2019年1月9日 商工文教委員会
岩手県スポーツ推進計画に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 素案について、以前の常任委員会では十分お聞きできなかったので、最小限のことについてお聞きしたい。
 計画の位置づけを改めて説明していただきたい。

【スポーツ振興課総括課長】
 今回の計画は、岩手県次期総合計画により目標や取り組み等を具体的に個別に計画・策定するものである。これと同時に、スポーツ基本法第10条に基づく地方スポーツ推進計画としているものである。

【斉藤委員】
 今までは、総合計画の中で部門別計画というのがあったが、目標や取り組みを具体化する個別計画だと。これはどのように部門別計画と違いがあるのか。
 スポーツ基本法第10条に基づく地方スポーツ推進計画ということだが、基本法10条の内容はどういうものか。

【スポーツ振興課総括課長】
 部門別計画については、それぞれの行政部門に応じて策定するとされている計画であり、条例で規定されているものと理解している。今回の次期総合計画にかかる個別計画は、特に部門別計画に該当しないものの、それぞれの行政分野にかかる計画という意味での個別計画ということである。
 スポーツ基本法第10条については、「都道府県及び市町村の教育委員会は、スポーツ基本計画を参酌して、その地方の実情に即したスポーツの推進に関する計画を定めるよう努めるものとする」とされている。

【斉藤委員】
 大変重要な岩手県のスポーツ全体に関わる基本計画という、実態としてはそのようになるのではないか。委員長にもお願いしたいが、こういう県の重要な方針策定に関わるものについては、「この際」ではなく、常任委員会でしっかり議論すべきである。
 中身について、推進計画素案の14〜15ページで、「子どものスポーツ機会の充実」とあり、運動部活動について触れられている。今生徒が減少して、学校規模が小さくなってきている中で、中学進学を考えるときに、中学校に全ての部活動があるわけではなく、特定の部活をやりたいために特定の中学校に入りたいという問題が実際に起きている。そういう点でいくと、学校対抗の大会という枠の中だけでは考えられない状況にきているのではないか。その点で、総合的なスポーツクラブの役割は出ていると思うが、そういう点では、生徒減少の中で、すぐに統廃合ではなく、小規模でも小学校中学校は地域にとって維持していく。しかし同時に、子どもたちがやりたいスポーツを保障することを統一して取り組めるようにすることが必要ではないか。そういう形で、子どものスポーツ機会の充実というのを深める、具体化することが必要ではないか。

【スポーツ振興課総括課長】
 ご指摘の通り、生徒の減少、学校での部活動の種類自体が減っているということは現実に示されているところである。スポーツをする環境についても、学校の部活動以外に、地域スポーツクラブや、サッカーのようにクラブチームといった活動が行われていることも事実なので、そういう意味では若干過渡期にあるのかなという印象は持っている。そういう中で、教育委員会でもさまざま思考している状況にあると聞いており、我々としても、部活動自体については申し上げる立場ではないが、総合型あるいは地域のスポーツ活動といった部分で、部活動を補うというか、子どもたちがスポーツをする機会ということを何とか確保していくという意味でとらえ、16ページのところでは、「運動部活動の充実」のところに、「地域における子どものスポーツ機会の充実」という形で別項目で起こさせていただき、取り組みとしてはまだ未整備だが、なんとかそういった部分をやっていきたい。

【斉藤委員】
 その16ページのところでいくつか提起されている。これは教育委員会にも関わるところだが、岩手の現状からいくと2つの問題が問われているのではないか。
 1つは、県立高校での自殺事件もあり、部活動から一切の暴力行為を根絶するということ。暴力行為というのは、体罰だけではなく、人格を否定するような暴言というのも入っている。これは根強いものがあり、全国でさまざまな事件が起きている。岩手でも大変痛ましい事件が起きて、これは教育委員会で第三者委員会が設置されてこれから本格的な調査が始まるが、この機会に一切の暴力行為を根絶するということが、「運動部活動の充実」というのであればきちんと明記される必要があるのではないか。
 もう1つは、勝利至上主義の克服である。実は、プロ野球の筒香選手の本を読んだ。「勝利至上主義と決別しよう」というタイトルで、大変示唆に富んだものである。海外に行った際に、子どもたちがのびのびと野球をやっている姿を見て、日本の場合は練習漬けで、バントまでやらせると。海外ではバントはやらせずにのびのびとやらせる。なぜ日本がそうなるかというと、トーナメント方式の試合があるために、1度負けたら終わり。何としても勝たなくてはならないということでバントという作戦がとられる。そういう意味で、勝利至上主義の克服ということで、本来、スポーツ・部活動というのは楽しむものである。楽しんで、自主的・自発的というような、今それが失われているのではないか。勝利至上主義によって歪められているのではないか。この間の県立高校生徒の自殺事件の背景にもそれがあるのではないか。子どもが主役というよりは、顧問の実績が優先されて、そのような傾向になっているのではないか。
 そういう意味では、勝利至上主義を克服して、のびのびとスポーツを楽しむ。そういう中から素晴らしい選手も出てくるのではないか。

【スポーツ振興課総括課長】
 暴力行為については、肉体的な暴力、精神的な暴力、それ以外にもドーピングなどさまざまなルール違反があるが、そういったものは全て根絶すべきという考え方については全く同感であり、ここには記載していないが別ページに記載しており、改めてここに明記するかどうかは検討させていただきたい。
 勝利至上主義の克服については、スポーツ庁や文科省などもいろいろ指摘しているが、勝利至上主義が一部あるために、逆にいけば部活動を終えた段階でそのスポーツを辞めてしまう、いわゆる燃え尽き症候群になってしまう例もある。それは、生涯スポーツを進めようという我々の立場からは全く相反するものであり、できるだけ楽しいスポーツ、生涯を通じて健康に過ごせるようなあり方を進めるべきだと考えている。そういう意味で、「ライフステージに応じて楽しむ生涯スポーツの推進」という項目立てをしており、我々としては、卒業したらスポーツを辞めるのではなく、大人になっても、高齢者になってもスポーツを続けられるような形でスポーツを推進していきたいと考えている。そのためには、逆にいけば競技団体の方々にそういった環境を提供していただく必要があると考えており、競技団体の方のガバナンスだとか発揮していただくよう努めていきたい。

【斉藤委員】
 暴力行為の根絶についての記述のところを紹介していただきたい。

【スポーツ振興課総括課長】
49ページの「競技団体の組織強化」というところで、「暴力の根絶、アンチドーピングの徹底」等について記載している。

【斉藤委員】
 「選手強化事業におけるハラスメント、暴力の根絶等の取り組みを推進」と、これはかなり限定的な表現なので。私が指摘したのは、自殺事件が起きた部活動において、一切の暴力を根絶すると。実際に、中学校・高校の体験というのがとても大きい。子どもたちは、そういう形で指導されると、それが当たり前だと思ってしまう。本来あってはならないことを当たり前に思ってしまい、特に強豪校はそうである。これはきわめて重大な間違いであり錯覚である。だから、学校教育の場、部活動の場で、本当に暴力行為を根絶することは、全国的にさまざまな事件が起きているだけに、真剣に取り組むべき課題ではないか。
 勝利至上主義については、大会のあり方を根本的に見直すべきである。結局、大会が土日に開催され、そこに向けてやらざるを得ない。中学校の段階で全国大会が必要なのかと、それ自身に疑問を感じている。大会が多すぎて、結局それに向けてやらざるを得ず、それがまた過酷な練習につながっている。根本の「スポーツを楽しむ」という原点にどう立ち返ってやるのか。これはスポーツ推進計画の中でしっかり位置づけられるべき問題ではないか。
 全体としては悪くない計画だと思うが、まだ素案の段階なので、ぜひ明記すべきところは明記して、深めるところは深めていただきたい。

【文化スポーツ部長】
 まさにご指摘の通り、スポーツとはなんぞやというところで、手段になってきてしまっているというところがあり、今回のスポーツ推進計画においては、将来、人生の中で、健康をもたらすスポーツを基軸とした計画にしているつもりである。これからも審議会等があり、いろいろな議論が出てきて詰めることになるが、今回いただいたご意見についても吟味しながら、より良い計画に向けて頑張っていきたい。