2019年3月4日 次期総合計画特別委員会
部局長質疑(大要)
・指標の関連について
【斉藤委員】
長期ビジョンの主要な指標、政策推進プランのいわて幸福関連指標、参考指標、推進方策の指標と4つあるが、それぞれの指標の関連はどう取り組まれるのか。
【政策監】
今回の計画では、10の政策分野を設定し、「健康と余暇」「家族・子育て」「仕事・収入」等あるが、分野ごとに幸福の実感により関連するような統計データ等に基づく指標を「いわて幸福関連指標」としてそれぞれの分野に設定させていただいている。この幸福関連指標を設定した段階で、毎年度把握できるものとか、全国比較できるものという観点で設定してきたが、3年に1回や5年に1回しかとれないといったもの、あるいは個人の趣向に関するものについては参考指標とさせていただいた。そして、幸福関連指標を具体的な推進方策によって高めていこうとするわけだが、県が取り組む具体的な推進方策を図るための指標を「具体的推進方策指標」としている。主要な指標については、長期ビジョンに集約されているが、外部委員会等の場においても、幸福関連指標のうち、健康寿命などについては、県民に非常にメッセージ性が強いので、長期ビジョンにも分かりやすく示す必要があるのではないかというご指摘をいただき、やはり長期ビジョンにもあった方が分かりやすいという考え方のもと、いわて幸福関連指標のうち、さらに分かりやすい健康寿命といった指標を掲げている。
・地震調査委員会公表の調査結果の明記について
【斉藤委員】
長期ビジョンの9ページに「多発する大規模自然災害」という項目がある。「かなり高い確率で首都直下地震や南海トラフ地震が―」とあるが、実は2月26日に、政府の地震調査委員会が、日本海溝沿いのマグニチュード7〜7.5の確率で、青森東方沖・岩手県沖北部が90%超、宮城県沖が90%と、大震災後の調査結果である。このこともきちんと明記される必要があるのではないか。
【政策監】
計画においては、多発する大規模自然災害としていくつか例示しているが、この書き方については、本県を取り巻く環境としては、東日本大震災津波、台風10号災害、国内での集中豪雨など代表的なものを入れていたので、ご指摘の通り、宮城県沖地震等もいれていけばいいのかもしれないが、やはり代表的なものを盛り込んで、そうしたものにも備えていこうという観点で記述している。
【斉藤委員】
2月26日に新たに公表された重要な事実について書くべきだと。東日本大震災というマグニチュード9のあれだけの地震を体験してまだ8年しか経っていないが、その後の精密な調査で、まだ大規模な地震の可能性が30年以内に90%超ということなので、そういう危機感をもって明記すべきだと提起したので。部長はどう受け止めるか。
【政策地域部長】
長期ビジョンの9ページの一番上に「今後のリスク・恐れ」ということでまとめている。ご指摘の2月26日に公表されたものということだが、本質は、多くの人命が失われ、社会の重要な機能が致命的な障害を受ける恐れがあるということで、最近の大規模自然災害の発生のリスクをきちんと分析しているところであるので、当然想定して盛り込んでいるとご理解いただきたい。
【斉藤委員】
2月26日に新たに公表されたものなので盛り込まれていないのではないか。かなりショッキングな調査だったと思う。大震災前も確率は低かったが、しかしああいう地震が起きた。今回のものは、大震災後の精密な調査で出されたデータなので。やはりしっかり受け止めて、8年経ってもこういう危険性が日本海溝沿い、県北・県南にあるということをきちんと明記するということが、10年間の計画の中では大変大事だと思う。
・長期ビジョン第5章と「仕事・収入」の政策課題について
【斉藤委員】
長期ビジョン53ページには、「産業政策を総合的に展開し…経済基盤の高度化や生産性の向上を図ることにより、必要な収入や所得が得られていると実感できる岩手の実現に向けた取組を展開します」と。これは新たに盛り込まれた中身で、ここまで盛り込んだのなら、産業政策を総合的に展開するために、高知県の産業政策を参考に、長期ビジョンに基づく産業政策をさらに具体化すべきだと思うがいかがか。
【政策地域部長】
人口減少が進む中で、活力ある地域社会を形成していくためには、農林水産業やものづくり産業をはじめ、産業全般にわたり強固な産業政策を構築し、質の高い雇用を確保していく必要があると認識している。
今回の長期ビジョン最終案を提案させていただくにあたり、12月の特別委員会におけるご意見も踏まえ、産業全体の底上げを図る総合的な産業政策の重要性、需要の高い製品を県内で生産し、これを雇用などに結びつけてその所得を県内で循環させていくという、地域内経済循環の必要性等について追記させていただいた。
また計画においては、「仕事・収入」分野ということで、さまざまな柱立てで具体的に施策を盛り込ませていただいた。特に政策推進プランでは、4年間の具体的な取り組みを9つの柱ごとに、具体的な推進方策とその指標も詳細に盛り込んだところであるので、ぜひともご理解いただきたい。
【斉藤委員】
長期ビジョンにこのように明記されたことは大変大事なことだった。だとするなら、12月の一般質問でも具体的に提起したが、高知県の産業政策は3期目に入り、毎年百数十項目の指標で点検し更新している。これは1つの重要な参考になるのだと思う。長期ビジョンに基づいて、アクションプラン程度ではないもっと総合的な、毎年点検して更新できるようなものが必要ではないか。それに基づく具体化を今後ぜひ検討していただきたい。
【政策地域部長】
長期ビジョンにおいて、中小企業の振興だとかものづくり産業、観光産業の振興、農林水産業、それぞれ書かせていただき、政策推進プランにおいても4年間の具体的な取り組みの詳細を盛り込んでいるところである。
毎年きちんと施策を検討してという趣旨のことを述べられたが、我々も政策評価の中で、きちんと毎年度指標の状況等を見ていくので、それに応じて必要な施策を打っていくということでしっかり取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
部長は高知県の産業政策を目を通していると思うが、かなりのボリュームで、「仕事・収入」のアクションプランでたしかに項目的に書かれているが、しかしレベルが違う。総合的な産業政策といったときに、そういうレベルの産業政策プランが必要だと提起しているので、正面から受け止めていただきたい。
水産業の振興の課題で、アクションプランの187ページに「漁場利用のルールづくりを促進し」「養殖生産における企業との連携」とあるが、これは漁業法改正を前提にしているものだとしたら大変危険だと思ってお聞きするが、水産改革・漁業法改正と関わった提起なのか、それとも違うのか。
【農林水産部長】
漁場利用のルールづくりの促進については、一部の漁協で、さらにその中のいくつかの地区ごとに漁業( )を設定している。そうすると、例えば隣接する地区に空き漁場が生じた場合でも、地区内の漁業者は同じ漁協内であったとしても利用できないというルールになっている。こういった空き漁場を有効に活用できないため、意欲ある漁業者の規模拡大を図るためには、こういったルールの見直しが必要ということで促そうとするものである。地区ごとにというと、浜ごとに、浜の人間がそこを使うということが強くあると聞いている。
養殖生産における企業との連携については、基本的にワカメ養殖生産を念頭に置いている。水産加工業者と連携し、一次加工産業―湯通し・塩蔵・芯抜きといったところを水産加工業者に担ってもらう、それをもって生産者の負担を軽減し、生産規模を拡大してワカメ生産量の回復拡大を図るというものである。
いずれも、先般行われた漁業法の改正とは関わりがないものである。
【斉藤委員】
漁業法改正前も企業の参画は可能だった。それを無視して新たなルールをつくるというのが漁業法の改悪だったので。
・「家族・子育て」の分野について
【斉藤委員】
保育の待機児童数が幸福関連指標になっているが、これは4月1日時点の数字で、10月1日時点の方が数倍に待機児童が増加する。今年でいけば、4月1日145名だったものが10月1日は506名と3.48倍に増えている。盛岡市は0から86に増える。4月を指標にしたらまったく評価が違ってくる。一番切実な実態を示す10月1日時点の数字を指標にすべきだと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
国においては、子育て安心プランにより2020年度末までの待機児童の解消を目指していることから、全国の自治体で4月1日を基準とした取り組みが進められており、本県でも保育所等の施設整備に対する支援により受け皿の確保を図りながら、4月1日時点の待機児童の解消を目指して取り組んできた。
最終案においては、「家族・子育て」の分野の「子育て家庭への支援」の中で、子ども子育て支援の充実を図ることとしており、引き続き施設整備に対する支援や保育士等の保育人材の確保を図りながら、保育所等の施設整備計画と連動した4月1日時点の待機児童数を主要指標としたところである。
一方で、年度途中において新たな保育需要が発生することから、国においても施策の実施状況を把握するため、10月1日時点の待機児童数を調査しており、本県でもその待機児童数を参考指標として掲げた。
来年度において、年度途中の保育需要に対応し、本県でも保育士確保、保育所等受け入れ促進モデル事業を当初予算に盛り込んだところであり、年度途中を含めた待機児童対策を進め、最終的には、保育サービスを必要とする方がいつでもサービス提供を受けることができるよう、市町村と一体となって取り組みを推進していく。
【斉藤委員】
何度提起しても反映されないが、これだけ実態が違っているので。北上市は4月1日時点で2名、10月1日時点で114名になっている。これだけ違ったら4月1日時点で評価しても意味がない。実態を踏まえた指標にすべきではないか。
【保健福祉部長】
市町村等で、保育のニーズと合わせて、供給定員の計画を作っているのが4月1日時点、実質的には年度末の計画であるので、そういった保育の計画を作って待機児童の解消に向けて事業を進めているわけであり、4月1日時点であっても10月1日時点であっても、どの時点の待機児童を解消すればいいということではなく、最終的にはもちろん全ての県民の方が望む保育サービスを提供することが目標だが、国が今2020年度末までの待機児童を解消することを目標として子育て安心プランにより政策を進めており、全国の自治体もそういった解消を目指していることから、4月1日時点の待機児童の数を指標として設定した。
【斉藤委員】
国や他の市町村が云々と言っても、できない理由がなければやればいいだけの話である。3.48倍も実態が違っているので。
【保健福祉部長】
年度途中での待機児童の解消というのを目指すために、先ほど申し上げた、年度当初から保育所等に対して補助を行う事業を導入し、あるいは現時点で、ご指摘した通り、市町村によっては年度途中で保育所入所が困難な状況が生じている市町村もあるので、一時的な措置として定員の120%未満まで入所可能とする取り扱いなどにより対応しているところであり、そのため、そうした事業の推移を確認することで政策の効果を把握していくということで、10月1日時点の待機児童数は参考指標として掲げて、そうした施策の効果を把握していきたい。
【斉藤委員】
やはり実態を踏まえて、実態とずれた幸福指標ではいけない。
・教育の課題について
【斉藤委員】
「学校の授業がよく分かる児童生徒の割合」を主要な指標にすべきだと提起した。最終案を見て驚いたが、「授業がよく分かる割合」のデータが全回と大きく違っている。データを改ざんしたら議論の土台が崩れる。これはなぜか。
【教育長】
教育の指標については、委員からさまざまな場でご指摘いただき、一定の評価をいただいたところだが、逆に、学力をもっと向上させてほしいと、さまざまなご意見があり、総合的に判断して現在の指標にしたものである。
「授業内で学習を振り返っているとともに、事業の内容が分かると答えた児童生徒の割合」ということで、昨年12月段階で、指標としてお示しさせていただいたが、これは「授業が分かる」と「学習した内容を振り返っている」の両方に肯定的に回答した割合、この肯定的というのは、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と、それを1つにまとめた指標としたものだったが、「授業内で学習を振り返っている児童生徒の割合」と「学校の授業がよく分かる児童生徒の割合」を明確に分け、しっかり把握していこうということとしたものであり、改ざんではない。
【斉藤委員】
12月の特別委員会で議論したときに、この指標は小学校で48%、中学校で40%だった。今回、小学校で90%、中学校で77%となっている。これでは議論の土台が崩れる。あなた方の指標の取り方が間違っている。「授業がよく分かる」指標は、去年だけでなくずっと言われてきた。最終案になったら倍になるという、こんな評価の仕方はない。あなた方が恣意的にデータの取り方を変えて、倍も違ったら、データの意味がなくなる。「授業がよく分かる」指標は大事だと思う。大事だから提起したので。「当てはまる」というのが40%で、「だいたい当てはまる」を入れれば90%になってしまう。ところが「よく分かる」というのは1つしかない。こういう恣意的なデータの取り方をすべきではない。以前の通りきちんと行い、引き上げるということにしないと、実践的な課題にならないのではないか。90%も分かっているとしたら指標にいらない。
【教育長】
これは双方を肯定的に回答するというものを明確に分けたものであるのでご了解いただきたい。
【斉藤委員】
どこに「授業が分かる」データがあるのか。これは全国学力テストの意識調査で55項目も子どもに聞いている。聞きすぎである。どこに「分かる」とあるのか。算数・理科・社会、それぞれみんな違う。いろんなデータを一緒にして、それも倍にして出している。こういうデータの取り方ではいけない。取ったデータをそのまま示さないと、加工したりしたら正確なデータにならない。
【教育長】
「学校の授業がよく分かる児童生徒の割合」は、県学調の児童生徒質問調査によるものであり、これは小学校の場合には、「国語・算数・理科・社会の授業の内容が分かりますか」という質問に対して、4教科の肯定的な回答の平均を示したものである。以下、中学校・高校についても同趣旨での質問をしていたところである。
【斉藤委員】
私は担当者から、全国学力テストの調査結果だと聞いた。教育長は県の学力テストの調査だと。まったく違ったことを言っているのか。10月のときと12月のときでまったく違ったデータを出してきて、データは倍違った。おかしな話である。よくデータを精査していただきたい。倍も違うようなことで議論にならないので。統計不正のようなことはやらないでほしい。これはアクションプランであるので、どれが実態を反映した指標なのかということをしっかりやっていただきたい。
特別支援学校の教室不足数が、中間案では56から29に減らす計画だったが、最終案では削除された。これはなぜか。
【教育長】
特別支援学校の教室不足の解消だとか教育環境の充実については、これまで県議会における請願採択の定義があった。それから、学校・保護者等からの強い要請等を踏まえ、これまで盛岡となん支援学校の移転改築だとか、盛岡東支援学校の新設、さらには釜石祥雲支援学校の改築、特別教室等の整備などに取り組み、成果は着実に上がってきているが、県民計画最終案においても、引き続き全県的な教育環境の整備に努めていくこととしている。
指標の見直しについては、教室不足の解消は当然のことであるということに加え、現実的に特別支援学校の学級数は、児童生徒数や一人一人の障がいの状況等によって毎年大きく変動すること等により、定量的な指標の設定が難しいということから見直しを行ったものである。
【斉藤委員】
せっかくの教室不足を減らす計画を削除するのは残念である。
異常な教職員の多忙化・超過勤務の解消をアクションプランの指標に掲げるべきではないか。教職員の異常な超過勤務は、教職員の命と健康に関わると同時に、子どもの教育に関わる重大な問題である。商工文教委員会で聞いたら、過労死ラインの80時間超の県立高校の教員は420人にも及ぶと。そういう中で、全国学力テストも見直すべきだし、岩手県の学習状況調査についても、小学校は全国で17県がやっていない。岩手でもこういう勤務時間を増やすようなやり方は大幅に減らす必要があるのではないか。小学校は、すでに標準時間数980時間から100時間を超えている学校が44%もある。こういう業務の改善こそ必要ではないか。「学びの改革プロジェクト」は、人を増やさずにやったら大変なことになるのではないか。
【教育長】
これも喫緊の課題だということで、これまで働き方改革プランを策定し、それに基づく改革を進めてきている。
今年度8月にタイムカードを導入したので、実態がより精緻になっているということで、80時間超100時間未満の割合が5.8%、100時間以上が5.4%となっており、これらの実態を十分に踏まえ、適切な対応をしていきたい。
学力調査については、児童生徒の学習状況の改善だとか意欲の向上ということを目指して実施してきたが、一方で、児童生徒や教職員の過度な負担につながっているのではないかというご指摘もあり、市町村教委との協議や他県の状況等も参考にしながら、教職員の働き方改革の観点も十分踏まえ、そのあり方も含めて今後の方向性を検討していきたい。