2018年12月12日 次期総合計画特別委員会
知事に対する総括質疑(大要)


・子どもの貧困対策について

【斉藤委員】
 「次期総合計画を実効あるものに」という立場で知事にお聞きする。
 長期ビジョンの6ページで、「グローバル化の進展がもたらすもの」のところで、「貧困と格差の拡大」を明記すべきだと考えるがいかがか。

【達増知事】
 現行のいわて県民計画において、「世界の変化」というところで、グローバル化の進展にともない、先進国の産業の空洞化が進み、雇用が減少するとともに、高度な専門技術等の有無により所得面などの経済的な格差が拡大している旨の課題を記したところである。
 グローバル化による負の影響はあるが、一方で、地方や地域社会の視点でとらえた場合、地域の独自性を発揮して、世界と直接結びつくことで、県産品の輸出や人的交流の拡大など、さまざまなチャンスもあると考えられる。
 このような考えのもと、次期総合計画では、地方の一人一人の暮らしや仕事を起点とする政策を組み立てることを掲げて、また、幸福度に着目することで、地域の豊かな資源に目を向けて強みを生かしていくこととしている構成になっている。
 また計画では、世界的な貧困や格差等の状況も踏まえ、「誰一人として取り残さない」を理念として、「貧困をなくそう 働きがいも 経済成長も」など、17の国際社会全体の目標を掲げるSDGsを引用しながら、お互いに幸福を守り育てることについて考え方を明らかにしている。
 なお、長期ビジョンについては、さらにさまざまなご意見をうかがっていきたいと考えており、多くの県民の賛同を得て計画の策定に至ることを期待している。

【斉藤委員】
 5ページの「幸福と持続可能性」というところにSDGsが書かれている。だったら、グローバル化で貧困と格差が拡大しているから国連がこういう提起をしたのではないかと思う。SDGsに基づく幸福指標はなく、子どもの貧困を打開する指標がない。これは問題ではないか。

【達増知事】
 子どもの貧困率については、厚労省が国民生活基礎調査において3年に1度調査を行っており、都道府県別数値は公表されていないが、そのため貧困率そのものをいわて幸福関連指標とはしていないところだが、貧困の世代間連鎖を断ち切り、子どもたちが自分の将来に希望を持てる社会を実現するため、子どもの貧困対策は重要だと認識しており、岩手の子どもの貧困対策推進計画を県として策定し、保健福祉部門はもとより、各部局が連携して取り組んでいる。
 長期ビジョンにおいても、生まれ育った環境に左右されることなく子どもたちが成長していけるよう、子どもの貧困対策や児童虐待防止対策などにより、子どもが健やかに成長できる環境整備をすることとしており、今年度実施している子どもの生活実態調査を踏まえ、子どもの貧困対策の方向性を検討し、政策推進プランに反映させた。政策推進プランでは、学習環境の整備や福祉部門との連携強化などの教育の支援、相談事業の充実などの生活の支援、金銭の給付や奨学金の貸与などの経済的支援等の内容をさらに充実させて取り組むこととしている。
 一方、幸福関連指標の項目と次期総合計画の内容については、さらにさまざまなご意見をうかがっていきながら、多くの県民の賛同を得て、計画の策定に具体化させていきたい。

【斉藤委員】
 OECDの調査で、ひとり親家庭の相対的貧困率は日本は最低である。アクションプランも見たが、子どもの貧困を打開する指標がない。推進方策の中にあるのは、「子ども食堂を13市町村から26市町村に広げる」だけである。これだけだったら子どもの貧困の打開にならない。知事が今言ったのは柱の部分で、県内8市町村が行っている子どもの実態調査、ひとり親家庭の実態調査を踏まえて、必要な具体的な対策を示すべきではないか。

【達増知事】
 いずれにしても、子どもの貧困対策は非常に重要と考えるので、政策の推進に実効性があがるような指標の設定を工夫していきたい。

【斉藤委員】
 その際に、沖縄県が一番先駆的な取り組みをしている。かなりまとまった子どもの貧困対策の計画を出して、毎年進捗状況を点検している。沖縄県は34指標128施策で子どもの貧困打開に取り組んでいる。ぜひこれも参考にしながら、国際的な中でも深刻な子どもの貧困の打開を、長期ビジョンでも位置づけて取り組んでいただきたい。

【達増知事】
 沖縄県では、子どもの貧困対策推進基金により、市町村支援や普及啓発事業を実施しているほか、広く県民各層の協力を得ながら子どもの貧困対策を推進していると承知している。
 本県においても、子どもの支援団体や市町村等と連携し、政策推進プランに掲げた具体的な推進方策に取り組むとともに、子どもの幸福を応援するプロジェクトに官民あげて取り組むことにより、岩手の子どもの貧困対策の一層の推進を図っていく。

【斉藤委員】
 沖縄県は、子どもの居場所づくりを26市町村131箇所で行い、この中で食事支援が108箇所、生活指導が123箇所、学習支援が115箇所で取り組まれている。こういう規模で発送を転換していただきたい。

・健康と余暇の問題について

【斉藤委員】
 健康と余暇がなぜ一体となったのか。余暇の概念とは何か。

【達増知事】
 次期総合計画では、幸福指標研究会報告書や総合計画審議会の議論を踏まえ、幸福の実感に関連する、健康や余暇、仕事をはじめとした12の領域をもとに、各領域における政策の関連性も踏まえながら10の政策分野を設定した。
 余暇については、健康づくりに密接に関連するスポーツや生涯学習が含まれることから、健康と組み合わせた政策分野としたものである。
【政策地域部長】
 10の政策分野のうちの1つに「健康と余暇」と定めているが、具体的には余暇として、生涯教育や生涯を通じてスポーツを楽しめる機会を創設する等の政策を定めているものである。

【斉藤委員】
 指標が「余暇時間」になっているが、この概念は何か。

【政策地域部長】
 24時間のうち、労働時間や睡眠時間等を除いた時間となっている。

【斉藤委員】
 労働時間や睡眠時間等を除いた自由な時間だと。しかしこれは労働に付随する概念である。「余暇時間」というのなら、健康とセットするよりは、「仕事・雇用」との関わりで提起されるべきものではないか。
 そして指標では、週372分が2022年には週390分に18分増えるだけである。一日平均2.6分程度である。これで余暇は拡大するのか。

【政策地域部長】
 仕事・収入の分野に位置づけたらどうかということだが、健康・余暇については、もちろん労働される方はそうだが、高齢者やさまざまな方が入っているので、そういった中で労働だけではないさまざまな形での余暇ということであるので、健康と余暇の分野に盛り込んだところである。
 2.6分しか増えないというご指摘いただいたが、この数値の設定にあたっては、一週間の平均をとったところの一日当たりの数字である。
 現在この指標を示しているが、委員の皆さんのご指摘も踏まえて引き続き検討していきたい。この部分の表記については、より適切な表記にするよう検討したい。

【斉藤委員】
 余暇の確保というのだったら、一番大事な指標は、「有給休暇の取得率を上げる」ことである。これを上げずして余暇は生まれないと思うがいかがか。

【政策地域部長】
 有給休暇の取得率の向上だが、仕事と生活を両立できる環境づくりを通じて家族との繋がりを育み、安心して子育てをするうえで重要な要素であると認識のもと、政策プランにおいて、家族・子育てにおける具体的な推進方策指標の中に位置づけている。
 いずれにしても、ご指摘を踏まえてどういう形がいいか引き続き検討していきたい。

【斉藤委員】
 実効性のある指標にしなかったら意味がないので。
 アクションプランの41ページの推進方策にかすかに「年次有給休暇の取得日数」書いている。現状値が7.35日、2022年が7.69日だと。これでは目標にならないし余暇の確保にならないと思うがいかがか。

【政策地域部長】
 年次有給休暇の取得日数について目標を立てたが、これについても今後さまざまなご意見をいただきながら検討していきたい。

【斉藤委員】
 有給休暇は基本的に20日間あり、10日も取れないことが日本の異常であるので、真剣に考えていただきたい。
 それで、余暇の中で提起されているのが生涯学習で、これは社会教育の課題ではないのか。全体として教育の政策にまとめるべきではないか。

【政策地域部長】
 教育のところに入れるかどうかについては、教育については、学校教育や職業教育といったものを中心に、人材育成という観点がありまとめているが、例えば生涯学習等の考え方、家庭教育という要素もあり、これをどう分類していくかというのはそれぞれ10の政策分野に柱立てしているそれぞれの政策の関係性を考慮して定めたところであり、その観点から、生涯教育については健康・余暇、家庭教育については家族・子育てというところで分類させていただいた。

【斉藤委員】
 教育の課題が社会教育と学校教育に分けられたというのは、教育政策としては正しくないと思うので、ぜひ検討していただきたい。

・教育分野の政策について

【斉藤委員】
 一般質問でも聞いたが、学力テストを教育の指標にしたら、異常な競争教育を激化させることになりかねないと。知事は、今の学力テストによる競争的な教育制度の実態をどう把握しているか。

【達増知事】
 全国学力学習状況調査は、全国すべての小中学校を対象にして実施されているもので、各学校においては、その結果を児童生徒の実態に応じた教員の学習指導や、児童生徒の学習の定着などのために有効に活用することが大切と考えている。

【斉藤委員】
 これは岩教組の調査で、学力テストのために事前学習を行ったところが小学校で63.2%、中学校で19.8%である。やってはならないと言っているものをこれだけやっている。採点をしたという学校もある。採点をしたということは、解答用紙をコピーして採点したということである。これは異常な事態が起きているので、それを総合計画の指標に掲げたら、さらに激化させることになりかねないのではないか。

【達増知事】
 次期総合計画においては、10の政策分野の教育のところで、「学びや人づくりによって将来に向かって可能性を伸ばし、自分の夢を実現できる岩手の実現」ということで、逆行するような教育施策につながるような指標の設定は好ましくないと考える。

【斉藤委員】
 重要な答弁だった。
 昨年3月に、福井県池田中学校で中二男子生徒が飛び降り自殺する痛ましい事件があり、福井県議会が重要な意見書をあげた。知事は承知しているか。

【達増知事】
 福井県の「教育行政の根本的見直しを求める意見書」について、答弁検討の際に読ませていただいた。

【斉藤委員】
 意見書では、「学校の対応が問題とされた背景には、学力を求めるあまりの業務多忙もしくは教育目的を取り違えることにより、教員が子どもたちに適切に対応する精神的ゆとりを失っている状況があったのではないかと懸念するものである」と。学力偏重主義は避けるということを福井県議会はあげた。
 どういう指標が必要かといったときに、学力テストではなく、63ページにある「授業内容が分かると答えた児童生徒の割合」こそ指標にすべきではないか。

【政策地域部長】
 何度も繰り返しになるが、現在さまざまな観点から検討をしており、委員のご指摘も踏まえ引き続き検討していきたい。

【斉藤委員】
 これは私の前向きの提案なので。
 ただ、この指標の数値が低すぎる。割合の現状が小学校で48%、2022年は52%、中学校は40%、2022年44%と。半分程度しか分からなくていいという目標でいいのか。本当に授業のあり方が問われている。分からないままでいいのか。そういう打開こそ教育の施策の中で子どもたちの人権・幸福を守るという立場で見直していただきたい。

【達増知事】
 県教委によると、政策プランの具体的推進方策に位置づけている「授業の内容が分かると答えた児童生徒の割合」という指標について、児童生徒が何のために学ぶのかという学習の意義を実感しながら内容を深く理解し、何ができるようになったのかという学んだ成果を実感できるような授業改善を推進する趣旨から設定しようとするものである。
 「授業が分かる」ということに加え、学習した内容を振り返って理解するということを合わせて評価する指標としているため、現状値は高い状況にないということだが、このことを踏まえて児童生徒が学びを深めていくことができるように着実に取り組んでいくということで、ご指摘のように、授業が分かった方がいいわけであり、そのようにしていくべきと考える。

【斉藤委員】
 ぜひ岩手ならではの、これをやれば幸福が実現できるという指標にしていただきたい。