2019年3月6日 予算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)


・来年度予算における震災対応分について

【斉藤委員】
 来年度予算における震災対応分と繰越分はどうなっているか。この間の推移を含めて示していただきたい。

【財政課総括課長】
 当初予算は9355億円余、うち震災分は2694億円余である。30年度の繰越明許費は1388億円余であり、うち震災分は800億円余である。震災分の合計は3494億円余となっている。
 当初予算の震災分と前年度からの繰越明許費の実繰越額を合わせた額の過去5年の推移だが、26年度5363億円余、27年度5726億円余、28年度5532億円余、29年度4562億円余、30年度3724億円余となっている。

【斉藤委員】
 ピークを超えて減少しているが、岩手県の場合はまだまだ一定の事業費があるという印象である。

・日本海溝沿い地震の長期評価の更新について

【斉藤委員】
 政府の地震調査委員会が2月26日に、日本海溝沿いの地震の長期評価を明らかにした。青森県東方沖と岩手県沖の北部がマグニチュード7〜7.5程度が30年以内に90%超、宮城県沖が90%程度と、大変切迫した確率だと思うが、防災の担当としてはどのように受け止めているか。

【総合防災室長】
 国の地震調査研究推進本部が発表した長期評価は、将来発生すると想定される地震の場所・規模・発生確率について再評価したものだが、前回評価に比べ、地震の規模や発生確率が高まっており、非常に憂慮していると受け止めている。

【斉藤委員】
 東日本大震災津波はマグニチュード9という大変なもので、まだ8年という中で、その後の調査でこういう確率が示されたと。本当に緊張感を持って受け止めなければならないのではないか。

・地区防災計画について

【斉藤委員】
 「いわて県民計画2019〜2028」では、「防災減災の最先端地域としての三陸の姿を広く国内外に発信していく」と。「最先端地域」と言えば言い過ぎではないか。ハードはまだ防潮堤がすべて完成しておらず、ソフトの面では最先端とは言えないような状況がまだあるのではないか。
 大震災の教訓を踏まえた地区防災計画の策定状況だが、いわて復興フォーラムで、大槌町安渡地区の地区防災計画を聞いた。国際会議でも安渡地区の地区防災計画は紹介され、内閣府のホームページにも紹介されている。1つの典型だと思う。しかしこうした防災計画は、どのぐらい策定されているのか。特に被災地では、しっかり作られてこそ最先端地域と言えると思うがいかがか。

【総合防災室長】
 県内では、大槌町安渡地区が平成26年3月に策定したことをはじめ、大槌町で2地区、陸前高田市で1地区、八幡平市で2地区、岩手町24地区、岩泉町6地区の計5市町35地区で地区防災計画を策定している。
 県としては、地区防災計画は、市町村内の一定の地区内の居住者等が共同して、地区の防災活動の計画を定めるものであり、この計画に沿って実践的な訓練等を実施することにより、自助・共助の意識が高まり、災害による被害の軽減につながる効果もあると考えている。県としては、地区防災計画を策定する際に、中核的な役割を担うことが期待される自主防災組織の組織化、活動の活性を図るため地域防災サポーターの派遣やリーダー研修会の開催に加え、今年度から自主防災組織の活性化モデル事業も実施している。また、新たに来年度から市町村と連携し、50名程度の防災士の資格取得を目指す防災士養成研修を実施し、自主防災組織の中核を担う人材を育成していくこととしている。
 今後においては、市町村消防防災主幹課長会議等を通じて、県内の地区防災計画の策定事例を市町村と共有し、策定促進に向けた取り組みを働きかけていく。

【斉藤委員】
 安渡地区の地区防災計画策定にあたっては、あの大震災で218人(地区の11.2%)が犠牲になり、すべての犠牲者の調査・検証をした。それを踏まえて、協議会で専門家も入って何度も協議して地区防災計画を策定した。策定しただけではなく、その後の避難訓練も優れていて、例えば要支援者―自力では避難できない方々、15分ルールを作っている。15分以内に玄関まで出てもらう。そして15分以内に自分も一緒に避難すると。ここまでいけば「最先端地域」だと言えると思うので、こういう素晴らしい経験があるので、ぜひ被災地はもとより、大震災の教訓も踏まえ、そういう形で計画を策定するよう強力に進める必要があるのではないか。

【総合防災室長】
 地区防災計画の策定は非常に重要だと考えている。
 新しい動きとして、日本防災士会では、地区防災計画の制度について、積極的に推進を図っている。日本防災士会岩手県支部でも取り組みたいという意向も持っていると聞いているので、岩手県支部とも情報交換を行い、地区防災計画の策定が進むよう、県としても市町村に働きかけるなど取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 大震災津波から8年が経過して、改めて切迫した状況も踏まえ、「最先端地域」に相応しい防災減災の取り組みを本格的に進めていただきたい。

・県民と県財政に対する消費税の影響について

【斉藤委員】
 10%増税は、一人当たり年間27000円、1世帯当たり62000円の負担増、県民総負担額は年間335億円と試算されている。これだけの負担増が岩手の経済に与えるマイナスの波及効果はどのように試算されるか。

【税務課総括課長】
 消費税率が8%に引き上げられた平成26年の県内経済においては、物価上昇の動きが見られたほか、大型小売店舗販売額、新車登録台数などの個人消費の落ち込みや、鉱工業生産指数、新設住宅着工戸数の前年割れなど、税率引き上げや駆け込み需要の反動減の影響が見られた。
 国の31年度予算案においては、消費税率を10%に引き上げるに当たり、軽減税率の導入のほか、あらゆる施策を総動員し、経済回復基調に影響を及ぼさないよう全力で対応することとされている。
 県内経済が、前回と同様の影響を受けるかどうかについては見通せないところである。

【斉藤委員】
 8%増税で大変な影響を受けたと。分かりやすい数字で言うと、1世帯の消費支出が年間25万円も減った。GDPで3兆円という規模である。10%増税というのはある意味分かりやすく、10%ものしかかるという負担感は、8%以上のものがあり大変なことになる。増税額を超えた減税対策をやると。そんなことをやるのなら増税しなければいいということを指摘しておきたい。
 県内中小企業は58%が赤字で、法人事業税は課税されていないが消費税は課税されている。県内の消費税の滞納額の推移、他の滞納額との比較はどうなるか。

【税務課総括課長】
 仙台国税局が公表している本県の消費税および地方消費税の合計値によると、25年度の滞納額25億6000万円、8%になった26年度は34億2500万円と増加したが、その後毎年度減少し、29年度では29億2600万円となっている。その間、課税額は1.7倍となっているが、滞納額は1.1倍となっている。収入率は、25年度で95.9%であったものが、29年度では97.3%まで上昇している。
 他の滞納額との比較だが、県税滞納額では、税率引き上げ前の25年度から29年度まで毎年度減少しており、収入率についても毎年度上昇しており、税率引き上げとの関連性は見られないところである。

【斉藤委員】
 29年度は29億6000万円の滞納額。国税で見ると、滞納額は総額41億円である。そのうち消費税が29億8400万円、これは昨年8月7日の仙台国税局の発表である。滞納の圧倒的部分が消費税である。なぜかというと、赤字企業でも消費税は課せられるからである。こんな厳しい消費税はない。県内58%の企業が赤字なので。本当に中小業者にとっては命を削られるような消費税になるのではないか。
 消費税10%増税が、岩手県の税収と負担増の関係でどうなるのか。県民は335億円の負担増になるが、税収はいくら増えて、地方交付税はいくら減って、県が発注する公共事業等に消費税の負担増がいくらかかるか。転嫁できない消費税負担額はどう見込まれるか。

【財政課総括課長】
 10月からの税率引き上げにともなう実質的な増収額については、課税が年度途中ということもあり、来年度は3億8400万円、2020年度は47億円、引き上げの影響は通年で表れる2021年度以降は59億円程度と見込んでいる。この増収分については、地方税法により全額社会保障施策に要する経費に充てることとされており、県としても国の制度設計等を踏まえ、社会保障の充実分と安定化分におおむね半分ずつ充てることとして試算している。
 交付税への影響は、安定化分について既存の社会保障費の財源として充当されることで、実質的な交付税である臨時財政対策債の縮減につながるものと考えている。
 また、県の歳出事業への税率引き上げにともなう影響だが、31年度当初予算案においては、工事請負費など課税取引対象となる経費について、国庫補助の財源も含めたものだが、約39億円の増を見込んでいる。この支出増分については、地方財政計画に計上されているものと認識している。
 転嫁できない状況については、県立病院等事業会計にかかる影響については、10月からの税率引き上げの影響額については承知していないが、医療局によると、県立病院等事業会計における29年度の実質消費税等負担額が15億900万円余、一般会計負担分が7億4300万円余、それを除いた事業会計負担額が7億6600万円余とのことである。

【斉藤委員】
 県民が335億円もむしり取られ、県の税収は通年ベースで59億円である。そのうち半分は地方交付税で減らされる。これは今まで臨時財政対策債と言われてきたが減らされる。効果は半分しかない。一方で、公共事業にかかる消費税は約39億円、このうち国庫支出金で手当されるのは半分である。県財政から見たらほとんどプラスにならないと言ってもいい。ないどころか、県立病院の場合は、今まででさえ年間15億円もの転嫁できない消費税がある。そういう意味で、岩手県も約半分それを補てんし、医療局も半分補てんしている。医療局が転嫁できない消費税の総額は180億円になっている。これは本当に県民にとっても県立病院にとっても、大変なマイナスの影響を与え、県財政とってもほとんどプラスにならないということになるのではないか。部長はどのように受け止めるか。

【総務部長】
 県の財政運営をしていく上で、地方財政計画に計上されており、それを踏まえて県の予算も組んでいるところである。そういった形で県の財政運営にはしっかり対応しているところである。

【斉藤委員】
 私は具体的に、この消費税の増税が百害あって一利なし、県民に負担を押しつけるだけだと厳しく指摘しておきたい。

・米軍機F16戦闘機の低空飛行訓練、オスプレイ飛行問題について

【斉藤委員】
 米軍機F16戦闘機の異常な低空飛行訓練が去年あった。オスプレイも飛行した。その後、1月から6月にかけて米軍の演習の計画も示されているが、その後の低空飛行訓練、オスプレイの飛行はあったのか。この演習でオスプレイが参加することがあるのか。
 全国知事会は、日米地位協定の見直しを政府に求めている。岩手県としても、県議会でも請願を採択したが、本気で求めていくべきではないか。

【総務部長】
 私の方からは、沖縄の県民投票の結果とそれにかかる政府の対応について答弁したい。県民投票にかかる政府の対応については、これは国に対して県としてコメントする立場にはない。
 また、日米地位協定の見直しについては、国の外交・防衛政策・安全保障体制に関わることであるので、国の専権事項ということで答弁は控えさせていただきたい。ただ、全国知事会では、毎年度国への要望の中で、日米地位協定の抜本的な見直しを行うよう要望している他、昨年7月には米軍基地負担に関する軽減を知事会で取りまとめをしている。そして、その上で国に対して要請活動を行っている。その中では、米軍機による低空飛行訓練等については、必要な実態調査を行うとともに、飛行ルートや訓練時期について速やかな事前情報提供を行うこと、日米地位協定を抜本的に見直しし、航空法や関係法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立ち入りの保障などを明記すること―ということで、全国知事会として外務省および防衛省に対して要請活動を行っている。
【防災危機管理監】
 F16戦闘機の超低空飛行訓練について。昨年4月27日に動画サイトに投稿されたことで発覚し、県として速やかに米軍三沢基地や防衛省に要請文書を発出する。また5月9日には直接、二戸市・一戸町と帯同し、要請文書を手交、そして強い遺憾の意を表明するとともに、米軍に対する適切な対応をとるようにということで申し入れた。
 オスプレイの県内上空飛行については、昨年7月17日に奥州市上空を飛行したということが報道され、これに対しても速やかに県として要請文書を発出した。主たる骨子は2つであり、@県民の安全性への丁寧な説明による不安の払拭A飛行ルートなど具体的な飛行内容の事前説明―ということを、こういった事案が起こる度、また日米共同演習の度ごとに申し入れてきた。
 その後については、そういった情報や苦情はなかったところである。
 1月以降の米軍の演習については、オスプレイが参加するという情報は入っていない。

・入札問題について

【斉藤委員】
 最近、落札率が100%や99%という異常な事態が続出しているがなぜか。
 予定価格の事前公表は見直すべきではないか。
 最低限価格の実施は44都道府県で実施されているが、岩手県も導入すべきではないか。

【入札課長】
 予定価格の事前公表については、入札の透明性の向上、発注者・受注者双方の事務率の向上、予定価格にかかる不正防止の観点から有効なものとして導入させていただいている。さらに、企業による適正な積算により入札に参加してもらうために、詳細な工事費の内訳・作成を義務づけているところであり、現時点では適正な競争が確保されていると認識している。
 落札率については、発注時期・業種・地域により、同じ工種であっても落札率が異なることや、入札参加者の手持ち工事量や受注意欲、それぞれの企業の経営方針等によっても左右されるものと考えており、その時々のさまざまな環境を総合的に反映した企業間の競争の結果と考えている。一般競争入札においては、入札参加者は他の参加状況が分からないので、競争性は確保されており、予定価格の事前公表と落札率との因果関係はないものと考えている。
 最低制限価格制度については、入札価格が最低制限価格を下回った場合に全て失格となる制度だが、本県の場合は、低入札価格調査制度を導入している。低入札価格調査制度は、調査基準価格を下回る入札があった場合でも、すぐには失格とせず、入札価格で適正な工事の施工が可能かどうか審査する制度となっており、より低廉で良質な調達が可能になる点で最低制限価格制度よりもメリットがあるということから導入してきた。また、総合評価落札方式の場合は、制度的に最低制限価格制度を適用できないという制限があるという理由もある。さらに、ダンピング防止対策のため、低入札調査価格制度の中で、一定の価格を下回った場合には自動的に失格とする基準を設けているところであり、こうした面では、最低制限価格制度と同様の効果を発揮できるという点でも幅広く適用できることから、現在の方式をとっている。
 引き続き入札動向を注視しながら、低入札調査価格制度の適切な運用を図っていく。

・旧盛岡短大跡地の利活用について

【斉藤委員】
 来年度予算に、解体の設計費用が盛り込まれたが、総額はいくらで、どういう中身か。

【管理課長】
 31年度当初予算案において、財産管理費7900万円の中に旧盛岡短大校舎等の解体・撤去に向けた設計費等5000万円を計上している。これは、解体にともなう設計費のほか、必要に応じて各種調査―測量や周辺家屋への影響調査、立木の伐採などが生ずる場合があるため一定額を計上している。

・県職員の旅費支給について

【斉藤委員】
 東京出張の場合、JRの「はやぶさ」を使うのが合理的だが、「はやて」や「やまびこ」の料金しか支給されていないという話があった。そうすると、往復で1020円の自腹となり、時間も往復で2時間余計にかかってしまう。だいたい東京に行くときには「はやぶさ」を使うのが通例ではないかと思うが、「はやぶさ」料金で支出できるのか、できないのか。

【人事課総括課長】
 旅費の基本的な考え方だが、旅費の支給にあたっては、条例の規定により「もっとも経済的な通常の経路および方法により旅行した場合の旅費」により計算することとしている。「もっとも経済的な通常の経路および方法」という点だが、経費コストのみではなく、所要時間といった要素も合わせて考慮することとされている。
 東京まで出張する場合については、スケジュール上の必要がある場合だとか、公務を効率的に遂行するために必要がある場合は、「はやぶさ」の料金により旅費を計算できることとなっている。