2018年10月12日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)


・住宅再建への支援について

【斉藤委員】
 被災者住宅再建支援事業は復興局の所管だが、市町村と協力して100万円の補助が8月末までに8762件。
 県土整備部関係では、生活再建住宅支援事業を取り組んでいるが、昨年度の実績とこれまでの累積はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 生活再建住宅支援事業については、東日本大震災津波により住宅に被害を受けた被災者に対して、新築・補修・改修・宅地復旧に必要な資金の一部を補助する事業である。
 平成29年度の実績は、新築件数が1065件・6億3930万円、補修が949件・2億8683万円余、利子補給補助が346件・2970万円余、宅地復旧が46件・4666万円余となっている。
 平成23年度から29年度末までの実績は、累計で新築が6697件・41億3770万円、補修が11426件・33億3600万円余、利子補給補助が2335件・3億6768万円余、宅地復旧が1640件・15億7268万円余となっている。

【斉藤委員】
 かなり大きな成果をあげていると思うが、土地区画整理事業の遅れによって平成32年度までに家を建てたくても建てられない方が出てくるが、こうした方々も引き続き対象になるようにすべきではないか。

【建築住宅課総括課長】
 被災者の住宅再建の状況等を見ながら、復興局が所管している被災者住宅再建支援事業とも連携しながら、今後の支援策については検討していきたい。

【斉藤委員】
 知事は「最後の一人まで寄り添って支援する」と言っているので、その立場でやっていただきたい。
 震災前と比べて住宅建設一戸当たりの費用、坪当たりの単価はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 戸当たりの費用については、国が行っている建築着工統計調査によると、本県における持ち家の木造一戸建て住宅の工事費は、平成22年度の1949万円から平成29年度は2184万円ということで12%程度の上昇となっている。
 一坪当たりの費用は、県内の建築士・設計事務所・工務店・林業・木材産業関係者などからなる岩手県地域型復興住宅推進協議会の調査結果では、県全体で震災前の坪単価48.5万円から平成29年12月頃の坪単価58万円に20%上昇している。沿岸市町村においては、震災前の坪単価47.9万円から平成29年12月頃の坪単価は57.6万円と20%上昇している。

【斉藤委員】
 住宅建設費用は震災前から9.5万円値上がりしている。30坪の家を建てれば285万円の負担増になる。そうすると、被災者生活再建支援金の300万円は飛んでしまう。そういう点でも、被災者生活再建支援金の500万円への引き上げと、県の100万円の補助、さまざまな県土整備部の支援策というのは住宅再建にとって重要な補助制度であるので、引き続き取り組んでいただきたい。
 災害公営住宅の建設費用は一戸当たりどうなっているか。昨年度の実績、累計での実績はどうなるか。

【営繕課長】
 県が整備した木造を除く災害公営住宅では、外構工事および造成工事を除いた建物の本体工事価格で算定すると、一戸当たりで平成29年度は約2384万円、これまでの平均では約2004万円となっている。

【斉藤委員】
 どんどん建設費が上がっている。逆にいけば、だからこそ自立再建を支援することが自治体にとっても被災者にとっても大事な課題になってくるので、自立再建への支援を強めていただきたい。

・災害公営住宅の家賃減免について

【斉藤委員】
 災害公営住宅の入居世帯、国の家賃軽減の対象世帯はどうなっているか。
 県の減免制度の周知徹底はどうなっているか。

【住宅課長】
 平成30年9月末現在において、県が管理する災害公営住宅1483世帯について、入居が1292世帯で、そのうち国の東日本大震災特別家賃低減制度の対象は938世帯となっている。
制度の周知方法については、県が独自に実施している家賃減免制度と合わせて、入居説明会のほか、昨年度は対象となる全戸にお知らせを配布している。

【斉藤委員】
 県営と市町村営全体の状況はどうなっているか。

【住宅課長】
 9月末現在で4841世帯、うち国の特別家賃低減制度の対象は3624世帯となっている。

【斉藤委員】
 全体で国の家賃減免制度の対象は74.8%で、圧倒的に低所得者が入居している。
 国の減免が6年目から値上がりしていくが、値上がる過程で県の減免制度が有利な世帯が出てくるので、しっかり県の減免制度を周知徹底していただきたい。

・災害公営住宅の高齢者の入居状況とコミュニティの確立について

【斉藤委員】
 災害公営住宅の高齢者の入居状況、一人暮らしの状況はどうなっているか。

【住宅課長】
 9月末現在で、県営災害公営住宅入居1292世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は874世帯・約67%となっている。そのうち高齢者の一人暮らしは555世帯で全体の約43%となっている。

【斉藤委員】
 本当に10年経ったらどういうことになってしまうのかという状況である。
 本日の岩手日報では「空き室」という記事が出ていたが、おそらく一度入居して亡くなられた方、施設に入所した方などが少なくないと思うが、そういう方々の数は把握しているか。

【住宅課長】
 一度入居して退去された世帯については、9月末時点で、市町村営を含め364世帯、うち県営については71世帯となっている。

【斉藤委員】
 高齢者が多い、一人暮らし世帯が多いということで、県は、管理している住宅センターに3人の支援員を配置して、見守り等コミュニティの確立に取り組んでいるが、その実績を示していただきたい。

【住宅課長】
 県では、管理している災害公営住宅を含めた県営住宅全体について、指定管理者の自主事業として、75歳以上の一人暮らし世帯や80歳以上のみの世帯を対象に、訪問巡回等を行っている。
 災害公営住宅については、昨年度742回、今年度6月末時点で215回の訪問を行っている。

【斉藤委員】
 3人の体制でよく頑張っていると思うが、社協の生活支援相談員、各自治体でも支援員を配置していろいろやっている。ところがこの情報共有がされていない。
 釜石市の平田災害公営住宅では、自治会が作られて活発な活動を行っているが、誰がどこに住んでいるか分からない。ここでも見守りの対象の高齢者がいると思う。
 住宅センターが見守りしている方々も、できれば自治会と情報共有しながらやっていく必要があるのではないか。
 合わせて、入居者名簿は22団地のうち3団地でしか作られていない。「入居者名簿は提供できる」という回答を何度もいただいているが、ぜひ徹底して、せっかく作られた自治会が全ての入居者を対象にしてコミュニティの確立に取り組めるようにしっかり進めていただきたい。

【住宅課長】
 本県では平成28年度から、災害公営住宅の自治会の設立のほか、入居された方がお互いに顔見知りになるまでということで、一定のコミュニティが形成されるまでの間、コミュニティ形成支援員として2名を配置している。その支援員については、自治会の設立、運営の支援において名簿作成のための入居者状況については、事前に同意いただいた方の情報を自治会に提供させていただいている。災害公営住宅のコミュニティ形成支援事業によるコミュニティ形成支援員などによる災害公営住宅の自治会の方が必要とする情報など、必要な支援については引き続き行いたい。

【斉藤委員】
 実態はそのようになっていないので、よく現場で問題解決するようにしていただきたい。

・堤防の強化、河川改修について

【斉藤委員】
 7月の西日本豪雨災害で224名が犠牲になった。
 一番多く犠牲を出したのは倉敷市真備町で52人。この直接的な要因は、100年前に造られた堤防が8箇所決壊した。
 愛媛県では、ダムがいっぱいになって、安全基準の6倍を超えるような放流を行い、流域で8人が犠牲になった。今その検証がなされている。
 もはや今は「想定外」などというような状況ではない。一昨年の台風10号災害に続く、西日本豪雨災害の教訓をどのように受け止めているか。

【河川課総括課長】
 ご指摘の通り、7月に西日本を中心に記録的な大雨となり、しかも長時間の降水量で多くの観測地点で観測史上1位という状況で甚大な被害をもたらした。改めて、治水施設の能力には限界があり、堤防やダムなどの施設では防ぎきれないような規模の洪水が起こりうるということを再認識した。
 このことから、やはりハード整備を推進するとともに、ソフト事業も一体となって洪水対策を進める必要があると考えている。

【斉藤委員】
 岩手日報に掲載された「検証―西日本豪雨」の連載で、これは共同通信の配信だと思うが、「ハード頼りの限界」と指摘している。ダムというのは、計画水量を上回ったら規制できない、逆に危険が増してしまう。このことを今回の豪雨災害は明らかにしたと思う。決算特別委員会で「もうダムの時代」という話があったがとんでもない。想定を超えるような雨が降れば、ダムが危険に変わるということも浮き彫りになったのではないか。
 例えば、愛媛県の野村ダムでは毎秒1800トン、鹿野川ダムでは安全基準の6倍の3700トンを放流した。逃げ遅れて犠牲になったと。
 今、簗川ダムが建設されているが、計画降雨は2日間で210ミリ。今回の西日本豪雨では、24時間雨量で690ミリとか600ミリ、480ミリというものである。こういう雨が県内に降ったら、簗川ダムは全然機能しなくなってしまうのではないか。

【河川開発課長】
 委員お話のあった件は、超過洪水には効果がないのではないかというお話かと思われるが、いずれダムについては、超過洪水時においても、洪水ピークを迎えるまで流量増加時においては、流入量を上回って放流することはなく、下流への水量の低減により、ダムがなかった場合に比べ、水位のピーク時刻を遅らせることにより、住民の避難時間の確保につながるということが挙げられている。
 いずれダムの施設も含めて、施設では防ぎきれない洪水は発生する、想定以上の洪水が発生する中で、ハードだけではなくソフト対策も絡めて、住民の避難行動に結びつくように対応していきたい。

【斉藤委員】
 慎重な答弁だったが、結局、計画雨量を超えたらダムは機能しない。それどころか放流せざるをえなくなり危険が増してしまう。これは、ダムの効果はあるということと、計画雨量を超えた場合の危険性を平時から徹底していかないと、愛媛と同じことになってしまう。
 これまでの河川事業の歪みがどこにあるかというと、「ダムを造れば守られる」という形で、河川事業費はほとんどがダムであり、そのために河道掘削などの河川改修がおろそかにされてきた。それこそ小本川でも問題になったが、河川の中に生えた木で洪水がせき止められてしまった。洪水を受けてからの対策にならざるをえなかった。
 やはりダムだけに頼るのではなく、堤防の強化や稼働掘削などが一番効果のある洪水対策だと思う。専門家は「決壊しない堤防の技術は2002年の時点で確立された。しかしこれではダムに事業費が回らないから封印した」と。これは国交省の役人の指摘である。決壊しない堤防を造れば、越水しても被害は最小限に抑えられる。
 こういう形で、河川行政も見直すべきは見直すということで、教訓をくみ取るべきではないか。

【県土整備部長】
 ダムの治水効果だが、例えば、簗川ダムは洪水調節ゲートという機能はなく、穴が空いている状態で、その穴の寸法に流出する分しか出さないので、洪水時はそこで自動的に調節される。計画を超える雨が降った場合は、ちょろっと溢れるが、そこから入ってきた分はそのまま流れていくということなので、入ってきた分以上が流れるということはない。そういう意味で、効果がないとは言えない。
 ダム計画も、下流の堤防計画と一体となった計画になっているので、どちらがある、ないということではなく、一体となって一番効果的な治水対策をセットしているということであり、ダムのない河川堤防や河道掘削だけの計画もある。それは流域の土地利用形態といったことで、そうした改修計画が効果的だというところもある。ただ、河道掘削の計画であっても、ダムと同じようにそれを超える洪水は当然あり得るので、堤防は壊れないにしても…。
 いずれ、予算や効果的な計画の中で、できる計画はどこまでなんだというコンセンサスを得た上で治水計画は立てられるので、際限なく大きなものをというのも現実的ではないので、ソフト対策も含めて、まず命を守るということを最優先に治水対策を進めていきたい。

【斉藤委員】
 愛媛でどういうことが起きたかというと、治水量がいっぱいになって、ダムに流れ込む大量の水をそのまま放流した。それが安全基準の6倍になったと事実を示した。だから下流で犠牲が出てしまった。
 だから西日本豪雨というのはもはや想定外とは言えない。そういうことも平時からしっかり明らかにしてやらないと、同じことになりかねない。
 一方で、国の行政はダム優先で、必要な堤防の強化や河道掘削などには予算が回らないのが実態で、小本川の氾濫もそうしたことが大きな要因だったと指摘したので。
 一昨年の台風10号災害も西日本豪雨災害も教訓にして、想定外ということは言えない時代なので、県民の安全を守るためにしっかり取り組んでいただきたい。