2019年3月6日 予算特別委員会
千田美津子県議の知事に対する総括質疑(大要)


(千田委員)
 日本共産党の千田美津子です。会派を代表し質問いたします。

1.深刻な医師・看護師不足と地域医療の充実について

(千田委員)
 まず、第一に深刻な医師・看護師不足と地域医療の充実について質問をいたします。
 厚生労働省が発表した岩手県の「医師偏在指数」が全国最下位と示された中で、これまで以上に医師確保の取組みを本格化させる必要があります。
 そこで、医師確保について、大都市圏から不足地域に医師を配分する施策が急務との指摘もありますが、私は日本の医師不足にはもっと根本的な原因があると考えます。それはOECD諸国に比べてましても日本の医師数はダントツに少なく、医師不足に対応するためにはOECD並みに11万人程度増やす必要があると考えております。簡単にできる事ではないと思いますが、このことに取り組まなければ、根本の解決にはならないと考えますが、知事のご見解を伺います。
 そして、そのためには国の責任で医学部定員を1.5倍化すべきと考えますが、併せてお伺いいたします。

(達増拓也知事)
 まず、医師不足に対する所感でありますけども、本来住民がその居住する地域で必要な時に適切な医療を受けられることが地域医療のあるべき姿でありますが、地域の医療の現状は、今般国から示された医師偏在指標においても、改めて医師不足と偏在の状況にあることが示されたと認識しております。医師不足と偏在の解消に向けて、この地域医療のあるべき姿を実現するためにも、国を挙げて根本的な解決に向けて取り組む必要があると考えております。
 そして、医学部定員の拡充についてでありますが、医師不足と偏在を解消するためには、医師の絶対数の確保が必要であり、医学部の入学定員の増員は有効な解決手段の一つと考えます。岩手医科大学医学部の入学定員は、当初の80名から現在の130名まで順次拡大が図られてきましたが、この内、地域枠分については2019年度までの臨時定員増となっていますことから、県ではこれを恒久的な措置とするよう国に対して要望を行っているところであります。
 今後、高齢化等に伴う医療ニーズの多様化、医療の高度化、専門化が進むことから、医師の働き方改革を推進していくうえでも、医師の確保に最優先で取り組む必要がありますことから、大学医学部入学定員増について、引き続き国に対して強く働きかけてまいります。

(千田委員)
 ただ今、知事からも絶対数の確保も含めて国に引き続き要望していくという答弁だったと思います。県内でも医療関係者からは「医学部定員を抑制してきた国策の失敗が医師不足を招き、新専門医制度が偏在に拍車をかけている」こと、あるいは「勤務地の強制は医師の人権侵害ややりがいに反する恐れもあり、絶対的な医師数を増やすことだ。現場に出るのに時間がかかるが、医学部地域枠の拡充が必要だ」との指摘があります。そこで、達増知事は、国レベルで医師不足や偏在に取り組む必要があるとして、これまでも岩手発の地域医療基本法の制定を全国に発信して来られた知事でありますけれども、今度は国に医師増員を働きかける、その先頭に立つべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

(達増知事)
 県では毎年度、政府予算提言要望等を通じて、大学医学部における医師養成数の増について国に対して要望を行っていますほか、地域医療基本法の制定について、北海道・東北知事会や全国自治体病院協議会、地域医療を守る病院協議会と連携し、国に提言・要望を行うなど、様々な機会を通じて情報発信に取り組んでまいりました。今回国が示した医師偏在指標により、改めて全国的な医師の偏在が明らかにされたところであり、県としては計画的な医師の養成や、県境を越えた医師の配置調整により全国的な医師の不足や地域偏在を根本的に解消するよう、地域医療基本法の制定を提言しながら、他県との連携を強化し、先頭に立って国に強く働きかけてまいります。

(千田委員)
 そこで現実の問題として、医師偏在指数が全国最下位という状況があるわけです。ですから、ただこれを悲観するのではなく、むしろ逆手にとって県民挙げて全国のお医者さんに、「岩手はいいところだから来てほしい!」というメッセージを発信すべきではないかと考えますが、そういうお考えはないでしょうか。

(達増知事)
 今回、全国的な医師不足と偏在が明らかにされたことは、この問題に対する全国的な関心が高まり、医師少数県を中心に改めて都道府県が連帯する契機にもなり、本県がこれまで進めてきた医師不足対策の取り組みを進めるにあたって、状況の転換点となりうるものと考えております。他都道府県、医療関係団体や、また産業界などとも連携しながら全国的な医師不足と地域偏在を根本的に解消するためのメッセージを強く発信し、取り組んでいきたいと思います。
 
(千田委員)
 実は、産科、小児科が県内でもかなり落ちん込んでいる地域があるわけですが、私の地元、奥州市でも今回「医療を考えるパパママの会」を若い方々が中心となって立ち上げまして、この間、市長も参加する中で講演会とトークライブを開催し、医師確保に向けた市民運動が実質スタートいたしております。知事は、このような県民の立上りをどう受け止め、また、参加された県民に対してどういうメッセージを発していくお考えかお伺いします。

(達増知事)
 地域医療を守るためには、地域の住民の皆さんの努力と工夫というものが非常に効果があり、県でも岩手の地域医療を守る県民運動を団体を組織しながら、展開してきたところでありますが、市町村の単位、あるいは地域ごとにそうした住民の皆さんの地域医療を守るための運動が起きてきているということは、非常に心強く感じますし、県としてもそうした取り組みと連携しながら、ますます医師不足と偏在に対する対策をしていかなければと考えます。岩手ウォーカーを発刊しながら、県内のあらゆる分野での人手不足解消に向けて、県を挙げて取り組むような状況にもありまして、その中で医療関係の人材確保ということについても、そういった角度からも取り組んで、「岩手で働き、岩手で暮らす、岩手は最高」ということを医療の面でも、県内外にアピールしていきたいと考えます。

(千田委員)
 つぎに診療科の偏在についてですが、岩手では診療科の偏在も大変深刻です。この解消のため、産科・小児科・救急医療などの医師確保の取組を特別に重視し、強化すべきと考えますが、知事にお聞きします。

(達増知事)
 県では分娩取り扱い医療機関の整備、開設に対する支援、岩手医科大学の総合周産期母子医療センターの設備整備補助などにより、小児周産期医療等の体制整備に取り組んでおります。こうした体制整備と併せて 周産期や救急などの政策医療を担う医師の確保に向けて産科、小児科を選択した、奨学金養成医師については義務履行と専門分野のキャリア形成の両立を支援するため、義務履行の全期間を地域周産期母子医療センターでの勤務に専念できる特例措置を設けています。
 さらに、岩手医大の地域枠の養成医師に限った取り扱いでありますが、配置基本ルールにおいて、県高度救命救急センターで従事した期間の一部を義務履行に含めることを可能としており、これまでに産婦人科を5人、小児科を7人、救急科を4人が選択するなど、一定の効果が表れてきております。来年度におきましては、全国的に偏在が深刻な産科、小児科の医師確保も含め、具体的な医師偏在対策を盛り込んだ医師確保計画の策定を行うこととしておりまして、医師の確保と偏在の解消に向けて取り組んでまいります。

(千田委員)
 県では様々な医師確保のために施策を展開しているわけですが、ママドクター制度を県で立ち上げているのですが、せっかくの制度ですが今までの採用は1人にとどまっています。子育てで中断された方々に復帰をしてもらう、私はこの制度がもっと有効に確保に結びつくように是非検討していただきたいなと思いますが、その点お聞きします。

(達増知事)
 ママドクター制度は県立病院の現場で働く女性医師のママの声をうかがって作った制度でもありまして、これをより多くの皆さんに知っていただけるよう、さらに工夫を凝らし、是非この制度も利用して岩手で働いていただけるようアピールしていきたいと思います。

(千田委員)
 次に、県立病院の看護師不足についてお聞きします。県立病院の「次期経営計画」では、看護師については66人の増員計画に止まっておりますが、看護現場からは、「日勤が終わるのは夜8時、9時が大半であり働き続けられない」等の悲痛な声が聞かれます。また、月9日夜勤も発生しているようですが、どのような実態にあるでしょうか。
 私は、9日夜勤の解消と看護現場の悲痛な訴えからも、看護師の大幅増員が急務だと考えます。また、看護師増員のためには、年次有給休暇の取得率の向上など、労働条件を抜本的に改善して県立病院で「働きたい」と思えるような病院にしていく必要があると考えますが、いかがでしょうか。

(千葉茂樹副知事)
 まず、県立病院におきます看護職員の勤務実態についてでございますけれども、まず看護職員の超過勤務の状況につきましては、平成30年度の4月から12月までの超過勤務時間数の実績で、1人当たり月平均時間数は10.8時間となっており、平成29年度同期の11.2時間と比較しまして、0.4時間減少しているところでございます。
 次に、夜勤回数が月8回を超えた看護職員の状況につきましては、今年度12月までの実績で延べ537人となっており、昨年同期の延べ784人と比較して延べ247人減少しているところでございますが、依然といたしまして月8回を超える夜勤が相当程度あるものと認識しております。
 このため医療局におきましては、今年度も、各病院におきます業務の繁閑を踏まえた県立病院間の兼務発令や業務応援の実施に加えまして、年度中途における人事異動を実施するなど、夜勤回数の抑制に努めたところであり、今後におきましても、各病院における業務の繁閑に適時に対応しながら、月8回を超える夜勤の解消に努めていくものと聞いるところでございます。
 次に、看護職員の労働条件の改善についてでございますが、医療局におきましては、県立病院の次期経営計画の実施にあたりまして、まずもって計画期間内に産前産後休暇及び育児休業の取得者を代替する正規の看護職員を計画的に増員することとしております。
 さらに、例えば会議や各種委員会の勤務時間内の開催や、採血業務の臨床検査技師への移管など、看護業務の効率化や省力化を更に増進いたしますとともに、夜勤専従や2交代勤務制などの多様な勤務形態を運用するなど、勤務環境の改善に向けた取組を進めていくこととしているところでございます。
 こうした取組が看護職員の夜勤回数の抑制や業務負担の軽減にも寄与するものと期待しております。
 また、労働基準法の改正によりまして平成31年度から年次休暇の年5日取得が義務化されることに伴いまして就業規則を改正することとしております。この機会に改めて職員に周知しながら休暇の着実な取得を推進し、職員のワーク・ライフ・バランスの向上を図っていくものと伺っておりまして、これにより、職場としての県立病院の魅力が増していくものと考えております。

(千田委員)
 さまざま手立てをされているわけです、抜本的な対策、いわゆる看護師増員が必要だと思いますので引き続きよろしくお願いいたします。

2.子ども・子育て支援計画と保育所の待機児童の解消について

(千田委員)
 それでは続きまして、子ども・子育て支援事業支援計画と保育所の待機児童の解消策についてお聞きいたします。
 まず、保育所の待機児童の現状と改善策についてお聞きします。
 昨年10月1日の県内の待機児童数は506人であり、前年度の681人、2016年の710人と比べ、待機児童数は減ってはおりますが、「保育所落ちた!」は、岩手でもまだまだ深刻な課題となっています。しかも、いわゆる隠れ待機児童は含まれてはおりませんので、そこで、全体の待機児童数はどうなっているかお聞きします。

(千葉副知事)
 いわゆる隠れ待機児童を含めた全体の待機児童数についてでございますけれども、厚生労働省が実施いたしました「保育所等利用待機児童数調査」の速報値によりますと、平成30年10月1日現在において、保育所等の利用申込者のうち、特定施設のみを希望するなどの私的な理由や、求職活動を行っておらず、保育の必要性が認められない状況にあることなどの理由で、保育所等を利用していない、いわゆる隠れ待機児童数は698人でありまして、待機児童数506人と併せて1,204人となっているところでございます。

(千田委員)
 隠れ待機児童数が698人ということでありまして、全体では1,200人を超えるというご答弁だったと思います。
 なぜこのような事態となっており、なぜ解消できないのかその原因について、知事はどのようにお考えかお聞きします。

(達増知事)
 県では、平成27年度以降、子ども・子育て支援事業支援計画に基づいて、保育所等の施設整備に対する財政支援によって、定員増を図ってきたところであり、この計画における平成30年4月1日時点の保育所定員の達成率は97.7%となり、概ね計画どおりに定員が確保されています。
 一方で、特に、0歳から2歳の低年齢児における保育の利用ニーズが、計画上の想定を超えて伸びています。
 近年、女性の就業が大きく進んでいることや、子ども・子育て支援新制度の施行により、パートタイム勤務の方でも保育所等の利用が可能となるなど、予想以上に保育ニーズが高まっていることが、待機児童の解消に至らない主な要因であると認識しております。

(千田委員)
 岩手県の保育所の定員でありますけども、この3年間で815人員増やされました。しかし、待機者は依然多い状況です。保育士確保と共に、保育ニーズをきちんと捉え、対応すべきと考えますがいかがでしょうか。

(千葉副知事)
 保育ニーズの把握ということでございますが、県といたしましては、市町村が、まずもって地域の保育ニーズを的確に把握した上で策定しております「子ども・子育て支援事業計画」に基づき、必要なサービスが実施されるよう、取り組んでいくことが重要であると認識しております。
 来年度は、当該計画の最終年度でありますことから、2020年を始期といたします次期計画の策定に向けまして、今年度、市町村では、利用希望を把握する調査を実施したところでございまして、今後、その結果を踏まえ、保育の受け皿確保の目標値や、多様な保育サービスの提供量等を計画に的確に反映させることとしております。
 県としては、次期「子ども・子育て支援事業計画」が、地域の保育ニーズを踏まえて、必要なサービスが提供される計画となるよう、市町村にも助言してまいりますとともに、当該計画を踏まえて、県の「子ども・子育て支援事業計画」も見直しを行いまして、施設整備に対する財政支援や保育人材の確保に取り組むことで、市町村計画の実現に向けて支援してまいります。

(千田委員)
 ただ今ご答弁あった、岩手県子ども・子育て支援事業計画でございますけども、この間平成31年度には保育ニーズを上回る定員数が確保される見込みだと、この間述べておられたんですけども、改めてこの見通しについてお示しいただきたいと思います。

(千葉副知事)
 岩手県子ども・子育て支援事業計画についてでございますけれでも、平成30年4月1日時点の保育の利用定員は、県全体で31,302人、達成率は97.7%であり、概ね現在の計画どおりの定員となっている一方で、申込児童数は、女性の社会進出等が進んだことなどにより、特に、低年齢児に保育ニーズが高まっておりますことから、計画を上回る状況となっています。
 今年度におきましては、保育所等の施設整備に対する補助などによる302人分の定員増に加え、認定こども園の新設や幼稚園からの移行による183人分の定員増を見込んでおり、企業主導型保育事業のなどの増加要因もありますことから、平成31年4月1日時点の保育の利用定員は、830人程度拡充され、32,130人程度を見込んでおります。
 一方で、保育所等の申込児童数は、現時点では、正確な数値を算出することが困難なところでございますが、来年度の計画上の利用児童数30,844人と仮定した場合、県全体では、申込児童数を上回る定員が確保されると見込んでいるところでございます。

(千田委員)
 確保できるというご答弁だったわけですが、隠れ待機児童のカウントが問題だと思います。そもそも、保護者の私的な理由と言われますが、国が待機児童数を少なく見せるために、そういう理由等の方々は待機児童に追いやったわけですね。ですから、子どもにとっても、親にとっても安心して入れる、そういう体制整備が必要だと考えますので、もう一度その点お聞きします。

(千葉副知事)
 隠れ待機児童も含めた、申込児童数の見込みについてのお話と承りましたが、いわゆる隠れ待機児童ということについての要因につきましては、今、委員からもいろいろご指摘を頂戴したところでありますが、例えば、自宅と、勤務している仕事場との経由ができるような場所の保育所を使わせたいとか、様々な事情がるあということは承知しているところです。従いまして、できるだけそういうことも配慮できるよう定員数については、そういうことも踏まえて考えていくことが必要と考えております。

(千田委員)
 国の幼児教育・保育の無償化について、お聞きします。
 幼稚園・保育園などの費用の無償化が10月から予定されておりますけれども、内容は、保育料の全額、または一部を国と自治体が補助するというもので、厳密には軽減措置であります。いまの保育料は、国基準最高は10万円を超え、3万円、4万円と払っている父母が少なくありません。しかも、今回の無償化の対象が3歳以上とされ、負担の重い0歳から2歳児は住民税非課税世帯だけが対象となっています。今、世界の流れは教育費無償化にあります。ところが、無償化と言いながら、給食費を幼稚園に合わせ て保育園も実費負担にするなど、負担増を持ちこもうとしており、これはむしろ低所得者には負担増となりかねないとの指摘がありますが、知事はこのような対応にどのような認識を持っておられるかお聞きします。

(達増知事)
 幼児教育・保育の無償化は、政府が進めている人づくり革命の一環として取り組むこととされたものであり、働きながら子育てする世代を支える取り組みとして認識しております。
 一方、0歳から2歳児は住民税非課税世帯のみが対象とされたほか、給食費の取扱いなど、なお検討中の事項があることや、新たに無償化となる認可外保育施設の「質の確保・向上」などの課題もあると認識しております。
 県では、それらの課題への対応について、国と地方の協議の場の中で、全国知事会を通じて国に対して働きかけていきますとともに、実務を担う市町村と十分連携を図りながら、無償化により、新たな利用者の負担増とならないよう、円滑な制度の施行に向けて取り組んでまいります。

(千田委員)
 今回の無償化によって、実は地方自治体、県とか市町村には大きな負担となる事が指摘されています。それは、軽減措置で新たに必要な財源は年間8000億円、うち地方自治体の負担は3000億円と試算されています。民間園には国が50%、県と市町村が各25%ずつ負担しますけれども、公立施設については地方交付税に算入するとのことで、交付税の全体が増えない状況下にあって、これは市町村の持ち出しになり、公立施設の民営化や職員の非正規化につながる恐れがあると考えますが、知事のご見解をお聞きします。

(達増知事)
 公立保育所の民営化等については、その設置主体である市町村において、地域住民の意向や関係機関の意見等を聞きながら、それぞれの方針に沿って実施しているものと承知しております。
 県としては、保育所の設置主体に関わらず、保育を受ける子どもに対しての必要なサービスが確保されることが重要と考えていますことから、市町村に対しては、民営化するとしても適切なサービス提供が行われるよう助言等を行ってまいります。 

(千田委員)
 保護者にとっても、子どもたちにとっても安心して預けることができる、保育園をきちんと増設をすることはあっても、民営化するということについては、やはりきちんと県としても指導していただきたいなと思っております。

3.防災体制について

(千田委員)
 次に、防災体制について、特にも要配慮者利用施設の避難確保計画策定についてお聞きをいたします。
 平成29年6月の水防法及び土砂災害防止法の改正を受けて、避難確保計画の作成と訓練が義務化されましたけれども、県内では2月現在で避難確保計画の策定率は、県全体で50.9%とのことであり、今も半数の施設において策定されてはおりません。
 先日の高田一郎委員の一般質問では、策定されない理由として考えられるのは、施設管理者の制度に対する理解や計画作成方法、気象情報の知識の不足が上げられましたが、今後策定率を引き上げるためには、どうあれば良いとお考えかお聞きします。

(佐藤博企画理事兼総務部長)
 要配慮者利用施設の避難確保計画についてでございますが、避難確保計画の策定率は委員ご指摘のとおり。2月時点で5割程度となっております。詳しく市町村の状況を見ると、施設数の多少によって策定率に差があるということが分かりまして、例えば盛岡市の対象施設数が472に対して策定数が248で52.5%、それから大船渡市が66に対して14で21.2%、奥州市が98に対し21施設が作成済みで、21.4%となっております。このことから、特に策定率の低い市町村に対しては、個別に働きかけを行っていくことが必要と考えておりまして、計画未策定の社会福祉施設や医療施設の管理者等に対しまして、また市町村に対しまして、具体的な支援ニーズを把握しましとぇ、個別具体的に計画策定を支援していきたいと考えてございます。それから、国主催の講習会の活用の例もありますことから、そういった活用も市町村に働きかけるなど関係機関と連携をしまして早期に避難確保計画が策定されるよう取り組みを一層強化してまいります。

(千田委員)
 とりわけ、沿岸部などの支援も急務だと考えておりますので是非よろしくお願いいたします。
 そして、国土交通省は、2021年までに作成率を100%とし、逃げ遅れによる人的被害ゼロの実現をめざすとしています。しかし、計画を作り、訓練さえすれば良いというものではなくて、「いざという時に命を守れる体制となっているか」が重要であり、そのためには訓練を繰り返し、教訓や反省を計画に書き込み、体得させる事が重要だというふうに考えます。そういった意味でも、国いう2021年ではなくて、できれば2019年度中に全施設が策定できるように指導・援助すべきと考えますが、いかがでしょうか。

(佐藤企画理事兼総務部長)
 先ほど個別に各市町村毎の様子を確認しているとお話しさせていただきました。2月時点で50%程度でございますが、現在各施設において策定中であると把握してございます。各市町村におきましては、何とか今年度中の作成を促しているとか、それから現在作業進めているところにも支援等を行っており、今年度末までに策定するというところもございます。そういった形で具体の支援が必要なところにきめ細かく対応してまいりたいと考えております。

(千田委員)
 計画策定と合わせて重要なのは、その後の訓練の中身だというふうに思います。台風10号被害からの教訓からしても、要配慮者施設における職員体制は、決して盤石なものでないというふうに考えておりますので、休日や夜間などの体制が薄い状況も想定しながら、訓練は地域の方々などの協力を得る努力も必要かと思いますが、いかがでしょうか。

(佐藤企画理事兼総務部長)
 委員御指摘のとおり、災害発生時等におきまして迅速に避難をするためには、地域の協力が重要であるというふうに考えてございます。そういったことから、施設と地域が連携した取り組みをしなければならないということでございますが、県内では、具体的な動きがございまして、岩泉町のグループホームが、施設の近隣住民の協力を得て、夜間帯を想定した避難訓練を実施したことあるということ。それから、昨年は、こちらも岩泉町でございますが、介護施設と近隣企業が災害時の避難について協定を締結するなどの動きも出てきてございます。
 県としては、このような取組事例を市町村であるとか、あるいは施設の管理者等に情報を提供してまいりまして、避難訓練の実施について積極的に助言・指導してまいりたいと考えてございます。

4.胆沢川沿いのメガソーラー事業について

(千田委員)
 奥州市と金ヶ崎町の間を流れる胆沢川沿いのメガソーラー事業についてお聞きをいたします。
 1級河川である胆沢川にメガソーラーの設置が進められておりますが、この場所が河川区域内だったにも関わらず、県が誤って指導したため、正規の手続きが取られないまま事業が開始されていた事が明らかになりました。このメガソーラー事業については、そもそも事業者による地元への何らの説明もなく、しかも堤防が破壊されながら進められたために、事業者に対し説明会の開催を要求。この間二度にわたる説明会を開催させ、経過について質してまいりました。1月17日に開催した説明会には、ドイツから責任者が来日し、この間の不手際に陳謝し、事業継続への理解を求めてきました。そのような中での今回の事態であります。事業者は勿論の事、60名を超える地権者や地元など多くの関係者に与えた影響は大変大きなものがあると指摘しなければなりません。そこで、今回の事態を知事はどのように受け止めておられますか、お聞きします。

(達増知事)
 胆沢川における河川区域を誤認したことについてでありますが、事業者から照会のあった事業区域の一部の区域について、河川を管理する上で当然把握しておくべき河川区域の範囲を十分に確認しないまま、河川区域ではないとして、事業者に誤った情報を提供していたものであります。
 委員ご指摘のとおり、事業者や地域の方々などへ多大な影響を及ぼすこととなっており大変遺憾に受け止めております。

(千田委員)
 なぜこのような事態が起きたのか、この間の経過と今後の対応策、そして今後の事業への影響、見通しについてお聞きします。

(保和衛副知事)
 この度の誤認の案件につきましては、県土整備部を所管いたします副知事として、私も大変遺憾に思っております。
 これまでの経過等についてでございますが、平成28年4月に、今回該当しております民有地に関しまして、一般の方から河川区域であるかどうかという照会が県南広域振興局土木部にあり、その土地については河川区域外であると回答しておりました。
 その後、本年1月に当該事業者から詳細な事業区域が示されたことから、改めてその確認作業を行った結果、この事業区域内の一部が河川区域であるということを確認したということでございます。
 そもそもこの平成28年に照会があった際に、十分に河川区域の状況を確認しないまま、河川区域でないとではないと情報提供しておったことが、原因であったというふうに考えております。
 県といたしましては、直ちに事業者に対しまして、この事業区域の一部が河川区域であること、河川法に基づく許可手続きが必要であることを連絡いたしますとともに、誤った情報を提供いたしていたことにつきましては陳謝をしてございます。
 今後の対応につきましてですが、事業者との間では、適切に河川法に基づく許可手続きに関する協議を行っていくとともに、地域の方々に対しましても、経緯等につきましてご説明する機会を設けたいと考えております。
 また、今後の事業への影響等につきましては、現在、事業者との協議を開始した段階ということでございますので、現時点では明確ではないものでございます。

(千田委員)
 今回の問題は行政に対する信頼が失われかねないという問題でありますし、是非、二度と起きないようにしっかりやっていただきたいなと思うんですが、実は明日、地元説明会が業者側からの要望で開催されますので、できればその場面で県からしっかりと説明をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(保和衛副知事)
 明日3月7日にこの説明会が開催されるということは承知しておりまして、この際、県といたしましても地元の皆様にしっかり説明するようにすると聞いております。

(千田委員)
 今回のメガソーラーの問題、昨日も高橋元委員からも質問あったわけですけども、いろんなところで、いろんな問題があるということで、県としても、昨日、条例化に向けて検討やの答弁があったと思いますけれども、小さな規模であっても事業者に対する配慮も含めて、きちんと条例化に踏み出す必要があるというふうに思います。それから今、市議会が行われているわけですが、遠野市長も「地域住民の輪を分断させるプロジェクトは持ち込ませない、という強い意志でやっていく」と言う答弁がありましたので、知事としてもやはりそういう立場で取り組んでいただきたいと思いますが、質問して終わります。

(達増知事)
 メガソーラー事業に対する対応策については副知事から答弁をさせたいと思いますけれども、岩手にとって、また県民の皆様にとってメガソーラー事業というものが生活の中に入り込んでいくくらい大規模に行われたり、また数が増えたりという状況であると私も思っておりますので、改めてこの県民の生活や、またこの県土を守っていくための県として必要な制度の検討を進めていくべきと考えます。

(千葉副知事)
 メガソーラー事業に対する対応策についてでございますけれども、昨日も一部御答弁したところでございますが、国におきましては、土砂流出や濁水の発生、動植物の生息・生育環境の悪化など、近年の大規模太陽光発電事業を取り巻く状況を踏まえ、平成30年、昨年8月に「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」を設置し、太陽光発電施設を環境影響評価法の対象とする方向で検討を進めているところでございます。
 昨日、実はこの検討会から「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書」が国から公表されたところでございます。昨日の高橋元委員の質問に対しましては「報告書案の段階」として答弁させていただいたところでございますが、案の段階と同様に、法による環境影響評価を必須とする事業の規模要件を総創出力4万キロワット以上とすることや、法アセスと条例アセスの関係などについての考え方が示されたところでございます。
 県では現在、若干繰り返しで恐縮でございますけれども、環境影響評価法に準じまして、太陽光発電施設を環境影響評価条例の対象としていませんが、現在及び今後の国の検討状況を踏まえつつ、条例アセスによります太陽光発電施設に係る環境影響評価の在り方についても速やかに検討していきたいと考えております。