2018年12月7日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・中小企業振興第2期基本計画(素案)について
【斉藤委員】
中小企業団体の方々から話を聞いてきた。中小企業振興条例が制定されて、第1期基本計画が作られ、「中小企業の見方が変わった。中小企業についての予算もきちんと計上され、金融機関の対応も変わった。資金が借りやすくなった」と話していたので、中小企業振興条例の制定と、それに基づく基本計画における取り組みは、それなりの成果があったと思う。
第2期計画をつくるうえで、第1期計画の成果を分かりやすくまとめる必要があるのではないか。廃業の数や製造業の出荷額などのデータのみなので、初めて条例が制定されて基本計画を3年間やったわけで、その成果をきちんと盛り込む必要があるのではないか。
【経営支援課総括課長】
たしかにご指摘あった通り、今は統計を使いながら書いている部分が主なので、ご指摘も踏まえて成果については記載したいと思う。29年度の実績については、2月県議会で計画と一緒に別冊でご報告しながら審議いただきたいと思っている。
課題については、現在箇条書きでしかまだ示していないので、それも含めて充実していきたい。
【斉藤委員】
条例と基本計画に基づいて、中小零細企業に対する商工会などからの指導も強まったということも話されていた。経営革新計画の作成だとか持続化補助金の活用とか、いろんな意味でこの条例と基本計画が力になっているのではないか。それを表だけではなくきちんとまとめていただきたい。
2つ目に、共通して言われたのは「被災地の復興はきわめて厳しい」と。「7年8ヶ月赤字が続いている」と。だから沿岸は資金確保も厳しいと。全体とすれば金融機関から資金が確保しやすくなったが、沿岸は違う。その点で、この記述について、素案の22ページで「東日本大震災津波による被災事業者の事業再開等の取り組み状況」とあるが、データのみで、このデータを書くんだったら、例えば、今年復興局が行った事業状況の調査結果を載せなければならない。震災前を割っている事業者がほとんどである。ほとんど6割、ひどいのは5割をわっている。そういう中で営業を再開している。そうしたことも実態なので、きちんと盛り込んでいく必要がある。
以前も指摘したが、ここでは「被災企業の8割が再建した」とあるが、3ヶ月ごとに更新されている商工会・商工会議所の被害状況調査(9月1日現在)では70.7%である。8割再建したが息切れして70.7%に。こちらの方が実態を反映しているのではないか。そこは精査してやっていただきたい。東日本大震災津波からの復興は、ハードの復興は着実に進んでいるが、生業の再生は緒に就いたばかり。特に商店街は、街の姿がやっと見え始めた。そこで震災前の売り上げを割りながらも頑張っているのが実態ではないか。水産加工業の問題は一般質問でも取り上げたが、原材料不足・価格高騰で倒産・廃業が出ている。そういう意味で、生業の再生は、中小企業団体の方々は「いま一番の課題だ」という指摘である。そこの位置づけをはっきりさせて、深刻な実態と引き続く支援の強化を明確に打ち出していただきたいと思うがいかがか。
【経営支援課総括課長】
生業の再生については、第1期計画においても最重点課題と考えている。別途作成している次期総合計画の「復興推進プラン」とも整合性を図りながら、ご指摘も踏まえて計画の策定を進めていきたい。
【斉藤委員】
商工会・商工会議所の被害状況調査でしっかり見なくてはいけないのは、営業再開の比率が陸前高田市で53.5%、大槌町54.3%、山田町57%、釜石市66%である。いわば、被害の大きな自治体は4割以上が廃業していることになる。頑張っているところでは、226者は仮設で営業している。だから今仮設で頑張っている方々を1者たりとも倒産させないで、本設展開や無償譲渡などで継続をさせなければ生業の再生にならない。そういう意味で、平均的に見ることなく、被害の大きいところをよく見て、再建した人も赤字続きで困っているということをリアルに見て、今まで以上に知恵を出して、あらゆる支援策を導入していく必要があるのではないか。
全体の中小企業対策という点でいけば、中小零細企業に対する指導は強化されつつあるということで、それは評価できることだと思うが、やはり切実な課題は「事業承継」。この資料を見ると、事業承継で、「後継者がいる」というのが7割強、以外と多い印象で、実際にこれが実かどうかはこれからの努力だが。事業承継のセンターもつくられたというので、例えば、零細企業の場合は、身内でなくても事業が承継されるような手立ては今の時代本当に考えていかなければならないと思う。それから「販路の拡大」でこういう意見があった。「大阪のハルカスで商談会をやった。大阪は東京と違って反応が良かった。この時は商談会だったので、商業関係だけで、できれば農林関係も一緒にやれば、原材料・資材の魅力と商品の魅力をセットで押し出せるのではないか」という話を聞いたので、この商談会を魅力あるものとしてどのように進めていくのか。そういう点で、販路の拡大という点が切実な中小企業の課題なので、もっと踏み込んだ支援策が必要ではないか。
【産業経済交流課総括課長】
商談会ということで、年度内に名古屋・盛岡・大阪・仙台・東京という形で、県内企業が商談する機会を設けているところである。食の商談会という切り口でやっているので、基本的には食料品関係ということになるが、ご指摘のように、食に関連するようなところで推してアピールできるようなものがあれば、検討させていただきたい。
【斉藤委員】
もう1つ切実な課題は、人材確保である。
東芝メモリが今年二百数十名の高卒を確保をしたと。当初はなかなか確保できず東北6県をかなり回ったという話を聞いたが。報道で出ているが、高卒は何人確保され、岩手はどのぐらいか。
【産業経済交流課産業集積推進課長】
東芝メモリにおいて223名、そのうち184名が県内とうかがっている。
【斉藤委員】
これはすごいことで、大企業はやはり人を確保する力があると。逆にいけば、地元の中小企業への影響がまた大きい。東芝メモリを契機にして、半導体関連がかなり集積しているが、求人状況はどのぐらいか。
【雇用対策課長】
11月6日に岩手労働局が発表したところによると、来春の高卒予定者への求人数は6341名だが、業種別については把握していない。
【斉藤委員】
東芝メモリ効果もあって、今年の県内就職率は高まっていると思うが、現段階で分かるか。
【雇用対策課長】
10月末での高卒予定者の県内就職内定率は66.9%となっている。
【斉藤委員】
だんだんこれは上がっていくのだと思うが、長期ビジョン、次期総合計画を見て少し驚いた。それは、県内就職率を84.5%に引き上げると。それも2019年から引き上げるということで、かなり意欲的だが根拠はあまりないのではないかと思う。発想の転換としては大いに評価したいが、2019年から一気に上げるという秘策はあるのか。
【雇用対策課長】
今回の目標値だが、かつてない規模の人材確保が急務になっているという状況を踏まえ、我々としても5年間で5000人を想定し、やはり2019年度から東北トップレベルの84.5%の目標を設定する必要があると考えているものである。果敢に攻めて頑張らなければいけない目標を掲げさせていただいており、関係機関をはじめ県民一人一人と目標を共有してオール岩手で取り組む必要があると考えており、秘策というよりは、本当に1つ1つの積み重ね、企業における生産性の向上だとか働き方改革の推進といった会社自体の魅力・価値を高めるということ、そして高校生はじめ若者に岩手で働く・暮らすということの良さに気づいていただくような機会を数多く設けて、そういう地道な取り組みを積み重ねて大きな流れを作っていければと考えている。
【斉藤委員】
県内中小企業の雇用確保の必要性と東北でトップを目指すと。ここから84.5%というのはある意味機械的に出たと思うので、この裏付けはまったくこれからだと。県教委に聞いたらびっくりしていたので、県教委はあまり相談にあずかっていないのですね。高い目標を掲げることは結構なので、ある意味この目標が発想の転換なので、取り組みも発想の転換をしてやることが大事で、北陸は90%、宮城・山形は80%なので、決して難しい目標ではないと思うが、ただ今までの実績から見ると、かなり取り組みの飛躍がないといかないので、東芝メモリ頼りになったら決して地元の中小企業は人材確保できない。
私は何度も黒沢尻工業高校の取り組みを紹介しているが、本当に地元中小企業と連携し、そして60%を超える県内就職率を勝ち取っている。あまりあそこは東芝メモリの影響はなかった。そのぐらい地元の中小企業と密に連携している。今年は水沢工業も50%を超えており、一関は40%ぐらいで低いのだが、頑張っているところが60%強なので、黒沢尻工業高校並の取り組みをさらにバージョンアップして、地元企業と連携することが一番の秘訣だと思うので、そこの仕組みをどう進めていくか、ぜひ知恵を出して、目標だけ立派だったとならないように。
【商工労働観光部長】
これまでにない規模の人材が必要だということであり、ある意味では岩手県にとって大きなチャンスだと思っている。高校や大学まで一生懸命人材を育てて、首都圏に提供してきたというところから、岩手県で暮らして岩手県で幸せに生きるという大きなチャンスであるので、何としてもこれを生かしていきたい。
機械的な目標というお話があったが、人材需要もすでに始まっており、段階的に引き上げていくということは、そのチャンスをある意味逃していくことにもなるので、できるだけ逃さないように、県内高校生が地元に定着していけるようにやっていきたいということで、ハードルの高い目標だが設定をさせていただいた。
県内定着のためには、やはり学校との連携もまだまだ強化しなければならないし、教育も図っていかなければならないと思っている。黒沢尻工業高校の地元就職率の高さというのは、工場見学だとかインターンシップなど含めて、在学中からのつながりがあって地元に就職しているので、他の高校でも強化していかなければならないし、今までにまったくなかったような取り組みを探すのはなかなか難しいところはあるが、今やっているさまざまな取り組みがあるので、それを強化しながら目標値に近づけるよう頑張っていきたい。
【斉藤委員】
基本計画(素案)の16ページのところで、「クレジットカードによる販売」とあり、県内は9.2%と。消費税増税の対策で、クレジットカードでポイント還元などと言っているが、岩手県内の中小企業は1割も対象にならない。それも9ヶ月でなくなってしまうような対策で。本当に岩手の中小企業の実態からいったらナンセンスな話で、そのために投資ができるかといったらできないと思うが、どのように考えているか。
【経営支援課総括課長】
クレジットカードおよび電子マネーの販売の割合は、全国に比べてもかなり低い。この数字を掲載したのは、10月に宮古市内においてキャッシュレス導入セミナーを県内で初めて開催し、130名ほどの小規模事業者が参加したこともあり、2019年が県内各地でいろんなイベントがあると。外国人観光客はじめ県内外から多くの方がいらっしゃることを踏まえ、キャッシュレス導入を推進したいと考えており、お話あった通り、消費税への対応でレジの改修が必要な事業者もいるので、そのタイミングで県の方もキャッシュレスの導入推進に向けた取り組みができればと考え、その状況について記載している。
【斉藤委員】
クレジットカードというのは、クレジットカード会社に手数料を取られる。本当にこれはクレジットカード会社のためのやり方ではないか。そして売り上げた金額は何ヶ月か後にくる。中小企業はそんなやり方ではやってられない。中小企業対策と言いながら中小企業が使えないようなやり方は改めるべきで、もっとリアルに見て、政府が言っているから導入すればいいという発想では中小企業は全然成り立たない。
・観光基本計画について
【斉藤委員】
東日本大震災津波復興祈念公園、これは国立の施設で、この位置づけが弱いのではないか。やはり国内外に戦後最大の大災害の教訓を伝承する施設なので、この位置づけをしっかり据える必要がある。それが三陸沿岸の観光にも大きな力になるし、震災遺構は意外と残っていないので、遺構のネットワークをつくるとか、そういう対策が必要ではないか。これは被災地でなければできないことなので。
もう1つは、三陸鉄道の位置づけである。三陸鉄道を沿岸観光の基軸に位置づけるということが大事ではないか。三陸鉄道を本当に県民が使うと、次期計画のビジョンにもするぐらいでないと、三陸鉄道がもたないということは、沿岸が落ち込むということなので。
【観光課総括課長】
三陸観光の復興だが、基本計画の28ページに、「沿岸地域の固有のコンテンツを生かした復興ツーリズムの促進」というところで、復興祈念公園などの三陸固有の財産を活用したツーリズムということで記載している。
実際の取り組みとしては、復興祈念公園をはじめ、三陸観光を振興するために何が一番ネックであるかというと、やはり交通手段が大きいと。これは発災以降からの観光の取り組みにしているが、いわゆる内陸から沿岸に向かうバスを中心とした二次交通ツアーというものの醸成を図っている。さらに今後、沿岸の宿泊施設については、これまで復興工事関係者が長期滞在ということで非常に高い稼働率だったが、復興の進捗にともない徐々に需要が落ち着いてきた。そうなると、本来の目的である観光客が宿泊する体制を整えるために、我々の方で、宿泊とセットにした二次交通ツアー商品の醸成の支援をしている。
あわせて三陸鉄道については、今年、三陸復興絆観光キャンペーンを展開し、その中で、三陸鉄道と県がコラボし、三陸鉄道の企画列車をさまざまなテーマで催行している。このような形で、来年3月にはいよいよ三陸鉄道が一本につながり、北から南まで沿岸を縦に移動する、今までは内陸から沿岸に横移動で来ていたが、今度は縦に移動していただきつつ、沿岸で宿泊いただき、観光商品を増大させていくという取り組みをするということで、ここにも記載させていただいており、来年の三陸防災復興プロジェクト2019だとか、ラグビーワールドカップなど、三陸にお客様がいらっしゃって泊まっていただく機会に合わせたさまざまなプログラムを展開していきたいと準備している。
【斉藤委員】
26ページで、「観光で稼ぐ地域づくりの推進」とあるが、気持ちは分かるが、例えば「観光で潤う地域づくり」とか、もう少し品が出てくるのではないかと思うので、そのことを指摘しておきたい。