2018年12月11日 復興特別委員会
復興祈念公園等に関する質疑(大要)


・高田松原津波復興祈念公園について

【斉藤委員】
 震災遺構の問題で、タピック45と気仙中学校は内部への立ち入り見学、奇跡の一本松とユースホステルと定住促進住宅は外部からの見学のみということで、遺構の所有は陸前高田市、遺構本体の管理は陸前高田市、外構が岩手県と説明があったが、復興祈念公園の中の遺構なので、県が一括管理することが望ましいのではないか。なぜ分けるのか。

【都市計画課総括課長】
 もともと陸前高田市の所有の建物ということで、利活用についても一義的に陸前高田市でご検討いただくものについて、県もこれを包括する復興祈念公園内ということで、ともに活用について検討を進め、活用方法も今回確認されたということで、一義的には所有者である市の方でという考え方である。

【斉藤委員】
 国は、震災遺構は1箇所は復興交付金の対象にするということで、一本松も含めば5つ存在する。一本松については、国が管理すると陸前高田市から聞いているがどうなっているか。

【都市計画課総括課長】
 奇跡の一本松は現在陸前高田市の所有だが、国の方で整備を進めている国営追悼祈念施設の中で、国に管理をお願いする旨の協議を市と国で行っていると聞いており、お話あった方向について検討中と聞いている。

【斉藤委員】
 一本松はそういう形で国が管理運営する方向だと市から聞いている。だとしたら、その他の施設も県が管理しても一つもおかしくない。やはり4箇所の遺構を維持管理することは大変なことで、どのぐらいの経費がかかるものなのか。

【都市計画課総括課長】
 現在、立ち入り見学を想定している2つの遺構については、法定基準を満たすということで、先行の公開されている遺構等を参考にすると数十万円程度ということで、立ち入らない一本松やユースホステル等については、建物本体への維持管理の費用は生じないものと認識している。

【斉藤委員】
 タピック45と気仙中学校については、内部に立ち入り見学を行うために、陸前高田市が必要な改修を行い、県が支援を行うとしているが、具体的な内容・支援額はどうなるか。

【都市計画課総括課長】
 まずは、調査・設計にあたっての技術的な支援が必要になってくるものと考えており、先ほどお話しあった復興交付金との関係で、財政的な支援についても検討が必要と考えている。

【斉藤委員】
 今日の新聞報道には、「タピックは国の復興交付金の活用を想定し、旧気仙中学校は県が支援する方向」だと。さらに「仙台市の荒浜小学校の震災遺構として改修された際には2億円程度を要した」と。
 タピックは復興交付金を活用してどのぐらいかかるのか、10分の10補助なのか。気仙中学校はどのぐらいかかって県は具体的にどれぐらい支援するのか。

【都市計画課総括課長】
 それぞれ立ち入りが必要になるものについては、今後詳細な設計が必要と考えており、市と協議を進めながらということで、すでに公開されている他の震災遺構等も参考にしながら詰めていくということである。財政的な支援についても、今後、当初予算編成等の中で詰めていきたい。

【斉藤委員】
 一本松を含めれば5つの震災遺構を陸前高田市が確保していることはきわめて重要なことだと思う。しかし5箇所も維持することは大変なことで、県から残してほしいと言われて残したという話もあるので、県も応分の責任を果たすべきである。
 県の支援というのは2分の1なのか、復興交付金並に10分の10なのか。

【都市計画課総括課長】
 財政的な支援についても重要な検討事項ととらえているので、今後予算編成の中で検討・協議し、市とも詰めていきたい。

【斉藤委員】
 財政支援の具体的な方向が示されないで、県と市が合意したとは思えない。
 この復興祈念公園の位置づけは、総合計画でも復興ビジョンでも弱い。津波伝承館についてはいろいろ記述されているが、復興祈念公園の位置づけがない。やはり復興祈念公園があってその中に伝承館があると。こういう位置づけで、5つの震災遺構もその中でしっかり活用されるという、全体的な計画と方針がなければいけないのではないか。この復興祈念公園の中に国営の施設もあるわけなので。そして国営施設があるのは被災3県で1箇所ずつだけである。この復興祈念公園全体の連携した活用、位置づけが必要ではないか。

【都市計画課総括課長】
 現在ご審議いただいている次期総合計画の復興推進プランの中間案においても、復興祈念公園を位置づけさせていただいており、公園の重要性というものは伝承館と相まって、今後さらに整備・開館に向けて、県民の皆さんや県外・海外の皆さんにも伝わるよう、我々としてもきちんと情報発信していきたい。

【斉藤委員】
 説明の中で、来年8・9月までに公園の一部区域の供用開始をするとなっているが、一部区域とはどこからどこまでか。

【都市計画課総括課長】
 まずは伝承館の開館を8〜9月に予定通り目指しており、これに合わせて国営の追悼祈念施設を中心とした部分のエリアを想定しているが、国・市でもさらに協議を重ねていくので、これについては時期を見てきちんとお伝えするということで進めていきたい。

・津波伝承館について

【斉藤委員】
 先ほど入館料の議論もあったが、例えば、阪神淡路大震災のメモリアル施設があり、中越地震のメモリアル施設もあると思うが、ここは入館料をとっていないのか。

【まちづくり再生課総括課長】
 阪神淡路大震災の防災センターについては有料としているが、ただし毎月17日は無料と聞いている。中越地震のメモリアル施設は無料となっている。

【斉藤委員】
 阪神淡路大震災の施設は入館料をとっているということなので、これは公営の施設なので高い金額は必要ないと思うが、無料がいいのかというと一概にそうは言えないと思うので、適切な料金があるのではないか。やはり料金を払って学ぶ施設、無料というのは決してしっかり学んでいこうというものにならない側面もあるのではないか。引き続き、来年議案を出すまでにこのことは他の施設も含めて吟味していただきたい。
 津波伝承館で一番中身の問題として気になっているのは、津波の教訓をどのように返すかと。最大の教訓は「避難」、ただこの避難の問題は、今回の東日本大震災津波のときは、避難誘導で亡くなった市の職員や消防団、民生委員もいた。避難したが避難施設で亡くなった方もいた。また、自力では避難できなかった人もいた。どういう避難の問題があったのかということを、事実に基づいて、教訓を明らかにして、それについて岩手県が今どのように取り組んでいるのかということも含めて、避難の問題というのは内外に教訓が示されるように、しっかりやっていただきたいと思うがいかがか。

【まちづくり再生課総括課長】
 今回の東日本大震災津波に関する避難の問題については、人々がどのような行動をとったか、実際にどのように逃げたか、逃げなかったか、その後の事実を伝えながら教訓として伝えていきたい。

【斉藤委員】
 中身を深く、6200名を超える犠牲者を出したというのは痛恨の極みであるので。
 もう1つは、この6254名の中に、震災関連死が457名出ている。この主な要因は、劣悪な避難環境である。体育館で雑魚寝が2ヶ月も続いた。避難場所、避難のあり方、これも重要な教訓である。例えば、熊本地震で211名の震災関連死が出た。直接死の50名に対して。その後の災害でも、震災関連死の方が多い。実数から見れば岩手は457名だし宮城はおそらく1000名規模だし、福島は2000名を超えている。そういう意味では、なぜこれだけ多くの震災関連死が多く出たのかということも合わせて解明し、打開の取り組みも示す内容にしていただきたい。

・被災事業者の現状について

【斉藤委員】
 事業再開の状況が84%となっているが、別な資料で、沿岸の商工会・商工会議所の被害状況調査、これは3ヶ月に1度ぐらい行われているが、これで見ると4341事業者が被災し再開は3067事業者・70.7%になっている。15ポイント近く違っており、ズレが大きすぎるのではないか。
 事業復興状況調査の中で、「売り上げが震災前同程度を上回っている」が全体で45.5%、水産加工で33%、製造業で47.5%、卸小売は31.7%と。いわば、赤字経営がずっと続いているということであり、生業の再生というのは、再建したものの赤字経営が続いているという現状をリアルに見て、生業の再生はまさにこれからが正念場、これから本設移行を目指す方々もいるので、この取り組みというのが特別に重要だと思うが、現状認識と赤字経営を打開する方策についてお聞きしたい。

【産業再生課総括課長】
 この事業再開84%となっているが、アンケートで答えていただいた方の結果だが、こちらは、最初にこの調査は平成24年2月に始めたときに、商工会等から聞き取りし、被害があったと思われる事業所3157者に調査票を送り再開の状況を確認しており、その初回からの推計値の計ということで、今までに3157者の中で再開を一度でもされた方については「再開」ととらえ、その後の経営状況が思わしくないとか、お辞めになったという方もいるが、一度でも再開した方はそこで固定してとらえているのが84%という数字である。商工会・商工会議所の数値については、再開した方から廃業している方を除いていって、現在営業している方ということでとらえているので、数字の差異があると思う。我々の方でも、一旦再開した後で何らかの事情で廃業された方がどれぐらいいるかは数値で押さえている。
 売り上げ状況については、今まで12回調査を行ってきたが、一番良いときの数字でも46.9%ということで、なかなか5割を超えてこない。水産加工や小売は3割程度しか売り上げが戻っていないと答えており、非常に厳しい状況だと認識している。さまざま各部局で、販路開拓などの取り組みを行い、どうしても商圏の人口減少もあり、同じことをやっているとどうしてもお客さんが少ないということなので、商品数を増やしたり、自社商品を遠方に販路を求めるといった施策を行っているので、引き続き各部局で連携してそうした取り組みについては継続していきたい。

【斉藤委員】
 一度でも再開した事業者を含めると評価が正確ではないので、商工会・商工会議所の調査をずっといただいているが、やはり当初から10%ぐらい下がっている。これも正確な把握をしていただきたい。
 そして売り上げが業種によっては3割台ということになっているので、再開した事業者を最大限支援すると。先ほどの議論にもあったが、5年経って、グループ補助金の貸付金の返還の時期もきている。もう1つは、固定資産税の減免の期間も過ぎている。そうすると、いろんな負担が増えて売り上げは伸びない。だから復興特区の固定資産税の減免、これは国会でも議論があったようだが、この延長をぜひ求めていただきたいし、さまざまな手立てをとっていただきたい。商品の開発と販路の拡大ということでしっかり対策をとっていただきたい。

【産業再生課総括課長】
 先ほどの一旦再開した後で廃業された方は、こちらで把握しているのは88事業所である。内訳としては、卸小売が32事業所と多くなっている。せっかく一度再開されて、どうしても販売不振とか高齢化等でお辞めになる方がいらっしゃり、事業承継については国でもこれから10年間抜本的に取り組むということで、そちらの施策も見据えながら進めていきたいと考えている。
 復興特区の固定資産税については、最終的には市町村の判断になるが、現在は平成31年度から税額の控除率、減収補てんした際に県・市町村に10分の10で今まで交付税バックしていたものが4分の3になるということで、そちらについて現状の率を維持してほしいということで要望をしている。そちらについては、沿岸12市町村に限っては現状の率を維持するという方向で国も動いていると聞いているが、固定資産税については、各市町村の判断になり、現在国に要望をしているのは宮古市のみと把握しているが、今後各市町村の動向等を見ながら県としても対応を検討していきたい。