2018年10月11日 決算特別委員会
農林水産部(水産部門)に対する質疑(大要)
・本県主要魚種のサケ・サンマ・スルメイカの状況について
【斉藤委員】
サケは昨年度7289トンで震災前比27%、サンマ14146トンで震災前比27%、スルメイカは3584トンで震災前比19%と。
今年は9月末現在で、サケは397トンで前年比111%だがこれからが本番なので。サンマは5170トンで前年比323%、震災前比では43%にとどまっている。スルメイカは1453トンで前年比82%でさらに落ち込み、震災前比で17%だった。
サンマは回復傾向があるが、依然として昨年度も今年度も危機的状況に変わりはないのではないか。
【漁業調整課長】
サケについては、震災前の半分ということで、今後主要魚種として回復していくために、種苗の適切な放流といったものが必要になってくると思う。
サンマについては、国の予測においても、資源が減少しているという評価もあり、今年は今のところ去年の3倍程度という実績はあるが、今後の推移を慎重に見ていかなければいけないと思っている。
スルメイカについては、本県の場合は、冬生まれ群という東シナ海で生まれてくるものだが、冬季の水温が低かったということで、資源が少ない状態ということを聞いている。回復にはやはりしばらくかかるのだろうという印象を持っている。
【斉藤委員】
魚市場への水揚げ状況について、水揚げ量、水揚げ額の合計を示していただきたい。
【漁業調整課長】
昨年度は、県内全ての魚市場で86892トン、291億2600万円ということである。
今年度は9月30日現在で57986トン、91億2400万円となっている。
【斉藤委員】
昨年度の水揚げ量は震災前比49%、金額は90%となっている。数量が落ち込んでいるわりには金額が高めになっているのは、水産加工にとっては悲鳴のような状況である。
サケの大不漁の要因について、漁民や関係者は大変心配している。国・県でさまざまな調査が行われているが、その状況はどうなっているか。
【水産担当技監】
不漁の要因は、稚魚の放流数が震災により少なくなったこと、放流後の海水温が春先に急上昇し、沿岸域で稚魚が減少した可能性があること、広く北洋海域でも稚魚が減少した可能性があることと考えている。
調査の状況については、県の水産技術センターでは、放流後の沿岸における稚魚の生残の調査を行っており、これにより稚魚の減少の要因の解明に取り組んでいる。その他に、健康な稚魚等をつくるため、陸上でのふ化場の生産技術開発について、大規模実証試験場というのがあるので、生産ベースの試験を実施している。今年度から新たに高水温に対応するため、水温が高くても遡上してくる北上川水系の稚魚を使用し、稚魚生産技術開発を進めていきたい。北上川にサケがのぼってきたので、それから採卵したものを活用し、これから試験していきたいと思っている。
国の調査については、平成27年度に回帰率の向上に向け、調査事業を新たに創設したものがある。種苗放流手法改良調査事業というものだが、この事業により、放流時期やサイズ等を変えた放流調査などを実施しており、河川や沿岸での稚魚の減少を回避するための技術開発を実施している。
【斉藤委員】
党県議団も、県の水産技術センターや東北水研宮古庁舎を訪問して勉強してきたが、県の水産技術センターに行ったときに少し気になったのは、サケ稚魚の初期生残率が、昭和60年は16%だったものが平成18年は4%まで落ち込んだと。海に出る前に湾内でかなり減耗しているのではないかということで、大変危機感を感じた。
東北水研宮古庁舎では、海水温が春先までは冷たくてその後急速に上昇して、稚魚が生息する期間が短縮されていると。それだけに、リスクを回避する放流時期というのが必要なのではないかという提起もされたが、その点について県はどのように考えているか。
【水産担当技監】
たしかに春先に急激に水温が上がり稚魚の生残に影響しているのではないかというのは、県の研究者も国の研究者も同じ見解でいると思う。
そのためにも、やはり健康な稚魚を生育しなければならない。そのためには、過密ではない状態で、適正な密度で稚魚を飼っていくということもあり、それから放流時期も重要になってくると思うので、海水温の上昇等を勘案しながら、適正な時期に放流していくことが必要となっており、放流時期については、水産技術センターで情報を出し、適切な時期をお知らせするようにしている。
【斉藤委員】
さまざまな研究も行われ、一定の方向性も示されていると思うが、簡単にすぐ解決できる課題でもないという重要な課題なので、英知を結集して指導を徹底していただきたい。
・ワカメ・コンブ・カキ・ホタテ・アワビ・ウニについて
【斉藤委員】
養殖・採介藻も大変厳しい状況になっているのではないかと思うが、水揚げ量と金額、震災前との比較を示していただきたい。
減少している具体的な要因は何なのか。
アワビ稚貝生産のための栽培漁業推進事業(アワビ種苗放流支援事業)が平成30年度で終わるという話も聞いているが、この継続も必要ではないか。
【水産担当技監】
昨年度の実績について。養殖ワカメは、水揚げ量16000トンで震災前3ヶ年平均の71%、金額は39億円で震災前の92%。コンブは、水揚げ量5884トンで震災前の52%、金額は12億円で震災前の76%。カキ剥き身で、水揚げ量395トンで震災前の62%、金額は6億6000万円で震災前の66%。殻付カキで、水揚げ量985万個で震災前の47%、金額は8億7000万円で震災前の71%。ホタテ貝は、水揚げ量2571トンで震災前の41%、金額は16億7000万円で震災前の95%。ウニは、水揚げ量77トンで震災前の63%、金額は8億8000万円で震災前の115%。アワビは、水揚げ量147トンで震災前の42.8%、金額は11億8000万円で震災前の51.3%。
今年度の実績について(9月30日現在)。養殖ワカメは、水揚げ量14000トンで震災前63%、金額は32億円で震災前の77%。コンブは、水揚げ量6313トンで震災前の59%、金額は13億円で震災前の92%。ホタテ貝は、水揚げ量571トンで震災前の19%、金額は3億7000万円で震災前の47%。ウニは、水揚げ量68トンで震災前の57%、金額は78億5000万円で震災前の99%となっている。カキについては、10月からの出荷となっているんで、まだ集計は出ていない。アワビについては11月からの漁獲になる。
減少の要因については、ワカメ等の主要な養殖種目については、震災により養殖業者の減少にともない、養殖施設数が減少したことなどがある。特に、今年度のホタテ貝の減少が大きいが、貝毒による出荷規制等の影響、稚貝の変死・変形等があり、そうした要因によるものである。ウニについては、エサとなる海藻の生育が悪く、ウニの実入りが少なかったことなどが挙げられ、アワビについても、おそらくエサの問題で痩せたアワビが多いということで、水揚げ量が減少している。
栽培漁業推進事業についてだが、震災後県では、アワビの早期の資源回復に向けて、漁協が行う種苗の生産や購入、放流に要する経費に対し、国の事業を活用して支援してきた。アワビの水揚げ量も低迷しているところもあるので、今後ともアワビ種苗の生産・放流への支援が必要と考えているので、31年度以降についても、引き続き国に対して事業の継続を強く働きかけ、アワビの資源増勢に取り組んでいく考えであり、9月上旬に発表された農水省の来年度予算の概算要求には、アワビの放流支援事業が組み込まれていると確認していたので、来年も補助が予算化されることを期待している。
・水産加工業の現状と課題、県の対応について
【斉藤委員】
水揚げ量がそれぞれ減少して、原材料価格が高騰している。
宮古市の水産加工業者にもお話を聞いたが、「今の不漁と原材料の高騰が3年続けば水産加工はとてももたない」と。大船渡市で聞いたときもそうだった。
水産加工業の現状と課題、県の対応はどうなっているか。
【水産担当技監】
平成28年の本県水産加工業の生産状況は、国の調査によると、生産量は94000トンで震災前の78%、生産額は729億円で震災前の101%となっている。
また県の調査では、平成30年8月現在で、被災した水産加工業者の68%が、主な課題として「原材料価格の高騰」や「調達困難」を挙げていることから、加工原料の安定確保がもっとも大きな課題だと認識している。
このため県では、まずは水揚げ量などの情報を迅速に提供するとともに、不漁のサケ・スルメイカ以外で価格が安定している原料に転換するような事業者への助言、遠隔地からの原料調達の場合の国の補助制度の活用などを支援している。あわせて、漁獲が好調であるサバ・イワシを漁獲する巻き網漁船などを地元魚市場に誘致し、代替原料の安定的な確保を図っていきたい。
・震災復旧した施設の固定資産税の減免について
【斉藤委員】
これは延長されて来年度までとなっているが、宮古管内の漁協を訪問したら、「通常なら5000万円のところ1500万円に減免されている」と。これが全て課税されたら復興の障害になるということだった。
共同利用漁船は、いま漁協の所有になっているが、利用漁業者に無償譲渡すると。そうした場合に、寄付行為になって課税されると。これは漁協にも漁民にも課税されるということである。
きわめて厳しい漁業・水産業の状況の中で、こうした減免制度は継続を強く求めていく必要があるのではないか。
【団体指導課総括課長】
今後、固定資産税の軽減措置については、いわゆる復旧に向けた投資直後の事業者の税負担の軽減を図るということで、初期の段階の税負担を軽減するということで4年5年というスパンで組み立てられた仕組みであり、現時点においては、国が減免期間の延長を検討しているという情報は聞いていない。ただ、今お話あったような漁協等からの現状もあるので、改めて状況について我々でも聞いて必要な対応をしていきたい。
【漁業調整課長】
共同利用漁船に関しての課税について。漁協が所有する共同利用漁船を組合員に無償譲渡する場合は、漁船の実績価格相当額が譲り受けた漁業者の事業所得とみなされて課税の対象になると聞いている。
・クロマグロの規制の問題について
【斉藤委員】
定置網に一度に100尾かかるとか、小型漁船漁業はこれまで700尾投棄したと。投棄すれば一緒に他の魚も逃げていくということで、巻き網漁船こそ卵を抱えたクロマグロを獲ったり、3キロ4キロのクロマグロも獲っている。ここに甘くて、沿岸漁民には厳しいのではないかという指摘もあったが、県はどのように対応しているか。
【漁業調整課長】
本県におけるクロマグロの漁獲は定置網で行われているが、定置の特性上、特定の魚種のみを漁獲することは困難であり、クロマグロを漁獲しないためには他の魚も逃げてしまうということで、クロマグロのために放流または休漁の措置が必要になってきている。それにともない、漁業者においては、漁業収入に影響を与えるということがある。
県としては、国の補助事業を活用して、放流経費への支援を行うとともに、休漁する場合には、漁業共済制度による減収補填制度があるので、それらが受けられるように指導している。