2018年12月6日 12月定例県議会本会議
一般質問(大要)


【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。今任期最後の一般質問となりますので、達増県政の成果を検証しつつ、県民の命と暮らしを守る課題について質問します。

1.東日本大震災津波からの復興の課題について

・達増県政が進めた県独自の支援について

 東日本大震災津波からの復興は、県政の最大の課題です。達増県政は、「被災者一人一人の幸福追求権を保障する」ことを復興の基本原則に掲げて、被災者の立場に立った復興を進めてきました。
 被災者の医療費・介護保険利用料等の免除を8年連続して継続実施し、来年も継続実施の方向を示したことは、被災者の命と健康を守る大きな力となり、復興の取り組みの中で最大の成果というべきものであります。どれだけの予算で、どれだけの被災者の医療費等を免除してきたか、具体的成果を示してください。
 また、震災の年の6月8日の臨時県議会で、国に先駆けて共同利用漁船の確保や養殖施設の整備への補助など、岩手県が先駆的に取り組み、その後、国の制度となったもの、国の制度にはなく、岩手県独自の事業として進めてきた事業とその実績について示してください。

【達増知事】
 被災者の医療費等の免除について。平成24年10月に、それまで行われてきた国保等の一部負担金の免除にかかる国の特別な財政支援が終了したことから、県では、引き続き市町村が免除措置を継続することができるよう、必要な財政支援を行ってきたところであり、その総額は21億円余となっている。平成29年度までに免除が行われてきた一部負担金の総額は、国保・後期高齢者医療・介護保険および障がい福祉サービスを合わせ約194億円となっており、延べ約22万人の被災者の医療や介護サービス等を受ける機会の確保と健康の維持増進等に寄与したものと考えている。
 復興にかかる県の先駆的取り組みについて。本県では、国に先駆けて、事業者の二重債務問題に対応した債権買取り等の支援策を講じるとともに、復興祈念公園や伝承施設の整備、用地取得迅速化のための制度創設に向けた取り組みを進めてきたところであり、これらはその後、国の施策に反映された。
 また、国の対応に先んじて県で補正予算を編成し、被災者の内陸宿泊施設への短期移動や、中小企業の早期復旧のための災害復旧資金の貸付および被災資産修繕費の補助、漁船等を一括整備する共同利用システムの構築、三陸鉄道の復旧整備などに取り組んだ。
 さらに、平成23年度に開催された国の東日本大震災復興構想会議において、本県から復興道路等の緊急整備、復興特区制度の創設等について提言し、国の「東日本大震災からの復興の基本方針」に盛り込まれ、事業化や制度化が図られたところである。
 こうした取り組みに加え、県では、被災地域の実情に応じ、暮らしの再建や生業の再生等に弾力的かつきめ細かに対処できるよう、国が一定期間で終了した事業の継続や国の制度に上乗せした手厚い支援など、県独自の取り組みを実施してきたところであり、主な取り組みとしては、「住宅等の再建や補修にかかる費用の一部助成」、「国保等における一部負担金の免除」、「被災地での福祉灯油の助成」、被災児童・生徒等の支援のための「いわて学びの希望基金の創設」のほか、いわて復興未来塾およびいわて三陸復興フォーラムによる県内外での情報発信に取り組んでおり、さらに来年度は三陸防災復興プロジェクト2019の開催を予定している。
 このように、先導的な取り組みや県独自の取り組みを実施しながら、命を守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造を目指してきたところである。

【斉藤議員】
 11月11〜12日に、大槌町で「災害対策全国交流集会」が開催され、北海道から熊本まで、西日本豪雨の被災地を含めて170人が参加し、達増知事からもメッセージをいただいた。この集会のスローガンが「岩手のたたかいに学ぼう 被災者・被災地の声を生かした人間復興」ということだった。岩手の取り組みに大変大きな反響が寄せられたところであり、この成果を引き続き継続していただきたい。

・孤独死を出さない取り組みの強化について

【斉藤議員】
 大震災津波から7年9ヶ月近くとなり、緊急の課題も切実です。10月末現在で応急仮設住宅で生活している被災者は、1341戸・2805人、みなし仮設住宅は324戸・795人、災害公営住宅には4882戸・8772人が入居しています。仮設住宅、災害公営住宅それぞれの孤独死は、今年、累計でどうなっているでしょうか。
 阪神淡路大震災の教訓を踏まえて、孤独死を出さない特別の取り組みの強化が必要と考えますが、具体的な対策と取り組みはどうなっているでしょうか。

【保健福祉部長】
 10月31日現在、東日本大震災津波にかかる仮設住宅と災害公営住宅において、一人暮らしで亡くなられた後に発見された方は、仮設住宅で平成30年1人、累計で44人、災害公営住宅で平成30年15人、累計で31人となっており、被災者が地域で孤立を深めることがないような対応が必要と考えている。
 本県においては、県と県社協が連携して配置した生活支援相談員が、市町村が配置する支援員等と連携しながら、被災者への個別支援や、住民相互に支え合うコミュニティ形成等の地域支援の両面に取り組んでいるところである。
 さらに今年度から、有識者や関係団体等による検討会の開催やコミュニティ食堂の試行的な実施など、中長期的な見守り体制の充実を図るための取り組みを始めたところである。今後も、被災者が安心して暮らすことができるよう、被災者に寄り添ったきめ細かな支援を行うとともに、地域で暮らす人々が相互に支え合うことができる、新しい福祉コミュニティの形成支援に努めていく。

【斉藤議員】
 災害公営住宅で今年15人が孤独死している。去年は6人だったので急増している問題である。

・災害公営住宅におけるコミュニティの確立について

【斉藤議員】
 災害公営住宅における一人暮らし高齢者や要支援者の見守りとコミュニティの確立は重要な課題です。災害公営住宅に入居されている方々は、津波で家をなくし、避難所の生活を経て災害公営住宅に入居されてきた方々です。また、国の家賃低減の対象となる低所得者が75%を占めるように、低所得で高齢化しているのが特徴です。それだけに見守りやコミュニティの確立には特別の支援が必要です。
 9月県議会でも取り上げましたが、一番土台となる入居者名簿が県から自治会に提供されず、整備されてないのが実態です。知事は「個人情報保護の観点から、同意をいただいた方の情報について自治会にも要請に応じて提供している」と答弁しましたが、その後改善が図られたでしょうか。

【達増知事】
 災害公営住宅の自治会において入居者名簿を整備しておくことは、コミュニティ形成や災害時の避難活動などに有効であると考え、まずは名簿未作成の自治会から必要とする入居者情報を把握することとしており、また、入居者からは情報提供の同意が得られるよう取り組んでいる。
 このような名簿作成などの自治会活動を支援するため、県では、災害公営住宅において一定のコミュニティ形成がされるまで、コミュニティ形成支援員を派遣して、相談対応や運営のサポートを行っている。
 今後においては、こうした支援員の活動を通じて、入居者名簿の作成に当たっての自治会のニーズなどを積極的に把握し、市町村や市町村社協等の関係機関とも連携しながら、自治会の活動を支援していく。

【斉藤議員】
 9月県議会前もその後も災害公営住宅を訪問してきたが、入居者名簿が提供されていないのが実態である。「提供できる」ということを通知してやっていただきたい。自治会に住民の名簿がないというところはない。誰がどこに住んでいるか分からない。こういう中でできた自治会が大変苦労している。例えば、平田災害公営住宅では防災訓練に取り組んでいるが、火事が起きた際に誰を助けていいか分からない。一人暮らし高齢者がどの部屋にいるか分からない。そういう意味で、積極的に情報提供し、孤独死を出さないためにも入居者名簿の提供を積極的に進めていただきたい。
 生活支援相談員やNPOなどの方々が被災者の訪問・支援を行っています。こういう情報が地域で、自治会で共有されることが必要だと考えるがいかがか。

【保健福祉部長】
 県社協が配置する生活支援相談員が、被災者の見守り活動を行っており、また、市町村が配置する支援員やNPOなどの民間支援活動等の活動について、生活支援相談員と連携しながら、仮設住宅等の個別の見守りやサロン活動など、地域の実情に応じた活動を行っている。
 見守り世帯対象の情報を一律に提供することは困難だが、個々の被災者の見守り支援のため、世帯の構成員であったり、心身の状態、配慮を要する点など、必要な情報について、町内会や自治会に対し、必要な都度・範囲で提供することにより、情報共有を図っていきたい。

【斉藤議員】
 ぜひ積極的に、個人情報を壁にしないで、被災者・住民の命を守るという立場で取り組んでいただきたい。

・漁業・水産業の現状と大不漁への対策について

【斉藤議員】
 生業の再生と商店街の再建は復興の成否にかかわる重要な課題です。
 沿岸の基幹産業である漁業と水産加工業は、サケ・サンマ・スルメイカ等の主力魚種の大不漁と貝毒による長期の出荷規制に直面し、原材料不足と価格の高騰で大きな影響を受けています。実態をどう把握しているでしょうか。廃業・倒産・工場休止等の実態はどうなっているでしょうか。
 復興の途上で漁業と水産加工業は、第二の災害ともいうべき大不漁に直面しており、復興特区の延長で固定資産税の減免の継続、グループ補助等の借金の返済猶予などの対策が必要と思いますが、現状をどう把握し対応されているか示してください。

【農林水産部長】
 今年度の魚市場の水揚け状況は、11月末現在で、数量が約71000トン、金額で約139億円。震災前の同期比で、数量が約6割、金額が約8割で、約27億円の減、逆に単価は約1.5倍となっている。
 ホタテ貝の出荷状況は、9月末現在で、数量が約780トン、金額が約4億9千万円。震災前の同期比で、数量が約2割、金額が約6割、単価は2.4倍となっている。
 影響については、魚市場での水揚金額は減少しており、漁業者の減収分については、漁業共済制度により補てんの対象となる。また、水産加工業者は、地元魚市場以外からの原料調達を余儀なくされており、掛かり増し経費については国の補助制度の対象となる。
【商工労働観光部長】
 水産加工業者の実態について。今年5月に復興局で調査した水産加工業者の実態把握調査結果によると、震災前に操業していた水産加工業者205者のうち、震災後に廃業したのは22者。また、水産加工業者の倒産は、会社更生法の適用を申請した業者が1者、破産申請をした業者が4者と把握している。
 復興特区の延長での固定資産税の減免継続について。固定資産税の減免は、課税権を有する市町村が条例を定めて実施しており、本年11月には、東北市長会や県市長会等において、水産加工業等の現状に鑑み、復興特区に基づく固定資産税の課税免除にかかる減収補てんの期間延長等について、国に要望していると聞いている。
 グループ補助等にともなう自己資金分の高度化スキーム貸付にかかる返済猶予などの対策について。高度化スキーム貸付は、グループ補助金等の採択事業者に対し、公益財団法人いわて産業振興センターが自己資金相当分を無利子融資する制度だが、貸付実績は、平成30年10月末現在で、延べ306事業者に対し148億7千万円余となっている。
 県は、いわて産業復興センターと連携し、貸付先の業況を把握しており、これまでに償還が困難となった14者20件について、最終償還期限の延長や毎回の返済額の低減といった条件変更を行っている。

・被災事業者の現状と支援について

【斉藤議員】
 商店街の再建もこれからが正念場です。グループ補助の交付決定は10月末現在で1507件、交付決定額は874億円余となっています。製造業や商業(小売・卸売)等の内訳はどうなっているでしょうか。商業は仮設店舗でピーク時730事業者が営業再開を行いましたが、その後の本設移行、廃業、仮設の無償譲渡、現在も仮設で営業している実態はどうなっているでしょうか。
 中小企業庁は来年度概算要求に仮設施設への支援を盛り込みました。仮設で営業している事業者に対して無理に退去を迫ることなく、本設移行や営業の継続を親身になって支援すべきと考えますが、県としてどう取り組んでいるでしょうか。

【達増知事】
 グループ補助金の交付決定事業者の内訳について。これまでに交付決定を受けた1507事業者の業種別内訳は、小売業・サービス業が651者で全体の43%、製造業が157者で10%、水産加工業が157者で10%、建設業9%、飲食業8%、宿泊業5%などとなっている。
 また、交付決定額874億円の内訳を見ると、水産加工業が213億円で全体の24%、小売業・サービス業が194億円で22%、製造業が150億円で17%などとなっている。
 仮設施設で事業再開した商業者729者の状況は、9月末現在で、仮設施設の譲渡を受けた者を含む本設移行が365者、休廃業等が138者、残りの226者が引き続き仮設施設で事業を継続している。
 仮設施設で事業を継続している方への支援については、仮設施設の撤去等費用の助成期限の延長については、県も国へ要請してきたところ、平成31年度の国の概算要求に盛り込まれ、これにより市町村があらかじめ定めた退去期限までに本設移行ができない事業者であっても、その事情に応じて、退去期限の延長等、市町村において弾力的な運用が可能となっている。
 県としては、引き続き市町村と連携を密にして、円滑な本設移行に向けてグループ補助金等の活用に向けた支援や金融支援を行っていく。

【斉藤議員】
 生業の再生は、文字通りこれからが正念場で、きわめて困難な局面に直面していると思うので、必要なあらゆる手立てを講じて、生業の再生に対する支援に取りくんでいただきたい。


2.国保の構造的問題を打開し、高すぎる国保税の引き下げを

・高すぎる国保税の現状について

【斉藤議員】
 国民健康保険制度が、今年度から県が国保財政に責任を持ち、市町村と共同で運営する制度になりました。国保税は、住民にとって最も重税感の高い切実な問題です。
 第一に、高すぎる国保税の現状について質問します。中小企業の労働者が加入する協会けんぽと盛岡市の国保税について、単身世帯年収240万円の保険税・保険料はどうなっているでしょうか。また、4人世帯、年収400万円(就労1人、子ども2人)の場合はどうなっているでしょうか。

【保健福祉部長】
 協会けんぽ及び盛岡市の国保それぞれの保険料年額は、40歳未満の単身世帯で収入240万円の場合、協会けんぽが11万8080円、盛岡市の国保が18万7800円。
 夫婦とも40歳未満、就労者が1人、子ども2人の4人世帯で年収400万円の場合、協会けんぽが20万736円、盛岡市の国保が40万円と試算される。

【斉藤議員】
 答弁あったように、中小企業の労働者の倍の国保税が課せられている。まさに高すぎる国保税と言われなければならない。
 高すぎる国保税となっている原因は、国保に対する国庫支出の削減と、国保加入者の貧困化・高齢化・重症化にあると思います。
 全国知事会、全国市長会、全国町村会などの地方団体は、加入者の所得が低い国保が、他の医療保険より国保税が高く、負担が限界となっていることを、「国保の構造問題」だと指摘し、「国保を持続可能とする」ためには、「被用者保険との格差を縮小するような、抜本的な財政基盤の強化が必要」だと主張しています。そのために全国知事会は、「1兆円の公費負担増」を政府に要望しています。
 知事は高すぎる国保税の原因とその打開策についてどう認識されているでしょうか。

【達増知事】
 国保は、構造的に被保険者の年齢構成が高く、医療費水準が高いことに加え、年金生活者や無所得世帯の割合が多く、所得水準が低いことが保険税負担が被用者保険よりも重くなっている原因であると認識しており、今後も、医療の高度化や高齢化の進展等により、1人当たり保険給付費の増加や、これにともなう被保険者の負担の増加が懸念される。
 今般の国保制度改革は、国の財政支援の拡充により、財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの、必ずしもこうした構造的な課題の解決に結びついていないものと考えている。
 県としては、国保制度が国民皆保険を支える重要な役割を担っている制度であることから、国の財政責任のもと、安定的な財政基盤を確立することが不可欠であると考えており、将来にわたって持続可能な制度となるよう、他の都道府県と連携しながら、国に対してさらなる財政措置を求めていく。

【斉藤議員】
 協会けんぽの2倍の国保税の打開が国の責任にあると、これは共通認識になったと思う。

・均等割り、平等割りの問題について

【斉藤議員】
 第二に、国保税のゆがみを正すことも重要な課題です。国保税には、世帯の人数にかかる「均等割り」、各世帯に定額でかかる「平等割り」がありますが、これは国保税にしかない「人頭税」ともいうべき前近代的なものです。全国知事会なども「均等割り」の見直しを要求しています。「均等割り」「平等割り」の見直しを進めている市町村も出ています。国に対し見直しを求めるとともに、改善すべきところから改善を図るべきと思いますが、いかがでしょうか。
 また、1兆円規模の国の公費投入があれば「均等割り」「平等割り」をなくし、協会けんぽ並みの国保税になると思いますが、県の国保の状況はどう推計されるでしょうか。

【保健福祉部長】
 国保税の標準課税総額に対する均等割り・平等割り等の標準割合については、地方税法で定められており、県ではこれに基づき市町村納付金の算定を行っている。
 一方で、「均等割り」「平等割り」は、所得の状況にかかわらず賦課されるため、特に「均等割り」の分の課税が、子育て世代の負担を重くしている実態がある。
 こうした実態を踏まえ、全国知事会から、子どもにかかる均等割り保険料軽減措置を導入するよう、国に要望を行っているところであり、このような軽減措置は、県が推進している人口減少対策としての総合的な子育て支援策にも通じることから、引き続き国に求めていきたいと考えている。
 また、1兆円規模の公費投入にともなう効果については、約3兆円にのぼる全国の国保税を1兆円程度引き下げる効果が見込まれ、約3分の1程度の負担軽減につながるものと考えている。
 これにともなう本県の国保税軽減額は、国保税全体の約半分を占める「均等割り」および「平等割り」の約7割に相当する80数億円と試算され、保険料も被用者保険に近づくことが見込まれるところである。

【斉藤議員】
 1兆円の公費投入があれば、「均等割り」「平等割り」廃止に結びついていく、協会けんぽと同等になる。そういう方向こそ、構造的打開の解決の道だと提起しておきたい。

・一般会計からの繰入について

【斉藤議員】
 第三に、高すぎる国保税を抑えるために、県内市町村では一般会計から繰り入れを行っています。昨年度の実績はどうなっているでしょうか。一般会計からの繰り入れで高すぎる国保税の値上げを抑えることは、住民の命と暮らしを守る当然のことと考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 平成29年度において、14市町村で総額7億5300万円余のいわゆる法定外繰入が行われている。
 法定外繰入については、市町村の判断により行うことができるものと考えるが、昨年11月に策定した岩手県国保運営方針において、財政健全化のためには「決算補てんを目的とした法定外繰入は解消に努める必要がある」としている。
 平成30年度からの国保制度改革にともない、県が財政運営の責任主体として市町村納付金の算定を行っているところであり、算定方式の変更にともなう保険税負担の激変緩和が行われている間においては、改革施行前後における被保険者の負担の変化にも十分配慮した対応が必要であると考えている。

【斉藤議員】
 高すぎる国保税を引き下げるために14市町村が一般会計から繰り入れているのに、国保の運営方針でそれを縮小するなどということは、その方針が問題だと思う。切実な県民の実態が反映されていないのではないか。

・滞納者へのペナルティの問題について

【斉藤議員】
 第四に、高すぎる国保税の滞納者に無慈悲なペナルティーが課せられていることは直ちに改善すべき問題です。滞納者に対する短期保険証・資格証明書の発行と保険証未交付の状況はどうなっているでしょうか。滞納者に対する資産の差し押さえの件数、額、滞納世帯に対する比率はどうなっているでしょうか。差し押さえの件数は全国最悪の状況ではないでしょうか。

【保健福祉部長】
 短期保険証・資格証明書の発行世帯数は、9月1日現在で、短期保険証が5047世帯、資格証明書が146世帯となっており、短期保険証の未交付者数は1446人となっている。
 昨年度における滞納処分は、差し押さえ件数3815件、金額で約12億4千万円となっている。
 差し押さえ件数の滞納世帯に対する比率については、滞納世帯数が翌年度6月1日時点での滞納繰越世帯数であり、差し押さえが年度内に実施された延べ件数であるため、的確な分析をすることは難しいが、便宜的に滞納世帯数15687世帯との比率を算出すると24%程度となる。
 また、差し押さえ件数については、全国統計のある平成28年度での比較となるが、全国では多い方から32番目、東北では福島・宮城・青森・山形に次いで5番目となっている。

【斉藤議員】
 高すぎる国保税を押しつけて、払えない方々に資産の差し押さえをする、短期保険証を発行すると。そして未交付が1446人、保険証が届かないということである。医療を受ける権利を侵害している。こんなことは直ちに改善しなければならない。
 国保税の滞納は、県民の暮らしの危機の表れであります。滋賀県野洲市は、「債権管理条例」を制定し、「滞納は生活状況のシグナル」「ようこそ滞納いただきました」という立場で、「市民生活を壊してまでは回収しない」「滞納を市民生活支援のきっかけにする」という立場で取り組み、滞納者の実態・課題を把握し、各部署が連携して生活再建を支援し、結果として滞納の解消を図っています。
 県民の「幸福」をめざす岩手県として、「滋賀県野洲市」の取り組みに学び、滞納者生活支援を進め、ペナルティーの在り方を抜本的に見直すべきと考えますが、知事の答弁を求めます。

【達増知事】
 被保険者が保険税を滞納する背景にはさまざまな状況が考えられ、税負担に関する公平性等を確保する観点から、滞納処分や短期被保険者証等の交付は、担税能力がありながら納付していただけない方に対する手段として、一定の効果があるものと考えられ、市町村において十分な調査を行ったうえで実施されているものと認識している。
 一方で、滞納の要因が、失業や疾病などによる経済的困窮である場合など、真に納付が困難な場合にあっては、分割納付や徴収猶予等の対応のほか、生活困窮者の自立支援を担当する部署と連携した支援などにより、滞納者に寄り添ったきめ細やかな対応を行うよう市町村に対して要請を行っている。
 滋賀県野洲市の例をご紹介いただいたが、滞納者の生活再建の視点も踏まえた対応は、県内市町村においても実施されている例があることから、今後こうした取り組みについても共有を図りながら、滞納者個々の実情に応じた適切な対応を促していく。

【斉藤議員】
 協会けんぽの2倍の国保税を低所得者に押しつけて、払えない方々にペナルティをかけるという、これぐらい「幸福」からかけ離れた対応はないと思う。
 野洲市の例を紹介したが、「ようこそ滞納いただきました」「滞納は生活状況のシグナル」といったことを市民にお知らせして取り組んでいる。そして生活再建を支援して、逆に滞納を解決している。「幸福」をキーワードとするなら、これが一番あるべき姿ではないか。

【達増知事】
 やはり、自立し滞納を解消していただくことが一番なので、生活保護ドラマを続けて見ていたので今回のケースに直接当たるものではないが、市町村の現場の職員に対して、社会的にもやはりもう少し困窮している人たちの実態に踏み込んでやってもらう、そしてそういう市町村職員の努力を社会的にも評価しようという流れが今年ようやくできてきているかなと思っているので、岩手もそういう流れの中で遅れをとらないようにしていきたい。


3.県立高校3年生のバレー部の生徒の自殺事案と部活動から一切の暴力行為を根絶する課題について

・顧問教師の暴言について

【斉藤議員】
 第一に、生徒の自殺にかかわる顧問の教師の暴言が、日本体育協会等が「スポーツ界から暴力行為を根絶する」と宣言した「暴力行為」にあたるのではないかという問題です。
 県教委の詳細調査では、「亡くなった原因として何か思い当たることはあるか」との問いに、バレー部員は、「決勝で負けた高総体後の練習で、ミドルとセッターの3名の部員が、『お前らで負けたことを本当に自覚しているのか』と厳しい口調で言われた」「亡くなる3日ぐらい前の練習で、同じミスをした本人を顧問は怒っていた。『だから部活やめろって言ってんだよ』」と暴言を吐いている。4月後半から5月前半の時期には、「そんなんだからいつまでも小学生だ、幼稚園児だ」と怒鳴り、練習でミスをすると、「お前はバカか」「もうバレーすんな」「脳みそ入っていないのか」と叱責しています。こうした発言は、人権侵害、人格破壊の許されないものであり、日本体育協会等が「スポーツ界から暴力行為を根絶する」と宣言した暴力行為に当たるのではないですか。

【教育長】
 体罰や暴言は、児童・生徒の人権を侵害する行為であり、いかなる場合にも許されないものである旨、すべての教職員にたいし、さまざまな機会を通じてその趣旨を徹底し、その根絶に向けて取り組んできているが、運動部活動における指導にあたっては、日本体育協会等の共同宣言等をも踏まえ、文科省が示した「運動部活動での指導のガイドライン」の活用を各学校に指導してきたほか、県高体連などの競技団体とも連携しながら取り組んできた。
 県立学校で発生した今般の事案については、県教委調査において、生徒の一部から顧問のそのような発言があったとする回答があったことはご案内の通りだが、同じ場で活動していた他の生徒などからは、異なる観点からの回答等もある。
 顧問の発言が共同宣言の内容に抵触する行為であるか等については、今後、第三者委員会による調査を予定しており、その過程においては、できる限り予断のない調査、検証を行っていただく必要があることや、当該顧問に対する刑事告訴がなされており、現時点においては、具体的な発言は差し控えさせていただきたい。

【斉藤議員】
 大変残念な答弁だった。私は自殺の因果関係を聞いているのではない。
 私が紹介したような発言を授業中に行ったらどうなるか。許されない発言ではないか。

【教育長】
 これは授業中、部活動いずれの場合も同じようなことでしっかり適切な指導をすべきと考えている。

【斉藤議員】
 亡くなった生徒の遺書の一部を紹介します。
 「高校生になると、仲間から怒られ、先生からも怒られ、バレーボールも生きることも嫌になりました。点を取るまでは有利でも、ミスをしたら一番怒られ、『必要ない』『使えない』と言われました。高校でこれなら、大学で生きていけるはずがないです。また周りからのプレッシャーなどに怯え怖かったです」と。
 因果関係については、第三者委員会で究明される。しかし、人権侵害・人格破壊とも言うべき発言が、暴力行為かどうかを教育長が判断できなかったら、どうやって根絶できるのか。

【教育長】
 その遺書には、全体的に、小学校・中学校時代から、どういう思いを持っていたかということが述べられている。それらを含めて、総合的に判断していただくことが自死との関連では必要だということで、第三者委員会での調査をお願いするということにしたものである。

【斉藤議員】
 日本体育協会と高体連も一緒になった共同宣言には、「殴る・蹴る・突き飛ばすなどの身体的制裁、言葉や態度による人格の否定、脅迫・威圧、いじめや嫌がらせ、さらにセクシャルハラスメントなど、これらの暴力行為は、スポーツの価値を否定し、私たちのスポーツそのものを危機にさらす」と。
 私が紹介したような発言は、この宣言から見たら根絶すべき暴力行為そのものではないか。

【達増知事】
 実際にあった個別具体的な事案においてどうだったかということは別にして、一般論として、議員が述べられたような言葉というのは、その言葉の発し方や状況等においては、日本体育協会の暴力行為に当たる恐れがあるものであり、やはり課外活動も含めて、教育の現場、あるいはスポーツに取り組む中にあって暴力行為というものは許されないと考える。

【斉藤議員】
 私は、顧問のこういう暴言が生徒を追い詰めたと考えている。しかし今第三者委員会がつくられるので、暴力行為と自殺の因果関係は第三者委員会で究明されると思う。そこまでは決めつけていない。
 しかし、原点になるべきそれぞれの発言が人権侵害や人格破壊かどうかというのは、これは教育長が判断できなければいけない。根絶などできない。

・前任校での暴言の不法行為認定と県教委の対応について

【斉藤議員】
 この顧問教師は、前任の高校でも暴言等の行為でバレー部員が不登校に陥る事件を起こし、民事裁判を提訴されました。昨年11月の盛岡地裁判決では、「体育教官室での暴言行為が不法行為に当たる」と認定され、20万円の賠償が命じられました。原告側が控訴して控訴審で争われていますが、県教委は控訴しませんでした。なぜ、この顧問教師は処分されなかったのか。これまでと同様にバレー部の顧問としてなぜ活動できたのか、教育長の答弁を求めます。

【教育長】
 一審判決において、県側の主張がおおむね認められたことから控訴は行わないこととしたところだが、原告側が判決自体を不服として控訴し、現在控訴審において係争中であり、判決が確定していない段階にある。
 このような段階において、一審判決で認定された事実のみに基づいて懲戒処分を行った場合には、確定判決において、仮に原告側の主張が一審判決より広く認められた場合であっても、重ねて懲戒処分を行うことは、一度、懲戒処分を行った事実について重ねて処分を行うことができないとする、いわゆる「一事不再理」の法理に抵触するものであり、今後、当該教諭の行為や国家賠償法に基づく県の責任が判決により確定した後において、地方公務員法に基づく懲戒処分を含め、そのあり方を検討する考えである。
 また、バレー部の顧問を継続させてきたことについては、判決が確定していないことに加え、当該教諭は部活動指導に限らず、生徒指導や進路指導の面でも担当業務に真摯に取り組んできており、生徒、保護者との関係なども総合的に勘案して、部顧問を継続させる判断を学校として行ったものであり、教育委員会においても承知していたものである。

【斉藤議員】
 一審判決が控訴されたので係争中である。ただ県教委は、この不法行為を認めて控訴しなかった。あなた方が控訴して争っているならまだ言い分は分かるが。
 処分は一事不再理だというが、しかし同じように強豪校の顧問になぜしたのか。それは別問題ではないか。

【教育長】
 一事不再理の考え方に基づいて処分は行わなかったということであり、それから指導については、判決が確定していないので、判決が確定した後に適切に対応したい。

【斉藤議員】
 結果的に、前任校と今回の高校で二度にわたる事件が起きてしまった。これはきわめて重大である。そのことについて教育長はどう受け止めているか。

【教育長】
 それぞれ対象生徒、活動・環境等も違う場で起きたものだが、顧問として共通していたということについては、そのようなことが問題化されていることについては残念に思っている。

・第三者委員会の設置について

【斉藤議員】
 県教委の対応は、第三者委員会の調査事項になっていると思うが、第三者委員会の設置の見通し、調査事項はどうなっているでしょうか。

【教育長】
 第三者委員会の所掌事項としては、当該事案に至るまでの事実経過および背景を調査、検証することや、今後の再発防止に関する提言を行うことなど、5項目を設置要綱で定めている。
 設置要綱は10月末に決定したところだが、設置要綱の決定後、委員の選考等を現在行っているところであり、できるだけ速やかに第1回目の第三者委員会を開催したいと考えている。

・教師による体罰・暴言の根絶の取り組みについて

【斉藤議員】
 この事件を契機に、部活動をはじめとした学校教育の場から、体罰はもとより人権侵害の暴言を含めた暴力行為を一掃する取り組みを真剣に進めることが必要だと考えます。教師による体罰・暴言を総点検し、根絶の取り組みを進めるべきだと考えますが、どう取り組んでいるでしょうか。

【教育長】
 体罰や暴言は絶対に許されないという認識の下で、県教委においては、事案発生の都度、通知を発出し、全教職員に対して強く注意喚起を促すとともに、各学校長に対しては、各校の状況を再度確認するよう指導している。
 また、感情をコントロールする術を学ぶためのアンガーマネジメント研修の受講者数の拡大や体罰チェックリストの活用、さらには、所属長など管理職のリーダーシップによる日常からのコンプライアンスの取り組みの徹底等により、その再発防止に努めてきているところである。
 部活動における指導の改善については、運動部活動担当教員の研修を、これまで、競技ごとに教職員の希望に基づく受講としていたものを、順次、学校ごとの悉皆研修へと切り替えを進めてきているが、今後においては、研修内容をコミュニケーションスキルの向上、生徒の意欲喚起を促す指導法に主眼を置いたものに見直すことなども検討し、今後とも学校における体罰や暴言等の防止に鋭意努めていく。

・部活動改善の取り組みについて

【斉藤議員】
 学校の部活動は、学習指導要領でも生徒の自発的自主的活動に位置付けられています。ところが、岩手県は全員加入制を取っている中学校が97.5%で全国トップクラスとなっています。直ちに改善すべきではないでしょうか。
 勝利至上主義からの脱却を図るべきです。部活動の目標は生徒自身が自主的に決めて取り組むべきですが実態はどうなっているでしょうか。必要な改善や研修は行われているでしょうか。この間の部活動改善の取り組みと合わせて示してください。

【教育長】
 本県中学校における部活動の加入状況については、各学校において、社会性や生涯にわたってスポーツ・文化に親しむ能力を育成する観点等から、部活動への加入を勧めてきており、全国と比較して高い加入率となっている。
 今年6月に策定した「部活動のあり方に関する方針」においても、生徒の自主的・自発的活動である部活動の趣旨を各学校に徹底したところだが、部活動の加入のあり方等についても、今後さまざまな取り組み事例の積極的な情報提供等を行いながら、関係者の合意形成の下に、部活動の本質を踏まえた見直しが推進されるように取り組んでいく。

【斉藤議員】
 部活動というのは自主的・自発的な活動で、全員加入制というのは強制である。少なくとも、全員加入制は見直して、自主的・自発的な活動にすべきではないか。

【教育長】
 これは自主的・自発的な活動が定着するように努力していきたい。


4.次期総合計画(中間案)について

・格差と貧困の実態について

【斉藤議員】
 次期総合計画の中間案が示されました。私は、「幸福」をキーワードにすることは、東日本大震災津波からの復興の取り組みで「被災者一人一人の幸福追求権を保障する」とした基本原則が大きな役割を果たしたことから評価するものであります。
 同時に、「幸福」をキーワードにするというなら、格差と貧困の拡大のもとで「幸福」から一番遠ざけられている県民に光を当てることが最も重要な課題だと考えるものです。
 そこで知事に質問します。格差と貧困の実態をどう認識されているでしょうか。
 県民の階層別所得水準を示すデータというのが直接的にはないのが問題ですが、平成29年就業構造基本調査結果では、非正規の割合、199万円以下のいわゆるワーキングプアの正規職員、パート職員の割合はどうなっているでしょうか。

【達増知事】
 平成19年の知事就任以来、格差と貧困の原因となる雇用情勢の回復の遅れや、県民所得の低迷など岩手が直面する危機を希望に変えていくため、「いわて希望創造プラン」や「いわて県民計画」に基づき、課題解決に取り組んできた。
 このような中、5年に1度行われる就業構造基本調査では、直近の平成29年において、役員を除く雇用者に占める非正規雇用者の割合は35.7%となっており、所得が199万円以下の正規職員の割合は15.8%、パート職員の割合は92.6%となっている。
 引き続き、労働力不足を背景とする求人・求職のミスマッチの解消や国民所得に対する県民所得水準の乖離縮小などに取り組む必要があることから、次期総合計画では、いわて県民計画の成果や課題を土台に、10の政策分野のうち「仕事・収入」分野において、安定した雇用や仕事のやりがい、生活を支える所得の確保などをはじめ、県民一人一人の「幸福を守り育てる」ための政策を進め、格差と貧困の改善を図っていく考えである。

【斉藤議員】
 正規の労働者でも15.8%が年収199万円以下、パートに至っては92.6%。これが岩手の労働者の実態である。本当にこの貧困の打開は切実な課題である。
 子どもの貧困問題を含め貧困の打開を図ることなしに「幸福」を実感することはできないと思いますが、子どもの貧困問題については、盛岡市や陸前高田市などすでに8市町で独自にひとり親家庭や子ども生活実態調査が行われています。そこで示された子どもの貧困の実態をどう把握、認識されているでしょうか。
 次期総合計画(案)では、「生まれ育った環境に左右されることなく子どもが成長していけるよう、子どもの貧困対策や児童虐待の防止対策などにより、子どもが健やかに成長できる環境を整備します」としていますが、具体的な対策はどうなっているでしょうか。
 貧困を解消する目標、子どもの居場所づくり、子ども食堂などの食事支援、学習支援の具体化が必要ではないでしょうか。また、ひとり親の「朝早く出勤し夜遅くまで仕事し、休日出勤」などの過酷な就労の改善を図り、子どもと過ごす時間の確保の対策、児童養護施設の退所者の進学・就労のフォローと支援などの対策も必要と考えますが、県の具体的な施策を示してください。

【保健福祉部長】
 平成29年度までに、盛岡市や陸前高田市など県内8市町で独自にひとり親世帯等を対象とした子どもの貧困に関する実態調査を実施したと承知している。
 調査結果について一概には申し上げられないが、ひとり親世帯の特徴としては、保護者の雇用形態が非正規である場合が多く、就労時間も不規則であることから、子どもと過ごす時間が制約されている状況にあることなどがうかがわれる結果となっているところである。
 また、低所得者世帯でも利用できる学習機会の確保や食事の提供等、子どもの居場所づくりに対する支援ニーズが高いことなどが見て取れる。
 この調査結果は、「いわての子どもの貧困対策推進計画」に示す「ひとり親家庭や生活困窮世帯等の子どもの居場所づくりに関する支援」の方向とも合致しているものと考えている。
 具体的な対策と目標の具体化について。県では本年度「子どもの生活実態調査」を実施しているところであり、現在、結果は取りまとめ中だが、この調査を踏まえて子どもの貧困対策の方向性を検討し、政策推進プランに反映させたところである。政策推進プランにおいては、子どもの貧困対策に向けて、「いわての子どもの貧困対策推進計画」に基づく、学習環境の整備や福祉部門との連携強化などの教育の支援、相談事業の充実などの生活支援、金銭の給付や奨学金貸与などの経済的支援等の内容をさらに充実させて取り組むこととしている。また、政策推進プランの具体的な推進方策の指標として、「子ども食堂のある市町村数」を掲げ、子ども食堂や学習支援などの子どもの居場所づくり等に取り組むこととしている。
 ひとり親世帯や児童養護施設退所者に対する県の対策について。ひとり親世帯支援対策については、岩手県ひとり親家庭等就業・自立支援センターを設置し、就業相談員による就業相談や就業講習会を実施するとともに、「岩手県ひとり親家庭等自立促進計画」に基づき、子育て支援・生活環境の整備、経済的支援の充実等、総合的な支援施策を実施してきた。
 また、児童養護施設退所者に対しては、自立支援資金貸付を行い、生活費等の支援をしているほか、今年度から、施設退所後も相談対応などの支援を行い、将来の自立に結びつける社会的養護自立支援事業を実施するなど、施設入所措置が解除された後も、個々の子どものニーズに応じた支援を行っている。

【斉藤議員】
 ぜひ次期総合計画に、子どもの貧困打開の具体的方向を示していただきたい。

・産業政策について

【斉藤議員】
 第二に、広域行政としての県の役割を発揮するためにも、「幸福」の土台である「仕事・収入」の確保のためにも、産業政策を明確に打ち出すことが必要と考えます。
 「高知県産業振興計画」は第3期の計画となっていますが、農業、林業、水産業、商工業、観光の5つの分野の産業成長戦略と7つの地域のアクションプランで構成され、検証するための数値目標を定めて、改善充実が図られています。
 高知県の取り組みも参考にして、岩手県の産業振興計画を次期総合計画に盛り込むか、別建てで作成するか検討すべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 産業振興は、市町村を超える広域的な地域経済の活性化に加え、ものづくり、食産業、観光、農林水産業など地域の特性や資源を生かした地域振興、魅力ある仕事づくりによる若者の地元定着などに結びつくものであり、さまざまな産業分野の振興を総合的に展開していくことが重要と認識している。
 このような考え方のもと、産業政策については、長期ビジョンにおいて、「地域経済を支える中小企業の振興」「ものづくり産業の一層の集積」「地域資源を生かした産業の魅力向上」「観光産業の総合産業化」「農林水産業の持続的な発展」など、その方向性を示し、政策推進プランで、4年間の目標や県が取り組む具体的な推進方策、工程表などを盛り込んでいる。
 また、地域振興プランにおいては、4つの圏域ごとに地域の特性を踏まえたそれぞれの地域経済の基盤の強化に向けた取り組みを掲げており、これらの政策体系により産業政策の全体像を示している。
 その上で、総合計画の方向性と整合を図りながら、条例の規定に基づき「中小企業振興基本計画」や「みちのくいわて観光立県基本計画」も策定している。
 安定した雇用の確保や仕事のやりがい、生活を支える所得の確保など、県民一人一人の幸福を守り育てる上で産業振興は重要であることから、次期総合計画や条例に基づく計画により、着実に取り組みを進めていきたい。

【斉藤議員】
 私からみると、この産業振興政策は物足りないので、さらなる拡充を図るようにやっていただきたい。

・教育分野における指標の問題について

【斉藤議員】
 第三に、「教育」の政策課題で、主要な指標として「学力が全国平均以上の生徒の割合」とされていますが、この指標は絶対に採用すべきではありません。
 全国学力テストは、今年度の実施要領でも「調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面であることなどを踏まえるとともに、序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響等に十分配慮することが重要である」と指摘されています。実際には、全国学力テストに向けて過去問の練習や事前対策など過度の競争に陥っているのが実際です。国連子どもの権利委員会から3回にわたって「過度の競争的な教育制度によって生徒の健全な成長がゆがめられている」と指摘されています。岩手県が学力テストの競争をあおるようなことを決してやってはならないと思いますがいかがでしょうか。

【教育長】
 グローバル化や情報化、人口減少など社会が急速に変化する中で、本県の子どもたちが予測困難な社会の変化に対応し、新たな社会のつくり手として活躍できるように成長していくためには、本県の学校教育において、知・徳・体からなる生きる力をバランス良く育んでいくことが重要である。
 確かな学力の定着の観点から活用している全国学力・学習状況調査では、児童生徒の身につけるべき学力が具体的な問題の形で示されており、調査の有効な活用によって、児童生徒の学習上の課題を明らかにし、学習状況の改善や学習意欲の向上につながると考えている。
 このような考えから、次期総合計画の政策プラン案においては、各学校等が、児童生徒一人一人に寄り添う教育を推進し、一人でも多くの児童生徒に全国水準以上の力を身につけてもらうように、「学力が全国平均以上の児童生徒の割合」と、学びに向かう姿勢をより一層育んでいくため、「主体的に学ぼうとする児童生徒の割合」を幸福関連指標として位置づけ、総合的な学力の育成を図ることとしている。
 学力調査の活用については、議員ご案内のような過度な競争等につながるのではないかとの懸念もあろうかとは思うが、県教委としては、全国的な順位を争うものではなく、指標設定の趣旨、諸調査の適切な活用のあり方について、さまざまな機会を通じて地域や学校等と十分な共通理解を図り、児童生徒のつまずきに応じた授業改善や、学校づくりなどへの組織的な取り組み等を推進し、児童生徒の学びの一層の充実を図っていく考えである。

【斉藤議員】
 あなたの答弁は、学力テストの実施要領にも反している。国連子どもの権利委員会の3度にわたる勧告にも反している。指標にしたら競争になってしまう。
 私は、学力テストの実施要領も示して、国連子どもの権利委員会の3度にわたる勧告も示して、これは指標にすべきではないと。
 指標にするんだったら、「遅れている平均点以下をどう引き上げるか」である。そういう目標にすべきである。「平均以上の割合」を指標にしたら全国の競争を煽るだけである。これは絶対にやってはならないと思うがいかがか。

【達増知事】
 児童生徒一人一人に寄り添う教育を推進し、その結果、一人でも多くの児童生徒に全国水準以上の力を身につけてもらうように、学力が全国平均以上の児童生徒の割合を指標として位置づけたということで、児童生徒一人一人に寄り添う教育が推進されているかどうかというものを見る指標という趣旨と理解しており、競争を煽る趣旨ではないと理解している。

【斉藤議員】
 1960年代に学力テストが導入されて、競争が激化して廃止になった。だから今回再開するときにも、そのようにしてはならない、公表もしないとしていた。それを平均以上を争うとやったら、競争を煽ることになるのではないか。
 あなた方が指標を決めるというのなら、平均点以下をどう底上げするかという目標こそ掲げるべきである。これは次期総合計画案の最大の弱点・欠陥である。知事、これは真剣に検討していただきたい。こんなことをやったら全国から笑われてしまう。


5.県立病院の次期経営計画(最終案)について

【斉藤議員】
 県立病院の次期経営計画の最終案が示されました。
 医師の増員計画が81人と引き上げられたことは評価します。具体的にどう実現するのか示してください。
 看護師の増員はマイナス24名から66人に増員計画となりましたが、これは極めて不十分です。この5年間で130名増員の計画を上回る138名の増員を行いましたが、9日夜勤は昨年度年間で903人にも及び増え続けています。年休も平均で8.2日しか取得できてません。5日間以下の看護師さんが多数います。今後6年間で66人程度の増員では、こうした劣悪な看護師の労働条件は解決できないのではないでしょうか。

【医療局長】
 医師の配置計画は、平成31年度〜36年度の6年間で医師72名、初期研修医9名の計81名の増員を計画した。具体的には、これまでも進めてきた即戦力医師の招へい活動の推進や、関係大学等に対する医師派遣要請などの取り組みに加え、奨学金養成医師が県立病院に勤務しながら専門医資格の取得が可能なプログラムの積極的な活用を図り、初期研修修了後に早期の義務履行の促進を図ることによるものである。次期総合計画においては、これらの取り組みを着実に進め、医師の確保に努めていきたい。
 看護師の配置について。人口減や薬剤の長期投与等にともなう患者数の減少に見合った看護師数の適正化を考慮する一方で、例えば、認定看護師の育成とか入退院支援等、医療の質の向上として39人の増員、産前産後休暇および育児休業等の取得者を代替する正規職員のさらなる充実のため90人の増員を計画しており、これらを合わせて66人の増員となっている。また、これまでの夜勤専従制度などの多様な勤務形態の導入や勤務環境の改善の取り組みをさらに進めるとともに、すべての病院現場において業務の見直し、改善等を強く推進することにより、夜勤回数の抑制や休暇取得の増加を図っていきたいと考えている。

【斉藤議員】
 9日夜勤が増え続けているのに解消の見通しは示せなかった。138人増やしたが、9日夜勤は増え、年休も取れなかった。
 岩手医労連が「看護職員労働実態調査」をまとめた。「人手不足による深刻な健康被害、慢性疲労を感じている」81.1%、「健康不安」71.5%で、その理由は「仕事量が増えた」62.6%、「仕事での強い不満、悩み、ストレス」68.8%と。「いつでも辞めたい」という方々が3割、「ときどき辞めたい」が5割である。こういう労働条件の改善を図らなかったら、看護学生から見放される。思い切った看護師の労働条件の改善のために、さらなる増員を図るべきではないか。

【医療局長】
 先ほど勤務環境の改善と業務改善ということを申し上げたが、こういったことに取り組み、今年度の実績では、9回夜勤者の関係では、30年度第二四半期までの数で、延べ181人減となっているので、こうした取り組みを各病院で一生懸命やっているので、これを進めて、さらに産育休者の補充についても配慮した形で進めていきたい。

【斉藤議員】
 少し減った程度ではいけない。無くさなければ。


6.県民の暮らしにかかわる国政の課題について

・消費税10%増税の問題について

【斉藤議員】
 来年10月から予定されている消費税の10%増税の問題について知事に質問します。
 2014年に消費税が5%から8%に増税されました。これ以降、国民1世帯当たりの年間の消費支出額は25万円も減少し、労働者の実質賃金は18万円減少しました。経済は落ち込んだままとなっています。
 8%増税が県民にもたらした負担増、県内中小企業と経済に与えた状況をどう把握しているでしょうか。10%増税になったらどれだけの負担増になるでしょうか。県立病院の転嫁できない消費税の負担額はどうなっているでしょうか。
 増税するなら400兆円を超える内部留保をため込んでいる大企業や、株などで利益を倍増している富裕層にこそ増税すべきで、大企業に対する優遇税制をやめれば4兆円、株への課税をヨーロッパ並みにすれば1.2兆円、10%増税分はこれで賄える。こういうことこそ必要だと思いますが、知事の認識を伺います。

【達増知事】
 消費税率引き上げにともなう負担増については、国・地方合わせて消費税率8%となったときの負担増は、地方消費税にかかる平成25年度と28年度の決算額に基づき推計すると、県民一人当たり年間約52000円となる。税率が8%に引き上げられた平成26年の県内経済においては、物価上昇の動き、大型小売店舗販売額、新車登録台数などの個人消費の落ち込み、鉱工業生産指数、新設住宅着工戸数の前年割れなど、税率引き上げや駆け込み需要の反動減の影響が見られた。
 消費税率10%となった場合の負担増は、政府の試算をもとに推計すると、軽減税率適用後で、県民一人当たり年間約27000円になる。県立病院の転嫁できない消費税の負担額は、消費税が導入された平成元年度から平29年度までの累計消費税負担額は総額605億円余となっている。
 消費税率の引き上げは、経済的に弱い立場にある方々や、我が国の経済を支える多数の中小企業に負担を強いることとなるため、国民生活に多大な影響を及ぼすことが懸念され、特に本県の場合、東日本大震災津波や台風10号災害被災地への影響も大きく、被災者の暮らしの再建や生業の再生の妨げとなることが懸念される。
 県としては、経済的に弱い立場にある方々が困窮することがないよう、また地域に根ざした産業に十分配慮して、地方経済の落ち込みや復興の遅れを招くことがないような対応を国に求めていく。

【斉藤議員】
 8%増税で県民一人当たり約5万円余、10%になればさらに27000円の負担増と。県民の総負担額で試算すると、8%で625億円、10%になれば960億円の県民総負担になる。本当に耐えがたい負担を強いるもので、県民の暮らしも、地域経済も、復興もダメにしてしまう。これは絶対に行ってはならない。
 増税の前に参議院選挙があるので、この結果次第では必ずこの10%増税は阻止できるものと考えている。


7.警察本部の不祥事対策と公安委員会の対応について

・岩手競馬競走馬からの筋肉増強剤の検出事件について

【斉藤議員】
 第一に、岩手競馬の競走馬からレース後筋肉増強剤が3度にわたって検出され、予定されていたレースが2度にわたって中止される事態となっています。岩手競馬は330億円の莫大な借金を抱え、県と奥州市、盛岡市の2市が肩代わりして継続されていますが、「赤字になったら廃止する」という原則で継続されているものです。
 今回の筋肉増強剤検出事件は、岩手競馬の存続にかかわる重大問題ですが、県警本部は威信をかけて捜査をしているでしょうか。

【警察本部長】
 現在、鋭意捜査中であります。

・警察職員の自殺・不審死等の実態について

【斉藤議員】
 この10年間に警察職員の自殺等で亡くなられた実態とその所属はどうなっているでしょうか。

【警察本部長】
 平成20年度から29年度までの10年間に、県警察職員が死亡により退職した数は36人。このうち自殺者は6人、東日本大震災津波による殉職者は11人、それ以外は病気等による死亡退職である。

【斉藤議員】
 私は県議会で繰り返し取り上げてきたが、震災の殉職者を除く25人について、県警本部の交通規制課で3人が連続して簗川大橋から飛び降り自殺をする、北上川で水死体になって発見されるという異常な事態が3年連続で発生した。
 この問題について、単に事件が3件続いたという話ではないのではないか。この背景に何があるのか。裏金を苦にして亡くなったとかそういうことはないのか。徹底して調べたのか。

【警察本部長】
 職員の死亡事案については、一般の方と同様に検死等を行っており、また健康状態や心的な要因、職場環境や勤務状況等の問題の有無等についても可能な限り調査しているが、当該職員の所属を含め、個別の事案の内容については、死者の尊厳やご遺族の心情への配慮から、答弁は差し控えさせていただきたい。
 また、裏金等のご指摘があったが、職員の自殺事案の調査において、会計経理に絡む不適切行為等の疑われる事案はない。県警察の会計経理については、毎年県監査委員による監査を受けており、また内部の定期監査により適正経理の確保に努めている。

【斉藤議員】
 簗川大橋から2年連続で飛び降り自殺。普通の死に方ではない。
 そして、北上川で水死体が発見された事件は、警察官OBの退職者を慰労する会の後だった。そして頭部に陥没の跡があった。しかし、私がいくら質問しても、自殺でもない、事件性もないと。だとしたら何が残るのか。一般論でもいいので答えていただきたい。

【警察本部長】
 北上川の事案については、検死や司法解剖など、所要の捜査を遂げて死因を特定しているが、詳細については、死者の尊厳やご遺族の心情への配慮から答弁を差し控えさせていただきたい。

【斉藤議員】
 1つの課で、これだけ不審死が発生したことは本当に重く受け止めていただきたい。公安委員長、こういうことをきちんと管理監督しなければいけない。
 今年の3月、盛岡東警察署の課長が一身上の都合で退職した。決算特別委員会で私は「暴力団との癒着、接待、深い交際が発覚したためではないか」と質したが、首席監察官の答弁は「ご指摘の関係については確認していない」という答弁だった。これは否定した答弁ではなかった。私の指摘を踏まえて調査されたか。

【警察本部長】
 個別の職員の退職については、プライバシーに関わることであり、答弁は差し控えさせていただくが、一般論として、職員の早期退職に際しては、必要に応じて事情などを調査しており、本年3月に退職した職員に、議員ご指摘のような事情で退職した職員は確認されていない。

【斉藤議員】
 私はいろんな不祥事を取り上げているが、事実がないときは「事実はない」と答えている。今の答弁は「確認されなかった」と。隠したのではないか。

【警察本部長】
 再度申し上げると、本年3月に退職した職員に、議員ご指摘のような事情で退職した職員は一人も確認されていない。

【斉藤議員】
 「確認されなかった」という答弁にとどまった。一般の職員だったら厳しい懲戒処分になると思うが、課長はなぜ処分されないのかと、こういう県民の声があるので。徹底してしっかり調査していただきたい。

・岩手医大元教授による覚せい剤疑惑について

【斉藤議員】
 公安委員会の責務はどうなっているでしょうか。

【公安委員会委員長】
 公安委員会は、警察法第38条の規定に基づき、県警察の民主的な運営を保障するため、住民を代表する合議制の機関として設置されており、国家公安委員会および他の都道府県公安委員会と緊密な連絡を保ちながら、県警察を管理することとされている。
 公安委員会の行う管理は、個々の事務執行を含まず、大綱方針を定めてこれによる事前事後の監督を行うものと承知している。

【斉藤議員】
 私が警察本部からいただいた資料には、「都道府県公安委員会は、管内における事件、事故および災害の発生状況等を踏まえた警察の取り組み、組織や人事管理の状況等について、定例会議の場等で、警察本部長から報告を受け、これを指導することにより都道府県警察を管理している」と。これに間違いないか。

【公安委員会委員長】
 その通りである。ただ、個々の事件について監督するものではない。

【斉藤議員】
 私の指摘は否定しなかった。私が先ほど指摘した、1つの課で3年連続自殺・不審死が発生する、盛岡東警察署の疑惑―。
 そして何度も取り上げているが、岩手医大元教授による覚せい剤疑惑について、捜査したかどうかも確認せず、当時の刑事部長がその大学に再就職したことについて、公安委員長は2月県議会で、「癒着はないものと認識しております」と答弁しました。報告を受けていないのに、なぜ癒着がないと認識したのでしょうか。

【公安委員会委員長】
 県警察から捜査状況に関する報告は受けていないが、この疑惑が週刊誌に掲載されたことや、これまで県議会における斉藤議員からの質問と答弁の内容については報告を受けている。
 元刑事部長の再就職については、関係法令に照らして違反行為と認められる事実はなく、適正に行われているものと説明を受けているところであり、癒着はないものと認識している。

【斉藤議員】
 この元教授の覚せい剤疑惑について、議会で聞くと「捜査しているか、いないか答えられない」と。競馬の問題を聞いたら「捜査している」と。なぜこの問題は「捜査している」と言えないのか。やっていないからではないか。

【警察本部長】
 今回の競馬問題については、岩手競馬のレースに出走した競走馬から禁止薬物が検出され、県競馬組合において、県警察に情報提供したことを公表し、すでに公知の事実であるので捜査について公表した。
 一方、岩手医大の件などについて、個別に事件を捜査しているか、いないか、あるいはその状況については、一般論として捜査の相手方に手の内をさらし、今後の捜査に支障を及ぼす恐れがあるので答弁を差し控えているものである。

【斉藤議員】
 まったく整合性がとれなかった。
 この事件というのは、週刊文春に掲載された。公知の事実である。そして覚せい剤を打たれた女性が告発した。こんな公知の事実について、捜査したか否かも言わず、当時の捜査の責任者の刑事部長がこの大学に天下りした。県警本部の信頼に関わる事件ではないか。
 天下周知の醜悪な事件で、捜査しているかどうか公安委員会も報告を受けていないと。そして捜査の責任者が大学に再就職すると。誰が見ても癒着ではないか。そういう県警本部の信頼に関わる問題について、公安委員会は報告を受けて、管理・指導すべき問題ではないか。

【公安委員会委員長】
 公安委員会の管理監督は、個々の事件に及ぶものではないと認識している。

【斉藤議員】
 何度も言ったように、「管内における管内における事件、事故および災害の発生状況等を踏まえた警察の取り組み…」について報告を受け、指導すると。ましてや、当時の捜査の責任者が天下るということが、警察の人事管理からいっても問題ではないかと指摘している。今の答弁は答弁になっていないのではないか。

【公安委員会委員長】
 ご指摘の文書は、おそらく警察白書から引用されたと思うが、あくまで公安委員会の対象となるのは、県警察の施策であり、個々の事件ではないと認識している。

【斉藤議員】
 個々の事件というよりは、重大事件を言っている。警察本部の信頼に関わる重大な事件について指摘している。
 3人連続で亡くなったことも個々の事件ではないのではないか。警察の内部に重大な問題があるから起きているのではないか。そういう問題意識を持って、公安委員会が責任をもって対応すべきである。公安委員会の責務をしっかり果たしていただきたい。