2018年12月12日 次期総合計画特別委員会
一般質疑(大要)
・家族・子育てに関する指標について
【斉藤委員】
アクションプランの35ページに、家族・子育ての主要指標の中で待機児童数があるが、この現状値というのは4月1日のもので、10月1日になると約4倍に増える傾向がある。だから10月1日時点の数字を基準にすべきではないか。
【保健福祉企画室企画課長】
国の子育て安心プランにおいて、指標は4月1日基準となっており、理由としては、全国比較をするためということである。
【斉藤委員】
全国調査は10月1日もやっている。実態に合わせてやるべきである。
基準が変わればどうなるかというと、例えば、盛岡市は昨年4月1日時点で0だったが、10月1日時点で161人になっている。全県では178人の待機児童が10月1日で681人に増える。待機児童解消というのなら、増える10月1日の数字を基準にすべきではないか。その方が実効性があるのではないか。
【政策地域部長】
所管部局ではないので恐縮だが、私も7月まで某県の市役所におり、まさに待機児童にも取り組んできたが、一般論として、年度途中で増える傾向にはあり、いずれにしても事実確認はさせていただきたい。
【斉藤委員】
4月1日の基準か10月1日の基準か、どちらが実効性があるかと聞いたので。
38ページの子育て家庭への支援ということで、子どもの医療費助成を小学校までやるというのは、もう知事が表明したことなので、これから4年間そのままということにはならない。中学校まで医療費助成を拡充するということを明記しなければ前進しないということになるのではないか。
【保健福祉企画室企画課長】
医療費助成については、保健医療政策の総合的な検討の中で実施していくということである。
【斉藤委員】
小学校卒業まで拡充することは知事がすでに表明して、来年8月から実行される。4年間そのままだったら、拡充されないということになる。すでに県議会でも議論があって、中学校まで拡充した場合のペナルティはわずか1000万円である。滝沢市が中学校まで医療費助成を拡充すれば、すぐにでもできる課題なので、これも前向きの施策としてぜひ検討していただきたい。
37ページで、生涯未婚率について触れているが、50歳で男性26.16%、女性13.07%と。男性は全国で最悪レベルである。この生涯未婚率をどう打開していくかということは切実な課題ではないか。
【保健福祉企画室企画課長】
公益財団法人いきいき岩手支援財団が平成27年度に、県内25歳〜49歳までの独身者を対象に実施した「結婚に関する意識調査」の結果によると、「結婚が難しい理由」として男性の1位が「自分の経済力が弱い」、2位が「出会いのチャンスが少ない」、女性の1位が「仕事と家事・育児の両立に不安がある」、2位が「出会いのチャンスが少ない」と回答している。
これらの要因に対応するため、次期総合計画では「仕事・収入」の分野において、正社員の有効求人倍率を岩手の幸福指標として掲げ、必要な収入や所得が得られることを実感できる岩手の実現に向けて取り組むとともに、「家族・子育て」の分野において、ワークライフバランスの推進など、仕事と生活の両立ができる環境づくりに取り組むこととしている。
また、意識調査で、男女とも共通して「出会いのチャンスが少ない」との回答があることから、いきいき岩手結婚サポートセンター「i-サポ」を設置し、結婚したいという県民の希望が叶えられるよう取り組みを行うとともに、岩手応援パスポートの事業を行い、社会全体で結婚を希望する県民を応援する機運醸成に継続して取り組むこととしている。
【斉藤委員】
これは現状でも紹介され、全国でも最悪の状況で、少子化の中で結婚したくてもできないと、このぐらい不幸なことはないと思う。本当にこれを打開していく思いきった取り組みが必要である。
・教育の課題について
【斉藤委員】
66ページに「道徳教育」とあるが、いま文科省が進めようとしている道徳教育は、かなり画一的な、価値観を押しつけるような教育なので、豊かな人間性と社会性を育むと言うのなら、「憲法に基づく道徳教育」というように打ち出さないと、画一的な道徳教育の押しつけになるのではないか。
【教育企画室企画課長】
学校教育において、協調性や相手を思いやる気持ちなど、他者とともにより良く生きるための基盤となる道徳性を育むことがきわめて重要だと認識している。
道徳教育は、学習指導要領上、「人間としての生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者とともにより良く生きるための基盤となる道徳性を養う」とされている。したがい、道徳の授業では、教師が特定の価値観を生徒に押しつけたりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にあるものであり、多様な価値観に向き合い、自ら考え続ける姿勢を養うことが重要である。
県教委としては、今後も学習指導要領の趣旨を適切に踏まえた授業が行われるよう、さまざまな研修会等における各学校への周知や指導などを通じた道徳教育の充実を図り、児童生徒の豊かな人間性と社会性の育成に取り組んでいく。
【斉藤委員】
学習指導要領で教科化されたことが大問題なので。そしてその教科書の中にはとんでもない中身が押しつけられている。
71ページで「生徒のニーズを踏まえた適切な部活動体制づくり」とあるが、「適切な部活動」と言うのなら、自主的・自発的な部活動を貫くべきである。全員加入制はただちに見直すべきではないか。
あわせて、部活動で自殺者も出た。裁判にもなった。部活動や学校教育から一切の暴力行為の根絶を目指すことを明記すべきではないか。
【教育企画室企画課長】
本県の中学校における部活動の加入状況については、各学校において、社会性や生涯にわたってスポーツ・文化に親しむ能力を育成する観点などから、部活動への加入を勧めてきており、全国的にも高い加入率となっている。
また、体罰や暴言は絶対に許されないという認識の下、県教委においては、事案が発生した場合については、その都度通知を発出し、全教職員に対して強く注意喚起を促すとともに、各学校長に対しては、各学校の状況をその都度確認するよう指導してきた。
政策推進プランにおいては、「部活動のあり方に関する方針に基づき、適切な部活動の指導体制の推進に取り組む」ということを記載しており、この部活動のあり方に関する方針において、部活動の趣旨等について学校や関係者の理解を図ることや、体罰の根絶の徹底を図る旨を記載している。
県教委においては、生徒の自主的・自発的な活動である部活動の趣旨について、各学校に改めて周知したところであるが、今後においても、体罰の根絶に向けた取り組みの徹底を図るとともに、部活動の本質を踏まえた加入が推進されるよう取り組んでいく。
【斉藤委員】
質問に真っ直ぐ答えていない。全員加入制というのは強制ということである。自主的・自発的な活動に反する。それを正すべきだと質問しているので。
体罰・暴力行為については、これだけ岩手県内で事件が起きているのに、体罰・暴力行為の根絶とはっきり書いていない。しっかり明記してやるべきである。
59ページの指標の中に「不登校児童生徒数」があるが、現状値と2020年の指標が全く変わらない。なぜこれが指標になるのか。
【教育企画室企画課長】
国の調査によると、小中学校の不登校の出現率は全国的に増加傾向であり、その要因と背景は多様化・複雑化しており、生徒指導上の大きな課題となっている。
本県の出現率については、全国平均と比較しきわめて低い状況にあるが、全国と同様におおむね5年間増加傾向が続いている。この増加傾向にある不登校児童生徒数を、適切な対応のもと抑制していくため、教員の資質を高めるための研修を実施し、教育相談にかかる専門性の向上を図るなど、児童生徒に寄り添った教育相談体制を充実させるとともに、家庭や関係機関と連携を図りつつ、少なくとも現状値を維持しながら不登校対策を推進していく考えである。
【斉藤委員】
指標は改善するために掲げるのではないか。そして不登校というのは深刻な問題である。しかし、長期ビジョンで変わらない指標を掲げることにきわめて問題を感じる。増加傾向にあると言うことは、学校や教育に歪みがあるということではないか。学校になじめないということではないか。その打開こそ長期ビジョンやアクションプランに示すべきではないか。こういう方針だったら掲げない方がいい。減らない目標を掲げて誰が納得するのか。
・高卒者の県内就職率について
【斉藤委員】
1つだけ目標が立派なものがある。「高卒者の県内就職率」である。65.8%から来年度は84.5%に一気に上がる。私はこの問題は一貫して主張してきたが、翌年から一気に上がるということにどういう合理性があるのか。
【雇用対策労働室長】
本県の現在の雇用情勢については、産業集積等にともない、かつてない規模の人材確保が急務となっている。これは、岩手の産業経済を発展させ、県民一人一人が豊かな暮らしを得ることにつながる大きな好機と認識しており、想定される人材需要に、計画期間の初年度から対応するためには、来年度から東北トップレベルの県内就職率84.5%という目標を設定する必要があったということである。
この目標は、広く県民の皆さんと目標を共有してオール岩手で取り組んでいきたいと考えたところである。
【斉藤委員】
必要性から目標を決めたと。それは良いが、3年4年かけて目標を達成するのならまだ説得力あるが、一気に来年から84.5%に上がると。気持ちは分からなくはないが、年次計画を立てているわけだから、合理性もあるのではないか。無理に一気に来年度から上げるべきとは言っていないので。高い目標は必要だが、必要性だけでなく合理性、そのための特別の手立ても考えてやっていただきたい。
・防災対策について
【斉藤委員】
続発する自然災害の中で、県民の命と暮らしを守るということは、まさに国政・県政の最重要課題である。
「要支援者の個別支援計画の作成」というのを主要な指標に位置づけるべきではないか。これがないと、避難できない人の避難ができない。要支援者名簿はまだ2割しかできていない。
【保健福祉企画室企画課長】
災害対策基本法では、市町村における個別計画の策定は義務づけられておらず、国が定めた避難行動要支援者の避難行動支援に関する取り組み指針において、「さらなる避難行動支援のために取り組むべき事項」とされている。県内では、15市町村において個別計画の策定が未着手となっており、こうした市町村の取り組み状況や、避難行動要支援者、支援関係者の状況なども地域によりさまざまであることから、具体的な策定数や策定の割合などを指標とすることは難しいと考えている。
県としては、災害発生時において、避難行動要支援者に対する実効性のある避難支援が行われるためには、市町村において個別計画の策定に取り組むことが必要と認識しており、政策プランでは、「みんなが安心して暮らせるセーフティーネットの整備」の指標として、避難行動要支援者の個別計画策定に取り組んでいる市町村数を位置づけ、まず、すべての市町村において個別計画の策定に取り組むことを目指すこととしている。
【斉藤委員】
要支援者の個別支援計画がなかったら県民の安全は守れない。そういう立場から質問しているので。4つの自治体が100%作成している。できない理由はない。
・家族農業の位置づけについて
【斉藤委員】
「仕事・収入」の項目で、農業のところを見ると、「家族農業・家族経営」の位置づけが全くないのではないか。国連家族農業の10年の具体化こそ図るべきではないか。
【農林水産企画室企画課長】
本県農業は、多くの小規模家族経営が生産に携わっている現状があり、農業・農村の多面的機能の維持などに大きく貢献していると考えている。
例えば県では、中山間地域等直接支払制度などを活用し、小規模・兼業農家も参画した地域特産品の産地化や6次産業化、都市住民との交流等の取り組みを推進し、このような取り組みについて現在策定している次期総合計画の「仕事・収入」の「一人一人に合った暮らし方ができる農山村漁村」の中に盛り込んでいる。
【斉藤委員】
農山村漁村のところではなく、産業の中に家族経営が位置づけられないと世界の流れと違ってくる。国連は10年間家族農業年をやる。
・建設労働者の確保について
【斉藤委員】
建設労働者が10年間で大量退職すると。建設労働者の確保は急務だと思うが、大工さんの賃金、設計労務単価25000円に対して12900円・51%しか支払われていない。岩手県が発注する公共事業においてこういう状況にあってはならない。公契約条例を見直して、設計労務単価のせめて8割の賃金を保障するということをやらなかったら、大量に退職する建設労働者の確保はできないと思うがいかがか。
【雇用対策労働室長】
県が締結する契約に関する条例の制定過程においては、広くさまざまな関係団体からご意見をうかがい、賃金条項や罰則規定のあり方についてさまざまなご意見があった。その点について集約が困難だったということで盛り込まなかったが、今年度においては、同条例の規則に基づき、社会経済情勢の変化等を勘案しつつ、条例の施行の状況について検討を加えることとしていることから、他の都道府県調査や、労使団体等からの意見聴取等を進めながら、岩手県契約審議会において審議いただいている。
11月27日に開催した第2回岩手県契約審議会において、これらの調査結果等を踏まえ、今後検討を進める上での論点について、賃金条項も含めた4項目を設定し、今後議論を深めていくこととして整理している。
【斉藤委員】
実態を踏まえて、大量に建設労働者が退職する時期に、どう確保するかを真剣に考えて、今手を打たなければ岩手県のライフラインは守れない。
・新しい時代を切り拓く11のプロジェクトについて
【斉藤委員】
北岩手の地域プロジェクトはもっと充実をさせて。あとの5〜11までは全く中身のないプロジェクトである。こんな中途半端なプロジェクトはやめて、だいたい10の政策に11のプロジェクトと力を分散させて、どこが推進するかも分からないようなプロジェクトは根本的に見直すべきではないか。
【政策地域部長】
11のプロジェクトとして、長期ビジョンに掲げる10年後の将来像の実現をより確かなものとするものである。また、これらのプロジェクトは現時点で一定の取り組み実績のあるものや、来年度から直ちに取り組むものもあり、産業技術のさらなる進歩や、国の制度や規制改革など社会経済環境の変化を勘案しながら取り組んでいくものもある。
このため、今回中間案の内容に加え、新たに具体的な取り組み内容や工程表を盛り込んだところであり、今後それぞれの内容を踏まえ、関係団体等の意見も聴取しながらさらに具体化を図っていきたい。