談し、労働基準監督署から是正勧告があったということで、タイムカードの導入を考えていると。出退勤の時間をしっかり把握して、実態に応じて改善を進めていくということで、大変感心して聞いてきた。そういう点では、中央病院を突破口にして、県立病院全体でも出退勤の時間を客観的に把握するという、民間では当たり前の体制をとるべきではないか。
 いま実態は、だいたい看護師は仕事の30分〜1時間前に出勤している。なぜかというと、事前の準備が必要だし情報収集も必要である。しかしこれは勤務時間に入っていない。出勤簿にも超勤簿にも、仕事の準備や情報収集という項目がない。これは労働基準法では「労働時間」と明確にされているので、ここは改善すべきではないか。昼休みも60分あるがせいぜい30分しか取れていない。これも超過勤務の対象になるものなので、そういう意味で、本当に過酷な中で働いている中で、働いた分が正しく評価されないのは二重の苦しみになる。
 超過勤務の解消、年休の取れる環境に改善しながら、労働時間の厳格な管理に踏み出すべきではないか。

【職員課総括課長】
 県立病院においては、職員による超過勤務の内容、時間の記録について確認を行い、適正に手当を支給しているところである。不払いだというトラブルは基本的には起きていない。
 超過勤務の適正な把握のためには、超過勤務の基本的な考え方や原則について、職場内で共通認識を醸成するとともに、日々の事前命令、事後確認の徹底を図り、適正にしていくことが重要だと考えている。
 タイムカード等による出退勤の時間の管理については、他県の取り組み状況なども収集しながら、出退勤時間と勤務時間との関係―例えば工場などであれば、その2つの関係はあまりズレないと思うが、病院という性格上かなりのズレや、呼び出されて出たり入ったりといろんなことが起きるので、それらをどう整備していくかということについて研究していきたい。
 職員の休暇の取得などについては、いろいろな取り組みを進めていきたい。

【斉藤委員】
 早出の仕事の準備とか情報収集というのは、厚労省のガイドラインでも勤務時間だと。昼休みが30分しか取れなかったらそれも超過勤務だと。これは否定しがたいことである。それを無視して「適正にやっている」というのは正確ではないのではないか。

【医療局長】
 中央病院に労基署が入ったということで、幸か不幸かと言えばおかしいが、非常に職員の間で超過勤務とはなんぞやという意識がある意味高まっており、この機会を活用してそもそも超過勤務の考え方というものを各職員に徹底したいと思っている。
 ご指摘の「準備のための時間」「残務の時間」も当然労働時間としてみなすのはその通りだと思うので、そうした取り扱いがなされていない部分については是正していきたい。